自らの専門性を見つめなおし、国民のライフパートナーを目指そう!~その3~

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松本 京子 氏

このシリーズも最終回となった。看護の専門性や質、課題について述べてきた。

私達は、チームでケアの目的、目標を明確にしてケアを提供するプロセスで利用者やご家族と共に成長している。
それは、利用者やご家族の有様に学び、自らを振り返り生き方について考える機会を頂くからだと思っている。
看護や介護に限らず仕事というのは、日々同じ業務の繰り返しである。しかし、対人援助に関わる看護や介護の仕事は、単に業務だと思って繰り返していると10年経過しても、20年経過してもケアの重要な要素である配慮が身につかない。私達は、最近以下のような体験をした。

認知症で周辺症状の著しい方を在宅介護している家族が疲れて体調不良を訴えたとき、訪問看護師は、このままではこの家族は崩壊すると考え一旦緊急避難的なショートステイを提案した。
それに対して報告したケアマネジャーから抗議があり、事前の断りもなく職域を超えてサービスの提案をした旨の御叱りを受けた。

本人や家族の緊迫した状況に最も近く接するのは介護や看護の現場で活動する人たちであり、どのようにこの実情を打開するかが重要だと思うが、職域を超えて提案したという抗議にチームアプローチの困難さを痛感した。
ケアマネジャーへの報告の仕方も悪いという抗議には、報告については管理者としてスタッフの指導をするが、サービスの提案は当然であると返事をするにとどめたが、こうしたバカげた出来事にも学ぶことがあった。

地域包括ケアシステムの構築には、対人援助に関わる全ての専門職がコミュニケーションについて学び、療養者と家族を中心に専門職が互いに尊重しあった会話ができる関係が必要である。

この出来事は、訪問看護師も報告について振り返り、この数時間後ケアマネジャーからお詫びの電話があった。事例を通してお互いに成長していくことが未来を創っていく。

自らの専門性を見つめなおし、国民のライフパートナーを目指そう!~その2~

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松本 京子 氏

訪問看護ステーションでは、毎日カンファレンスを実施し情報の共有やケア方針決定を行っている。
カンファレンスの中で、看護の視点を共有していくことによって、個々の思考過程が構築されると考えてきた。
しかし、時として難しいと感じる場面がある。
カンファレンスでは、それぞれの担当する利用者のサービス担当者会議への出席にあたり看護の立場でどんなことを情報提供し、現状の課題をどのように考えているのか事前に整理するようにしている。
そこで多くの場合、「○○サービスが必要ではないか」「○○のサービスはどうか」といった内容が先に出てくるのである。ケアプランがまるでパッチワークの出来を競っているようだと感じるのはこんな時である。

その人はどんな暮らしを希望し、現状の病状や症状ではどのような支障があるのか、希望の実現には何が必要かという本人と家族の意思に基づくアセスメントがないまま、方法論に終始するのである。
目に見える現象にとらわれて議論すれば、サービスの種類を検討するしかない。
それは、多忙な勤務の合間を縫って出席しているサービス担当者会も同様である。
訪問看護の専門性を見つめなおしたとき、看護師が行う生活を見据えたアセスメントは重要だと考えているが、その力を持っているにも関わらず言語化し明文化する力が弱く、記録に残っていかないのが残念で仕方がない。

看護は看護師自らが専門性を明らかにし、その機能を果たす努力が必要である。
看護と介護の根っこは“利用者の生活を整える”という共通性を持っており、個別の生活について考えているはずである。
地域包括ケアシステムの構築には、看護と介護が、ため息に尽きるのではなく、利用者と家族の思いを聞き、どうありたいのか、どんな暮らしを望んでいるのか聴いて、当事者自身がQOLを実現する主体者になれるようライフパートナーを目指したい。

自らの専門性を見つめなおし、国民のライフパートナーを目指そう!

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松本 京子 氏

我が国では、住み慣れた地域で暮らし続けるために地域包括ケアシステムの構築が推進されている。
地域包括ケアシステムの構築には、多職種の連携協働が不可欠であり、全国各地で多職種連携の研修や会議が開催されている。
それは、研修や会議を通じて“顔の見える関係”を作り、ケアの目的や目標を共有したチームアプローチを実現しようとする取り組みである。

私たちの目指すべき目的は療養者とその家族のQOLの実現であり、実際の有様は個々に異なっているのは言うまでもない。
では、ケアに関わる全ての職種がこの目的を共有し、自らの専門性を活かしながら連携協働できているかと問えば、大いに疑問の残るところである。
研修や会議の場で議論されるときに、私たちの目的は何かという本質的な議論の前に、方法論に終始している現実があるのではないだろうか。

では、これからどのようにどうしたらいいのか。
連携協働のための作業を進めると同時に、自分の専門分野についての役割を自覚し、揺らぐことのない足元を固めることではないだろうか。
ケアに関わる専門職は、対人援助に関わる仕事の土台として、1人1人の利用者と向き合い、その人にとってのQOL実現について合意形成できるコミュニケーション力を持つことが求められる。
その上に、訪問看護師としての専門性を発揮し、多職種と連携協働できるためには、利用者の病状や症状を見極めながら生活の再構築をサポートできるようにアセスメント力と療養生活のマネジメントができる力をつける必要がある。

F・ナイチンゲールは、18世紀において既に“段階的に家庭に帰すべく療養システムを構築するように”と提言している。
私たち看護師は、病状や症状を見極めながら暮らしを整える専門職として看護の実践力を磨き、多職種と共に療養者とその家族のQOLの実現を目指すことが求められている。