農園型障害者雇用支援サービスとは?注目されている理由やメリットをくわしく解説

近年、企業の社会的責任(CSR)や多様性への関心が高まる中、障害者雇用の新たな形態として「農園型障害者雇用支援サービス」が注目を集めています。
この支援サービスは、障害者の就労機会を拡大するだけでなく、企業にとっても多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。本記事では、農園型障害者雇用支援サービスの概要や仕組み、注目される理由、そしてそのメリットについて詳しく解説していきます。
障害者雇用に悩む企業の方々や、新しい就労支援の形を探している福祉関係者の皆様にとって、有益な情報となるでしょう。

農園型障害者雇用支援サービスとは

農園型障害者雇用支援サービスは、「農業」という自然豊かな環境を活用して障害者の雇用と就労を支援します。

従来の一般的な障害者雇用とは異なり、農園という特殊な環境を活かすことで、障害者一人ひとりの特性や能力に合わせた多様な就労機会を創出します。

具体的には、野菜や果物など農作物の栽培から加工や販売など、農業に関連する幅広い業務を通じて、障害者の就労を支援します。

農園型障害者雇用支援サービスの仕組み

農園型障害者雇用支援サービスの基本的な仕組みは、企業が直接農園を運営しそこで障害者を雇用する、もしくは農園を運営している企業から一部区画や設備をレンタルやリースしてもらい、そこで障害者を雇用するというものです。

この仕組みにより、障害者は開放的でストレスの少ないといわれる農園にて伸び伸び働くことが可能です。一方、企業は法定雇用率の達成だけでなく、新たな事業展開や社会貢献活動としても活用できるのです。

農園型障害者雇用支援サービスが注目されている理由

農園型障害者雇用支援サービスが近年注目を集めている理由としては、以下のような点が挙げられます。

法定雇用率の達成

農園型障害者雇用支援サービスが注目される大きな理由の一つに、法定雇用率の達成があります。 企業は障害者雇用促進法に基づき、障害者を雇用しなければなりません(法定雇用義務)。その障害者法定雇用率は2.3%に引き上げられ、2026年には2.7%となっています。 この法定雇用率を達成すべく多くの企業が障害者雇用に取り組んでいますが、現時点では達成できている企業は50.1%のみです。(2023年)右肩上がりで数字は上がっているものの、まだまだ半数近くは達成できていません。

この法定雇用率が達成しない要因としては、人材の定着率が低いという点が挙げられます。一般企業への障害者の職場定着率を調査したところ、就職後1年時点の定着率は以下の図のようになっております。

特性によってばらつきはありますが、49.3%~71.5%と決して高い水準ではありません。そのため、法定雇用率を満たせる企業も多くはないのです。

そこで、農園型の雇用支援サービスが注目されています。後述しますが農作業には、ルーチンワークのような負担の少ない軽作業や定型的な作業から専門的な技術を要する作業まで幅広い仕事があり、さまざまな障害特性に対応できるため、多くの障害者を継続的に雇用することが可能です。これにより法定雇用率もクリアできることが期待されています。

農園型障害者雇用支援サービスのメリット

農園型障害者雇用支援サービスは、障害者本人、企業、そして社会全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、主要なメリットについて詳しく解説していきます。

安定した人材定着率が期待できる

農園型障害者雇用支援サービスの大きな特徴の一つが、安定した人材定着率です。

この高い定着率の背景には、以下のような要因があります。

  • 決められたシングルタスクのみを行う作業
  • 農作物の栽培から収穫まで成果が実りやすい

これらの要因により、障害者にとっては一般的な就労よりも心身ともにかかるストレスを減少させることができるため、長期的な就労につながるのです。

社会的責任を果たせる

農園型障害者雇用支援サービスを導入することで、企業は社会的責任(CSR)を効果的に果たすことができます。

具体的には以下のような側面があります。

  • 障害者の自立支援
    就労機会の提供を通じて、障害者の経済的・社会的自立を支援します。
  • 地域社会との共生
    地域の農地活用や地産地消の推進により、地域社会との良好な関係構築につながります。

これらの活動は、企業のブランドイメージ向上や、ESG投資の観点からも高く評価される要素となるでしょう。

 

農園型障害者雇用支援サービスの事例

農園型障害者雇用支援サービスは、すでに多くの企業で実践されています。

ある企業において、急速な社員数の増加に伴い障害者雇用が課題となっていました。障害雇用自体は行っていたものの法定雇用率を下回り、社内での適切なサポート体制構築も難しい状況にありました。そこで導入したのが農園型障害雇用支援サービスです。

導入の決め手は、障害者にとって働きやすい環境の提供と地方創生への貢献でした。結果、法定雇用率を大幅に引き上げ、専門スタッフによる手厚いサポートも実現。遠隔地での勤務もテレワーク文化のおかげでスムーズに対応できました。社内からも好評で、今後は農園での経験を活かし、社内での障害雇用の受け入れ体制強化を目指しています。

農園型障害者雇用支援サービスでの注意点

農園型障害者雇用支援サービスを成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。

法定雇用率だけを目的としない

農園型障害者雇用支援サービスを導入する際は、法定雇用率の達成だけを目的とすべきではありません。

過去には、この目的のみでサービスを導入し、障害者雇用を外部業者に丸投げする「雇用代行ビジネス」として批判を受けた企業もありました。

確かに、農園型障害雇用支援サービスを通して法定雇用率を満たすことは重要ですが、それ以上に大切なのは、障害者一人ひとりの能力を最大限に活かし、やりがいを持って働ける環境を作ることです。

そのため自社の社員として、障害者従業員にも一般従業員と同様に、十分なキャリアプランの設計や成長の機会を提供することが求められます。また、個々の障害特性に合わせた業務設計や充実したサポート体制の構築も重要です。

これらの取り組みを通じて、障害者従業員のモチベーション向上と長期的な雇用の安定につなげることができるでしょう。

成果物の活用方法を見直す

農園型障害雇用支援サービスで栽培された野菜や果物は、多くの場合、社内で無料配布されています。しかし、これでは市場に出回ることがほとんどなく、本来の「働く」という概念から離れているのではないかという指摘もあります。

この課題に対応するため、栽培した成果物を実際に市場で販売し、その収益を障害者従業員の給与に反映させる方法を検討してみましょう。これにより、従業員は自分の労働が社会に貢献し、対価を得ているという実感をさらに持つことができます。

専門家に相談する

農園型障害者雇用支援サービスの導入には、農業と障害者雇用の両方に関する専門知識が必要です。そのため、専門家に相談することが重要です。

一般的な障害者雇用と違い、農園に詳しい農家の方や農業運営企業も交えた相談が必要になる場合もあるため、注意しましょう。また屋外での作業も伴うため、万が一の場合に備えた医療機関や医療従事者との連携も重要です。

農園型障害者雇用支援サービスについて理解を深めよう

農園型障害者雇用支援サービスは、障害者の新たな就労機会創出と企業の社会的責任の両立を可能にするサービスです。

開放的で自然豊かな農園を活用したサービスのため、一般的な障害者雇用と比べてストレスを軽減しつつ働くことが可能です。また、企業にとっても安定した人材定着率が期待でき、法定雇用率を満たすこともできるでしょう。こうした農園型障害者雇用支援サービスは両者にとってメリットが多いです。この機会にぜひ一度理解を深めてみましょう。

 

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