上限額管理とは?上限額管理の基本的な考え方やきょうだい時のポイントなどわかりやすく解説

障害福祉サービスを利用する方々にとって、上限額管理は重要です。しかし、その仕組みや手続きは複雑で、理解するのに時間がかかることがあります。
本記事では、上限額管理の基本的な考え方から、その流れや具体的な例示、効率的な管理方法まで、わかりやすく解説します。

上限管理とは

上限額管理とは、障害福祉サービスを利用する際に、1か月当たりの利用者の負担額が一定の上限を超えないようにするための仕組みです。

この制度により、利用者は必要なサービスを受けながら、過度の経済的負担を避けることができます。

原則、障害福祉サービスの利用者負担の上限月額はその月の利用料金の1割ですが、利用者が複数の事業所を利用するなどしてその額を超過してしまった場合、上限額を管理する必要があります。

上限額は利用者の収入や世帯の状況によって決定され、複数のサービスを利用する場合でも、合計の自己負担額がこの上限を超えないよう調整します。

上限額管理の対象者

上限額管理の対象となるのは、主に以下の方々です。

  • 利用料金の自己負担額が負担上限月額を超える可能性があると市町村が認めた方
  • ひと月に複数の事業所からサービスを受ける方

これらの方々は、サービス利用料の合計が上限額を超える可能性があるため、上限額管理の対象となります。

対象となると、障害福祉サービス受給者証の「利用者負担上限額管理対象者の有無」欄に「該当」 等を記載され、「利用者負担上限額管理事業所名」に事業所の名前が記載されるようになります。

上限額管理を行う事業所

上限額管理を行う事業所は、以下の観点から総合的に判断されます。

  • 提供されるサービス量(標準的な報酬額の多寡)
  • 生活面を含めた利用者との関係性(利用者負担を徴収する便宜)
  • サービス管理責任者の配置の有無や事務処理体制等

上記の観点を踏まえ、上限額管理を行う決定順序に従い事業所を決定します。

上限額管理を行う事業所の決定順序

以下のような優先順位に基づき、上限額管理を行う事業所を決定します。

  1. 居住系サービス利用者
  2. 計画相談支援給付費支給対象者のうち継続サービス利用支援におけるモニタ リング期間が「毎月ごと」である者(①に該当する者を除く)
  3. 日中活動系サービス利用者(①②に該当する者を除く)
  4. 訪問系サービス利用者(①~③に該当する者を除く)
  5. 短期入所サービス利用者(①~④に該当する者を除く)
  6. 共同生活援助サービスの体験利用者

わかりやすく表にまとめております。

優先順位 上限額管理対象者 上限額管理者
1 居住系サービス利用者 指定療養介護事業所、指定障害者支援施設、指定自立訓練(生活訓練)事業 所(指定宿泊型自立訓練を受ける者、継続的短期滞在型利用者及び精神障害者 退院支援施設利用者に限る。)、指定就労移行支援事業所(精神障害者退院支援 施設利用者に限る。)又は指定共同生活援助事業所(体験利用の場合を除く)
2 計画相談支援給付費支給対象者のうち継続サービス利用支援におけるモニタ リング期間が「毎月ごと」である者(①に該当する者を除く) 指定特定相談支援事業所
3 日中活動系サービス利用者(①②に該当する者を除く) 指定生活介護事業所、指定自立訓練(機能訓練)事業所、指定自立訓練(生 活訓練)事業所、指定就労移行支援事業所、指定就労継続支援A型事業所又は 指定就労継続支援B型事業所
4 訪問系サービス利用者(①~③に該当する者を除く) 指定居宅介護事業所、指定重度訪問介護事業所、指定同行援護事業所、指定 行動援護事業所又は指定重度障害者等包括支援事業所
5 短期入所サービス利用者(①~④に該当する者を除く) 短期入所サービスのみの利用者で、上限額管理が必要なときは、当該月において当該上限額管理対象者に最後に指定短期入所サービスを提供した事業所
6 共同生活援助サービスの体験利用者 複数の共同生活援助事業所を体験利用している場合にあっては、当該月において当該上限額管理対象者に原則として最後に指定共同生活援助サービスを提供した事業所

きょうだいで障害福祉サービスを利用する際の上限額管理

同一世帯で障害福祉サービスを利用しているきょうだい(複数の障害児)が、同一の保護者の支給決定を受けている場合、世帯での月額を超えてしまう可能性もあるため、上限額管理を行う必要があります。

こちらも上限額管理を確認するには、受給者証の「利用者負担上限額管理対象者該当の有無」欄が「該当」と記され、「特記事項欄」に「複数障害児あり」と記載されています。

注意点として、保護者は「複数障害児上限額管理用 利用者負担上限額管理事務依頼(変更)届出書」を支給決定の行われた自治体へ提出する必要があります。

上限額管理の流れ

上限額管理業務を行う基本的な流れは、以下の通りです。

順位 名称 実施者 内容
1 利用者負担額 一覧表の提出 関係事業者 事業所番号単位で利用者負担額を算出して、受給者証に 記載された上限額管理事業者に「利用者負担額一覧表」 を提出する。
2 利用者負担額 一覧表の受領 管理事業者 「利用者負担額一覧表」を受領する。
3 上限額管理 管理事業者 提出された「利用者負担額一覧表」に基づき、「利用者 負担上限額管理結果票」を作成する。
4 上限額管理結果票の送付 管理事業者 関係事業者に「利用者負担上限額管理結果票」を送付する。
5 上限額管理
結果票の受領
関係事業者 「利用者負担上限額管理結果票」を受領し、確認する。
6 請求情報作成 管理事業者 上限額管理対象者の請求明細書に、①サービス提供実績 記録票、②利用者負担上限額管理結果票を添付する。
関係事業者 利用者負担上限額管理結果票をもとに上限額管理対象 者の請求明細書を作成し、①サービス提供実績記録票を 添付する。
7 請求情報送信 管理事業者
関係事業者
インターネットより請求情報を送信する。
8 請求情報受信 国保連合会 請求情報を受信する。

上限額管理を行う各事業所は上記のやり取りを経て、国保連へ請求を行います。

上限額管理の例

ここで具体的な上限額管理の例を見てみましょう。

ケース:Aさん(上限額5,000円、一日の利用負担金1,000円)

X事業所(日中活動系)を2日利用

Y事業所(訪問系)を1日利用

⇒この場合、上限額の5,000円を超えないため、上限額管理を行う必要はありません。各事業所へ利用負担金を払います。

ケース:Bさん(上限額5,000円、一日の利用負担金1,000円)

X事業所(日中活動系)を10日利用

Y事業所(訪問系)を8日利用

⇒この場合、上限額管理を行うのはX事業所(日中活動系)です。

ケース:Cさん(上限額5,000円、一日の利用負担金1,000円)

X事業所(訪問系)を10日利用

Y事業所(日中活動系)を5日利用

Z事業所(短期入所)を3日利用

⇒この場合、上限額管理を行うのはY事業所(日中活動系)です。

ケース:Dさん(上限額0円、一日の利用負担金1,000円)

X事業所(訪問系)を10日利用

Y事業所(日中活動系)を8日利用

⇒この場合、上限額が0円のため、上限額管理を行う必要はありません。

上限額管理に必要な書類

上限額管理を適切に行うためには、以下の書類が必要です。

  • 利用者負担額一覧表
    上限額管理対象者が利用しているサービス事業所が作成し、上限額管理事業所に提出する書類です。
  • 利用者負担上限額管理結果票
    上限額管理事業所が負担額一覧表を基に、対象者の上限負担額を超えないように調整するべく作成される書類です。
  • 障害児通所給付費・入所給付費等請求書/明細書
    国保連への請求において必要な書類で、請求書は各市町村、明細書は利用者ごとにわけて作成します。
  • サービス提供実績記録票
    利用者へのサービス提供日や提供内容などをまとめた書類です。

これらの書類を適切に管理し、期限内に提出することが重要です。書類の不備や遅延は、適切な上限額管理の妨げになる可能性があります。

上限額管理における注意ポイント

上限額管理を行う上で、以下の点に注意しましょう。

上限額管理をミスしてしまった場合

上限額管理は複雑で手間も多い業務です。そのため以下のようなミスが考えられます。

  • 負担上限月額を誤って設定してしまう
  • 上限月額を超過してしまう
  • 支払い漏れが起きてしまう
  • 書類の不備

このように上限額管理は複数の事業所が関係し、確認事項や作成する書類も多いため、必然的にミスも起きてしまいます。しかし、ミスが起きてしまうと利用者の負担が増えてしまうなどさまざまなトラブルにつながる可能性も高くなります。

そこで、ミスをなくすためにITツールの導入がおすすめです。

上限額管理を効率よく行うにはITツールがおすすめ

上限額管理は上記のように複雑化しやすく、ミスも起きがちです。そのため、業務の効率を大幅に向上できるITツールを導入することでミスを減らし、業務負担も軽減できます。

特に障害福祉サービスに対応した「福祉ソフト」であれば、複雑で手間のかかりがちな計画・請求業務を簡素化するだけでなく、日ごろの記録業務もスマホやタブレット端末で入力できるようになるため、業務効率化に貢献します。

また、福祉ソフトを選ぶ際は十分なサポート体制が整備されているソフトがおすすめです。導入支援だけでなく、その後のアフターサポートもあると安心して長期的に利用可能になります。

適切な上限額管理を行うためにツールを活用しよう

上限額管理は、障害福祉サービスを利用する方々にとって非常に重要な制度です。適切な管理により、必要なサービスを過度の負担なく受けることができます。

一方で、事業所にとっては複雑な作業を伴うこともあります。特に各市町村や国保連などに請求する際の書類などは不備があれば円滑な上限額管理ができなくなってしまいます。

そこでITツールの活用が、スムーズな上限額管理のカギとなります。

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この機会にぜひ一度「介舟ファミリー」をご検討されてはいかがでしょうか。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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