介護福祉士の仕事 編

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内田 千恵子 氏

介護と尊厳

「尊厳」とは、人格にそなわった何ものにも優先し、他のものでとって代わることのできない絶対的価値と言われます。
尊厳を守ることは、介護職だけに求められるものではなく、人として守るべきことですが、介護職には強く求められるものです。
人は、自分の身辺のこともできなくなった人や記憶力、理解力・判断力等が低下した人を、無自覚に低く見ることがあると思います。
介護する側と介護される側、世話する側と世話される側という上下の関係に陥りやすいのが介護です。
利用者を介護業務の単なる対象としか見ないということも起きます。
「尊厳を守る」という言葉は、使うのは簡単ですが、介護の場合、実際の介護行為や行動で示せなければ何にもなりません。
自己決定を尊重することが当然なのですが、理解力や判断力の低下した利用者にとって、自己決定によって利用者自身に不利益が生じる場合も考えられます。
介護福祉士は利用者にとって最善の介護サービスは何かよく考え、利用者の自己決定を支援します。
一方で、介護福祉士は利用者の自立や状態改善の可能性を追求して、自立支援をしなければなりません。
利用者のできることを発見し、活かすという介護が、生活を再構築する支援につながります。

介護の基本原則

「介護をするうえでの基本原則」としては以下のようなことが挙げられます。

  • 生活の自立性の拡大を図る
  • 予防的な対処を優先させる
  • 利用者に生きる喜びと意義を見出せるようにする
  • 利用者と社会との接触を保つ
  • 綿密な観察により異常を早期発見する
  • 介護をするために必要な知識や技術の習得
  • 他職種との連携

多職種との連携

いままで述べてきたことを確実に行う努力が、介護サービスの質を向上させることにつながるのですが、利用者の生活支援は介護職だけでできることではありません。
他職種との連携が必要です。連携は一方通行ではなく、双方のやり取りです。
目標を達成させ、利用者のQOLをあげるために、相手の仕事が最大限に実施できるようにお互いに支え合い、協力しあうことです。
連携するためには、相手の仕事を理解し、連携に必要な最低限の知識を得ておかなければなりません。
コミュニケーション能力も求められます。
医療職との連携のためには、利用者の健康面をよく知り、必要な医療的知識を学習しておきます。
また、自分の仕事に責任を持つことが連携には重要なことです。
自分の役割、職務を果たしてこそ連携が生まれます。

介護は肉体労働と言われますが、読んでいただいたように大変な「頭脳労働」なのです。

介護の仕事 編

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内田 千恵子 氏

介護福祉士の仕事

介護という仕事は、利用者の日常生活全般の支援ですが、それゆえに誰にでもできる仕事と考えられがちです。
実際には生活支援という個別性も高く、やることややり方を一律に決めることができないことのために、しなければいけないことがあります。

  • 心身状態の適切なアセスメントやその人本来の姿を考える。
  • 利用者の心身の状態にあった生活を再構築する支援をする。
  • 利用者同士の関係や家族、地域の人々、職員も含めた関連する人との人間関係の構築を支援する。
  • 利用者の疾病の予防や、悪化させないように日々の生活のなかで支援する。
  • 利用者の生命を守り、健康を維持することだけでなく、安心や安全、自立(主体的な生活行動)にもつながるようにする。
  • 利用者の気持ち、感情、行動に働きかけ、心を動かす。
  • 利用者本人だけではなく、家族を支え、支援する。
  • 利用者のできない部分をただ補うのではなく、自分でできることを発見したり、できるように側面から支援する。
  • 意思表示が十分でなくとも、表情や言動から気持ちや考えを推察し、尊厳や自尊心を大事にしながら支援する。

介護の専門性とは

介護の専門性が未確立という意見もありますが、未確立というよりは明確化されていないということかと思います。
介護福祉士は、どのようなことが行えなければいけないかといえば、
「利用者を見立てる」
ということだと思っています。
その方はどのような状態の方で、どのようにしたらその状態が改善できるのか考えることができるというのが、まずいちばんだと思います。
改善というと自分でなにかができるようになることと思われがちですが、いまの状況をよくするということで、利用者本人ができるようになるということでは必ずしもありません。
このような視点を持って介護計画を作成し、実際に実施できることが大事なことだと思います。
その専門性は「倫理」や「介護の基本原則」などによって裏打ちされたものです。
介護職の守るべき倫理としては、尊厳を守る、個々の生活習慣・文化や価値観の尊重 、自己決定を尊重する、利用者に害となることはせず安全を守る、プライバシーを保護することなどがあります。

介護の専門性と介護サービスの質 編

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内田 千恵子 氏

介護職が仕事をどうとらえているか

先日、ある介護職員の研修会で、介護の専門性について尋ねたところ、
「やさしさ」「自立支援」「寄り添うこと」
などという意見がでたなかで、「自分たちの仕事は最下層だから」と話される方がいました。
だから専門性などと言っている場合ではないということだったのかもしれません。
少々驚いたし、がっかりもしたのですが、まずは介護を仕事としている我々自身が、介護という仕事をしっかりとらえないといけないのだと痛感しました。
介護サービスの質は、介護職員の質にあると言っても過言ではないと思っていますので、内部をしっかりさせることができずに、外部の評価などありえないと感じました。

介護現場で働く人の現状

介護現場には有資格者から無資格者まで、知識や技術、経験等さまざまな人が介護職として働いています。
全部の事業所ではありませんが、介護職や介護福祉士の状況は次のようなものと考えられます。

【介護職の現状】
●自分のやっている介護は適切で正しいものなのか、疑問を感じている
●他と比較することができず、その職場の介護のやり方や介護に対する考え方に合わせるしかない
●介護という仕事は3Kと言われる肉体労働の最たるものであると思っている
●介護職自身が自分の職業を適切に捉えられず、自分のやっていることに自信や誇りが持てない
●教育が中途半端なため、介護や関連領域の知識の活用ができない

【介護福祉士の現状】
●介護福祉士資格取得方法の多様さによるレベル差
●養成校で学んだ人以外はほとんど体系的教育を受けていない
●介護福祉士取得後の教育や研修受講の状況も一律ではないため、成長に差がある
●キャリアアップの仕組みが十分ではないため、将来の展望が描けない
●労働者として、その職場の介護のやり方や介護に対する考え方に合わせるしかない

この現状は、介護職の自己研鑚が足りないということもあるかもしれませんが、事業所の問題がより大きいと感じます。
また、養成校を含めた教育の問題もあるように思います。

そして、なにより現場にいる私たちが、介護の専門性や介護の質について発信が足りなかったと思わざるを得ません。