介舟ファミリー
介護ソフト・障害者福祉ソフト
「介護・福祉の質」と問われれば、「人」そのものと応える。当然のことながら「介護」とは、「人」が「人」をケアするサービスだからである。
昨今、介護ロボット、ICT化といった「技術」が介護業界でも注目されている。確かに、これらはサービスの質の向上に寄与する。しかし、最終的には介護職員等が、しっかりと使いこなせないと効果は期待できない。当然、介護ロボット等は「人」によって操作されているに変わりはない。周知のとおり介護現場は慢性的な人材不足に陥っている。コロナ禍前から深刻な状況であったが、さらに事態は良くない方向に進んでいる。少ない人員配置の中でサービスの質を落とさず、ケアを提供することに苦慮してる介護現場の声をとく耳にする。
しかし、数は少ないが人材に困らない介護事業所もある。適宜、応募の問い合わせがあり、介護職員の採用試験では倍率が生じている。このような介護事業所に共通することは、常に働く介護職員等が後輩や同僚を気遣い、養成するスタンスが根づいている。つまり、働く環境が素晴らしいといことだ。介護職員が「離職」する最大の要因は「人間関係」であり、賃金が安いといった理由ではない。その意味では、職場の人間関係と介護サービスの質には相互作用が働いている。もっとも、介護に限らず「人間関係」の問題は全産業共通のテーマである。業績の高い会社は、人間関係が良好でチームワークが良い。職員同士が仲良ければ。仕事のパフォーマンスもよくなる。
介護サービスの「質」を考えるには利用者への対応と同時に、一緒に働く同僚・後輩との良好な関係作りである。人手不足に困らない介護現場は、「人」が「人」を呼び込みリクルート活動をせずに済む。単純ではあるが、まずは職場の人間関係が良好か否かを再確認してから、介護サービスの質を考えてみてはどうであろうか?
■経歴■淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)
■略歴■1969 年生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒業。法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。1994~2006 年、東京都北区、新宿区に勤務。この間、介護職、ケアマネジャー、児童家庭課、地域包括支援センター職員として介護係の仕事に従事(社会福祉士、介護福祉士)。現在、淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)。元社会保障審議会介護保険部会臨時委員。『介護職がいなくなる』岩波ブックレット。その他、多数の書籍を公刊。
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