介護の質、自分らしさを求めて

私たちの生命活動の本質は自己表現にあるのではないでしょうか?

私は普段、会社の売り上げを上げるためにマーケティングの仕事に従事しています。一方で、プライベートでは、数字に解放された創作活動(絵画と詩)を嗜んでいます。この相反する二つの活動は、私にとってなくてはならない活動です。

前者は会社への貢献が社会の経済活動とつながっています。
後者はファンへの反響が社会の芸術活動につながっています。
どちらも社会に深く関わる大切な活動です。大きく捉えれば、どちらが欠けても社会は発展しません。
では、その活動を支える質とはどういうものなのでしょうか?

経済活動の質は比較的はっきりした数字で評価することができます。それに対して芸術活動の質は数字では表しづらく、常に人の感性に委ねられ、とても曖昧です。(時代によって流行が変わるように)

介護の質、この二つの活動にとても当てはまるような気がするのは私だけでしょうか?介護事業所は数字(経営)が安定しなければ存続できません。また、そこで働く社員や利用するユーザが満足しなければ、会社は成り立ちません。
どちらも質が厳しく求められる実情を抱えています。なぜなら介護は、経済活動や芸術活動と違って、途中で投げ出すことのできない業界だからです。もし投げ出してしまえば、介護が必要な約682万人(2020年度厚生労働省調べ)の国民の生命が危機にさらされる、と言っても言い過ぎではないと思います。
特にそこで働く社員や利用するユーザが満足する環境の質は形が見えにくいだけに最も難しい課題と言えます。

では、質を上げるには何が必要なのでしょうか?
それぞれの状況にあわせたシステムの改善でしょうか?
それとも徹底したコミュニケーションとその能力の習得でしょうか?

介護業界が抱える課題は、血の滲むような先人たちの努力によってこれらの試みを繰り返してきたはずです。
ですから私はあえて芸術を志す人間の一人として皆さんにお伝えしたいのです。
介護は技術や経験に加え、自己表現、つまり自分らしさを発揮することが今一番求められているのではないでしょうか…

次回は、介護の中で展開する具体的な自己表現について考えてみたいと思います。

山下 重人

1973年宮崎県生まれ。宮城県仙台市在住。
幼少に進行性筋ジストロフィーを発症し、1999年(26歳)人工呼吸器を使用する。
幼い頃から画家を目指し、2000年にCG作品の創作に取り組み始める。また2007年よりIT企業で在宅勤務をしている。
2015年より(一社)障がい者アート協会を通じて多くの企業に作品が採用され、’21年より京都芸術大学芸術教養学科(通信制)に在学中。
現在も日々、就労、学修、創作と幅広く活動を続けている。

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