LIFE拡大は見送りに。ケアマネ業務はLIFE推進でどう変わる?

2024年に介護保険制度の改正が行われます。これによりケアマネジャー(以下ケアマネ)の業務が大きく変わるのではないかと予測されていましたが、2023年11月27日の審議会で、居宅介護支援や訪問介護へのLIFE拡大は見送られました。
今回の改正では見送りとなりましたが、厚生労働省はLIFEに関して引き続き活用を推進していく方針を明示しています。そのため、LIFEの活用において、ケアプランと連動した位置づけとなる想定をしておくことは重要でしょう。
こうした背景を踏まえて、ケアマネの業務が今後どうなるのかについて、厚生労働省の調査研究事業で作成された「『適切なケアマネジメント手法』の手引き」のガイドラインをもとに解説します。今後に向けて、事業所の運営責任者はケアマネと連携して準備しておきましょう。

LIFEとは

2021年度の介護保険制度の改正本格的に運用が始まった、LIFE(科学的介護情報システム)の概要を見てみましょう。

LIFEの制度

LIFEとは、厚生労働省が主導で始めた取り組みです。厚生労働省は、事業所が提出する利用者の健康状態や提供するサービスなどの情報を蓄積してデータベース化します。 情報を提供した事業所は介護報酬の加算を受けられます。これを、科学的介護推進体制加算(通称LIFE加算)といいます。厚生労働省から月に1度フィードバックがあり、双方向でやりとりするのがLIFE制度の特徴です。

LIFEの目的

厚生労働省は、科学的裏付けに基づく介護の実践のため、LIFEをスタートさせました。介護サービスの利用者の実態を把握することで、より質の高いサービスの提供や、介護職員の働き方改革の推進につなげることを目的としています。

LIFEの仕組み

事業所は利用者の情報をLIFEに提出します。「LIFEに関する評価」の実施月から6カ月が加算算定の対象となるため、少なくとも6カ月の間に1回以上「LIFEに関する評価」の実施を行います。 そのデータを厚生労働省が分析し、事業所にフィードバックが届きます。事業所はフィードバックを分析して、ケアプランの見直しや改善を行います。 これら一連の流れを経て、利用者に対するサービス向上を狙います。 LIFEについては、「科学的介護情報システム(LIFE)とLIFE加算をわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。

居宅介護支援や訪問系サービスへの LIFE加算は見送りに

2022年度の調査でLIFEを活用したモデル事業所(訪問系サービス・居宅介護支援事業所)にヒアリングが行われました。LIFEを活用した結果、サービス提供やケアプラン提案に効果があったという事業所もありました。
そこで、2024年度の介護保険制度の改正で訪問系サービスの事業所へのLIFE加算が検討されていましたが、見送りとなりました。情報の入力項目やデータの提出頻度、フィードバックに関する現状の課題への対応策を検討することが先決と議論されたためと考えられます。また、同じ利用者が複数の事業所を利用している際の、制度設計を検討すべきとの課題も挙がりました。

社会保障審議会での検討課題

社会保障審議会による、第232回介護給付費分科会で検討された課題を紹介します。

入力項目の見直し

LIFEの入力項目が煩雑なため、負担に感じている事業所も多いことから、今後はその点を見直し、重複している項目をひとつにする、入力項目を明確にするなどの見直しが図られます。
訪問系サービスの事業所では、ほかの事業所よりも身長や体重などの入力が困難であることも問題点となりました。

データ提出頻度の見直し

1か月に1回のLIFEの提出はスタッフの負担になるという事業所の見解もあり、3か月に1回に変更する案が出ています。また、同じ利用者が複数の事業所を利用している際、算定する加算データの提出を同じタイミングに合わせることも検討課題です。

フィードバックの見直し

フィードバックの目的は、利用者のP(Plan:計画)、D(Do:実施)、C(Check:チェック)、A(Action:改善)のサイクルを推進することです。たとえば、同じ要介護度の利用者の比較や地域別の層別化などを踏まえたクロス集計を行い、フィードバックを充実させる対応案が提案されました。

今後の方針

提出する事業所間での不公平感がなく、活用しやすい仕組みづくりが重要視されています。また検討項目としては、訪問系のサービスに適した評価項目や、複数の訪問系事業所のサービスを使っている利用者をどのように評価すべきかについて、引き続き検討を予定しています。今後はこれらの整備に向けて準備を進めることになるでしょう。

2024年度の介護保険制度改正での論点

LIFEは2024年8月30日に行われた「LIFE(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)」会議で、介護保険制度の改正が入る予測がたっていました。
社会保障審議会による、第222回介護給付費分科会で議論された主な項目を紹介します。

LIFEへの入力負担の軽減対策

LIFEのデータ入力を負担に感じている職員は少なくありません。厚生労働省の調査によると、LIFE導入事業所で、データ登録に負担を感じている割合は2021年度は78.1%、2022年度は76.4%となっています。 2022年度の調査では、介護ソフトのインポート機能のみを活用している割合が増化していますが、現場職員の負担軽減については課題が残るようです。

アウトカム視点も含めた評価のあり方

情報提供した事業所はLIFE加算を受けられますが、さらにその先の成果や効果についても評価をして欲しいという声が上がりました。
しかし、判断や評価が難しい点は否めません。今後、LIFEの入力項目の見直しや課題がどうなるのか、事業運営者としては気になるところです。

自立支援・重度化防止を重視した適切な評価の見直し

少子高齢化が進み、介護人材不足は待ったなしです。介護難民が増えることが予想されるため、対策として打ち出されたのが、高齢者への自立支援、重度化防止を目的とした生活援助です。
高齢者がひとりでも暮らしていけるよう、ゴミ捨てや、掃除、洗濯、一般的な調理、買い物などを支援する方針です。

ケアマネがLIFEを活用する際の課題

2024年度の介護保険制度の改正では、居宅介護支援や訪問介護へのLIFE拡大は見送りとなりました。しかし、今後対象サービスが拡大した場合、ケアマネの業務負担や介護事業所の実務にはどんな影響が考えられるのでしょうか。

ケアマネの負担増加

2021年に厚生労働省から「『適切なケアマネジメント手法』の手引き」というガイドラインが公表され、ケアマネは「基本ケア」と「疾患別ケア」という2方向からの支援が必須となりました。スキルや事業所の方針によって仕事を進めていたケアマネも、これからはガイドラインに沿ったやり方が求められます。LIFEを活用したケアマネジメントを同時に行うことで、ケアマネの負担が大きくなることが懸念されます。 もし、LIFEへのデータ提出サイクルが1ヶ月に1度となった場合、ケアマネはただでさえ提出する書類の作成に追われているため、さらに負担が強いられることは十分に考えられます。

フィードバック票の生かし方

LIFEを入力すると、月に1度、厚生労働省からフィードバック票が送られてきます。このフィードバック票をどのように活用するかも課題となるでしょう。ケアプランの作成や、ケアマネ利用者負担、家族支援の観点からは利用者家族とのさらなる連携も行っていかなければなりません。

LIFE活用のために押さえておきたいポイント

厚生労働省は今後も、LIFE活用を推進する方針を示しています。そのため、介護事業所とケアマネは「適切なケアマネジメント手法」にのっとって連携しなければいけません。スムーズな連携のためには、以下の点を押さえておきましょう。

  • 事業所内でフィードバック情報を活用する意識を浸透させる
    LIFEのフィードバック票を職員と共有することで意識を高めます。
  • 業務フローをチェックリスト化する

    LIFE活用はケアマネの裁量に任せるのではなく、介護事業所で業務フローを作成します。LIFEのフィードバック票をもとに、改善すべき点をチェックリストにしておきましょう。

LIFE推進によりケアマネも実務改革が必要に!

ケアマネの業務負担は現在すでに大きいですが、適切なケアマネジメント手法に関するガイドラインを皮切りに、改正のたびに業務が増えることが見込まれます。そこで、ケアマネや職員が変化の波をスムーズに乗り越えていけるための準備が必要です。たとえば、IT導入、DX化の対策は有効です。特に、介護ソフトは大きな助けとなります。介護ソフトの「介舟ファミリー」は、改正が入った際も即座に対応します。LIFEに提供するデータの自動生成できるため、ケアマネの業務を大幅に軽減することが可能です。すでに介護ソフトを導入済みの事業所も、より効率的な介護ソフトへのリプレイスを検討してみてはいかがでしょうか。

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