摂食嚥下障害の質~まとめ

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宮下 剛 氏

摂食嚥下障害をICF(国際生活機能分類)から捉える場合、

「心身機能・身体構造」の問題、
たとえば嚥下運動そのものが出来ない、

「活動」の問題、
たとえば食事が食べられない、

「参加」の問題、
たとえば外食が困難、

以上のように問題を整理して捉えることが可能です。

また、摂食嚥下障害以外のことも含め、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の出来ること、良い点を含めて全体的に捉えることを前回は紹介しました。

最終回は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」と相互に影響する因子として、「環境因子」と「個人因子」を紹介します。

ICFの「環境因子」とは、物的な環境や社会的環境などが分類されます。

たとえば、食品や義歯、建物や自然現象、保健制度、医療介護のサービス等が含まれます。「個人因子」は、性別や生育歴、習慣など個人に特有なものを指します。

上手に食べられない、外食ができない、という「活動」「参加」の制限がある場合、

「心身機能・身体構造」である咀嚼や嚥下の動きは重要ですが、「環境因子」の食品の形状や外出に対する支援状況、「個人因子」の性格や年齢も、「活動」「参加」の実現の大きな要素と考えます。

そして、「心身機能・身体構造」のみに介入する、「環境因子」の支援内容だけを検討する、という限定的な考えでなく、「個人因子」も含め、総合的に捉えることがICFの特徴です。生命リスクのある摂食嚥下障害は、その重症度といったレベル的な捉え方は非常に重要ですが、一方で、摂食嚥下障害が生活、人生のなかで、どのように影響するか、位置づけられるか、という摂食嚥下障害の質といった観点も大切です。

ICFは「心身機能・身体構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」という構成から、偏りなくその人全体像を捉えることが可能であり、摂食嚥下障害の質を検討するには、有効なツールといえるでしょう。

ICFから捉える摂食嚥下障害の質

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宮下 剛 氏

前回紹介のとおり、ICFはその人にとって、何ができて何ができないのかを「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」という構成から捉えることができます。
たとえば、歯の欠損や筋力低下、嚥下が適切にできない、という解剖生理的問題は、「心身機能・身体構造」の障害として分類されます。
ムセのため食べられない、硬いものが食べられない、など食べることの制限は「活動」の障害となります。

外食が困難、食事のある集会や団らんを欠席するなど社会生活の制約は「参加」に分類されます。
その人における摂食嚥下障害の意味、質を考える場合、「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」のすべてを捉えることが重要で、偏った観点、たとえばムセの有無、食事の可否だけを判断することは、一部のレベル評価にすぎません
また、何が「できない」だけでなく、摂食嚥下以外も含め、何が「できるか」に着目することが重要です。
「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の項目、詳細は厚生労働省のホームページに掲載されているのでご参考ください(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html)。

ところで「心身機能・身体構造」の舌の運動障害があれば、「活動」の食べることに影響を与えるように、各構成要素は互いに影響を受ける関係ですが、「心身機能・身体構造」=「活動」=「参加」という、完全な等号関係(イコール)ではありません。
舌の運動障害に関わらず、つまり本人の「心身機能・身体構造」に変化なくても、食事の物性や姿勢により食べることが容易、または困難となり、食べる「活動」が変わる場合もあります。
本人の機能や活動動作に変化なくても、協力者や店によって、外食や食事を含む集会の「参加」制約が異なる可能性があります。

摂食嚥下障害の質を考えるとき、ICFの各構成の独自性と影響を整理して捉えることが参考になるでしょう。

摂食嚥下障害の質

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宮下 剛 氏

担当の利用者が摂食嚥下障害の場合、介護関係職の皆様は何に着目されるでしょうか。
職種や利用者の状況により多くの視点があると思います。

生命リスクのある摂食嚥下障害の捉え方として、軽度・中等度といった重症度や病態等、摂食嚥下障害自体の”レベル”のような観点は重要です。
一方、利用者の生活・人生において、摂食嚥下障害がどのような意味であり、どう位置づけられるのか、という考えも大切です。

摂食嚥下障害の”レベル”に対し、”質”として捉える考えになるでしょうか。
たとえば、自宅で3食摂取可能も、人前でむせることを嫌い、外出を控えることがあります。
その人にとっての摂食嚥下障害は3食経口有無でなく、生活習慣に影響を及ぼすことを意味します。

また、重度の飲み込み困難の場合、全身状態によって生命リスクが異なるため、利用者により”一口食べる”という重み、一口の位置づけは異なることもあります。
軽度の摂食嚥下障害では、食種の制限が関係者の予測以上に苦痛な利用者もいれば、その逆の場合も考えられます。

このように摂食嚥下の機能や経口摂取の有無だけでなく、それぞれの利用者の生活・人生といった全体像のなかで、摂食嚥下障害との関係性を捉えることが摂食嚥下障害の質の評価といえるでしょう。

介護・医療の連携水準引き上げが求められるなか、摂食嚥下障害の質についても、多職種で情報共有ができれば望ましいと考えています。

【 ICF 】
利用者における摂食嚥下障害の質を捉えるには、ICF(国際生活機能分類)が参考になります。ICFは、2001年にWHO(世界保健機構)が承認し、人の生活機能と障害およびその背景因子を分類したものです。

摂食嚥下に関わらず、その人にとって何ができて何ができないのかを心身機能や身体構造、活動や参加といった構成から捉えることができます。

次回はICFの捉え方を参考に、摂食嚥下障害の質を考えましょう。