介護事業の承継方法とは?3つの方法とM&A行使の流れについて解説

介護事業の承継方法とは?3つの方法とM&A行使の流れについて解説

介護事業所を運営する管理者にとって、事業承継は常に意識していることのひとつではないでしょうか。M&Aを行使するのがいいのか、子どもや社員に事業を譲るのが得策なのか、大きな悩みとなります。 この記事では事業承継の方法と、それに関係するメリットとデメリット、M&Aを行う際の手順について解説します。

介護事業所の倒産や廃業の背景

近年、介護事業所の倒産や廃業が相次いでいます。

株式会社東京商工リサーチによると、2023年の「老人福祉・介護事業の倒産」件数は122件。2022年は143件という結果が出ています。

数字上では倒産件数は減っているように見えますが、2022年の倒産にはデイサービスを運営していた「ステップぱーとなー」グループ31社の連鎖倒産が含まれています。その点を考慮すると、「介護施設の倒産は増えている」と言えるかもしれません。

また、「老人福祉・介護事業の休廃業・解散」は2023年で510件にのぼり、2010年以降、最多の件数となっています。
それでは、増加しつつある介護事業所の倒産や、休廃業、解散の背景には、どのような理由があるのでしょうか。

コロナ

新型コロナウイルス感染症は、介護施設の経営を悪化させた要因のひとつです。基礎疾患のある高齢者は、感染すると重症化するリスクがあるという理由から、デイサービスへの通所を控えた人も少なくありませんでした。

その一方で、施設側では感染対策として、マスクや消毒液などの備品の購入、食堂やプレイルームへのついたての設置などの経費がかさみました。その結果、経営が圧迫された施設が増えたのです。

コスト高

世界的なインフレや国際情勢の悪化によって、物価が上昇しています。食料品、日用品だけでなく、光熱費、ガソリン代などのエネルギーの高騰により、さまざまなコストが徐々に増えている施設も少なくありません。

そのうえ、コロナ対策の一環として換気を重視することが指導されているため、夏場、冬場はエアコンを使用したまま窓を開ける必要が出てきました。不経済ではあるものの、施設での感染防止対策としては仕方ないことです。そのため、施設の経費はさらに膨れ上がり、倒産や廃業に追い込まれるケースもありました。

人材不足

介護業界の人手不足は今に始まったことではありません。慢性的な人手不足に危機感を感じ、対策を打ち出した事業所は離職率が低いものの、何も手を打たなかった施設はここにきて人手不足が切実な問題となっています。

また、離職率が低い事業所でも、長年勤務しているスタッフの高齢化問題が浮上してくるところはあります。利用者がいても、そこで働いてくれるスタッフがいなければ、事業所を続けていくのは難しいのが現実です。スタッフの人材不足から廃業を決める施設もあります。

2024年の法改正

コロナ、インフレ、人材不足などのあおりを受けながらもギリギリで営業を続けてきた介護施設ですが、さらに追い打ちをかけたのが2024年の法改正です。訪問介護の基本報酬がマイナスとなったことで、さらに事業所の利益が減ってしまい、経営状態が悪化、閉鎖に追い込まれる事業所もあるでしょう。

介護事業の承継方法とメリットデメリット

経営が立ち行かなくなった事業所には、主に2つの選択肢が考えられます。事業を承継するという方法と、廃業です。介護事業所を承継する主な相手として、大きくは以下の3つが挙げられます。承継先と、その際に考えられるメリットとデメリットを解説します。

親族に承継する

子どもや親戚など、身内に事業所を承継する場合です。

メリット

承継する相手が親族のため、関係性が近く信頼性できる相手と言えます。そのため、スムーズに承継が行われることが多いです。

デメリット

親族承継のデメリットは、経営者としての実力がないうちに承継させてしまいがちな点です。

その結果、経営が立ち行かなくなり、倒産という事例が多いのです。子どもや親族へ承継する際は「経営者として独り立ちできるのか?」という視点で、冷静に見極める目が必要です。

社員に承継する

社員として働いていた有能な人材を登用し、事業を承継させることもよくあります。

メリット

事業を任せられる有能な社員ならば、信頼性も高く承継相手としてふさわしいと経営者は納得できます。

承継を任せられた社員にとっても、モチベーションが上がり、仕事のやりがいも出てくるでしょう。

デメリット

今までは社員として働いていた社員が、承継後には経営者となります。施設という職場は変わりませんが、経営者と社員ではスタンスが異なります。経営者は将来の方向性を定め、的確な戦略を立案し、資金調達するなどがメインの仕事となります。

スタッフとして優秀でも、経営者としての資質があるのかどうかは別の話かもしれません。経営者としてやっていく覚悟があるのかどうか、事前にしっかり話し合っておく必要があります。

他社へ承継する

他社へ事業を譲渡することを、M&Aと言います。事業所を売却するためには、事業所の規模、売り上げ、施設の状況だけでなく、建物や車などの資産をすべて査定し、承継する事業所にいくらの価値があるのかを計算することから始めます。

メリット

経営者は譲渡した金額が受け取れます。それを元手に投資したり、新たな商売を始めたりすることも可能です。

デメリット

トップが変わるため、事業所の運営方針もガラリと変わることがあります。スタッフや利用者への説明など、引き継ぎをしっかり行う必要があります。この部分を丁寧に進めないと、反発が出て継承が頓挫してしまうこともあり得ます。

承継する相手がいない、またはM&Aで条件が合わないなどの場合は廃業となります。廃業する際は、スタッフの解雇、利用者への説明だけでなく、資産の売却や処分を行わなければいけないため、承継よりも時間と費用がかかることが多いです。

介護事業の承継の流れ(M&A)

実際に事業を承継する際には、どのような流れになるのでしょうか。前章で3つの承継先を紹介しましたが、ここではM&Aについて詳しく説明します。

  1. 仲介業者を探し、面談をする
    M&Aには法的なことも含まれるため、仲介業者を探すのが一般的です。仲介業者に、売り手としての条件面を提示し、買い手企業を探してもらいます。
  2. 買い手企業の選定
    仲介業者は、買い手企業を探すためのマッチングを行います。
  3. 企業双方の話し合い
    仲介業者が売り手と買い手の条件をすり合わせ、条件に合致した企業が現れた際は、仲介業者がセッティングして双方のトップの話し合いが行われます。この席では、売り手企業側に、業績やスタッフの条件、施設の資産などをヒアリングすることが多いでしょう。さらに双方が納得すると、基本合意の締結を行います。
  4. 最終的な金額の提示
    買い手企業は、公認会計士、監査法人、弁護士などの代理人を選出して監査を実施します。そして、買収希望金額を提示することで再び交渉に入るのです。
  5. 最終的な合意
    仲介業者が買い手、売り手の折り合う金額を提示し、最終的な合意を図ります。
  6. 譲渡契約の締結
    譲渡契約を締結してM&Aが成立します。

業務効率化を推進している事業所は“価値”が高い

事業承継を考えている施設の運営責任者は、働いているスタッフや利用者にできるだけ負担がかからないように配慮しつつ、承継を進めることが大切です。また、事業所の業務効率化が進んでいる事業所は、評価が高いでしょう。政府がデジタル化を推進している状況下において、特にDX化へのインフラが整備されている事業所は、買い手にとって魅力的に映るためです。

そのため、いずれは事業承継をしようかと考えている事業所の運営責任者の方は、今から業務効率化を推進するとよいでしょう。その中でDX化の足がかりとして欠かせない介護ソフトが未導入の事業所は、導入の検討を始めてみることをおすすめします。

介舟ファミリーの介護ソフトは導入後の評判も良く、利用している事業所も多いのが特徴です。ぜひ、介舟ファミリーも検討範囲に加えてみてください。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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