介護M&Aのポイントを知って介護施設の問題を解決しよう

介護業界全体の悩みともいえるのが、人材不足の問題です。令和3年度介護労働実態調査によると、介護サービス事業の運営上の悩みで最も多いのが、「良質な人材確保が難しい」ということでした。どの介護事業所でも、良質な人材確保に頭を悩ませているのではないでしょうか。この問題を解決するひとつの方法として検討したいのが、介護施設のM&Aです。しかし、介護M&Aがどういうものなのかわからない人が多いかもしれません。
この記事では、介護M&Aの概要とポイントについて解説します。

介護M&Aで解決したい介護施設の課題とは

介護施設を運営していると、さまざまな課題が浮き彫りになります。
課題を解決する方法として、昨今注目されているのが、介護M&Aです。
介護施設が抱える課題のうち、介護M&Aで解決できる課題として代表的なものには、次の3つがあります。

良質な人材の確保が難しい

近年、処遇改善に関する加算が増えたことで、介護職の給料の底上げが改善されています。ところが、経営に悩む事業所では、今の介護報酬では人材確保や定着のために必要な賃金を払うだけの余裕がないというところも少なくありません。十分な賃金を払うことができなければ、良質な人材の確保は難しくなります。

介護M&Aを実施した場合、経営が安定して賃金を確保することができます。また、買い手側の事業所から経営豊富な人材を異動してもらうこともできるため、良質な人材が確保できる可能性が広がるでしょう。

経営が苦しく労働条件や労働環境改善をしたくてもできない

経営が苦しいため、思ったような労働環境を整備できないという問題にも、介護M&Aは有効な手段といえます。従業員が働きやすいよう、労働環境をより良くしたいと考えている事業所は少なくないでしょう。

ところが、経営が苦しい事業所の場合、日々の運営に精いっぱいで労働環境を改善するまでの余力がありません。労働条件や労働環境が改善できず、従業員が退職してしまうこともあります。

そこで、介護M&Aによって経営状態が安定すると、労働条件や労働環境の見直しを行うことも可能となります。労働条件や労働環境が改善されれば、従業員の雇用も安定するため、サービスの質の向上にもつながるでしょう。

後継者がおらず今後の経営が不安

介護保険法が始まって20年以上が過ぎ、後継者問題に悩む事業所も出てきました。現在は事業運営に問題がなくとも、後継者がいなければ将来的に事業の継続は難しくなります。後継者がいないと、いずれ今抱えている利用者や従業員が路頭に迷うことになってしまうでしょう。

この問題も、介護M&Aで解決することができます。後継者がいなくても、介護M&Aによって買い手が事業を引き継いでくれれば、廃業の危機は回避できる可能性が高くなります。そして、大切な従業員の雇用を守ることもできるでしょう。

また、近年は金融機関や取引先が与信判断の材料として、後継者の有無を重要視する傾向にあります。今後も健全に経営していくための手段として介護M&Aを実施すると、事業所そのものの信用性が高まる可能性は高くなると考えられるでしょう。

介護施設におけるM&Aの実情を知ろう

国内のM&A件数が増加していくなかで、介護施設のM&Aも徐々に増加しています。2012年からはM&Aの件数は急増しており、本格的なビジネス強化や新規参入に踏み切る企業が増えてきました。

大手の介護事業所によるM&Aでは、介護事業最大手のニチイ学館が2021年の株式会社西日本ヘルスケアの完全子会社化を皮切りに、毎年介護M&Aを行っています。また、関西大手のケア21も、2014年に名古屋のグループホームを子会社化して以降、徐々にM&Aを行い、2021年からは訪問介護を中心としたM&Aを実施しています。国は介護事業所の大規模化・協働化を推進する方向に動いていることから、国の動きが介護M&Aの追い風になる可能性も考えられるでしょう。

また、介護関連ビジネスの将来性を期待して、異業種からの参入も増えています。2015年にはSOMPOホールディングスがワタミの介護を完全子会社化しました。2017年には、野村不動産ホールディングスがJAPANライフデザインに資本参加しています。異業種からの参入は、本業との相乗効果により、今までになかった新たな介護サービスを生み出すでしょう。生み出された新サービスが高齢者のニーズにマッチすれば、満足度は高くなり事業所全体の評価につながります。このことから、今後も異業種大手企業からの参入は増加していくのではないでしょうか。

介護施設がM&Aで得られるメリット

介護施設がM&Aで得られるメリットを、売り手側と買い手側に分けてそれぞれに見ていきましょう。

売り手側のメリット

売り手側のメリットには、次の3つがあげられます。

大きな資本を持つ会社の傘下に入ることで安定した経営が維持できる

売り手側は経営に悩んでいるケースが少なくありません。大きな資本を持つ会社の傘下に入れば、経営母体が大きくなるため、安定した経営を維持することができます。

雇用が維持され労働環境の改善ができスタッフのキャリアアップにつながる

人材不足や定着に悩む売り手の場合、M&Aを行うことで経営が安定し、必要な賃金を支払えるようになり、雇用の維持が可能となります。また、労働環境を改善することもでき、スタッフのキャリアアップにつなげられるでしょう。

大きな資本を持つ会社の傘下に入ることで安定した経営が維持できる

M&Aによって売り手側の経営者は売却益が得られます。まとまった金額を得ることになるため、将来の人生設計に必要な資金とすることができます。人生100年時代に間もなく到達するともいわれているなかで、安心して人生設計を行えるでしょう。

買い手側のメリット

買い手側のメリットには、次の2つがあります。

展開していなかった地域や新たなサービスへ容易に参入できる

事業を展開していくうえで、新たな地域やサービスにゼロから挑戦していくことには困難が伴います。しかし、M&Aを活用すると、既存の施設や従業員、利用者を引き継ぐことができるため、早期に収益基盤を整えることが可能でしょう。

売り手側のノウハウを得ることでサービスの創り上げや人材募集や育成の手間が省ける

買い手側は売り手側のノウハウを得ることができます。売り手側が持っているノウハウには、サービスに関するものや人材育成に関わるものなどがあります。新規に参入するのであっても、M&Aならば、ゼロからのサービスの創り上げや人材育成の手間を省くことができるでしょう。

介護施設M&Aを実施した際に起こり得るデメリット

M&Aにはメリットだけでなく、当然ながらデメリットもあります。介護施設のM&Aで起こり得るデメリットについて、売り手側と買い手側それぞれに見ていきましょう。

売り手側のデメリット

売り手側のデメリットには、次の2つがあります。

買い手側の運営方針や労働環境に既存スタッフが戸惑う可能性がある

M&Aの実施後は、事業所の運営方針や労働環境などが変わることが多いでしょう。既存スタッフにとっては、これまでの体制と変わってくるため、環境が変わることに戸惑うことも少なくありません。最悪の場合には、既存スタッフが辞めてしまうことも考えられるでしょう。

言い値で売却できるとは限らない

最終的な売却金額は、買い手側に最終決定権があります。そのため、言い値で売却できるとは限りません。思った以上に安値となる可能性もあることは、念頭に置いておきましょう。

買い手側のデメリット

買い手側のデメリットには、次の2つがあります。

簿外債務を負う可能性がある

帳簿や決算書に記載されていない債務を簿外債務といいます。残念なことに、M&Aでは簿外債務が発覚するケースは少なくありません。簿外債務を見落とさないためには、買い手側と売り手側の双方で綿密に確認することが大切です。

従業員が大量離職するリスクがある

M&A後、運営方針や労働環境が変わったことに納得できず、売り手側の従業員が大量に離職してしまうケースがあります。大量離職を防ぐためには、一気に体制を変えるのではなく、売り手側の状況にも十分に配慮しながら運営を進めていきましょう。

介護M&Aは介護施設の課題解決に有効な手段のひとつ

人材不足や経営不振に悩んでいる事業所にとって、介護M&Aは問題を解決する有効な手段となります。介護M&Aを行えば、廃業の危機を回避することができ、従業員の雇用も守ることができます。また、介護サービスの質を向上させることにもつながるでしょう。介護ソフト「介舟ファミリー」を販売する当社では、介護事業所に役立つ情報を発信しています。お役立ち情報はこちらからご覧ください。

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