【第3章】私の考える介護の質~介護の語義の変化と生活の質・人生の質~ Posted on 2012年6月11日2025年2月17日 by 管理者 HOME >コラム>森山 千賀子 氏 白梅学園大学 教授 「介護」という用語の語義は、時代の流れとともに変化していると考えられます。歴史を遡れば、「介護」という用語が日本の法令の中に登場したのは明治の中期であり、当時は身体障害の程度に対応して公的な給付対象者を特定(規定)する用語として使われていました。1963年に老人福祉法が制定され、特別養護老人ホームが誕生すると、高齢者の「身のまわりの世話」(人的サービス)を意味する用語になり、高齢者や障害者の「身のまわりの世話」を「介護」と呼ぶようになって行きました。 社会福祉士及び介護福祉士法による「介護」の定義では、1987年の成立時においては、「身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき、入浴・排せつ・食事その他の介護」であったのに対し、2007年12月の改正では、「・・ある者につき心身の状況に応じた介護」に変わりました。改正の背景には、介護保険法や障害者自立支援法の制定などにより、これまでの入浴・排せつ・食事、移動などの身体介護だけにとどまらない認知症者や精神障害者などに対しての介護など、新たな支援への対応が求められてきたなどがあります。また、生活の質(QOL)、ノーマライゼーション、自立(律)支援などの人間尊重や尊厳性の概念が、人々の望ましい姿として提起されてきたことも影響が大きかったと考えられます。さらに、2015年度から適用する介護福祉士国家試験出題基準-基本的性格では、「介護とは、単に技術的な営みではなく、人間的・社会的な営みであり、総合的・多面的に理解されるべきものである。」とされており、家族介護者支援の立場からは、「介護者と被介護者の関係性への支援も介護の質に関わる」という声も聞かれます。介護という用語の語義は、人間的・社会的な営みに向けた心身両面への総合的生活支援へと変化しており、介護の質は生活の質・人生の質と同義に近づいていると考えます。 森山 千賀子 氏 連載一覧 【第3章】私の考える介護の質~介護の語義の変化と生活の質・人生の質~ 2012年6月11日 【第2章】私の考える介護の質~高齢者施設における夕食時間と適時~ 2012年5月14日 【第1章】私の考える介護の質~胃瘻(いろう)をとりまく生活の質~ 2012年4月11日 プロフィール 白梅学園大学 子ども学部家族・地域支援学科 准教授。■経歴■一般社団法人 地域ケア総合評価機構 代表理事。大学卒業後、15年間にわたり高齢者施設及び在宅福祉分野において介護職として従事。1998年より町田福祉専門学校専任講師、2001年より白梅学園短期大学保育科(専攻科福祉専攻)専任講師、助教授、准教授を経て2010年4月より現職。介護福祉士、社会福祉士。2007年10月より「地域ケア総合評価機構」が主催となって「介護の質と評価システム研究会」を立ち上げ、現在20数回にわたる公開学習会の成果を、研究会のメンバーとともに、著書としてまとめている。また、大学の所在地である小平西地区において、「お互いの顔の見える地域ネットワークづくり」に大学内の事務局として参画している。 関連コラム 新年度が始まりました 2023年5月10日 その人らしさのテーマとなっている生活行為を大切に援助する 2012年7月13日 「グレートプレゼンターになろう!」 2019年1月18日 他のコラムを探す テーマで探す 介護の質介護職食事組織ケアシステム機器 職種で探す 大学教授経営者施設管理者専門職介護関係 \「介舟ファミリー」のお問合せはこちら/ お問合せはこちら 無料体験はこちら 資料ダウンロード