噂の真相

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介護職員の間に広がる〝うわさの真偽〟を確かめる機会があった。
それは、介護関係の研修会の講師の仕事である地方に出向いた際、懇親会で8人の介護職員と話をした時のことだ。
「皆さんが介護の必要な状態になったら、自分の働いている施設で介護を受けたいと思いますか」と私は尋ねた。
すると、全員が「受けたくない」と言い切った。
どの施設も入所希望の待機者が百人単位でいる〝人気施設〟だ。
「ウチの施設の食事はまずい上に、介助が乱暴」
「ウチはすぐに胃に穴(胃ろう)を開けられる」

 

「女性利用者の入浴介助を男性職員がする」
「私たちの施設は看護職と介護職の仲が悪くて、責任のなすり合いが絶えない」
など次から次へと真情報が溢れ出てきた。

「じゃぁ、どこなら入りたいですか?」と尋ねると、3秒ほどの沈黙の後に、「入りたい施設ねぇ、ないなぁ」とある介護職員が言う。
「そうだねぇ、ないよねぇ」と7人の相槌が入る。
このような職員の声を施設で暮らしている本人やその家族は知らない。
いや、言われなくてもわかっている本人や家族も少なくないはずだ。
ただ、わかっていながら口に出せずに我慢しているのだろう。
なぜなら、施設に要望を言えば、苦情と置き換えられ、明らかに足元をみた言動で振舞われ、その後は疎まれた肩身の狭い存在として暮らし続けなければならないからだ。
この状況を知っているからこそ、「入りたい施設ねぇ、ないなぁ」という本音が、介護職員から漏れてしまうのだろう。

利用者の家族からの苦情や職員の声と向き合うことを恐れるがあまり、耳触りのいいことばかりを言う仲間だけで周囲を固めた施設は裸の王様と化したも同然だ。
「私たちの感覚ってどこでも同じなんじゃないの」とある介護職員がまとめた。
残念なことではあるが、〝噂〟はあながち間違いではないようだ。

篠崎 良勝 氏

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聖隷クリストファー大学 准教授

■経歴■

筑波大学大学院(教育研究科・障害児教育専攻)修了。
1996年4月民間シンクタンクにて自治体の介護保険計画など計画策定業務担当。
1999年4月から民間病院問題研究所(現・ヘルスケア総合政策研究所)主席研究員として介護労働に関する調査研究を担当。
2002年4月から介護情報誌「かいごの学校」(日本医療企画)初代編集長。
2005年4月から八戸大学人間健康学部専任講師。現在は准教授。
平成20年から毎年6月に八戸大学にて介護従事者を対象とした研修会『かいごの学校』を主宰している。
今年は平成26年6月22日に開催。
○専門は介護労働学、福祉社会学。研究領域は介護従事者の視点からみた現状、課題に関するアンケートを通して現場の抱える課題を浮き彫りにし、その解決に関する手法等の考案。
○主な所属学会等
日本介護福祉学会・日本社会福祉学会・日本特殊教育学会・日本保育学会・日本福祉心理学会
○主な報告書・著書
「介護事故」(単著)日本医療企画 2000年
「介護現場の医療行為」(単著)日本医療企画 2001年
「ホームヘルパーさん消滅の危機」(単著)日本医療企画 2001年
「介護の現実と再構築」(単著)日本医療企画 2002年
「どこまで許される?ホームヘルパーさんの医療行為」(編著)一橋出版 2002年
「介護労働学-ケア・ハラスメントの実態を通して-」(単著)一橋出版 2008年
など。

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篠崎 良勝