”必要な”から、”必要十分な(事足りる)” 介護サービスへ

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介護コラム

馬場 博 氏

一般社団法人C.C.Net 専務理事

第1回では、質を求めるあまりに過剰なサービスとなり、介護従事者の頑張り過ぎ、疲弊を招いてしまわない様、介護サービスを「必要十分な質と量」にマネジメントしなくてならない、と書きました。
これは供給量(人材)の問題で、すべての介護サービスで今後差し迫ったテーマになると思っています。
執行役員を務めている法人で、小規模多機能型居宅介護を2箇所運営していますが、利用回数に関わらず料金が定額のサービスであるため、同じ金額であれば「なるべく多く利用したい」利用者側と、人員・設備的に「利用回数を制限したい」事業所側の間で常に綱引きが生じてしまいます。

決まった介護報酬の中で人材を確保・配置してやりくりしていくためには、「利用回数無制限」というわけにはいきませんので、利用者側との調整が必要になります。
そのため、望む生活を手に入れるために「必要な」サービスではなく、提供できる供給量(人材)も考慮して、生活の維持・継続のために「必要十分な(事足りる)」サービスで満足していただく、「必要な人に、必要なサービスを、必要な分だけ提供するために」、限られた資源(特に人材)をシェアしていく、そのようなコンセンサス(合意)を得ることが常に大きな課題になっています。

重々ご承知と存じますが、介護人材不足が顕著な現在、「必要な」サービスを提供する余力はすでに無くなってきています。
ここから介護サービスの利用ニーズがピークになる2025〜2040年を迎えるため、さらに人材不足が深刻化することはほぼ確実です。
人材不足解消のための「科学的介護」「ICT・ロボット」「外国人人材」ですが、どれも供給力不足を補う決定打とはなり得ないと思いますので、「必要十分な(事足りる)介護サービス」について、利用者・職員・経営者・行政・政治間で合意形成する事は、全サービスで差し迫ったテーマになると感じています。(その中であえて質を追求する事業者がいても、それを否定するものではないですが)

利用者と事業者の契約に基づいてサービスを行うのが介護保険サービスですから、この合意形成を行政と政治に期待するのではなく、事業者と利用者間でどうにか折り合いをつけていく覚悟を持つ必要があるのではないでしょうか。

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