介護経営の大規模化と協働化は必要?メリットとデメリットも解説

介護経営の大規模化、協働化を検討している事業運営者もいるでしょう。
厚生労働省も推奨している事業所の合併や譲渡は事業所にとって得なのか、損なのか? この記事では、大規模化や協働化をするメリットやデメリットだけでなく、実際に合併や譲渡をする際の注意点なども紹介しています。ぜひ大規模化や協働化を決断する前にご一読ください。

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介護経営の大規模化・協働化とは

介護経営の大規模化・協働化とは、どういうことでしょうか。概要と目的を紹介します。

介護経営の大規模化・協働化の概要と目的

介護保険サービスがスタートした当初は、中・小規模の事業所が大半でした。政府は事業所に競争を促し、相乗効果として利用者へのサービス向上や、事業所運営の効率化を図ろうとしました。

しかし、現実的には、人手不足や資金不足から業務効率化が進まないという状況です。そこで、政府は大きく方針を転換しました。

小さな事業所の合併、譲渡による大規模化または協働化を推し進め、それらによる恩恵で効率化を図ろうというものです。

介護経営の大規模化・協働化のメリットとデメリット

政府の大規模化、協働化により見えてくるメリット、またはデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

大規模化や協働化のメリット

人材の確保がしやすい

規模が小さい事業所では、スタッフが担当部署以外の業務にも携わらなければならないことがあり、それらの負担がスタッフの離職理由になっていることもあります。

規模が大きくなると、スタッフ間で仕事の分業化ができるため、スタッフの負担も軽減できます。

人材の採用活動においても、多様な募集チャネルが活用しやすくなり、人材も集まりやすいでしょう。

研修やキャリアパスの形成が行いやすい

外部から講師を招いて研修や職員教育などを行う際も、何回かに分けての開催が可能となるためスケジュール調整がしやすくなります。

スタッフは自分のスケジュールを優先しながら講習を受けられる可能性が高くなります。さらに、講習や研修を受けることでキャリアパスの形成もしやすく、スキルアップにつながるため、スタッフのモチベーションも高くなるでしょう。

事業者間での連携が行いやすく、情報共有ができる

協働化することで感染症や災害時など、情報が収集しやすい環境が整備できます。

多くの情報から正しい判断がしやすくなり、利用者や家族からも「この施設は信用ができる」と評判も上がるでしょう。

補助金や助成金の申請が通りやすくなる

大規模化することで社会的な信用も上がります。そのため、補助金や助成金の申請が審査に通りやすくなることもあるようです。

業務効率化がしやすい

大規模化・協働化することで業務に使用できる資金も大きくなるため、事業所のICT化も進めやすくなるでしょう。

パソコンやタブレットの大量購入は割引率の最大化をもたらし、導入費用が抑えられます。さらに、ICT化して組織マネジメント改革が進むと、事業所全体の業務効率化が促進されるという効果も期待できるでしょう。

大規模化や協働化のデメリット

それでは、大規模化や協働化のデメリットには、どのようなことが考えられるでしょうか。

施設独自の情報を公開しなければならない

施設それぞれのサービスや、業務運営のノウハウなどをグループ事業所に公開する必要があります。

今までは差別化を図っていた独自のサービスがグループ全体のスタンダードとなるため、自事業所の特色をアピールしづらくなる可能性も出てきます。

経営方針の違いから生まれるトラブル

最初にしっかりと経営方針や、ビジョンなどを話し合っておかないと、それぞれの事業所の思惑の違いから齟齬(そご)が生じ、トラブルに発展することも少なくありません。

合併譲渡の会計手続きが煩雑

所轄庁によっては、以前は合併手続きが一般的ではなかったところもあります。

その結果、合併したことで会計処理がさらに煩雑になり、手間と時間がかかったこともありました。しかし、最近では法人向けのガイドラインも整備されているので、比較的円滑になっているようです。

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介護経営を大規模化、協働化した事例

介護経営を大規模化、協働化した事例を紹介しましょう。

みちのく社会福祉協同組合の例

介護施設の運営責任者として、頭を悩ませるのが人材の確保ではないでしょうか。「みちのく社会福祉協同組合」では、インドネシア、フィリピン、ベトナムの留学生を受け入れ、介護福祉士の資格取得サポートを行っています。

その結果、組合に加入している事業所に優秀な人材を紹介することができ、人手不足が解消できる仕組みとなっています。

さらに、おむつやリネン品などを組合で一括購入することにより、事業所へ安く販売する取り組みも行っています。

社会福祉法人 小田原福祉会の例

小多機(小規模多機能型居宅介護)に、地域密着型特養や地域包括支援センターなど、複合的に事業を展開している「社会法人 小田原福祉会」は、下記のような事業展開に取り組みました。

小多機に郵便局やサ付き、在宅支援クリニックを併設。特養に併設されていた通所介護事業所を外に移転、あわせて地域包括支援センターも分割。そちらにも在宅支援クリニックやサ付きを併設して、複合型施設としました。多角的に経営することでリスクを分散し、安定した経営を目指せるのがメリットとしています。

事業展開により、5年間で人件費率は6.98ポイント、離職率も4.6ポイントの低下を図ることができました。

社会福祉法人 北筑前福祉会の例

地元を大切にしている「北筑前福祉会」は、補助金を受けながら事業を拡大している施設です。

地域の整備計画に参加するだけでなく、新規事業に積極的に取り組むほか、SDGsの活動などにも力を入れているのが特長です。住民の困りごとや、要望に応えているうちに規模が大きくなったとも言えますが、事業拡大により、よりきめ細かに利用者のニーズに応えられるようにもなっています。

大規模化するにつれ認知度が上がり、信頼度も増したため、地域住民への説明が容易になりました。また、スタッフに対しては、大規模化することでさまざまな形態のサービスを経験してもらうことが可能になると同時に、管理職のポストも増加したため、キャリアについての希望にも幅広く応えられるようになりました。

効率化の成果としては、食材を一括仕入れすることで、費用を大幅に抑えることが可能となっています。

介護経営を大規模化する方法

介護経営を大規模化する方法には、合併または事業譲渡があります。

どちらも法人所轄庁への事前の相談は欠かせません。また、それと並行して各事業に関わる行政庁への事前相談も早急に行う必要があります。

さらに、利用者、スタッフへの説明も丁寧に行いましょう。税金や補助金に関しては税務署や補助金関係行政庁に問い合わせてください。合併と事業譲渡の必要な手続きを以下に簡単に見てみましょう。

社会法人の合併の主な手続き

  1. 理事会、評議員会に決議をかける
  2. 合併契約の書類をそろえる
  3. 法人所轄庁に行き認可を得る
  4. 官報に債権者保護手続きの公告をする
  5. 登記の手続きをする
  6. 書類をそろえて開示、閲覧の対応に備える

事業譲渡の主な手続き

  1. 事業を譲り受ける法人は、譲り受ける事業について新規の許認可等の手続き
  2. 事業を譲渡する法人は事業の廃止手続きをする
  3. 基本財産の定款変更申請が必要となる場合は、法人所轄庁に提出する

介護経営を大規模化するうえでの注意ポイント

介護経営を大規模化する際には、いくつかの注意ポイントがあります。合併、譲渡を行う前に双方で確認・同意をしておかなければ、のちのちトラブルにつながることもあるので注意しましょう。

  • 消滅する法人の退職役員の報酬について確認しておく
  • 寄附財産を移転、または存続する際には国税庁に相談する
  • 譲渡する際は、利用者に譲渡後のサービス提供について説明しておく
  • 資産を譲り受ける際の価格は、専門家に相談して適正価格を確認する

大規模化や協働化を考えるなら業務効率化は欠かせない

介護事業所の経営者としては、大規模化や協働化を考えることもあるでしょう。

メリットがある一方で、働くスタッフも増えるため、業務に関しては効率化を図る必要があります

また、事業所の規模が大きくなるということは、本部と各事業所の管理を統合せねばならず、ICT化にも待ったなしで取り組まなければいけないでしょう。

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