介護施設の夜勤体制とは?現状と業務軽減のための対策について解説

特別養護老人ホームやグループホームなど入居者が暮らす介護施設では、24時間体制の見守りが必要です。そのため夜勤スタッフが常駐します。
しかし、多くの施設での夜勤は2交代制で、1人で対応する施設も多いのが現状です。スタッフに大きな負担がかかる夜勤体制を改善するためには、どうしたらいいのでしょうか。施設の運営責任者として、見逃せない問題です。

介護施設における夜勤体制とは

介護施設の夜勤体制はどのようになっているのでしょうか。それぞれの施設ごとに見てみましょう。

介護施設における夜勤体制と人数

介護施設の入居者のほとんどは高齢者です。高齢者は転倒、誤嚥(ごえん)をはじめ、心臓発作や脳出血などを起こすリスクも高いため、介護職員は24時間体制で入居者を見守っています。昼間はスタッフもそろっているので目が届きやすいですが、夜間は少人数体制での見守りとなる施設がほとんどです。そして、その人数は施設によっても異なります。

特別養護老人ホーム

入居者の多くは、生活するために介助を必要とされる方か、認知症の方です。そのため、入居者25人につき1人以上のスタッフが対応しなければいけないと法律で決まっています。

介護老人保健施設

ケガや病気の人が、回復期において自宅に戻るためのリハビリをするのが介護老人保健施設です。夜勤は入居者40人に1人でも法的には可能ですが、多くの施設では複数人体制を整えています。特別養護老人ホームとは異なり、原則として必ず看護師も夜勤で常駐していなければいけません。

有料老人ホーム

介護が必要な人、そうでない人が混在している有料老人ホームでは、自立した人もいるため、夜勤のスタッフの配置人数が少ないところもあります。

グループホーム

認知症の高齢者が入居しているため、夜勤は1ユニット(5~9人)を1人のスタッフで担当することが多いです。

夜勤の勤務時間

2交代制、3交代制、4交代制など、夜勤の体制は職場によって異なります。介護施設で比較的多いのは、2交代制です。

【2交代制の勤務時間の例】

  • 日勤:9:00~18:00
  • 夜勤:16:00~翌10:00(休憩2時間)

夜勤は休憩が1~2時間入り、実働16時間となっている施設が多いです。その間に交代で仮眠ができる施設もあります。

ただし、22:00~翌5:00までは「深夜の時間帯」として、割増賃金が発生します。

夜勤の回数

労働時間だけでなく、スタッフが1カ月間に何日夜勤ができるのかについても特には決まっていません。施設によって回数はさまざまです。

公益財団法人介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」によると、深夜勤務が月に「5回以上7回未満」という回答が40.1%と最も多く、次いで「3回以上 5回未満」という回答が27.6%でした。

日本医療労働組合連合会の「2021年介護施設夜勤実態調査」では、小規模多機能型、看護小規模多機能型以外の2交代夜勤制を取っている施設では、夜勤回数が平均4回を超え、グループホームとショートでは最多5.1回という回答でした。

介護施設における夜勤の仕事内容

入居者の多くが就寝するため、夜勤の仕事は昼間とは異なります。主な仕事は、巡回と排せつ介助です。

ただし、突然入居者の具合が悪くなった際は緊急対応を行うため、昼間より忙しいこともあります。ある施設のスケジュールで業務の流れを確認しておきましょう。

【スケジュール例】

16:00  出勤と引き継ぎ
17:00  夕食準備、食事介助
19:00  口腔ケア、就寝介助
21:00  消灯、1~2時間おきに安否確認、コールの対応、体位変換、排せつ介助など
6:00    起床
7:00    朝食準備、食事介助
10:00  引き継ぎと退勤
途中に休憩が1~2時間入ります。

介護施設における夜勤体制の現状

上述のタイムスケジュールを見ると、介護施設の夜勤の仕事は、昼間に比べて忙しさはそれほどでもないように見えるかもしれません。

しかし、昼夜が逆転した高齢者の対応や、体位変換、排せつ介助などを少人数で行うため、スタッフの負担は想像以上に大きいのが現状です。

また、夜間の勤務を終えてから次の勤務まで、12時間以上空いていないこともあります。夜勤業務のなかでも、グループホームの見守りはほかの施設と比べても負担が大きいことから、厚生労働省は見守りについてはロボットやAIの導入を推奨しています。

夜勤を行うにあたっての注意ポイント

夜勤を行うにあたっての注意ポイントを紹介します。

労働基準法で定められた労働時間は厳守

労働基準法では、介護職の夜勤については上限回数が決まっていません。ただし、労働基準法で定められた労働時間は厳守しなければいけません。

1週間当たりの労働時間は40時間(特例事業所は週44時間)までです。これを超えると法に抵触するため、シフトを調整する際は気を付けましょう。

緊急時、上長に対応できる連絡手段の構築

歩行に問題のない高齢者でも、夜は転倒リスクがあります。また、緊急事態が起こった際に1人で夜勤を担当していると適切な対応ができない可能性があります。

したがって、施設の運営責任者には緊急時に備えた対策を立てておくことが求められます。緊急時に指示を仰げるような連絡ツール(電話、メール、LINE)を使った連絡手段を構築しておくことも大切です。

AIセンサーの導入

夜間勤務のなかでも対応が難しく、しかも気の抜けない業務のひとつが利用者の深夜徘徊(はいかい)です。

利用者が知らない間に施設を出ていってしまったり、転倒したことに介護者が気付かなかったりすると、利用者家族から安全面で不安視されることになりかねません。介護施設としてはこの点には細心の注意を払いたいところでしょう。

対策としては、AIセンサーの活用があります。行動パターンを収集し、AIで分析することで効率的な見守りが期待できます。利用者の行動に異常があればアラートが鳴るため、スタッフの負担も軽減されるでしょう。また、利用者のプライバシー保護の観点でも配慮につながるでしょう。

ツールで業務を軽減

繰り返しになりますが、日勤と違い、夜勤は少ないスタッフで対応しています。利用者のほとんどが就寝しているので、業務が日中よりも少ないという理由からです。しかし、排せつ介助が必要な人や、昼夜が逆転して徘徊する利用者もいます。

そのような状態に緊急コールが重なると、スタッフは昼間より忙しくなることもあります。特に、夜勤の緊急事態は一分一秒を争うことも多いため、スタッフは臨機応変に行動することが求められます。さらにそのあとには、それを記録に残し、昼間のスタッフに引き継ぐという業務が残っていますが、場合によってはその時間を捻出するのも困難です。

介護施設の運営責任者として対策を講じる際に、タブレット端末の導入を検討してみてはいかがでしょうか。スタッフの業務効率化を図るためにも、ICTツールの活用は有効です。

ICT化で夜勤の負担軽減が期待できる

夜勤を担当するスタッフは、見守り、排せつ介助などがメインの業務ですが、ひとたび緊急事態が発生すると、現場は大混乱になることもあります。しかし、緊急事態を想定して夜勤スタッフを増やすことは現実的ではないでしょう。

そこで、AIの導入やICT化がおすすめです。人工知能にできることを把握したうえで、それ以外の業務をマンパワーで補うように業務内容を考えることこそが、施設運営責任者には求められているのです。

そのためには、まずインターネット環境の構築、タブレットやスマホなどの端末の購入のほかに、介護ソフトの導入も行わなければならないでしょう。

介護ソフトにはクラウド型とオンプレミス型があり、ソフトの内容もひとつの業務に特化したもの、総合的業務をカバーしているものなど、さまざまなタイプがあります。事業所にとって必要な機能をよく検討して選ぶことが重要です。

「介舟ファミリー」の介護ソフトはクラウド型なので、介護報酬の改定が入った際はすぐに対応できます。また、人手の作業では手間のかかる業務をカバーする、いくつもの機能が備わっている総合的なソフトです。そして、画面がシンプルで操作が直感的なので、ICT機器に慣れていない人でも操作しやすいと評判です。ぜひ検討してみてください。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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