ケアマネの処遇改善はどうなる?深刻化するケアマネの人手不足問題や対応策などを詳しく解説

高齢化が進む日本において、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)の役割は年々重要性を増しています。しかし近年、全国各地でケアマネの人材不足が深刻な問題となっています。その大きな要因の一つが、給与水準の低さです。他の介護職と比べ、ケアマネは複雑な業務を担っているにもかかわらず、処遇改善加算の対象外となっているため、仕事量に見合った報酬が得られていないのが現状です。
本記事では、ケアマネを取り巻く処遇改善の課題について、現状を分析しながら今後の展望を探っていきます。

ケアマネは処遇改善加算の対象外

2024年4月・6月より施行された「令和6年度介護報酬改定」において、ケアマネは「介護職員の処遇改善分」の対象外となっています。2012年の「介護職員処遇改善加算」創設以来、一貫して加算対象から除外されており、多くの業界関係者からこの処置に対して見直しを求めるよう声が上がっています。 社会保障審議会(介護給付費分科会)では「処遇改善加算の対象に入れるべき」との意見や、全国介護事業所連盟においては「最優先で実行すべきは処遇改善と法定研修の抜本的な見直し」と訴えの声が上がっています。厚生労働大臣や財務大臣はこれらの状況を鑑みて、ケアマネの処遇改善に対する働きかけは行っていますが、依然として処遇改善加算の対象外となっています。 この状況を受け、ケアマネの人材確保は一層困難になっています。実際、居宅介護支援事業所数は6年連続で減少しており、厚生労働省の発表によると2024年4月時点で3万6459件と、前年同期から738件も減少しました。在宅介護のニーズが高まり続ける中、現場で働くケアマネの確保が難しくなることで、残された職員の負担がさらに増大することが懸念されています。

なぜケアマネは処遇改善加算の対象外なのか

では、なぜケアマネは処遇改善加算の対象外なのでしょうか。ケアマネが処遇改善加算の対象外となっている大きな理由の一つは、財源の問題です。2012年の制度創設時から対象外とされてきたケアマネを新たに加算対象とするには、相応の財源確保が必要となります。現在の介護保険制度において、新たな財源を捻出することは容易ではなく、また既存の処遇改善加算の財源を再配分することも現実的ではありません。そこで、この状況を打開するため、主に以下の2つの方向性が検討されています。
  • 保険料の見直し(所得に応じた段階的な引き上げ)
  • 利用者負担の見直し(1割から2割負担への段階的な移行)
しかし、これらの案は現役世代の負担増加につながる可能性があるため、厚生労働省は慎重な姿勢を続けています。2027年度改定に向けて議論は継続されているものの、現時点では財源確保の課題が解決できず、ケアマネは処遇改善加算の対象外のままとなっているのです。

ケアマネの処遇改善を求める背景

日本の介護業界では現在、深刻な人材不足に直面していますが、特にケアマネの不足は顕著な問題となっています。少子高齢化による労働人口の減少は、あらゆる業界に影響を及ぼしていますが、介護業界への影響は特に大きいと言えます。 現在、全国のケアマネの数は約11万人です。一方で、高齢化の進展に伴い介護ニーズは年々高まり、介護事業所の数も増加の一途をたどっています。このままケアマネ一人当たりの担当件数が現状のまま推移した場合、2040年度までには約8万3千人のケアマネが新たに必要になると予測されています。この需給ギャップは、今後さらに拡大していくことが懸念されています。

ではなぜ人手不足が進んでいるのでしょうか。人手不足の主な理由としては以下の4つが挙げられます。

  • ケアマネの資格取得が難しい
  • ケアマネの資格更新が手間
  • 業務範囲が広く責任も大きい
  • 仕事量に対して給与が見合わない

ケアマネの資格取得が難しい

ケアマネの資格取得には、高いハードルが設定されています。2017年までは介護の実務経験が10年以上であれば受験することができていましたが、現在では受験資格として、医療・福祉分野の国家資格保有者であること、もしくは相談援助業務の経験があることに加えて実務経験5年以上かつ従事期間が900日以上という厳しい条件が課されています。

さらに、試験に合格しただけでは資格を取得できず、その後87時間にも及ぶ実務研修の受講が必須となります。こうした多段階の要件が、新規参入を目指す人材の障壁となり、慢性的な人材不足の一因となっているのです。現在合格者数は回復傾向にありますが、第1回では約9万人もの合格者が出ており、当初よりも資格取得が厳格化されていることがわかります。

第22回(令和元年度) 41,049 人 8,018 人 19.5 %
第23回(令和2年度) 46,415 人 8,200 人 17.7 %
第24回(令和3年度) 54,290 人 12,662 人 23.3 %
第25回(令和4年度) 54,406 人 10,328 人 19.0 %
第26回(令和5年度) 56,494人 11,844人 32.1%
第27回(令和6年度) 53,699人 17,228人 32.1%

ケアマネの資格更新が手間

ケアマネの資格は5年ごとの更新制となっており、更新時には相当な時間と労力が必要となります。例えば東京都の場合、就業6か月後に56時間の研修、さらに就業3年以上経過後に32時間の研修受講が義務付けられています。この更新のための研修は、現場での業務と並行して受講しなければならず、大きな負担となっています。そのため、更新を断念してしまうケアマネも少なくなく、人材流出の要因の一つとなっています。

業務範囲が広く責任も大きい

ケアマネの業務範囲は、制度創設以来着実に拡大を続けています。介護保険サービスのケアプラン作成や調整だけでなく、介護保険外のサービスのコーディネート、地域ケア会議への参加、医療機関との連携強化など、求められる役割は年々増加の一途をたどっています。 さらに、その判断や対応の一つひとつが利用者の生活に直結し、最悪の場合、生命に関わる事態を招きかねないという重大な責任も担っています。

仕事に対して給与が見合わない

ケアマネの平均給与は、男性が約431万円、女性が約394万円で、月額にすると約36万円となっています。これは看護師に次ぐ水準で、他の介護職種と比較すると比較的高い位置にあります。しかし、拡大し続ける業務範囲や重い責任、求められる専門性の高さを考慮すると、十分な待遇とは言えないという声が現場からは多く上がっています。特に、24時間体制での対応や緊急時の判断を求められることも多く、労働負荷に見合った報酬とはなっていないのが現状です。下の図が示すように、本来のケアマネ業務の範囲を超えた業務が数多く発生しており、これによって業務負担が一層深刻化しています。

ケアマネの処遇改善に関する課題対応策

ケアマネを取り巻く処遇改善の課題に対しては、事業所レベルでできる処遇改善の対応策としては、業務効率化による生産性の向上や、職場環境の改善による人材定着の促進などが挙げられます。限られた予算の中でも、工夫次第で実現できる改善策を積極的に取り組んでいくことが人手不足解消につながるのです。

業務を見直す

まずケアマネの業務負担を軽減するためには、現状の業務フローを詳細に分析し、効率化できる部分を明確にすることが重要です。特に計画作成、スケジュール管理、関係者間の情報共有などの業務において、紙ベースやアナログな管理方法を使用している場合、作業負担が必要以上に大きくなっていることがよくあります。そこで、重複している作業や非効率な業務プロセスを洗い出し、必要に応じて業務の削除や統合を行うなど、効率的な業務フローへの再設計を進めることが求められます。

ケアプランデータ連携を活用する

2023年4月から開始されたケアプランデータ連携システムは、ケアマネと介護サービス事業所間のケアプラン情報をオンラインで共有できる仕組みです。従来のFAXやメールでの送受信から、標準化されたデータでの連携に移行することで、転記作業や入力ミスによる確認作業が大幅に削減されます。特に提出表作成などにかかっていた業務時間が約3分の1に軽減されるとされています。 これにより、ケアマネは業務負担を大幅に抑えることができ、利用者との面談や介護サービスの質の向上など、本来注力すべき業務により多くの時間を確保することが可能となります。

ICTで業務効率化に取り組む

ケアマネの業務改善には、ICT(情報通信技術)の導入が効果的です。ICTとは、パソコンやタブレット端末などを活用して情報をデジタル管理する仕組みのことです。ICTを導入することで、これまで手作業で行っていた業務の自動化や効率化を実現できます。特に介護ソフトを活用することで、ケアプラン作成やスケジュール管理、モニタリングなどの業務をデジタル化でき、作業時間の大幅な削減が可能になります。例えば、ケアプラン作成支援機能の活用で作成時間を短縮できるほか、タブレット端末の活用でその場でモニタリングの内容を記録できたりするなど、ケアマネの業務負担軽減に大きく貢献します。

ケアマネの業務改善で深刻化する人手不足問題を解消へ

令和6年度の介護報酬改定でも処遇改善加算の対象外となったケアマネですが、深刻化する人材不足の解消に向けては、今すぐに取り組める対策があります。特に業務フローの見直しやICTの活用による業務効率化は、即座に着手できる有効な施策です。 中でも介護ソフトの導入により、ケアプラン作成やスケジュール管理などの業務をデジタル化することで、作業時間の大幅な削減が可能になります。このような業務改善の取り組みを通じて、ケアマネの負担を軽減し、より質の高いケアマネジメントの実現を目指していくことが重要です。 ケアマネの業務負担を軽減する具体策について詳しくは下記のお役立ち資料をご覧ください。
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