介舟ファミリー
介護ソフト・障害者福祉ソフト
私たちの国は、明治維新を迎え近代化への道を歩み始めたとき、人口は3,330万人であった。それが2004年には1億2,784万人に達し、ピークを迎えた。この増加率は284%という驚異的なものであった。しかし、これからの100年で人口は減少し、元の水準に戻ると推計されている。このように、私たちは世界でも例を見ない急速な人口増加と、これからの急激な減少という右下がりのジェットコースターに乗っているのだ。
2025年現在、社会制度や法律、そして人々の暮らし方は、この爆発的な人口増加の過程で築かれてきた。ケアのあり方もそうだ。人はケアなしに生きることはできない。ケアの世界は広大だ。介護保険制度における訪問介護の規定、いわゆる老計10号は、ケアのごく一部にすぎない。ケアには、情緒的・精神的なケア、社会的なつながりを生むケア、さらには文化的なケアも含まれる。人にとっては、通院のために外出だけでなく、映画を見たり、目的もなく散歩をすることも重要なのだ。
100年の間にケアは、家族が行うものとされた。それを法的に支えているのが民法877条に基づく扶養義務である。この規定のルーツは明治民法にさかのぼる。私たちはこの民法的世界観の下で家族のケアをしながら生きてきた。
しかし、昭和から平成へと時代が進むにつれ、家族という枠組みの中だけではケアを支えきれなくなった。そこで、家族のケアの負担を軽減するために、共助の仕組みとして介護保険制度が導入された。しかし、この制度は「自立支援に資する」とされるケアのみを対象とし、それ以外は対象外とする方針をとった。
平成から令和にかけて、家族という器はさらに小さくなった。2025年時点で、全世帯の約4割が単独世帯であり、その中でも高齢者単独世帯の割合は増加の一途をたどっている。2050年には、単独世帯が全体の5割を超えると予測されている。もはや、かつてのように家族がケアの中心を担うことは難しくなりつつあるのだ。100年の物語の終焉である。
こうした状況を踏まえると、ケアのあり方を再構築することは避けられない。私たちは現実を直視しなければならない。これまで家族の義務とされてきたケアを、国家が責任を持って保証する方向にシフトする必要がある。これは東アジアの伝統を生きる我々にとってとてつもなく大きなチャレンジだ。しかし現代社会において、扶養義務を家族に押し付けることはもはや現実的ではない。何しろ家族がいないのだから。これからは、すべての国民が必要なときに平等にケアを受けられるよう、国家が積極的に関与する仕組みを作るべきである。
私たちは、急激な人口減少という未曾有の状況に直面しているが、ケアを社会の真ん中に置き、新たなケアのあり方を模索し、構築する機会と捉えることもできる。「人は老計10号のみにて生くるにあらず」。ケアの再構築こそが、これからの100年における社会の安定と、人々の幸福を実現する鍵となるであろう。
中央大学経済学部卒業
社会福祉法人 若竹大寿会 横浜市すすき野地域ケアプラザ 所長
一般社団法人神奈川県介護支援専門員協会 副理事長
社会福祉士・介護福祉士・主任介護支援専門員
【連載】月刊ケアマネジャー「ケアラー支援で必須の知識とスキル」(2023年度)中央法規
【分担執筆】ケアマネ実務の道具箱 中央法規
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