【最新版】訪問介護における介護職員等処遇改善加算の計算方法や算定要件などを詳しく解説!

訪問介護事業所において、人材確保と定着は常に大きな課題です。この課題を解決するために、介護サービスに従事する職員の賃金向上と労働環境改善を支援する「介護職員等処遇改善加算」制度が創設されました。2024年度の改定により、従来の介護職員等の処遇改善に関わる3つの加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算=旧加算)から、制度内容が一本化されています。加算の取得には複雑な要件を満たす必要がありますが、適切に活用することで職員の待遇改善につながるでしょう。
本記事では、訪問介護における介護職員等処遇改善加算の概要、最新の算定要件、単位数の計算方法などを分かりやすく解説します。ぜひ自施設での加算取得の参考にしてください。

介護職員等処遇改善加算とは

介護職員等処遇改善加算は、介護業界の深刻な人材不足に対応するため、2012年に厚生労働省によって創設された制度です。介護職員の賃金向上やキャリアアップ支援、職場環境の改善を目的としています。2024年度の介護報酬改定では、これまで別々に運用されていた「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つの加算が一本化され、新たな「介護職員等処遇改善加算」として生まれ変わりました。 この制度により、一定の要件を満たした事業所は、サービス提供額に応じた加算を受けることができます。加算で得た資金は主に介護職員の給与改善に充てることが求められており、介護職の低賃金や高い離職率といった課題解決を図り、最終的には介護サービスの質の向上につなげることが目指されています。

介護職員等処遇改善加算とは

訪問介護における介護職員等処遇改善加算の単位数は以下の通りです。

区分 単位数
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) 245/1000
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) 224/1000
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) 182/1000
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) 145/1000

単位数の計算方法

介護職員等処遇改善加算の計算方法については以下の順に計算します。

  1. 1か月あたりの総単位数を求める

    前年度1~12月の介護報酬総単位数÷12=1か月あたりの総単位数
  2. 処遇改善加算の加算単位数を求める

    1か月あたりの総単位数×サービス類型別加算率=加算単位数

    訪問介護サービスの加算率は以下の通りです。

サービス区分 加算(Ⅰ) 加算(Ⅱ) 加算(Ⅲ) 加算(Ⅳ)
(夜間対応型)
訪問介護・定期巡回
24.5% 22.4% 18.2% 14.5%
(予防)
訪問入浴介護
10.0% 9.4% 7.9% 6.3%

訪問介護における介護職員等処遇改善加算の算定要件

介護職員等処遇改善加算の算定には3つの区分である「月額賃金改善要件」「キャリアパス要件」「職員環境改善要件」を満たす必要があります。
区分 月額賃金改善
要件Ⅰ
月額賃金改善
要件Ⅱ
キャリアパス
要件Ⅰ
キャリアパス
要件Ⅱ
キャリアパス
要件Ⅲ
キャリアパス
要件Ⅳ
キャリアパス
要件Ⅴ
職場環境
区分ごとに
1以上
職場環境
区分ごとに
2以上
職場環境
見える化
加算(Ⅰ)
加算(Ⅱ)
加算(Ⅲ)
加算(Ⅳ)

月額賃金改善要件

月額賃金改善要件では、介護職員等処遇改善加算で得た加算額の一定割合以上を職員の基本給または毎月支払われる手当として支給することが求められます。

月額賃金改善要件Ⅰ

新加算Ⅳで得られる加算報酬のうち、2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当で支給することが求められます。 例えば、訪問介護の加算Ⅳの報酬は14.5%となっており、その半分の7.25%を介護職員に支給しなければなりません。もし総介護報酬が1,000万円の場合は以下のような計算式になります。 総介護報酬:1,000万円×加算Ⅳ:14・5%=145万円(毎月72万5千円を支給) 上記の金額を介護職員中心に配分することで、要件を満たせます。

月額賃金改善要件Ⅱ

月額賃金改善要件Ⅱは「前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う」とあります。 2024年5月31日時点で旧処遇改善加算を算定しており、かつ旧ベースアップ等支援加算を算定していなかった事業所が、新たに介護職員等処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳのいずれかを取得する場合、旧ベースアップ等支援加算相当の加算額の3分の2以上を新たな基本給等の引き上げに充てる必要があります。この際、基本的にはベースアップにより行うことが求められています。たとえば、旧ベア加算相当額が月間15万円の場合、そのうち10万円以上を基本給の引き上げとして実施しなければなりません。 なお、2024年5月以前に旧3加算を算定していなかった事業所や、2024年6月以降に開設された新規事業所は、この月額賃金改善要件Ⅱの適用を受けません。

キャリアパス要件

キャリアパス要件は、介護職員のキャリア形成を支援するための5つの要件から構成されています。

  • キャリアパス要件Ⅰ
  • キャリアパス要件Ⅰは、職位や職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備し、全職員に周知することが求められます。

  • キャリアパス要件Ⅱ
  • キャリアパス要件Ⅱは、資質向上の目標設定や研修機会の確保に関する内容です。以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、研修の実施を行う必要があります。 a 研修機会の提供又は技術指導等の実施、 介護職員の能力評価 b 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、 休暇の付与、費用の援助等)

  • キャリアパス要件Ⅲ
  • キャリアパス要件Ⅲでは、経験や資格に応じた昇給の仕組みや一定の基準に基づき定期的に昇給を判定する仕組みが必要です。

  • キャリアパス要件Ⅳ
  • キャリアパス要件Ⅳは、経験・技能のある介護職員のうち1人以上の賃金を年額440万円以上にすることを求めています(小規模事業所など特定の場合は例外あり)。

  • キャリアパス要件Ⅴ
  • キャリアパス要件Ⅴでは、一定割合以上の介護福祉士等の配置が求められ、訪問介護においては特定事業所加算ⅠまたはⅡの届出が必須となっています。 加算区分に応じて、これらの要件を複数または全て満たす必要があります。

職場環境改善要件

職場環境等要件は、全部で6つの区分(入職促進、資質向上・キャリアアップ支援、両立支援・多様な働き方推進、心身の健康管理、生産性向上、やりがい・働きがいの醸成)から構成される28項目の取組項目があります。
区分 項目数 主な内容
入職促進に向けた取り組み 4 ① 法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化。
② 事業所全体の取組による採用・人事・ローテーション・研修体系の整備。
③ 他産業経験者の雇用、主婦層、中高年齢者等、幅広い層の採用、未経験者に対する採用の仕組みの構築(採用の手続簡便も可)。
④ 職場体験の受入や地域行事への参加等を働く場としての魅力を伝える取組の実施。
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 4 ⑤働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
⑥研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
⑦エルダー・メンター制度等導入
⑧上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保
両立支援・多様な働き方の推進 4 ⑨子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
⑩職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
⑪有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている
⑫有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている
腰痛を含む心身の健康管理 4 ⑬業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
⑭短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
⑮介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施
⑯事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組み 8 ⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築を行っている
⑱現場の課題の見える化を実施している
⑲5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている
⑳業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている
㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入
㉒介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入
㉓業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う。
㉔各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施
やりがい・働きがいの醸成 4 ㉕ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
㉖地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
㉗利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
㉘ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供
2025年度からは、加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合、各区分で2つ以上の項目(生産性向上は3つ以上で一部必須)を実施し、その内容を情報公表システム等で具体的に公表することが求められます。加算Ⅲ・Ⅳの場合は、各区分1つ以上の項目(生産性向上は2つ以上)を満たす必要があります。

介護職員等処遇改善加算を効果的に取得するためのポイント

介護職員等処遇改善加算を確実に取得し、最大限活用するためには、制度の正確な理解と計画的な準備が必要です。介護職員等処遇改善加算を取得して職員の待遇改善と事業所の安定運営を両立させましょう。

専門家に相談する

介護職員等処遇改善加算の制度は複雑で、算定要件や必要書類の作成には専門的な知識が求められます。社会保険労務士や介護報酬に詳しいコンサルタントに相談することで、自事業所に最適な加算区分の選択や申請書類の作成をスムーズに進められます。特に上位区分への移行を検討している場合は、キャリアパス要件や賃金規程の整備など、専門家のアドバイスが大きな助けになります。 また、自治体によって解釈や提出書類の様式が異なる場合もあるため、地域の実情に詳しい専門家との連携が加算取得の成功率を高めるポイントになります。

事業所のICT化を進める

職場環境等要件の中でも特に重要なのが「生産性向上のための取組」ですICTツールの導入は、この要件を満たすだけでなく、実際の業務効率化にも貢献します。具体的には、介護ソフトの導入、タブレット端末やスマートフォンを活用した記録システム、インカムによる職員間連絡の効率化などが効果的です。これらのツールにより、記録作業の時間短縮、情報共有の円滑化、請求業務の効率化が図れます。 さらに、職員の負担軽減によって離職防止にもつながるため、介護職員等処遇改善加算の本来の目的である「介護職員の処遇改善」と「サービスの質の向上」の両方に寄与する取り組みといえるでしょう。
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介護職員等処遇改善加算は、訪問介護事業所における人材確保と定着を支援する重要な制度です。最大24.5%という高い加算率を活用することで、職員の待遇改善と事業所の経営安定化が図れます。取得には「月額賃金改善要件」「キャリアパス要件」「職場環境等要件」の3つを満たす必要があり、これらをクリアするためには計画的な準備が不可欠です。専門家への相談やICT化の推進は、要件達成のための有効な手段といえるでしょう。2024年度の制度一本化を機に、より上位の加算区分取得を目指し、介護サービスの質向上と安定した事業運営につなげていくことが重要です。 特にICT化は業界全体で進んでおり、取り残されないよう前向きに検討する必要があります。ICT化の第一歩としては、介護現場の業務効率化に大きく貢献する介護ソフトの導入がおすすめです。中でもシェア率188%増加で話題の介護ソフト「介舟ファミリー」は使いやすい操作性と丁寧なサポート体制が充実しており、17,000以上の導入実績と95%以上の継続率を誇ります。介護ソフト初心者の方でも導入から運用まで安心して利用できますので、ぜひこの機会にご検討してください。

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