運営指導(旧実地指導)とは?障害福祉事業者が確認すべきポイントなどをくわしく解説

障害福祉サービス事業者運営の適正化を図るため、事業者に対して行われる運営指導(旧実地指導)。
障害福祉サービス事業を行う上で、指定基準や法律に違反していないか行政が確認するものであり、万が一不備があると事業所の存続にかかわるほど重要なものになります。
そこで本記事では、運営指導の概要から具体的な確認ポイント、注意事項まで、障害福祉事業者が知っておくべき重要な情報を詳しく解説します。障害福祉サービス事業者の方は必ず確認しておきましょう。

運営指導(旧実地指導)とは

運営指導(旧実地指導)とは、障害福祉サービス事業者が適切に運営できているかを確認し、必要な助言や指導を行う制度です。

この制度は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(通称「障がい者総合支援法」)や「児童福祉法」、省令・各府県・市町村の基準条例等の関係法令に基づき、指定権者(障害福祉サービスの指定権限を持つ自治体のこと。都道府県や市町村など)が実施します。

また、令和6年4月1日より、名称がそれまで実地指導でしたが運営指導と変更されているため、ご注意ください。

運営指導の頻度

運営指導の頻度は、一般的に新たに障害福祉サービスを開始してから1年以内、その後はおおむね3年に1回の割合で行われます

しかし、自治体や事業所の数によってその頻度はバラバラです。半年以内に行われるケースや緊急で行われるケースもあるため、常日頃から適正な運営を行うことが重要です。

運営指導の種類

運営指導には、主に以下の2種類があります。
  • 一般指導:事前に通知があり、定期的に行われる通常の指導
  • 随時指導:事前の通知なしで、当日行われる指導
これらの指導は、事前通知型と事前通知なし型に分かれており、指定権者の判断で実施方法が決定されます。事業者は、どの種類の指導にも適切に対応できるよう、常に準備を整えておく必要があります。

運営指導と集団指導の違い

指定権者によっては集団指導という、複数の事業者を一堂に集めて実施される指導も行われる場合があります。運営指導と違い、集団指導は1カ所に集められたりオンラインで行ったりします。

また、頻度としても運営指導が概ね3年に1回に対し、1年に1回が一般的です。さらに集団指導では、運営指導と異なり、報酬改定の内容や過去に指導となった事例、共通の注意事項の周知などが行われます。

この集団指導に出席しない場合は、運営指導となる場合もあるため、必ず出席しましょう。

運営指導 集団指導
タイミング 概ね3年に1回 1年に1回
場所 指定権者が障害福祉サービス事業所に訪問する 事業者が1か所に集められる、もしくは、オンライン形式
内容 事業所のサービス内容や各種資料の確認 報酬改定の内容やサービス内容、指導となった事例の紹介

監査や行政処分とは

運営指導が重要視される背景には、障害福祉サービスの適正化、そして公的資金の適正使用確認という大きな目的があります。この目的に基づいて適切な事業所運営が行われているかを確認します。そのため、不適切な運営や不正があれば、相応の罰則を実施します。

監査

運営指導の結果、指定基準違反や重大な法令違反・不正が発覚した場合またはそれが疑われる場合には、「監査」に移行する可能性があります。

監査では、より詳細な調査が行われ、場合によっては指定取り消しや効力の停止などの処分につながる可能性があります。

これらの処分は事業者にとって致命的な影響を及ぼすため、運営指導への適切な対応は事業継続の観点からも非常に重要です。

【例】運営指導→要改善→監査該当事項あり→指定取り消し

また、運営指導以外にも監査につながるケースもあります。例えば、利用者本人や家族からの通報、苦情、相談などがあった場合です。そのため、常日頃から運営指導がなくても適正な運営を行うようにする必要があります。

指定取り消しや効力の停止

監査の結果次第では、最悪の場合、事業者に最も重い「指定取り消し」が言い渡されることもあります

この指定取り消しを受けてしまうと、実質的に事業運営は出来ません。効力の停止の場合は、その期間中運営は出来ません。

このように事業が止められてしまうため、従業員はもちろん、利用者にとっても生活が危ぶまれる可能性が高いです。そのため、必ず指定取り消しや効力の停止になる前に事業所の運営は適正かを確認し、改善へとつなげましょう。

運営指導における確認すべきポイント

運営指導では、指定基準や法令遵守の状況、適正なサービスを提供できているかなど、多岐にわたる項目が確認されます。

事業者は、これらのポイントを事前に把握し、日常的に適切な運営を心がけることが重要です。

主な確認ポイントを以下にまとめておりますので、確認してみましょう。

指定権者が確認する内容

指定権者は、主に以下の項目について確認を行います。ただし、あくまでも一般的な目安となります。

1.人員関連 最低人員基準は確保しているか
雇用契約書はすべての従業員と結んでいるか
必要な研修や資格習得は行っているか
秘密保持誓約書はすべての従業員からもらっているか
健康診断は行っているか
2.サービス関連 利用者本位の適切なサービス提供を行っているか
すべての利用者と利用契約を結んでいるか
モニタリングは適正な時期に行っているか
関係機関と適切な連携は取れているか
利用者の尊厳と安全は守られているか
3.運営関連 運営規定と相違はないか
虐待防止委員会など適切な委員会は設置しているか
BCP関係の適切な対応は行っているか
個人情報は適切に管理されているか
指定基準と関係法令は遵守しているか
届け出と実態は一致しているか
4.請求関連 適正な請求を行っているか
加算の要件を満たしているか
5.その他 会計を事業ごとに区分しているか
保険期間が切れていないか
非常災害訓練は行っているか

これらの項目については、実際のサービス提供現場の視察や職員へのヒアリングなども行われます。

事業者は、これらの項目に関して常に適切な状態を維持し、エビデンスを整備しておくことが求められます。

指定権者が確認する書類

運営指導時に確認される主な書類には以下のようなものがあります。

1.人員関連 勤務体制一覧表やタイムカード
給与台帳、給与明細
職員の雇用契約書
秘密保持契約書
雇用保険関連書類
健康診断の記録
研修計画とその記録
2.サービス関連 重要事項説明書
利用契約書
個人情報同意書
アセスメント
個別支援計画
モニタリング
契約内容報告書
3.運営関連 運営規定
事故発生報告書
各委員会の設置、報告書
BCP関係
虐待防止・身体拘束適正化関係書類
加算の要件を満たすことを示す書類
苦情・事故・感染症対応など各種マニュアル
4.請求関連 法定代理受領通知
利用者への請求書、領収書
実績記録表
5.その他 賠償責任保険の書類
会計書類

これらの書類は、適切に作成・保管されているだけでなく、その内容が実際のサービス提供と整合しているかも確認されます。

事業者は、日頃から適切な文書管理を行い、必要に応じて速やかに提示できる体制を整えておくことが重要です。

運営指導における注意ポイント

運営指導を円滑に進め、良好な結果を得るためには、いくつかの重要な注意ポイントがあります。

これらのポイントを押さえることで、指導への対応がスムーズになるだけでなく、日常的な業務改善にもつながります。

事前準備を徹底的に行う

運営指導の成否は、事前準備の質に大きく左右されます。具体的には以下のような準備が重要です。

  • 自己点検の実施
    指導項目に沿って自己点検を行い、不備がある場合は事前に改善する。
  • 書類の整理
    確認対象となる書類を整理し、すぐに提示できるよう準備する。特に事業所ハンドブックや行政が用意している資料なども準備しておくとスムーズです。
  • 職員への周知
    運営指導の目的や対応方法について、全職員に周知徹底する。
  • 模擬指導の実施
    可能であれば、模擬的な指導を実施し、対応の練習を行う。

これらの準備を徹底的に行うことで、指導当日でもスムーズな対応が可能になります。また、準備過程で発見された課題は指導前に改善することで、より良い結果につながります。

不正は絶対にしない

運営指導において最も重要なのは、不正を絶対に行わないことです。

報酬の不正請求や利用者の権利侵害などの不正は、発覚した場合に重大な処分につながる可能性があります。具体的には以下のような点に注意が必要です。

  • 水増し・架空請求の禁止
    サービス提供時間や回数を水増し・捏造して請求することは必ず避ける。
  • 利用者の権利尊重
    身体拘束や虐待など、利用者の権利を侵害する行為は絶対に行わない。
  • 記録の改ざん禁止
    指導対策として記録を後から改ざんすることは絶対に避ける。

これらの不正は、短期的な利益につながるように見えても、長期的には事業者の信頼を著しく損ない、事業継続を危うくする可能性があります。常に誠実な運営を心がけ、万が一不備があった場合は積極的に指定権者に確認することが重要です。

ICTを活用する

運営指導への効果的な対応にはICT(情報通信技術)の活用が非常に有効です。

さまざまな業務内容を、ICTを用いてデジタル化することで業務効率化につながるだけでなく、万が一運営指導の場面で記録や各種書類などの提示を求められてもすぐに検索可能となり、その場で提示することができます。このようにあらゆる業務をデジタル化することで、運営指導においても必ず役に立つでしょう。

また、運営指導以外の普段の業務でも、手書き入力から端末に入力することがなくなるため、転記による人為的ミスの減少や迅速な情報共有が可能になります。

ほかにも書類の保管場所も不要となるため、省スペース化に貢献します。ただし、個人情報保護には十分な注意を払い、セキュリティ対策を徹底することが不可欠です。

運営指導の結果を事業所改善に積極的につなげよう

運営指導は、障害福祉サービス事業所の適正な運営がなされているかを確認する重要な制度です。

ここで大切なことは、事業者は、この指導を単なる監査や罰則的なものとして捉えるのではなく、サービスや運営改善の機会として積極的にその指導結果を活用することです。

また、運営指導が行われる前には徹底的な事前準備が大切です。記録や各種書類などをあらかじめ準備しておくとスムーズな運営指導につながります。その際、ICTの活用がおすすめです。

介護ソフトの「介舟ファミリー」では、障害福祉サービスにも対応しており記録業務や請求業務などあらゆる業務をデジタル化し、業務効率化に貢献します。

また、直感的な使いやすさや充実したサポート体制なども大きな特長です。ぜひ、事業所改善に悩んでいる方は一度ご相談ください。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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