今回から連載を3回担当します寺田と申します。私は、助産師です。このHPをご覧の皆様は、介護事業に携わる方が多いと思います。「お産にかかわる助産師がなぜ?」と思われたかもしれません。私は、育児と介護を同時に担うダブルケアラーを支援する医療専門職による団体「DC NETWORK」の代表を務めております。また、地域で活動しているNPO法人「みんなのたすけあいセンターいたばし」の理事でもあります。
どうぞよろしくお願いいたします。
助産師は、人生のはじまりに関わる仕事です。今回は、その出発点から「ケア」について考えてみましょう。人間と他の動物の違いは、生まれてすぐに一人で歩くことができないことです。生物学者ポルトマンの「生理的早産」という学説なのですが、人間は、未熟な状態で生まれてくることで、出産後しばらくは誰かの手に人生を委ね、一人では生きていけない状態に置かれます。この誰かの手に人生を委ねる状況は、他者との信頼関係を築くのに必要な時期なのです。
この時期は、人間であれば、誰もが経験します。つまり、人生は、誰かからの「ケア」を受けて始まっているのです。
私は、板橋区の男女平等参画審議会委員も務めており、ケアに関しては男女平等であると思ってますが、ここでは敢えて「母親」に焦点を当てて伝えさせていただきます。出産は、女性にしかできない営みです。その女性が、産まれてすぐの新生児に愛情を注ぐためには、周囲から大切にされることが大事です。誰かを愛する(大切にする)ためには、まず、自分が十分に愛された(大切にされた)と実感できることが重要です。
つまり、誰かをケア(育児や介護など)するためには、まず、自分が誰か(他者)に大切にされる経験が必要であり、それは、出生直後から人間の営みとして行われていることがおわかりいただけたかと思います。私も含め、このHPをご覧くださっている皆様は、支援者と呼ばれる立場である方が多いと推察されます。支援者の皆様は、介護される立場の方のみならず、介護を担うご家族も、大切に思って関わっていらっしゃるでしょうか。また、支援者である自分自身も、大切にされるべき存在であると気づいていらっしゃるでしょうか。
「ケアの質」を考える際には、ケアを受ける立場の方のみならず、とりまくご家族も、支援する私たちも、全ての誰しもが誰かから大切にされているか、を最初に考えてみませんか。 原点は「ケアし、ケアされ」です。
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