著名人コラム

「むずかしいことをわかりやすく」伝える仕事

「むずかしいことをわかりやすく」伝える仕事

私は編集者として、会社員時代と独立後現在に至る30年以上、広報誌の制作に携わっています。

広報誌にもいろいろなものがありますが、私が携わっているのは、医療保険制度、介護保険制度、年金制度、福祉制度、環境保全、都市緑化、防災、防犯、消費者問題、交通安全、労働安全衛生など、国や地方自治体の新たな法律や推進する制度などを周知・啓発するための広報誌です。
大学卒業後に就職した会社がそうした広報誌の専門出版社であったことから、少し「むずかしそう」な印象のある業界の編集者となりました。

みなさんが区役所や市役所に出かけた際、窓口などで「ご自由にお取りください」と置かれている各担当課に関わるパンフレットを見かけたことはないでしょうか。
私が編集しているのはそのようなパンフレットで、専門家ではない「一般の人」に向け、周知・啓発すべき法律や制度などの要点を、簡潔な文章、カラフルなデザインや図解、親しみやすいイラストなどさまざまな工夫を凝らしながら、できるだけ「わかりやすく」紹介しています。 さまざまな工夫が必要になるのは、周知・啓発すべき法律の原文や制度の運用ガイドラインなどは、実際、一般の人にとっては前述の「むずかしそう」ではなく「むずかしい」からです。

2000年に「介護保険制度」がスタートしたときもそうでした。
今では多くの高齢者がサービスを利用し、介護や介護予防になくてはならない制度になっていますが、当時は誰もが「むずかしそうで、実際むずかしい」印象をもっていたのではないでしょうか。

少子高齢化で介護を必要とする高齢者が増える時代に、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で担うことを目的とした介護保険の普及は急務でしたが、そのためにはまず、一般の人たちへの「わかりやすい」周知・啓発が必要でした。 「介護保険って何?」からはじまり「介護保険を利用できる人」「サービスの種類」「手続きの流れ」など、必要な人が必要な情報をできるだけ簡単に入手できるよう試行錯誤を繰り返しました。

ライターの役割を兼務することも多い私は、よく上司や先輩から(成人以上を対象としたパンフレットでも)「中学生が読んで理解できる原稿を書け」と指導されました。
中学校までが義務教育ということもありますが、広報誌の文章は、たとえ内容が「むずかしい」ことでも、その要点を過不足なく「わかりやすく」伝えることが最も大切であるということでしょう。

小説家・劇作家として数々の名作を生んだ井上ひさしが、自分自身に銘じた
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」
という言葉があります。 凡人には想像も及ばぬ深遠な創作態度ですが、冒頭の「むずかしいことをやさしく」については、広報誌に携わる一編集者として、私も肝に銘じたいと思っています。

この記事を書いた人

プロフィール

栗本 英志

編集プロダクション 代表

■経歴■
全国の自治体、企業の健保組合等の広報誌・機関紙・単行本等を制作直販する専門出版社にて、健康づくり・生活習慣病予防・介護予防・防災減災・メンタルヘルス・健康保険・消費者問題・社会人マナーなどの周知啓発冊子を編集制作。
関連会社で一般書籍の編集制作を経て、編集プロダクションとして独立。

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