昨今、処遇改善加算に関する拡充や変更などに関する情報がいくつも飛び交っていますが、処遇改善加算の配分ルールを正しく理解・運用できていますでしょうか。令和8年度の介護報酬改定では、処遇改善加算の対象職種やサービスが大幅に拡大され、配分ルールもさらに複雑になっています。正しく運用できなければ、加算の全額返還や行政処分といったリスクを招く可能性があります。
本記事では、令和8年度の最新情報を踏まえながら、配分ルールの基本から実務ではどうするべきか押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。
【令和8年度】処遇改善加算のポイントまとめ
令和8年度の介護報酬改定では、介護職員等処遇改善加算が3つの点で大きく変わりました。実績報告書を正確に作成するうえでも、まず改定内容を改めて把握しておきましょう。

①対象職種・対象サービスが拡大
これまでの処遇改善加算では主に介護職員のみでしたが、今回の改定では介護職員から「介護従事者」(正規雇用のみ)へと対象が大きく拡大しました。これにより既存の対象サービスでは、通所介護や施設系サービスに従事する看護職員やリハビリ専門職なども新たに処遇改善の対象となっています。
また、これまで加算の対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援が新たに対象サービスに加わります。これによりケアマネジャーやリハビリ専門職の処遇改善が初めて実現しました。
②賃上げ幅の拡大
今回の改定では全介護従事者に対して月額1.0万円(3.3%)の賃上げが実施されます。さらに生産性向上や協働化に取り組む事業所の介護職員には、月額0.7万円(2.4%)が上乗せされ、最大で月額1.7万円(5.7%)の処遇改善となります。
③上位加算区分(ロ)の新設
さらに賃金アップを実現するために新しく、加算Ⅰ・Ⅱに(ロ)区分が新設されました。ケアプランデータ連携システムの導入や生産性向上推進体制加算の取得など「令和8年度特例要件」を満たすことで取得でき、さらなる収入アップにつながります。なお、要件が整っていない場合でも「年度内に対応する」という誓約書の提出で6月から算定開始できる配慮措置が設けられています。
処遇改善加算の配分ルールとは?だれにどのように配分する?
処遇改善加算の配分ルールとは、国から事業所に支払われた加算をどのように職員へ分配するかを定めたルールです。令和8年度の改定で対象職種・サービスが拡大したことで、配分の考え方も見直す必要があります。まずは基本的な仕組みをおさらいしましょう。
そもそも処遇改善加算とは
処遇改善加算とは、介護職員をはじめとする介護事業所の職員の賃金向上や職場環境の改善を目的として、国が事業所に相当分の手当を支給する加算です。少子高齢化が進む日本では介護人材の不足が深刻な課題となっており、人材確保・定着を後押しするために設けられました。令和6年6月からは従来の3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」として一本化され、令和8年度の改定ではさらに対象が「介護職員」のみから「介護従事者」へと拡大されているなど、今後も介護業界の待遇・環境改善のために拡大されることが予想されます。
配分ルールの基本的な考え方(だれに配分するか)
これまでの処遇改善加算では何度か細かい配分ルールが変更されていますが、以下の基本的な考え方は引き続き継続されています。必ず確認しておきましょう。
- 介護職員への配分を基本とする
- 経験・技能のある職員(介護福祉士かつ法人内勤続10年以上が基本)に重点的に配分することが望ましい
- ただし事業所の判断で柔軟な配分が可能(他の職種への配分も認められる)
「柔軟な配分が認められる=自由に配分してよい」ではありません。職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は引き続き禁止されています。あくまでも介護職員の処遇改善を軸に置いたうえで、事業所の実情に応じた配分設計を行うことが求められます。
具体的な配分ルールの基本3原則(どのように配分するか)
上記の配分ルールを踏まえて、さらにどのように配分するかについては事業所が必ず守るべき3つの基本原則があります。
参考:介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
①加算の総額以上の賃金改善をする
受け取った加算額の全額を、職員の賃金改善に充てる必要があります。
※加算は事業所の利益にしてはいけません。
②前年度比で加算増加分以上の賃金改善を行う
前年度と比較して加算が増えた分については、過去の賃金改善実績にかかわらず、新たな賃金改善として新規に実施することが義務付けられています。
③加算以外の部分で賃金を引き下げない
加算で賃金を補填する形で、もともとの基本給や手当を下げることは禁止されています。あくまでも現行賃金への「上乗せ」が原則です。
この3原則を満たせない場合は、不正請求と見なされ全額返還や行政処分のリスクがあります。必ず確認しておきましょう。
処遇改善加算の具体的な配分対象・配分方法・配分の流れ
配分ルールの基本原則を理解したうえで、実際の運用場面では「誰に」「どのように」「いつ」配分するかをより具体的に把握しておく必要があります。ここでは実務で特に確認しておくべきポイントを解説します。
参考:介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)|厚生労働省
配分対象
令和8年度改定では、先述した通り配分対象が「介護職員」から「介護従事者(正規雇用のみ)」へと拡大されました。具体的には、これまで対象外だった看護職員やリハビリ専門職、ケアマネジャー、事務職員なども新たに配分対象となっています。(2026年4月現在)
また、雇用形態については正規雇用が対象となる一方、パート職員や派遣職員への配分も事業所の判断で認められています。特定の職種だけに配分が偏ってしまうと不満などがでてくるかもしれません。公正な配分となるように心がけましょう。
配分対象:介護事業所に勤務する介護従事者
| ・介護職員 ・医師、歯科医師 ・薬剤師 ・保健師 ・看護師、准看護師 ・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 ・機能訓練指導員(看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師等) ・精神保健福祉士 ・介護支援専門員 ・計画作成担当者、社会福祉士 ・生活相談員・支援相談員 ・管理栄養士、栄養士 ・歯科衛生士 ・調理員 ・その他の事務職等 など |
配分方法
処遇改善加算の配分方法についても、事業所ごとに柔軟に設定できます。主な選択肢は以下の通りです。
①月給(基本給・毎月支払われる手当)への充当
基本的な配分方法として毎月の給与に上乗せする方法で支給します。毎月定額の手当を賃金に含めることでこれまでよりも受け取れる金額が増え、職員の生活の安定につながります。なお、新加算Ⅳに相当する加算額の2分の1以上は、月額賃金の改善に充てることが義務付けられています。
②一時金(賞与・特別手当)での支払い
まとまった金額を年1〜2回支給する方法です。月額改善要件を満たしたうえで、残りの改善額を賞与に充てることができます。
③基本給・手当・賞与の組み合わせ
月額改善要件を守りながら、複数の方法を組み合わせることも可能です。事業所の賃金体系に合わせて柔軟に設計しましょう。
配分の流れ
正確性を期すために配分時には以下のような手順で進めることをおすすめします。
1.制度の要件を確認する
まず「どのような条件を満たす必要があるか」を一覧にまとめ、しっかり要件を確認したうえで配分するようにしましょう。
2.誰にいくら配るかを決める
次に職種や役割、勤続年数などをもとに配分の基準を決め、書面に残しておきます。「この場合はどうする?」という例外パターンも事前に決めておくと安心です。また、他事業所や自治体に参考として配分の基準を聞いておくとより具体的に進めやすいでしょう。
3.職員に説明する
その後「いつ」「いくら」「どうやって計算したか」を職員にあらかじめ伝えます。細かい計算式まで理解してもらう必要はありませんが、「何を基準に決めたか」だけは必ず伝えましょう。 納得感が大きく変わります。
4.記録をきちんと残す
配分の根拠や職員への説明資料、同意を得た記録などを保管しておきます。行政への報告や監査に備えるためにも欠かせません。
5.年に一度、内容を見直す
採用・離職の状況や事業所の財務状況に合わせて、配分ルールを見直しましょう。一度決めたら終わりではなく、毎年職場環境に適したアップデートを行い、全員が納得できる配分ルールを目指すことが大切です。
令和8年度改定で何が変わった?旧ルールとの違い
令和8年度の介護報酬改定では、処遇改善加算の配分ルールが大きく見直されました。旧制度から何がどう変わったのか、旧ルールとの違いを整理します。
旧3加算における職種間配分ルール(廃止前)
令和6年6月の一本化以前は、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つがそれぞれ異なる配分ルールを持っていました。特に特定処遇改善加算では、職員を以下の3グループに分類し、配分比率が細かく定められていました。しかし、事業所にとって計算・管理の負担が大きく、柔軟な運用が難しい制度でした。
新加算で撤廃された職種間配分ルール
令和6年6月の一本化により、上記の職種ごとの具体的な配分割合は撤廃されました。令和8年度改定においても、この「事業所内での柔軟な配分」という方針は継続・強化されています。これにより、各事業所の実情に合わせた配分設計が可能となりました。また、これまで加算対象外だった訪問看護やケアマネジャーなども令和8年度から対象に加わったことで、配分先の職種の選択肢はさらに広がっています。
失敗しない配分設計の進め方
処遇改善加算や支給された手当を適切に運用するためには、場当たり的な配分ではなく、事前に適切な配分・運用となるように設計ポイントを押さえた進め方で取り組みましょう。以下のステップに沿って配分設計を進めることで、職員からも納得感のある配分設計を実現できます。
STEP1:加算額の見込みを把握する
まず、適切に処遇改善手当を配分するには自事業所が算定できる加算額の見込みを正確に把握することです。サービス種別・区分・加算率をもとに年間の加算見込み額を算出しましょう。令和8年度は対象サービスや加算率が変更されているため、前年度の数字をそのまま使い回さず、改定後の加算率で改めて計算することが重要です。

STEP2:配分対象者と配分総額を決める
次に、誰に配分するかを決めます。令和8年度からは正規雇用の介護従事者が対象となり、看護職員やリハビリ専門職、ケアマネジャーなども含まれます。対象者リストを整理したうえで、月額賃金改善要件(加算額の一定割合以上を月給改善に充てる)を満たせるよう、配分総額の内訳を設計しましょう。
STEP3:配分方法を決める(月給・賞与・手当)
配分総額が決まったら、月給改善・賞与・手当のどの方法で支給するかを決めます。この際、以下の優先順位を意識して設計しましょう。
- まず月額賃金改善要件を満たす額を月給改善に充てる
- 残りの改善額を賞与や一時金に充てる
前述したように厚生労働省によると、安定的な処遇改善を実現するには基本給のベースアップが望ましいとされています。一方で賞与との組み合わせも認められているため、自事業所の賃金体系に合わせて現実的な方法を選びましょう。
STEP4:職員間の配分バランスを設計する
配分方法が決まったら、職員一人ひとりへの配分額を設計します。この際、以下の観点を踏まえてバランスを考えましょう。
- 経験・技能のある介護職員(介護福祉士かつ法人内勤続10年以上が基本)に重点的に配分する
- 職位・職責・資格・勤続年数などを評価基準として活用する
- パート職員には勤務時間に応じた按分で配分する
- 著しく偏った配分にならないよう、全体のバランスを確認する
この段階でキャリアパスや評価制度と連動させると、職員のモチベーション向上にもつながります。
例えば加算総額が月100万円の事業所を想定した配分イメージを紹介します。
| 職種 | 資格・勤続年数・役職 | 月額配分額の目安 |
| 介護職員(正規) | 介護福祉士・10年以上・主任 | 50,000円 |
| 介護職員(正規) | 介護福祉士・5〜9年・リーダー | 35,000円 |
| 介護職員(正規) | 無資格・5年未満・夜勤あり | 30,000円 |
| 介護職員(正規) | 無資格・5年未満・日勤のみ | 20,000円 |
| 看護職・リハビリ職(正規) | 資格保有 | 15,000円 |
| ケアマネジャー(正規) | 資格保有 | 15,000円 |
| 事務職員(正規) | ― | 10,000円 |
| パート | 週20時間勤務換算 | 6,000円 |
※あくまで配分イメージの一例です。 実際の配分額は事業所の加算取得額・職員構成・賃金規程によって異なります。
STEP5:就業規則・賃金規程を整備し職員に周知する
配分設計が固まったら、就業規則や賃金規程に配分方法・支給基準を明記します。口頭での説明だけでは不十分な場合もあるため、書面による周知も検討しておくと良いです。また、説明会を実施して周知したことの記録を残しておくことで実地指導への備えにもなります。
STEP6:処遇改善計画書を作成・提出する
配分設計の内容をもとに、処遇改善計画書を作成し期日までに提出します。計画書には配分対象者・配分方法・改善額などを正確に記載する必要があります。年度途中で加算額や配分内容に変更が生じた場合は、速やかに計画書を修正し、自治体への変更届出を行いましょう。
また、処遇改善手当を配分する際には書類の作成も常にセットで管理しなければなりません。 実際の配分内容が計画書に正確に反映されていなければ、どれだけ適切な配分を行っていても要件を満たしたと認められない場合があります。
STEP7:年度末に実績を検証し実績報告書を作成する
年度末には、計画書の内容通りに賃金改善が実施されたかを検証します。加算額と賃金改善額の整合性を確認したうえで、実績報告書を作成・提出します。書類と配分の実態が一致していることが前提条件であり、 計画書と実績報告書の内容に齟齬がある場合は加算返還のリスクがあるため、年度を通じて定期的に進捗を確認する習慣をつけましょう。
この7つのステップを意識して配分設計に取り組むことで、要件を満たした適切な配分が可能となり、職員も納得感の高い賃金設計となるでしょう。
これだけはNG!配分時に絶対に避けるべきこと
処遇改善加算は柔軟な配分が認められる一方で、明確に禁止されている行為もあります。違反した場合は加算の全額返還や行政処分といったリスクもあります。そのため、以下のNG事項を必ず把握しておきましょう。
加算額以上の賃金改善の未実施はNG
前述した基本的な配分ルールに基づいて、算定した加算の総額は全額を職員の賃金改善(法定福利費の事業主負担増加分を含む)に充てなければなりません。加算を受け取りながら賃金改善が加算額に満たない場合や、利益として内部留保することは違反です。加算はあくまでも職員の処遇改善のために支給されるものであり、事業所の収益にしてはいけません。年度末に加算額と賃金改善額の整合性を必ず確認しましょう。
“処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善が行われていない、賃金水準 の引下げを行いながら5⑵の特別事情届出書の届出が行われていない等、 大臣基準告示及び本通知に記載の算定要件を満たさない場合”
引用:介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
著しく偏った配分はNG
処遇改善手当を配分する際に職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は明確に禁止されています。具体的には以下のようなケースが該当します。
- 一部の職員のみに加算を集中させる(例:管理職や特定の職員だけに高額配分する)
- 同一法人内の特定事業所のみに賃金改善を集中させる(例:収益の高い事業所の職員だけに配分する)
加算はあくまでも介護従事者全体の処遇改善を目的としています。配分基準を明文化し、公平性・透明性を保った運用を心がけましょう。
“一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと。”
引用:介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
現行賃金の引き下げはNG
処遇改善加算はあくまでも現行賃金への「上乗せ」が原則です。加算を受け取ることを理由に、もともとの基本給や各種手当を引き下げることは明確に禁止されています。たとえば以下のようなケースは違反となります。
- 加算分を見込んで基本給を減額する
- 加算導入を機に既存の手当を廃止・削減する
このように現行の賃金水準を維持したうえで賃金改善を行うことが求められます。
“賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする項目を特定 した上で行うものとする。この場合、本通知5⑵の届出を行う場合を除き、 特定した項目を含め、賃金水準(賃金の高さの水準をいう。以下同じ。)を 低下させてはならない。また、安定的な処遇改善が重要であることから、基本給による賃金改善が望ましい。”
引用:介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
特別事情の届出なしに賃金引き下げはNG
経営悪化などのやむを得ない事情により、どうしても賃金水準を下げざるを得ない場合は「特別事情届出書」の提出が必要です。この届出なしに賃金を引き下げた場合は要件違反となり、加算の返還を求められるリスクがあります。経営上の理由で賃金の見直しが必要な場合は、必ず所定の手続きを経たうえで対応しましょう。
“処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善が行われていない、賃金水準 の引下げを行いながら5⑵の特別事情届出書の届出が行われていない等、 大臣基準告示及び本通知に記載の算定要件を満たさない場合”
引用:同上
ほかにも以下のようなNGがあります。
- 賃金改善の具体的な方法や就業規則の内容を職員に周知していない
- 実績報告書などで虚偽の記載をしたり、不正な手段で加算を受けたりすること
違反した場合のリスク
配分ルールを守らなかった場合、以下のような重大なリスクが生じます。
①加算の全額返還
賃金改善が適切に行われていないと判断された場合、受け取った加算の全額返還を求められる可能性があります。
②行政処分・業務停止
悪質な不正請求と見なされた場合、行政処分や最悪の場合は事業所の業務停止処分につながるケースもあります。
③実地指導での指摘
都道府県や市町村による実地指導では、処遇改善加算の配分状況が重点的に確認されます。計画書・実績報告書と実際の賃金改善の内容に齟齬がないよう、日頃から書類管理を徹底することが重要です。
配分ルールについてよくある質問(FAQ)
処遇改善加算の配分ルールについて、実務上よくある質問をQ&A形式でまとめました。運用上の判断に迷った際の参考にしてください。
参考:介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)|厚生労働省
Q1. 賃金改善額が処遇改善加算の加算額を下回った場合、返還が必要ですか?
A. 賃金改善額が加算額を下回った場合、算定要件を満たさないものとして加算の返還対象となります。ただし、不足分を賞与等の一時金として職員に追加配分することで、返還を求めない取り扱いとなる場合があります。年度末の実績報告前に加算額と賃金改善額の整合性を必ず確認しましょう。
Q2. 介護職員以外(看護師・調理員・事務員など)にも配分できますか?
A. 配分対象には介護職員以外の全職種が含まれます。看護師・理学療法士・管理栄養士・調理員・事務職員なども対象となります。ただし、介護職員、特に経験・技能のある介護職員の処遇改善を基本としたうえで、事業所の判断により柔軟に配分することが求められます。一部の職員や特定事業所への著しく偏った配分は禁止されています。
Q3. パート職員や派遣職員も配分対象になりますか?
A. パート職員は配分対象となります。また派遣職員についても、派遣元と協議したうえで処遇改善加算の対象とすることが可能です。その場合、加算を原資とした派遣料等の上乗せが派遣職員の給与に反映されるよう、派遣元と事前に協議する必要があります。派遣職員を対象とする場合は、計画書・実績報告書にも派遣職員を含めて作成しましょう。
Q4. 経営悪化により賃金水準を引き下げることはできますか?
A. サービス利用者数の大幅な減少など経営が著しく困難な場合でも、賃金水準を引き下げる際は合理的な理由に基づき適切に労使の合意を得る必要があります。また、賃金水準を引き下げる場合は「特別事情届出書」の提出が必要です。なお、特別な状況が改善した場合は、可能な限り速やかに引き下げ前の水準に戻すことが求められます。
Q5. 処遇改善加算の賃金改善について、事前に労使で協議する必要はありますか?
A. 処遇改善計画書の内容およびキャリアパス要件を満たすことを示す書類については、全ての職員への周知が必要です。特に就業規則の不利益変更に当たるような場合は、合理的な理由に基づき適切に労使の合意を得る必要があります。配分方法の変更など職員に影響する内容は、事前に十分な説明と合意形成を行うことがトラブル防止につながります。
処遇改善加算の配分ルールを正しく理解し、適切な運用を心がけよう
令和8年度の介護報酬改定により、処遇改善加算は対象職種・サービスの拡大や賃上げ幅の拡充など、これまでよりも大幅な賃上げ実現を目指した改定となりました。しかし制度としてはさらに複雑となり、多くの方が混同してしまう恐れがあります。
そこで、まずは改定内容を正確に把握したうえで、配分ルールの基本原則に沿った配分設計を事前にしっかりと行うことが重要です。「誰に・どのように・いくら配分するか」を明文化し、職員への周知と合意形成を丁寧に進めましょう。
また、処遇改善手当を配分する際は書類で記録管理するように徹底しましょう。処遇改善計画書・実績報告書を正確に作成・保管し、年度を通じて計画的に運用することが、職員の処遇改善と事業所の安定経営、そして人材確保・定着につながります。加算取得をゴールではなく、より良い職場環境づくりのスタートラインとして積極的に取り組んでいきましょう。