被介護者の生きる姿は、専門職の知識・技術・意識・経験値によって大きく変わる

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髙橋 秀明 氏

第3回は「被介護者の生きる姿は、専門職の知識・技術・意識・経験値によって大きく変わる」ことをお伝えしてコラムを書き終えることにします。

「職員個々の価値観」に基づいた介護が展開されていたデイケアは、利用者が主体的に活動することが少なく受動的でした。
そのため、支援のあるべき姿(基本方針)を共通認識したうえで、自分たちの支援のあり方を振り返り、職員たちは気づきます。
「有する能力に応じずに、代行・管理が多い」
今まで自分たちが積み上げてきた実践を変えることは、抵抗が生まれやすいもの。
しかし、議論の軸を、基本方針に焦点をあてることで、職員にとっても腹に落ちたのです。

例を挙げれば、食事の下膳と飲み物の選択については可能な限り「有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう」に支援内容を変更。
自分で食べたものは自分で片づける、自分で片づけることが難しい人には利用者同士が助け合う(または職員が代行する)姿があちこちでみられるようになりました。
歩くことが不安定な利用者さんでも「おれも自分でやるよ」と言い、職員が付き添いながら下膳します。
また、一律的にお茶を提供していた飲み物もドリンクバーを設置して自ら飲み物を選んで飲めるような環境に変更。
自分で飲み物を取りに行けない方には職員が「〇〇と〇〇と〇〇がありますが、どれを飲みたいですか?」と意思を確認しながら代行します。
また利用者さん同士が「持ってきてあげるよ」「コーヒーにミルクは入れる?」など助け合う姿があちこちにみられるようになりました。
受動的かつ不活発だった利用者さんの姿が、主体的・能動的に大きく変化し、デイケア内の景色が一変しました。

私が介護の仕事を通じて出会った大半の方は、出会った時には

  • こんな身体になっちゃってつらい
  • こうは(介助が必要な状態)なりたくなかった

等というネガティブな感情を抱いていました。
不本意ながら要介護状態になったのだから、ネガティブ感情を抱いて当然です。
しかし、「こんな身体になっちゃってつらい…けれどもあなた(専門職)に出会えたから、前向いて生きていこうと思えるようになった」と一人でも多くの方に思ってもらえるように尽力するのが専門職の専門性です。
そのために専門職の知識・技術・意識イコール質を高める必要があると考えます。

専門職に求められる介護の実勢事例

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髙橋 秀明 氏

はじめまして。特別養護老人ホーム裕和園髙橋秀明です。
本コラムでは「介護の質とは、支援者の質である」をテーマに3回に分けてお話しします。
第2回目は「専門職に求められる介護の実勢事例」です。

前回、私たちがやりたい介護ではなく求められる介護を展開する、求められる介護の本質は介護保険法及び運営基準の基本方針にあるとお話しさせていただきました。

以前私は介護老人保健施設(以下、「老健」)で仕事をしていました。入所部門の責任者をしていた私が、平成29年から通所(以下、「デイケア」)部門も担当することになりました。

担当し始めた当時のデイケアは、職員個々の介護観に基づいた支援が展開され、そのコンセプトは、
「何でも職員がやってさしあげる”おもてなし”」でした。
その当時、職員が慌ただしく動いている半面利用者は椅子に座りじっとしているデイケアの風景が目に留まりました。
デイケアの基本方針(目指すべき事業の姿)が運営基準にこう書かれています。

「(中略)その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活をことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し…(中略)、利用者の心身の機能の維持回復を図るものでなければならない。」

つまり、デイケアを利用することで、

  • 本人が今できていること、わかっていることを、これからもでき続けられるように、わかり続けられるように。
  • できなくなっていることは、本当にできなくなっているのか専門職が見極め検証し、取り戻すことができるように支援する。
  • 本当にできなくなっていることについては代行する。

ことがあるべき事業の姿イコール専門職に求められる支援と言えます。

先述したような、当時のデイケアの「おもてなし」も大事なことではありますが、何でもやって差し上げることに尽力していては、利用者が「活動しない→機能や能力を使わない→機能や能力が衰える」になり、ひいては基本方針に逆行してしまうのです。

第3回に続きます。

介護の質とは支援者の質

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髙橋 秀明 氏

はじめまして。特別養護老人ホーム裕和園髙橋秀明です。
本コラムでは、「介護の質とは、支援者の質である」をテーマに3回に分けてお話しします。
第1回は「専門職に求められる介護とは」です。

この業界では、「自分たちがやりたい介護を実践する」という理念を掲げている事業所、またはその類の考えを支援の軸足に介護をしている専門職に出会うことがあります。
この国では「介護とは○○」と一本化かつ明確な定義づけがなされていないため、介護については捉え方・考え方に統一性がなく、受け取り側の知識や経験でイメージされがちです。

そのため、介護とは「傍に付き添って身体の動作等を手助けする」「もてなし、やって差し上げる」等のイメージを持たれる方も多いでしょう。
もし、介護を生業にする専門職が、各々のイメージ(価値観・介護観)で仕事をしていたとしたら・・・。
「何でもやって差し上げる」「本人(利用者)ができることは自分で行い、できない部分をサポートする」等、専門職の持つ価値観・介護観によって支援に差異が生じることになります。
そして、その影響を良くも悪くも受けるのは、他でもない本人(利用者)です。

ある大企業をV字回復させた立役者は、「顧客が求めているもの」と「提供者が作る(作りたい)もの」は必ずしも一致しないと仰いました。
それに気づけたことがその企業のV字回復につながったのです。
上記を介護の仕事に置き換えると「自分がやりたい介護」を考える前に、「社会から求められる介護」を突き詰めて考えることが大事と言えるでしょう。
そして、考える基礎・基本は介護保険法です。
介護保険法の指定を受けた事業所で仕事をするということは、介護保険法の目的に謳われた「尊厳を保持し、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように…」、そして、その目的に基づいて各事業に謳われている「運営基準の基本方針」を読み込んで理解して実践する。
それこそが「専門職に求められる介護」なのです。

第2回では、専門職に求められている介護を徹底的に思考し、支援に展開させた実践事例についてお話しします。