前回のコラムでは、制度と心の支援の両輪が噛み合うことの重要性を考えました。制度が整っていても、支援が届かない“声なき声”が存在し、支援者の熱意や人とのつながりが支援を可能にしている現実を見つめ直しました。
日々、誰かを支える立場にある皆さんへ。
今回は、そんな“支える人”自身の健やかさに焦点を当ててみたいと思います。支援の現場を支える「支援者自身」に光を当てながら、包括的な支援体制づくりと、支える人を支える仕組みについて考えていきます。
社会福祉法改正により位置づけられた「重層的支援体制整備事業」は、複合的な困難を抱える方々への包括的なアプローチを目的とした任意事業です。市町の実情に応じて創意工夫をもって進められ、子ども・障がい・高齢・生活困窮といった分野を横断し、制度の狭間にいる方々への伴走型支援が求められています。
現場では、重介護や複合的な課題を抱える介護者が、孤立の中で苦しみを誰にも打ち明けられずにいます。発達段階に応じた生活が阻まれている子ども若者ケアラーの姿も、見過ごしてはならない現実です。
私たち支援者は、サービスへ繋げるだけでなく、「人とつながる信頼できる存在」であることが、介護者の心の拠り所になるはずです。癒しとなる時間や息抜きの場、一緒に探していく過程そのものが、支援の始まりになることもあります。
そのためには、対象者を取り巻く背景や家族関係、地域文化を含めたアセスメント力を高めることが重要です。今後は保健・医療・福祉・介護に加え、産業や教育とも連携し、地域で支える包括的な支援体制づくりが求められます。
とりわけ、地域診断をベースに赤ちゃんから高齢者までを見守り、個別事例をもとに地域づくりを進めてきた保健師との協働は、予防的な福祉の一歩として大きな可能性を秘めています。保健師の視点と関係性の力は、各自治体における包括的な相談支援や地域づくりなど、重層的な支援体制整備の中核を担う存在として、今後ますます重要な役割が期待されます。
そして何より、支援者自身も人間です。余裕のない心では、「声にならない声」に気づくことはできません。仕事や家庭だけでなく、サードプレイスのような心の拠り所があることは、支援者にとって大切な資源です。
支援の現場では、対象者との関わりの中で、言葉や表情などの反応に癒されたり、ともに連携する支援者の仲間から力を頂く瞬間があります。その温もりは、支援者自身の心を満たし、次の支援へとつながるやさしさのバトンとなります。支援者が健やかであることは、支援の質を高めるだけでなく、地域全体の福祉力を底上げする力にもなります。 支援の力は、支援者の健やかさから生まれる。その循環が、地域の未来をやさしく照らしていくことを願って。
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