訪問看護の医療保険分のオンライン請求が、2024年5月から始まります。「まだ先の話だから、うちの事業所は様子を見よう」と思っている事業所の責任者もいるかもしれません。しかし、システムの利用には専用回線や専用端末が必要で、事前に準備することが多いため、今から準備しなければ間に合わない可能性があります。
状況によっては回線工事が必要になる場合も考えられます。この機会に、オンライン請求の概要と準備するべきポイントを把握しましょう。
訪問看護レセプト電子化の概要
まずは、訪問看護レセプト電子化の目的やメリットなどについて確認しましょう。
電子化への背景や目的
訪問看護の介護保険分はすでにオンライン請求に対応済みですが、2024年5月からは、訪問看護の医療保険分のオンライン請求が開始されます。
請求件数が年々増加するなかで、紙の書類による運用をこのまま継続すると、訪問看護事業所のレセプト請求事務の効率化が図れないことが、電子化推進の背景に挙げられます。
また、介護保険だけでなく、訪問看護すべての請求をオンラインで可能にすることで、データの分析や地域医療、在宅医療の実態を把握したいという狙いも厚生労働省にはあります。
具体的な開始時期
オンライン請求が本格的に開始されるのは、2024年5月です。
まだまだ時間があると思うかもしれませんが、実は医療保険分のオンライン請求は、介護保険分と同じネットワーク回線が利用できないため、専用の回線や端末を準備しておく必要があります。そのため導入には時間と費用がかかり、今から計画を立てて備えておかないと間に合わないこともありそうです。今から準備に着手しても、早すぎるということはありません。
訪問看護レセプト電子化のメリット
訪問看護のレセプトを電子化にすると、訪問看護事業所にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
考えられるメリットは主に以下のとおりです。
- レセプトの印刷や、発送業務が不要になる
用紙代や発送費用などのコストを削減できます。 - レセプトの受付期間が長くなる
郵送にかかる時間がないため、受付期間が長くなります。 - 資格過誤が理由の返戻レセプトが少なくなる
オンライン資格確認と併用することで、利用者の保険資格がすぐに確認可能なため、資格過誤を減らすことができます。 - 還元帳票を電子データで一元管理できる
返戻レセプトと振込額明細が審査後にデータとして戻ってくるので、パソコンで一元管理ができます。
オンライン請求までの流れ
オンライン請求はどのように行うのでしょうか。簡単に流れを見てみましょう。
- レセプト作成用の端末と、レセプト作成用のソフトウェアを使用してレセプトを作成する。
- オンライン請求用の端末から、専用のネットワーク回線を使ってレセプト請求を審査支払機関に提出する。
- 支払基金・国保連合会で審査が実施される。
- 支払基金・国保連合会から医療保険者へデータが送付され、点検が行われる。
- 支払基金・国保連合会からレセプトデータがNDB(ナショナルデータべ―ス)に集積される。
必要な準備とスケジュール
厚生労働省がモデルとして打ち出している具体的なスケジュールと、準備しておくものを紹介します。
オンライン請求に必要なもの
- レセプト作成用端末(看護レセプトをすでに端末で作成している事業者は不要)
- レセプト作成用ソフト(看護レセプトをすでに端末で作成している事業者は不要)
- オンライン請求用の端末
- オンライン請求用ネットワーク回線(IP-VAN/IPsec+IKR)
- 電子証明書
- セキュリティ対策
事業所での準備とスケジュールと概算経費
オンライン請求を開始するまでのスケジュールです。ここでは、主に訪問看護事業所が作業する部分を簡単に説明します。下の図とあわせて確認してください。
【2023年4月~7月】準備作業
レセプト作成用とオンライン請求用の端末を準備し、訪問看護システムベンダーとの契約などを進めます。また、専用の回線を敷設するため、業者との打ち合わせも必要です。
【事業所での準備作業リスト】
- レセプト作成用の端末を準備
- 訪問看護システムベンダーとの契約調整
- オンライン請求用端末の準備
- オンライン請求用ネットワーク回線(IP-VAN/IPsec+IKR)の敷設
【2023年8月~2024年1月】導入作業
端末の設定、セキュリティ対策や運用に向けたフロー・ルールの作成、オンライン請求にかかわる届出や電子証明書の発行を受けるための届出などを行います。
【事業所での準備作業リスト】
- セキュリティ対策
- 運用に向けたフロー・ルールの作成
- オンライン請求開始の届出
- 電子証明書発行の届出
【2024年2月~4月】テスト作業
接続、運用はシステムベンダーが主体となって行いますが、事業所でも、この時期は準備したシステムに不備がないかを確認し、本格始動に備えておく必要があります。
【2024年5月~】オンライン請求開始
いよいよオンライン請求が始まります。
ここまでの道のりを簡単に見てきましたが、正常に運用開始されるまでの準備期間も含め、プロジェクトにかかわる人材も必要です。
オンライン請求の準備・運用に専念するための人員も確保しておきましょう。

オンライン請求システム構築の費用の目安
初期費用
厚生労働省の周知資料訪問看護(オンライン資格確認・オンライン請求)の概要によると、訪問看護オンライン請求の初期費用の目安は約112,900円と算出されています。明細は以下のようになります。これから準備する事業所は参考にしてください。
- 電子証明書発行料 1,500円+郵送費
- ネットワーク回線敷設費用 約11,400円
- オンライン請求端末購入費用 約100,000円
これらの金額はあくまで目安であり、実際はシステムベンダーによって異なります。
また、厚生労働省において、オンライン請求とオンライン資格確認の導入を同時に準備する場合には、費用の補助も検討されているようです。
月々にかかるネットワーク回線の費用
1か月にかかるネットワーク回線の費用の見込み金額を紹介します。前出の厚生労働省の資料では、以下の金額が紹介されています。
ただし、あくまでも目安であり、ネットワーク回線の種類などにより金額は変わるため、正確な費用は業者へ問い合わせが必要です。
- IP-VPN接続
回線使用料(1か月・約6,000円)
インターネット接続をする場合は、別途プロバイダの費用が必要です。 - IPsec+IKE接続
回線使用料とプロバイダ料金とともに、IPsec+IKEサービス提供料(1か月・約1,800円~6,000円)が必要です。
請求回線はオンライン資格確認も併用可能
レセプト作成端末で使用している回線では、オンライン請求はできません。
しかし、オンライン請求回線ではオンライン資格確認を行うことができます。
オンライン資格確認とは
訪問看護を利用している人の保険資格の情報や、服用している薬剤の情報、特定検診を受けたときの結果などを、事業所からオンラインで確認できる仕組みを、オンライン資格確認といいます。
オンライン資格確認を利用する事業所のメリット
- 利用者の保険資格がリアルタイムで確認できるため、資格過誤のレセプトの返戻が軽減される
- 服用している薬がわかるので、より安心、安全の医療が受けられる環境を利用者に提供できる
- マイナンバーカードなどで本人確認を行うと、訪問看護ステーションでも特定検診の情報が閲覧可能。その結果、利用者の健康状態をより把握できるので、サービスの向上につながる
オンライン請求の導入を考えている訪問看護事業者は、オンライン資格確認もあわせて利用すると、さらに利用者へのサービス向上が期待できるのでおすすめです。
訪問看護レセプトの電子化の対応は早めに始めよう
訪問看護の介護保険分だけでなく、2024年5月からは医療保険分もオンライン請求が始まります。
今までは紙の書類で申請する方式でしたが、今後レセプトは原則電子化になることは必至です。
その際に必要なのが、端末やネットワーク回線、そして「介護ソフト」です。
介護ソフトの「介舟ファミリー」は、介護保険請求、医療保険請求のレセプトどちらにも対応しているので、わざわざ2種類のソフトウェアを導入する必要がありません。
オンライン請求は回線の敷設などの初期費用がかかります。
少しでも経費を削減したいと考えている場合には、介舟ファミリーの導入をぜひご検討ください。