2024年度に実施される介護保険法の改正は、多くの事業所運営者が注目しています。なかでも気になるのは、介護報酬の改定率ではないでしょうか。社会保障審議会や介護給付費分科会を経て、各サービスや課題の議論、ヒアリングも終了し、いよいよ2024年度の介護保険法改正が決定されました。この記事では2024年改正における決定事項の一部をご紹介します。
2024年度の介護保険改正とは
2024年度の介護保険改正の概要と目的を確認しておきましょう。
2024年度の改正の概要
厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」は、2023年12月に審議報告をとりまとめました。大きな柱は4つです。
- 地域包括ケアシステムの改定
- 自立支援・重度化防止を重視した介護サービスの改定
- 良質なサービスと、職場改善の改定
- 制度の安定性・持続可能性の確保の改定
介護報酬改定率は+1.59%、基準費用を上乗せして実質約2%アップ
令和6年度の介護報酬改定は改定率1.59%のプラスで決定しました。
そのほかに、賃上げや光熱水費の基準費を上げることで2.04%の増収になる見込みです。また、介護現場で働く職員に対しても、2024年度には2.5%、2025年度には2.0%のベースアップが予定されていますが、配布方法や時期などはまだ決まっていません。2026年度についても、令和8年度の予算編成で検討する予定です。
訪問介護・定期巡回では報酬引き下げ
上記のように介護報酬はアップした一方で、介護事業経営実態調査において収支差率が比較的安定していたためか、基本報酬が引き下げられたサービスもあります。
- 訪問介護 -2.4%
- 定期巡回サービス -4.4%
- 夜間対応型訪問介護 -3.5%
厚生労働省は、介護職員等処遇改善加算において高い加算率を設定しているとして理解を求めていますが、大きな驚きと不満が上がっています。
在宅医療系サービスの改定は6月施行予定
改定はおおむね4月1日に施行されますが、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4つのサービスは6月1日施行の見込みです。該当する事業所は、改定内容に対応するなど注意する必要があります。
介護報酬について詳しくは「介護報酬とは?報酬計算の方法や仕組みをわかりやすく解説!」をご覧ください。
2024年の介護保険改正の決定事項
介護保険法の改正で決定された事項の中からいくつかご紹介します。
業務継続計画(BCP)の未策定事業所に対する減算の導入
業務継続計画が未策定の事業所は、基本報酬が減算されます。しかし令和7年3月31日までの間に、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算にはなりません。
高齢者虐待防止措置の推進
居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く全サービスで、高齢者虐待防止の措置が講じられていない事業所は、基本報酬が減算の対象となります。
身体的拘束等の適正化の推進
短期入所系、多機能系サービスでは、身体拘束等の措置が講じられていない場合には基本報酬が減算となります。
訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売 及び 居宅介護支援では、「緊急やむを得ない場合」を除いて身体的拘束等を行ってはならないこととしています。
管理者の責務および兼務範囲の明確化
管理者の責務については「サービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行うこと」とされ、管理者が兼務できる事業所の範囲についても、「管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない」とルールが明確化されました。
ローカルルールについて
人員配置のローカルルールについては、厚生労働省令の範囲内での内容となり、事業者から説明を求められた場合にはその必要性を説明できるようにすることが求められます。
重要事項等のインターネット上での公表の義務化
重要事項等は、書面掲示とインターネット上での公表の双方が必要となります。介護事業者は、法人のホームページまたは情報公表システム上に重要事項等の情報を掲載し、いつでも誰でも閲覧できるようにすることが義務化されます。
感染症対応への新たな評価
感染症のパンデミックが発生した際に、医療機関と連携して高齢者を施設内で療養させることができる事業者には、新たな評価が設けられます。評価対象は以下の3点です。
- 新興感染症の発生の際に、感染者の診療等を請け負う医療機関(協定締結医療機関)と連携体制を構築していること
- 新型コロナウイルス感染症を含む一般的な感染症について、発生時の対応を協力医療機関等と取り決めるとともに、連携して適切な対応を行っていること
- 医療機関等(感染症対策にかかる一定の要件を満たす必要があります)や地域の医師会が定期的に主催する感染対策に関する研修に参加し、指導などを受けること
BPSDの防止、早期対応に向けた取り組みへの評価
認知症チームケアの評価に新加算が設けられます。
一体的計画書の見直し
利用者を重症化させないという観点から、リハビリ・機能訓練、口腔、栄養を一体的に計画してサービスを提供することが推進されます。
一体的計画書について詳しくは「【2024年度介護保険法改正】一体的計画書とは?一体的計画書について詳しく解説」をご覧ください。
訪問系、短期入所系の口腔管理に関わる連携
事業所と歯科専門職を連携させて、適切な口腔管理を目指すことから、口腔関連強化加算が新設されます。
ユニットケア施設管理者研修
個室ユニット型施設を運営する管理者には、ユニットケア施設管理者研修の受講が努力義務となります。
科学的介護推進体制加算の見直し
科学的介護推進体制加算についても見直され、LIFEへのデータ提出の頻度が6か月に1回から3か月に1回となります。LIFEについて詳しくは、「科学的介護情報システム(LIFE)とLIFE加算をわかりやすく解説!」をご覧ください。
ADL利得の計算方法の簡素化
ADL維持等加算の際のADL利得の値が変更になり、ADL利得の計算方法が簡素化されます。
排せつ支援加算の評価対象の追加
排せつ支援加算における評価対象のアウトカムに尿道カテーテル抜去が追加となります。
褥瘡(じょくそう)マネジメント
施設入所時に認められるなど、既にある褥瘡の治癒も評価の対象となります。
処遇改善3加算は「介護職員等処遇改善加算」に
以下3つの加算は一本化され、「介護職員等処遇改善加算」となります。
- 介護職員処遇改善加算
- 介護職員等特定処遇改善加算
- 介護職員等ベースアップ等支援加算の各加算
外国人介護人材の人員配置基準の見直し
就労開始から6か月未満のEPA介護福祉士候補者や技能実習生は、条件を満たすことで就労開始から人員配置基準に算入できるようになります。
介護保険法改正における懸念点
2024年度の介護保険法改正は、2025年に団塊世代が後期高齢者となる現状を見据えた改正ともいわれています。2割自己負担の対象拡大や、処遇改善加算の一本化などが実施された際は、介護保険請求時の事務作業が煩雑になることが十分に予測できます。また、前述のとおり2024年の介護保険法の改定では介護報酬改定率1.59%を打ち出しています。そのため、申請手続きの書類の提出がさらに増えることも懸念されます。
2024年度の介護保険法改正への準備は介護ソフトの導入から
2024年度の介護保険法改正に向けて、事業所の運営責任者は、今から対策をしておく必要がありそうです。ICT化を進める厚生労働省は、介護ソフト導入を前提に書類作成の義務化を推し進めることは十二分に考えられます。
介護ソフト未導入、またはリプレイスを考えている事業所は、この機会に検討することをおすすめします。改正が始まってからでは、余裕を持った検討が難しくなるかもしれません。
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