【課題点は?】ケアプランが有料化へ?ケアマネへの影響は?賛否分かれるケアプラン有料化問題を詳しく解説!

【課題点は?】ケアプランが有料化へ?ケアマネへの影響は?賛否分かれるケアプラン有料化問題を詳しく解説!

近年、介護業界で大きな議論を呼んでいるのが「ケアプラン有料化」の問題です。厚生労働省は2027年度の介護保険制度改正に向けて、これまで全額公費負担だった居宅介護支援に利用者負担を導入するか否かの検討を本格化させています。

この制度変更は、利用者だけでなく、ケアマネジャーや介護事業所の運営に大きな影響を与える可能性があります。そのため最新の動向を把握し、適切な準備を進めることが求められています。

本記事では、ケアプラン有料化の最新状況、制度変更がもたらす影響、そして事業所としてどのような対応が必要なのかを詳しく解説します。利用者への説明方法やケアマネジャーのサポート体制など、実務に直結する内容をお届けします。


ケアプラン有料化の最新動向(2025年11月時点)

2025年10月29日、厚生労働省は社会保障審議会・介護保険部会において、居宅介護支援への利用者負担導入について議論を開始しました。これは2027年度の介護保険制度改正に向けた重要な論点の一つとして位置づけられています。

参考:ケアプラン有料化、再び制度改正の焦点に 審議会で現場から慎重論相次ぐ|介護ニュースJOINT

現在、居宅介護支援は介護保険から10割給付されており、利用者は他のサービスのような1割から3割の自己負担を支払う必要がありません。しかし、介護保険財政の逼迫と現役世代の負担増加を背景に、この仕組みの見直しが検討されているのです。

引用:地域包括ケアシステムの深化、持続可能性の確保|厚生労働省

審議会では賛否両論が交わされており、現場の関係者からは導入反対の声が相次いでいます。一方、健康保険組合連合会や日本経団連は、現役世代の負担軽減のために検討が必要だと主張しています。最終的な判断は2025年末に下される見通しで、介護業界全体が大きな岐路に立たされています。

そもそもケアプランとは?

ケアプラン(介護サービス計画書)とは、要介護認定を受けた方が適切な介護サービスを利用するための計画書です。ケアマネジャー(介護支援専門員)が、利用者の心身の状態や生活環境、本人や家族の希望を踏まえて作成します。

2025年11月現在、居宅介護支援は介護保険から全額給付されており、利用者の自己負担はゼロです。これは訪問介護やデイサービスなど、他の介護サービスとは異なる扱いとなっています。

ケアプランが無料の理由

では、なぜ無料なのでしょうか。その理由はケアプランが介護サービスの最初の入り口のためです。制度設計者たちは、この入り口に経済的なハードルを設けてしまうと、本当に支援が必要な人が相談をためらうかもしれないという事態を危惧していました。もし最初のケアプラン時に料金がかかるとなれば、費用を気にして相談を先延ばしにし、心身の状態が悪化してから介護保険を使い始めるケースが多くなるかもしれません。するとより多くの人やお金が発生してしまうでしょう。そうした悪循環を防ぐため、あえて利用者負担をゼロに設定したと考えられています。

令和5年の「介護保険事業状況報告」では1か月あたり約422万人もの人が居宅介護支援を利用しており、在宅で介護サービスを受ける方のほぼ全員がケアマネジャーのサポートを受けています。誰もが躊躇なく相談できる仕組みが、日本の介護保険制度を支えてきたといえるでしょう

引用:介護保険事業状況報告|厚生労働省

しかし時代は変わりました。近年の深刻な人材不足により、サービス提供体制は逼迫しています。加えて、高齢化の進展に伴う給付費の増大と現役世代の負担増加により、介護保険制度の持続可能性が問われる状況となっています。こうした背景から、ケアプラン有料化の議論が活発化しているのです。

ケアプラン有料化の課題点

ケアプラン有料化については、さまざまな立場から懸念が表明されています。ここでは審議会で指摘された主な課題点を整理します。

利用者の利用控えが起きる可能性が高まる

ケアプラン有料化で大きく懸念される点として、自己負担の発生による利用控えが挙げられます。日本介護支援専門員協会の小林広美副会長は、「負担増で介護サービスの利用控えにつながり、介護状態が重度化するリスクがある」と警鐘を鳴らしています。

ケアプランに数百円から千円程度の自己負担が発生すると、特に経済的に余裕のない高齢者は利用を躊躇する可能性があります。その結果、適切な支援を受けられず、介護状態が悪化してしまう悪循環に陥ることが懸念されます。

ケアマネジメントの公正中立性が危うくなりかねない

ケアプラン有料化は、ケアマネジャーの業務にも影響を与えかねません。小林副会長は、「自己負担を導入することで、過不足のない公正中立な支援を展開している介護支援専門員のサービス調整に支障をきたす」と指摘しています。

現在、ケアマネジャーは利用者の状態やニーズに基づいて、客観的にサービスを調整しています。しかし、利用者が「お金を払う客」になることで、専門的判断よりも利用者の要望を優先せざるを得ない状況が生まれる恐れがあります。

民間介護事業推進委員会の山際淳代表委員も、「利用者負担の導入によって、ケアマネジメントに求められる客観性、公平性・中立性の確保が難しくなる」と同様の懸念を表明しています。

コスパで利用者を選ぶ可能性が高まる

日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子氏は、ケアプラン有料化に反対の立場を示しています。有料化が実現すれば、事業所の経営判断に変化が生じる恐れがあるためです。たとえば、サービス利用に同意が得られない方や遠方に住む方、家族対応に時間がかかる方など、手間のかかるケースは報酬に見合わないと判断されかねません。

白木氏が指摘するように、事業所が「コスパ重視」で対応しやすい利用者を選び、本当に支援が必要な人ほど取り残される危険性があります。

ケアマネジメントを経ないサービス利用が増加してしまう可能性がある

有料化によって、別の深刻な問題が発生する可能性があります。それは、費用負担を避けるために、ケアマネジメントを経ずに直接サービス事業所と契約したり、利用者自身でセルフプランを作成したりするケースが増えることです。

日本介護支援専門員協会は、「ケアマネジメントを経ずに介護サービスを利用する動きにつながり、逆に給付費が増加するリスクがある」と警告しています。専門的なアセスメントなしで不適切なサービスを過剰に利用すれば、利用者本人にとっても、介護保険財政にとってもマイナスです。

また、現在でもセルフプランの作成は可能ですが、利用者の状態を適切に評価し、必要なサービスを過不足なく組み合わせることは、専門のケアマネジャーでも難しい作業です。知識や経験のない利用者や家族が作成すれば、不適切なプランになる可能性が高まります

特に障害福祉サービスから介護保険への移行時には注意しなければなりません。これまでセルフプランで障害福祉サービスを利用してきた方が65歳を迎え、介護保険サービスに切り替わるケースでは、介護保険だけでは対応しきれず、障害福祉サービスとの併用が必要になることがあります。しかし、相談支援専門員のサポートを受けてこなかった利用者本人は複雑な調整に対応できず、また障害特性を十分に把握していないケアマネジャーも適切な支援を提供できないことも十分に考えられます。その結果、これまで維持できていた生活が崩れてしまう事態が起きかねません。

このように専門的な調整がないまま複数のサービスを利用することで、現場でのトラブルが今まで以上に頻発することも懸念されます。利用者の安全と制度の持続可能性、両方の観点から見過ごせない課題と言えるでしょう。

ケアプラン有料化になった場合、ケアマネへの影響は?

ケアプラン有料化が実現した場合、大きく影響を受けるのがケアマネジャーです。業務内容だけでなく、利用者との関係性や働き方そのものが大きく変わる可能性があります。

利用者との関係性が変化する

現在、ケアマネジャーは「支援者」として利用者と対等な立場で関わっています。しかし有料化されると、利用者は「お金を払う客」という意識を持つようになる可能性が高くなります。

現在は専門的な判断に基づく提案が受け入れられていますが、ケアプラン有料化により「お金を払っているのだから、こうしてほしい」という要望が多くなるかもしれません。このように専門職としての判断とのバランスを取ることが一層難しくなるでしょう。

精神的な負担が増える

有料化により、ケアマネジャーには今まで以上に丁寧な説明が求められます。なぜこのサービスが必要なのか、なぜこの頻度なのか、費用に見合う価値があるのかを、利用者や家族に納得してもらう必要があります。
費用について問い合わせや苦情を受ける機会も増えるでしょう。「このサービスは本当に必要なのか」「もっと安くできないのか」といった声に対応する精神的負担は、決して小さくありません。現在でも多忙なケアマネジャーにとって、さらなる負担増となる懸念があります。

ケアプラン有料化になった場合の事業所の対応策

有料化が決定された場合、介護事業所は早急に対応体制を整える必要があります。ここでは具体的な準備事項を解説します。

利用者・家族への丁寧な説明を行う

まず、利用者と家族への丁寧な説明を行いましょう。制度変更の内容、自己負担額、支払い方法などを分かりやすく説明できる資料を準備できるとスムーズな説明ができます。

「なぜ有料になるのか」「いくらかかるのか」「払えない場合はどうなるのか」など、想定される質問に対して最適な回答を用意することで、現場の混乱を最小限に抑えられます。

また、個別相談の時間を確保することも大切です。経済的な不安を抱える利用者には、丁寧に状況を聞き取り、必要に応じて他の支援制度の情報提供も行いましょう。

ケアマネジャーへのサポートを厚くする

次にケアマネジャーが自信を持って利用者対応できるよう、十分な研修を実施しましょう。制度変更の背景や具体的な内容を正確に理解してもらうとともに、説明のロールプレイングも効果的です。

また、ケアマネジャーへのメンタルケアも忘れてはいけません。利用者からの苦情や問い合わせ対応で疲弊しないよう、管理者がしっかりとフォローする体制を整えましょう。定期的な面談や事例検討会を通じて、不安や悩みを共有できる環境づくりが重要です。

さらに、対応が難しいケースについては、管理者が同席したり代わりに説明したりするなど、柔軟なサポート体制を用意しておくことも大切です。

他職種・他事業所との連携を強化する

有料化によって利用控えが発生した場合、地域全体でサポートする体制がより重要になります。地域包括支援センターとの定期的な情報交換を行い、支援が必要な人を早期に発見・対応できる仕組みを作りましょう。

そのためには医療機関やサービス事業所間との連携も強化が必要です。退院時のカンファレンスなどで、早い段階からケアマネジメントの必要性を伝えることで、スムーズな在宅移行を支援できます。ほかにも事業所間では情報共有や合同研修を通じて、地域全体でケアマネジメントの価値を高める取り組みを進めていきましょう。

ケアプラン有料化における今後の展望

ケアプラン有料化の議論は、今後どのように進んでいくのでしょうか。介護事業所が注目すべきポイントを整理します。

今後のスケジュール

厚生労働省は、2025年末までに社会保障審議会・介護保険部会での議論を取りまとめる予定です。そこで有料化の是非が決定され、導入が決まれば2027年度の介護保険制度改正で実施される見通しです。

今後、数回にわたって審議会が開催され、より詳細な制度設計が議論されるでしょう。自己負担の割合や金額、対象範囲、経過措置の有無などが焦点になる可能性が高いです。介護事業所としては、審議会の議事録や厚生労働省の発表を定期的にチェックしておきましょう。

有料化が決定された場合、2027年4月の制度改正と同時に施行される可能性があります。ただし、すぐに開始とはならず緩和措置として段階的な導入や、一定期間の経過措置が設けられることも考えられます。例えば、最初は自己負担額を低めに設定し、数年かけて段階的に引き上げる方法や、既存の利用者には一定期間適用を猶予する方法などです。制度設計の詳細が明らかになり次第、事業所としての準備計画を具体化していく必要があります。

また、2027年度改正では、介護報酬の見直しやケアマネジャーの処遇改善なども同時に議論されています。

特に注目すべきは、ケアマネジャーの処遇改善です。有料化と処遇改善がセットで議論される可能性もあり、その場合は介護報酬の引き上げや加算の新設なども検討されるでしょう。事業所としては、有料化だけでなく、制度改正全体の動きを総合的に把握することが重要です。

事業所として今から準備できること

決定を待つだけでなく、今からできる準備もあります。それはケアマネジャーの業務効率化です。ICTツールの導入や記録方法の見直しなど、ケアマネジャーの負担を軽減する取り組みを進めましょう。効率化によって生まれた時間を、利用者との対話や質の高い支援に充てることができます。

ケアプラン有料化になっても問題ない準備づくりを

ケアプラン有料化は、2027年度の介護保険制度改正に向けた重要な論点として、現在活発に議論されています。2025年末には方向性が決定される見通しで、介護業界全体が注目しています。

審議会では、現場の関係者から強い反対意見が出されています。利用控えによる重度化リスクやケアマネジメントの公正中立性への影響、セーフティネット機能の低下など、多くの懸念が指摘されています。一方で、介護保険財政の逼迫と現役世代の負担増加という現実も無視できません。賛否両論がある中で持続可能性のある制度に向けて議論が進んでいます。

ただ、この議論を単なる「負担増」として捉えるだけでなく、ケアマネジメントの価値を改めて見直す機会とすることも大切です。有料化の有無に関わらず、利用者本位のサービス提供という原点に立ち返り、質の高い支援を追求していくことが、介護事業所には求められています。

そして、事業所としては今後の審議会の動向を注視しながら、柔軟に対応できる体制を整えていきましょう。利用者と地域社会から信頼される事業所を目指して、今のうちから準備を進めていくことが重要です。

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