介護業界では、ケアマネジャーとサービス事業所の間でケアプランやサービス利用票/別表等を紙・FAXでやり取りする慣習が長年続いており、膨大な転記作業や郵送の手間が現場スタッフの大きな負担となってきました。こうした課題を解消するために厚生労働省が整備したのが「ケアプランデータ連携システム」です。
近年、介護分野のデジタル行財政改革が加速する中で、このシステムへの注目度は急速に高まっています。本記事では、義務化の現状と今後の動向、導入メリット、そして事業所が今から取るべき準備について詳しく解説します。
【最新動向】ケアプランデータ連携システムの導入は義務化される?
よく「ケアプランデータ連携システムを導入しないといけないのでは?」という声を多く耳にしますが、2026年3月現在、ケアプランデータ連携システムの導入は法令上の義務ではありません。しかし、2026年度の介護報酬改定や処遇改善加算・補助金の要件として、ケアプランデータ連携システムの「利用」が求められています。
システムの導入だけではなく、実際に利用していることが必要であり、利用状況の報告も必須となるので、限りなく義務に近いと言えます。
紙やFAXを使わないケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所やサービス事業所にとって、大変便利なツールとなるだけでなく、制度上重要な仕組みとして位置づけられるようになります。今後の制度改正の動向等を見据えて早期に対応しましょう。
ケアプランデータ連携システムは「実質必須」になりつつある
上記のように現在はケアプランデータ連携システムの導入を直接義務づける法令は存在しません。しかし、2025年度に前倒し実施される補助金(介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業)および2026年度介護報酬臨時改定で創設される処遇改善加算の算定要件の一つに、以下のように「ケアプランデータ連携システムへの加入」(補助金では見込みを含める)が明記されています。

補助金の取得要件(訪問・通所サービス等)

訪問看護を含む多くのサービス種別が対象となるため、加算・補助金を取得したい事業所にとっては事実上の必須要件となりつつあります。
さらに「ケアプランデータ連携システムに加入する」だけでは要件を満たしていません。厚生労働省のQ&Aでは、「利用することが必要」と明記されており、単に導入しているだけでは不十分とされています。
具体的な対応として、事業所は以下を求められています。
- ケアプランデータ連携システムの使用画面のスクリーンショットを保存しておくこと
- スクリーンショットは「データの送信または受信の記録がわかるもの」に限ること
- 自治体から求められた場合は、速やかに提出できるよう準備しておくこと
日頃から利用実績を記録・保存するなど、実際にケアプランデータ連携システムを利用することが求められているのです。
参考:処遇改善加算、ケアプーは「加入」でなく「利用」が要件 厚労省Q&A スクショ保存も要請|介護ニュース JOINT

現在は特定のサービスのみケアプランデータ連携システムを導入し実際に利用することが求められていますが、今後十分にその対象範囲が広がっていくことは考えられます。そのため、今のうちからケアプランデータ連携システムについて理解を深めて対応準備を進めておきましょう。
ケアプランデータ連携システムとは
改めてケアプランデータ連携システムについて理解しておきましょう。ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと、訪問介護・通所介護などのサービス事業所との間で行われるケアプランや利用票・実績票のやり取りを、オンライン上で安全かつ効率的に完結させるためのシステムです。

従来は紙やFAXで送付していた書類のやり取りをデジタル化することで、転記作業の削減や情報共有のスピードアップを実現します。厚生労働省が推進するデジタルツールの一つとして位置づけられており、介護現場の生産性向上に大きく役立ちます。
厚生労働省の「ケアプランデータ連携システムについて」もあわせてご覧ください。
ケアプランデータ連携システムで連携できる様式一覧
ケアプランデータ連携システムでは、居宅介護支援事業所とサービス事業所の間でやり取りされる主要な書類をデジタルで送受信することができます。具体的には、以下の様式です。
<居宅介護支援>
- 居宅サービス計画書(第1・2・3表)
- サービス利用票(第6表)
- サービス利用表別表(第7表)
<介護予防支援>
- 利用者基本情報
- 家族構成画像ファイル
- 介護予防サービス・支援計画書
これらはこれまで郵送やFAXで個別にやり取りされていた書類であり、毎月の定例業務として現場スタッフに大きな負担をかけていました。しかしシステムを通じてデータを送受信することで、各事業所の介護ソフトへの自動反映も可能となり、転記作業そのものをなくすなど業務効率化に役立っています。
ケアプランデータ連携システムの利用料金
ケアプランデータ連携システムの利用料金は、これまで事業所1か所あたり年間約21,000円(月額換算で約1,750円)が設定されていました。
| 費用 | 金額 |
| ライセンス料 | 21,000円/年 |
| 電子証明書発行手数料 | 13,200円/3年 |
しかし普及促進を目的として、2025年6月から2026度下期まで無料キャンペーンが開始されています。当初は2026年5月まででしたが、ケアプランデータ連携システムが「介護保険資格確認等Webサービス」との統合が決定したため、キャンペーンが延長されています。初めての方だけでなく、一度ご利用をやめた方など幅広い事業所が対象です。
通常21,000円だったライセンス料が無料となるため「コストが高いな」と感じていた事業所の方も導入を検討しやすいのではないでしょうか。

ケアプランデータ連携システムの料金については、社会保障審議会・介護保険部会において委員から「介護情報基盤との統合まで無料を継続すべき」「統合後も無料化を」といった要望が相次いでおり、厚労省も財政当局と議論を進めるとしています。今後は気軽に始められる金額まで引き下げるか、無料となる可能性もあります。随時、関連情報は確認しておきましょう。
参考:ケアプランデータ連携システム、新たな「介護情報基盤」と統合へ 厚労省方針|介護ニュースJOINT
ケアプランデータ連携システムの具体的な導入メリット
ケアプランデータ連携システムの導入によって、サービス事業所が得られるメリットは以下のように多くあります。加算取得要件だけではない、実務的な側面も頭に入れておきましょう。
業務時間を大幅に削減できる
従来の紙・FAXによるケアプランのやり取りでは、書類の印刷・郵送・受領確認・介護ソフトへの手入力といった一連の作業が毎月発生し、事務スタッフや管理者の時間を大きく消費していました。しかしケアプランデータ連携システムを導入することで、送受信したデータが介護ソフトに自動反映されるため、こうした手間のかかる事務作業を大幅に削減できます。

引用:ケアプランデータ連携システムについて|公益社団法人 国民健康保険中央会
厚労省によるとケアプランデータ連携システムを使用したことで、1か月あたり34.3時間の業務を削減し、約6.2万円分の人件費削減効果がありました。年間換算では約400時間の業務時間の削減と74万円以上のコスト削減につながっています。

引用:介護現場の生産性向上と 2021年4月1日 ケアプランデータ連携システム|厚生労働省
このようにスタッフの業務時間を大幅に削減することで、浮いた時間をほかの業務に充てたり、コストを減らして利益率を高めたりすることに役立ちます。さらにケアの質を高めたり、働きやすい環境づくりに役立てたりするなど、事業所にとってメリットしかありません。
転記ミスを最小限に抑える
紙やFAXでのやり取りでは、受け取った書類を目視で確認しながら介護ソフトに手入力する転記作業が避けられず、入力ミスや読み取りエラーが発生するリスクが常につきまとっていました。しかしケアプランデータ連携システムではデータがそのまま送受信・反映されるため、こうした転記ミスを防ぐことができます。
一度転記ミスをしてしまうと発見~修正まで多くの手間と時間とコストがかかってしまいます。ケアプランデータ連携システムを導入してそのリスクを最小限に抑えることで、経営層・スタッフ・利用者それぞれにメリットがあるといえるでしょう。
ケアプランデータ連携システムの現在の導入状況
上記のように事業所の業務効率化やコスト削減など多くのメリットがあるケアプランデータ連携システムですが、その導入状況は思うように進んでいません。
WAM NETのケアプランデータ連携システム利用状況によると、2026年2月2時点での利用事業所数は25,428件でしたが3月2日現在では37,232件まで増加していました。
このように1か月ほどで利用事業所数は約1万件増加していますが、上述した業務効率化の促進など導入メリットが明確であるにもかかわらず、普及が思うように進んでいない背景にはさまざまな要因が考えられます。
参考:令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況|厚生労働省
参考:ケアプランデータ連携システム 3カ月で7000事業所増|ケアニュースbyシルバー産業新聞
ケアプランデータ連携システムの導入が進まない理由
まず最も大きなハードルとして挙げられるのが、先述した利用コストへの懸念です。年間約21,000円という利用料金は決して高額ではないものの、中小規模の事業所にとっては「効果が見えにくい段階での出費」として敬遠されがちでした。2025年6月からの無料キャンペーンにより3か月で7,000件増加していることが、導入・利用コストへの懸念の現れといっても過言ではないでしょう。
次に、既存の介護ソフトと連携できないことが考えられます。システムを最大限に活用するには、利用中の介護ソフトがケアプランデータ連携システムに対応している必要がありますが、対応状況はソフトベンダーによって異なり、導入に際して別途設定や追加費用が発生するケースもあります。このようにケアプランデータ連携システムと連携できない介護ソフトを使ってしまうと、使いたくても導入できません。
さらに、現場スタッフのITリテラシーや「慣れ親しんだ紙・FAX運用を変えたくない」という心理的ハードルもあるでしょう。特に小規模事業所では、システム導入を主導できる人材が不足しており、導入検討自体が後回しになりがちです。加えて、居宅介護支援事業所とサービス事業所の双方が導入しなければ効果を発揮できないという「ネットワーク効果」の問題もあり、どちらか一方だけが導入しても業務改善につながりにくい構造が普及の足かせとなっています。
こうしたいくつもの要因が重なり、利用率が思うように上がっていかない状況が生まれているのです。
ケアプランデータ連携システムの今後
上記のような利用率が思うように上がらないことを受け、厚生労働省はケアプランデータ連携システムの普及促進に向けた抜本的な方針転換を打ち出しています。その大きな柱となるのが、既存のケアプランデータ連携システムを新たに整備される「介護情報基盤」へ統合するという構想です。
介護情報基盤と統合予定
厚生労働省は2025年6月30日の社会保障審議会・介護保険部会において、ケアプランデータ連携システムを「介護情報基盤」へ統合する方針を提案し、委員から大筋で了承を得ました。
参考:ケアプランデータ連携システム、新たな「介護情報基盤」と統合へ 厚労省方針|介護ニュースJOINT
また2025年12月4日の厚生労働省情報によると、「介護保険資格確認等 WEB サービス」を含む「介護情報基盤」と「ケアプランデータ連携システム」 を統合する方針で検討を進めているとされています。

介護情報基盤とは、介護事業所・医療機関・自治体・利用者がマイナンバーカード等を活用して介護情報を電子的に共有・閲覧できるシステムです。このシステムを活用することで現場がWebで双方を行き来する手間が解消され、運用保守の二重コストも削減できるとされています。

この介護情報基盤とケアプランデータ連携システムを統合することで以下のような導入効果に期待されています。
- ケアプラン原案・個別サービス計画書への利用者同意を電子的に受けられる
- 要介護認定に必要な文書(主治医意見書等)を電子的に閲覧が出来る
- 過去のケアプランやサービス内容を参照しながらプランを作成出来る
このようにデジタル化されることで、紙の管理をなくせるためペーパーレス化の実現やさらなる業務効率化、ケアの質向上が可能となるでしょう。

引用:介護現場の生産性向上と 2021年4月1日 ケアプランデータ連携システム|厚生労働省
統合後の介護情報基盤の運用は、準備が整った市町村から順次開始され、厚労省は2028年4月1日までに全市町村での運用開始を目指すとしています。
事業所が今から進めておくべき対策とは
ケアプランデータ連携システムはその導入効果から国が推進しており、将来的には事業所に義務づけられることも十分に考えられます。ただ、義務化の有無にかかわらず、処遇改善加算・補助金の算定要件への組み込みや介護情報基盤との統合スケジュールを踏まえると、今すぐ準備を始めて早期に導入しておいた方がメリットを多く享受できるでしょう。そのため、以下のような準備を進めておきましょう。
介護ソフトがケアプランデータ連携システムに対応しているか確認する
まず取り組むべきは、現在利用している介護ソフトがケアプランデータ連携システムに対応しているか必ず確認しておきましょう。未対応の場合はベンダーへの問い合わせや乗り換え検討が必要となるため、早期の確認が欠かせません。
多くの事業所様から選ばれ続けている介護・福祉ソフトである「介舟ファミリー」ではケアプラン標準仕様に準拠しており、ケアプランデータ連携システムに対応可能です。対応状況については下記をご覧ください。
さらに実績の確認・承認だけでなく、請求業務、スケジュールの管理、給与計算まで一気通貫で行うことが可能なため、業務効率化をさらに高めて働きやすい環境づくりに貢献します。ほかにも手厚いサポート体制やいつでもサクサク動くシステムの良さが特長です。ぜひこの機会に切り替えを検討されてみてはいかがでしょうか。

ケアプランデータ連携システムの無料キャンペーン中に試験的に導入を検討する
次に、ケアプランデータ連携システムの無料キャンペーンを利用して試験的に運用してみてはいかがでしょうか。無料期間はシステムの使い勝手を確認し、スタッフへの操作研修も行える良い機会です。実際に使いながら課題を洗い出しておくことで、本格導入の際にスムーズに対応できるようになるでしょう。
ケアプランデータ連携システムの導入を積極的に検討しよう
先述したようにケアプランデータ連携システムの導入は、現時点で法令上の義務ではありません。しかし、処遇改善加算・補助金の算定要件への組み込み、2028年を目標とした介護情報基盤への統合、そして介護分野全体のDX推進という大きな潮流の中で、「使わない選択肢」は年々経営リスクとなっています。
ケアプランデータ連携システムを導入することで業務時間の削減やさまざまなコスト削減効果が実証されており、経営を立て直したい事業所にとってはメリットが豊富なツールであるといえます。2026年2月現在は無料キャンペーン中であり、導入のハードルはこれまでより非常に低い状況です。
介護情報基盤との統合が完了する2028年以降は、このシステムへの対応が介護事業所の標準インフラとなることが十分に予想されます。今のうちからケアプランデータ連携システムを導入し、現場のデジタルリテラシーを高めておくことが、今後の制度変化への最善の備えとなるでしょう。
まずはお使いの介護ソフトの対応状況を確認し、ケアプランデータ連携システムの無料キャンペーン中にトライアルしてみることをおすすめします。
ぜひこの機会に、連携対応できる介護ソフトにも切り替えて、働きやすい環境づくりに取り組みましょう。
ケアプランデータ連携システムについては以下でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。