令和8年度から処遇改善加算が大きく拡充し、介護業界からは安堵の声を多く耳にする一方で「処遇改善加算を取得するにあたって変更点はある?」という不安な声も上がっています。
実際、令和8年度から施行される処遇改善加算では制度の中身や様式も変わり、提出期限も2パターンあるなどこれまでと大きく異なります。
そこで、この記事では、令和8年度の処遇改善加算で何が変わったか、計画書の提出期限パターンや計画書の具体的な書き方を、具体例を交えて解説します。
新たな処遇改善加算の変更ポイントについてはこちらのお役立ち資料でさらに詳しく解説しています。
【最新動向】令和8年度処遇改善加算の拡充・変更内容とは
そもそも今回の処遇改善加算の大幅な拡充は、令和7年11月21日に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」を背景としています。この対策を受けて政府は、介護職員の待遇を「他の職種と遜色のない水準」に引き上げることを方針として掲げました。この方針のもと、令和9年度の本改定を待たずに、令和8年から前倒しで処遇改善加算が拡充されることになったのです。

具体的には以下のような拡充が行われます。
対象職種・対象サービス、賃上げ幅が拡大された
これまで介護職員のみ対象でしたが、介護職員だけでなく幅広い職種の「介護従事者」(正規雇用)も対象となりました。また、これまで処遇改善加算の対象外だった以下のサービスが、令和8年6月から新たに対象に加わります。
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅介護支援(ケアマネジャー)
- 介護予防支援
これらの職種・サービスを対象に、月額最大1.9万円(定期昇給0.2万円を含む)増もの賃上げが実施されます。

令和8年度特例要件が新設された
令和8年度から新設された令和8年度特例要件の活用により、これまでキャリアパス要件を満たせず上位区分の加算を諦めていた事業所でも、加算を取得しやすくなっています。
令和8年度特例要件とは、以下のいずれかの取り組みを行っていることが条件です。
| 対象サービス | 取り組み |
| 訪問・通所サービス系 | ケアプランデータ連携システムの導入(利用が必須) |
| 施設・居住サービス、多機能サービス、短期入所サービス等 | 生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの取得 |
| 全サービス共通 | 社会福祉連携推進法人への所属 |
この特例要件を満たすことで、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳや職場環境等要件が現時点で未整備でも、申請時点から要件を満たしているものとして取り扱われます。ただし、令和9年3月末までに整備を完了し、実績報告書でその旨を報告することが条件です。これにより処遇改善加算が取りやすい状況となり、より多くの介護に従事する方の給与を上げることができるようになりました。
要件としても比較的難しくなく、訪問・通所系サービスを運営する事業所であれば、ケアプランデータ連携システムを利用していること(または令和9年3月末までに利用することを誓約すること)で特例要件を満たすことができます。※導入だけでは要件を満たさないため注意が必要です。
計画書の提出時点でまだ利用していない場合でも、「導入し、利用することを誓約する」という記載だけで要件を満たしたものとして取り扱われます(ただし、実績報告書の提出までに実際に利用していることが必要)。
つまり、「キャリアパス要件の書面整備が間に合っていないが、ケアプランデータ連携システムを導入することは今すぐできる」という事業所にとって、加算取得のチャンスとなります。
このように処遇改善加算は上位区分を獲得しやすくなっており、賃上げに大きく期待できるシステムになっていますが、「計画書の提出期限が2パターンあること」「様式が変更されること」には注意が必要です。例年と同じスケジュール感で動いていると、これらの変更に対応できないまま提出期限を迎えてしまう恐れがあります。必ず理解して進めておきましょう。
処遇改善加算の計画書提出パターンは2つある
令和8年度処遇改善加算を取得するための計画書の提出期限は2パターンあります。以下の厚生労働省が発行している介護保険情報をもとに計画書の提出パターンを解説します。
令和8年度の処遇改善加算では、計画書の提出期限が4月15日と6月15日に分かれています。まずは、自分の事業所がどちらに該当するかチェックしましょう。
※より詳細なスケジュールは、各自治体からのアナウンスを必ず確認してください。
| 対象の事業所 | 提出期限 |
| ・4月または5月から処遇改善加算を算定する予定がある(主にこれまで処遇改善加算の対象だったサービス) ・同一法人内に、今回新たに加算対象となるサービス(訪問看護・居宅介護支援など)を併設している |
4月15日まで |
| ・6月以降から初めて申請する ・居宅介護支援のみ・訪問看護のみを運営しており、4・5月は加算なし |
6月15日まで |
4月15日までに提出するパターン
まず、4月15日までに計画書を提出する必要がある事業所を紹介します。
対象となる事業所
令和8年4月または5月から処遇改善加算を算定する事業所・施設が対象です。特養、老健、デイサービス、訪問介護など、これまで処遇改善加算を算定してきた事業所の多くはこちらに該当します。また、同一法人内に、今回新たに加算対象となるサービス(訪問看護・居宅介護支援など)を併設している場合も同様です。
たとえば、特養と居宅介護支援事業所を運営している法人であれば、特養の4・5月分+特養の6月以降分+居宅介護支援の6月以降分、これらをすべて4月15日までに提出する必要があります。
提出する内容
- 4月・5月分の処遇改善計画書
- 6月以降(拡充後)の処遇改善計画書
つまり、2種類の計画書を4月15日にまとめて提出する必要があります。6月分は「6月になってから出せばいい」という認識だと処遇改善加算を取得できない恐れがあります。
6月15日までに提出するパターン
次に6月15日までに提出する必要がある事業所を紹介します。
対象となる事業所
令和8年4月・5月は処遇改善加算を算定せず、6月以降から初めて申請する事業所が対象です。
具体的には、居宅介護支援事業所のみを運営している、または訪問看護ステーションのみを運営しているケースがこれにあたります。これらのサービスは令和8年6月から新たに加算対象となるため、4・5月分の計画書は不要で、6月以降分のみを提出する必要があります。
提出する内容
| 6月以降分の処遇改善計画書のみ |
6月15日という期限は、4月15日と比べると時間的な余裕があるように見えます。しかし、訪問看護や居宅介護支援はこれまで処遇改善加算の実務に携わってこなかった事業所が多いでしょう。
処遇改善加算の取得には給与規程の整備やキャリアパス要件の構築、職場環境改善の計画策定など、計画書の記載に必要な土台づくりを一から行う必要があります。「6月15日まであるから大丈夫」と後回しにしていると、準備が間に合わなくなる可能性があります。早めに動き出すことを強くおすすめします。
処遇改善加算計画書の書き方【記入例あり】
令和8年度の処遇改善加算計画書は、以下の4種類で構成されています。公式で明記されている以下の記入順に沿って進めましょう。
| 記入順 | 様式名 | 内容 | 対象 |
| 1 | 基本情報入力シート(別紙様式2) | 法人・事業所の基本情報。ここを入力すると他の様式に自動反映される | 両パターン共通 |
| 2 | 別紙様式2-2(個票:4・5月分) | 事業所ごとの加算区分・算定対象月・各要件の記載(4・5月分) ※加算率については下記関連コラムを参照ください。 |
4月15日までに提出するパターンのみ |
| 3 | 別紙様式2-3(個票:6月以降分) | 同上の6月以降版。新対象サービスも含む | 両パターン共通 |
| 4 | 別紙様式2-1(総括表) | 賃金改善計画・キャリアパス要件・職場環境等要件の総括 | 両パターン共通 |
提出するセットはパターンによって異なります。
- 4月15日提出パターン:4種類すべてを提出
- 6月15日提出パターン:基本情報シート+様式2-1+様式2-3の3種類を提出
なお、様式のオレンジ色のセルはすべて入力が必須です。空欄があると不備扱いとなり、受理されない場合があります。必ず漏れなく記入してください。
基本情報入力シート(別紙様式2)の書き方
最初に基本情報入力シートを作成しましょう。ここに入力した法人名・事業所情報・担当者情報が、別紙様式2-1・2-2・2-3に自動的に反映される仕組みになっています。

提出先に関する情報(第1項)
加算の届け出に関わる提出先(指定権者)を記入します。提出先は事業所の所在する都道府県知事等になります。複数の都道府県にまたがって事業所を運営している場合は、都道府県ごとに提出が必要です。
記入例:東京都
基本情報(第2項)
法人全体の基本情報を記入します。
| 項目 | 記入例 | 注意点 |
| 法人名(フリガナ) | シャカイフクシホウジン〇〇カイ | カタカナで記入 |
| 法人名(名称) | 社会福祉法人〇〇会 | 登記上の正式名称を記入 |
| 〒 郵便番号 | 123-4567 | |
| 法人住所1 | 神奈川県〇〇区〇〇1-2-3 | 番地・号まで正確に |
| 法人住所2 | 〇〇ビル3階 | 建物名がある場合のみ記入 |
| 法人代表者 職名 | 理事長 | 役職名を記入 |
| 法人代表者 氏名 | 山田 太郎 | |
| 法人番号 | 1234567890123 | 国税庁発行の13桁の番号 |
| 書類作成担当者(フリガナ) | タナカ ハナコ | |
| 書類作成担当者 氏名 | 田中 花子 | |
| 電話番号 | 03-1234-5678 | |
| hanako@example.com | 連絡が取れるアドレスを |
法人番号は国税庁の法人番号公表サイトで確認できます。記入誤りが多い項目のひとつのため、必ず公式情報をもとに入力してください。
加算の対象事業所に関する情報(第3項)
運営しているすべての事業所を一覧で記入します。介護予防・短期利用型サービスも含め、記入漏れがないよう確認が必要です。「記入済みのサービスの事業所数)という確認欄があるため、必ず最後にチェックしましょう。
記入例(事業所一覧)
| 項目 | 記入例 | 注意点 |
| 介護保険事業所番号 | 1312345678 | 指定通知書に記載の10桁の番号 |
| 指定権者名 | 〇〇都道府県 | |
| 都道府県 | 神奈川県 | |
| 市区町村 | 〇〇区 | 番地・号まで正確に |
| 事業所名 | 特別養護老人ホーム〇〇園 | |
| サービス名 | 介護老人福祉施設 | |
| 一月あたり介護報酬総単位数(基準値) | 850,000単位 | 前年1月〜12月の月平均を記入 |
「一月あたり介護報酬総単位数」は、前年(令和7年)1月から12月の12か月分の介護報酬単位数の合計を12で割った月平均値を使用します。開設間もない事業所など実績が12か月分ない場合は、実績月数で割った平均値を用いましょう。
黄色背景の項目を記載すると自動的に右の2項目(「一月あたり介護報酬総単位数(処遇改善加算を除く)[単位]」と「1単位あたりの単価(地域単価)[円]」)が入力されますが、総合事業については「1単位あたりの単価」が「数式を削除して手入力」と表示されるため、注意しましょう。
別紙様式2-2(個票:4・5月分)の書き方
別紙様式2-2は、4月15日提出期限の事業所のみが記入する様式です。4月・5月の2か月分について、事業所ごとに加算の算定内容を記載します。
※訪問看護(介護予防)、訪問リハビリテーション(介護予防)、居宅介護支援(介護予防)は入力不要です。
まず、「令和8年4・5月に算定する処遇改善加算の区分」については処遇改善加算の加算区分Ⅰ~Ⅳを選択しましょう。

次に、算定するために必要な以下の項目に色がつくため、それぞれ確認して記入を行いましょう。
| 要件 | 記入内容 |
| ①月額賃金要件 | 処遇改善加算Ⅳの1/2以上を月額賃金改善に充てる ・月額賃金要件Ⅰを満たす場合○ |
| ②③キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ | ・任用要件・賃金体系の整備および研修実施の要件を満たしていれば○ ・キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱの要件を満たしていないが現時点で令和8年度特例要件を満たしている場合は「令和8年度特例要件を満たしている」を選択 ・まだ令和8年度特例要件も満たしていない場合は「令和8年度特例要件を誓約」 |
| ④キャリアパス要件Ⅲ | ・昇給の仕組みを整備していれば○ ・キャリアパス要件Ⅲの要件を満たしていないが現時点で令和8年度特例要件を満たしている場合は「令和8年度特例要件を満たしている」を選択 ・まだ令和8年度特例要件も満たしていない場合は「令和8年度特例要件を誓約」 |
| ⑤キャリアパス要件Ⅳ | ・改善後の賃金要件(年額440万円以上)を満たす職員数を記載 ・「改善後の賃金要件を満たす職員は0人であって、令和8年度特例要件は満たす/誓約する」についてはどちらかを選択(小規模等であればその他を選択) |
| ⑥キャリアパス要件Ⅴ | 特定事業所加算Ⅰ・Ⅱどちらかを選択 |
| ⑦令和8年度特例要件 | ケアプランデータ連携システムを利用しているか、ケアプランデータ連携システムの利用を誓約するか、社会福祉連携福祉法人に所属するかを選択 |

別紙様式2-3(個票:6月以降分)の書き方
別紙様式2-3は、6月以降分の計画を記載する様式です。基本的な構造は様式2-2と同じですが、以下の点が異なります。
| 項目 | 様式2-2(4・5月) | 様式2-3(6月以降) |
| 算定対象月 | 令和8年4月〜5月 | 令和8年6月〜令和9年3月 |
| 対象サービス | 既存の加算対象サービスのみ | 訪問看護・居宅介護支援等の新対象サービスも含む |
| 一月あたり介護報酬総単位数の基準 | 前年実績ベース | 前年実績ベース(新設サービスは見込み値) |
まずは取得する加算区分Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳを記入しましょう。

①月額賃金要件以降の記載項目は2-2と同様です。
| 要件 | 記入内容 |
| ①月額賃金要件 | 処遇改善加算Ⅳの1/2以上を月額賃金改善に充てる ・月額賃金要件Ⅰを満たす場合○ |
| ②③キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ | ・任用要件・賃金体系の整備および研修実施の要件を満たしていれば○ ・キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱの要件を満たしていないが現時点で令和8年度特例要件を満たしている場合は「令和8年度特例要件を満たしている」を選択 ・まだ令和8年度特例要件も満たしていない場合は「令和8年度特例要件を誓約」 |
| ④キャリアパス要件Ⅲ | ・昇給の仕組みを整備していれば○ ・キャリアパス要件Ⅲの要件を満たしていないが現時点で令和8年度特例要件を満たしている場合は「令和8年度特例要件を満たしている」を選択 ・まだ令和8年度特例要件も満たしていない場合は「令和8年度特例要件を誓約」 |
| ⑤キャリアパス要件Ⅳ | ・改善後の賃金要件(年額440万円以上)を満たす職員数を記載 ・「改善後の賃金要件を満たす職員は0人であって、令和8年度特例要件は満たす/誓約する」についてはどちらかを選択(小規模等であればその他を選択) |
| ⑥キャリアパス要件Ⅴ | 特定事業所加算Ⅰ・Ⅱどちらかを選択 |
| ⑦令和8年度特例要件 | ケアプランデータ連携システムを利用しているか、ケアプランデータ連携システムの利用を誓約するか、社会福祉連携福祉法人に所属するかを選択 |

別紙様式2-1(総括表)の書き方
別紙様式2-1は、法人全体の賃金改善計画とキャリアパス要件・職場環境等要件への対応状況をまとめる総括表です。各個票(様式2-2・2-3)の内容が転記される項目もありますが、総括表独自の記載事項も多くあります。
2 賃金改善計画:加算額以上の賃金改善について(全体)
令和8年度に賃金改善が必要な額と、実際に見込む賃金改善額を記入します。
| 項目 | (a) | 記入例 | 内容 |
| 令和8年度の加算の見込額 | (a) | 3,600,000円 | 各個票から転記された加算見込額の合計 |
| 令和8年度の賃金改善の見込額 | (b) | 3,600,000円 | (a)以上の金額を記入。加算額をすべて賃金改善に充てる場合は(a)と同額 |
(b)には、加算による賃金改善の見込額を記入します。法定福利費(社会保険料の事業主負担分)の増加分も含めることができます。また、(b)は(a)の金額以上でなければなりません。(b)が(a)を下回る場合、計画書として成立しないため注意が必要です。※オレンジ色の項目が〇になるように確認してください。

3 介護職員等処遇改善加算の要件について
(1)月額賃金改善要件(処遇改善加算Ⅳの1/2以上の月額賃金改善)については前項と同様です。②には令和7年度以前から算定していた部分の配分も含め、令和8年4月以降の処遇改善加算の配分方法のうち、基本給等(基本給又は決まって毎月支払われる手当)で行っている賃金改善の総額を記入してください。

(2)~(5)キャリアパス要件
キャリアパス要件はⅠ〜Ⅴの5段階あり、それぞれ充足しているかどうかを確認しましょう。これまでの記入により○・×が自動で反映されます。要件を満たしていない場合は「令和8年度特例要件」を活用できる場合もありますが、その場合は令和9年3月末までに要件を整備する旨を誓約する必要があります。誓約を示すチェックを忘れないようにしましょう。
キャリアパス要件Ⅴに×がつく場合は別紙様式2-2、2-3の内容を確認しましょう。
キャリアパス要件表

| 要件 | 内容 | 記入のポイント |
| キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等) | 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備していること、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備 し、全ての介護職員に周知していること | 就業規則・給与規程に職位ごとの賃金体系が明記されているか確認。 |
| キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等) | 資質向上のための研修計画を策定し、研修を実施または研修の機会を確保していること | 年間研修計画書の整備が必要。「研修を実施している」だけでなく、計画書として文書化されているかがポイント |
| キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等) | 経験・技能・評価に基づく昇給の仕組みを整備していること | 昇給基準が就業規則または給与規程に明記されているかを確認 |
| キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金要件) | 処遇改善後の賃金が年額440万円以上となる者が1人以上いること | 対象となる職員が存在するか確認。小規模事業所等で該当者がいない場合は理由を記載 |
| キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件) | 介護福祉士等の配置が一定水準以上であること | 個票(様式2-2・2-3)の該当欄から転記 |

注意点としてキャリアパス要件Ⅰ~Ⅲの適合状況が変わり加算区分が上下するなどの影響が出る場合は、キャリアパス要件の変更に係る部分の内容を変更届出書に記載する必要があります。
- 別紙様式2-1の2と3の(1)から(5)まで
- 別紙様式2-2
- 別紙様式2-3
上記の提出が求められるため、十分注意しておきましょう。
(6)職場環境等要件
職場環境等要件についてはこれまでの記入により「特例要件を満たす」場合には〇・×が表示されます。もし誓約のみで進める場合は確認後、2番目の項目にチェックしておきましょう。

職場環境等要件は、令和8年度から対象となるサービスによって改善取り組みの数が異なります。
職場環境等要件の取り組みは26項目が提示されており、区分ごとに定められた数以上の取り組みを実施することが求められます。例えば4・5月分の処遇改善加算Ⅰ・Ⅱは以下のような算定要件です。

一方で、令和8年度6月からは以下のように変わります。

新設サービスについては以下が基準となります。

事業所・提出期限によって必要な取り組みの数が異なるため、十分注意しましょう。
取り組みを選択する際のポイントは以下のとおりです。
| 区分 | 選択が求められる数 |
| 入職促進に向けた取り組み | ・(4・5月)加算Ⅰ・Ⅱ、(6月~)加算Ⅰイ・ロⅡイ・ロ →各区分から2つ以上 ・(6月~)加算Ⅲ・Ⅳ、新設 →各区分から1つ以上 |
| 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | ・(4・5月)加算Ⅰ・Ⅱ、(6月~)加算Ⅰイ・ロⅡイ・ロ →各区分から2つ以上 ・(6月~)加算Ⅲ・Ⅳ、新設 →各区分から1つ以上 |
| 両立支援・多様な働き方の推進 | ・(4・5月)加算Ⅰ・Ⅱ、(6月~)加算Ⅰイ・ロⅡイ・ロ →各区分から2つ以上 ・(6月~)加算Ⅲ・Ⅳ、新設 →各区分から1つ以上 |
| 腰痛を含む心身の健康管理 | ・(4・5月)加算Ⅰ・Ⅱ、(6月~)加算Ⅰイ・ロⅡイ・ロ →各区分から2つ以上 ・(6月~)加算Ⅲ・Ⅳ、新設 →各区分から1つ以上 |
| 生産性向上のための取り組み | ・(4・5月)加算Ⅰ・Ⅱ、(6月~)加算Ⅰイ・ロⅡイ・ロ →各区分から3つ以上(うち⑰または⑱必須) ・(6月~)加算Ⅲ・Ⅳ、新設 →各区分から2つ以上 ※小規模事業者は㉔の2を選択 |
| やりがい・働きがいの醸成 | ・(4・5月)加算Ⅰ・Ⅱ、(6月~)加算Ⅰイ・ロⅡイ・ロ →各区分から2つ以上 ・(6月~)加算Ⅲ・Ⅳ、新設 →各区分から1つ以上 |

上記の項目についてはそれぞれチェックか「誓約」が求められます。必要な区分数・取り組んでいる項目に応じて記入を進めましょう。
見える化要件
見える化要件とは実施する取り組みを情報公開制度や法人ホームページを活用するなどして、外部から見える形で公開することです。対象は4・5月までの場合加算Ⅰ・Ⅱ、6月以降は加算Ⅰ・Ⅱ(イ・ロ)です。
実施する周知方法を選択しチェックしましょう。

4 要件を満たすことの証明・確認
最後に要件を満たしているか確認・チェックを行い、問題がなければサインしましょう。

そして提出前には確認用のチェックリストを改めて確認し、×がないかチェックしましょう。(自動で転記されるため入力なし)
確認用のチェックリストに空欄が表示される項目は、記入が不要のため、対応する必要はありません。
今回の処遇改善加算取得のための注意ポイント
計画書の様式自体は表形式で整理されていますが、「何をどう設計するか」という中身の部分で手が止まってしまうケースが多くあります。特に令和8年度は制度の変更点が多く、例年以上に判断を求められる場面があります。ここでは現場でつまずきやすいポイントを解説します。
キャリアパス要件の整備状況を改めて見直す
キャリアパス要件は、就業規則や給与規程といった書面で整備されていることが前提です。「実態としてはやっている」「口頭で説明している」という状態では要件を満たしていることにはなりません。
特に令和8年度から新たに加算対象となった事業所では、これまでキャリアパス要件の整備を求められてこなかったため、書面が存在しないケースが考えられます。現行の対象サービスでも同様です。
そこでキャリアパス要件を現時点で満たせない場合、令和8年度特例要件を満たすことで新設サービスは処遇改善加算を、現行の対象サービスは加算Ⅱロの算定が可能となっています。これにより要件の整備ができていない事業所でも、加算取得がしやすい状況となっています。
ただし、計画書の総括表(様式2-1)に「令和9年3月末までに当該要件を整備することを誓約します」という誓約欄があり、ここへの記載が必要です。
この誓約はただの形式だけのものではなく、締め切りまでに実際に整備が完了していなければ、翌年度の加算算定に影響が出る可能性があります。そのため特例要件を活用する場合は、スケジュールを明確にしてキャリアパス要件の整備を早い段階で進めておきましょう。
6月から新対象となった職種(訪問看護師・ケアマネ)への対応整備を進める
令和8年6月から処遇改善加算の対象に加わった訪問看護師・ケアマネジャー等を抱える事業所では、これまでとは異なる対応が求められます。特に、既存の介護職員とは別の給与体系で管理していた場合、法人全体の賃金設計を見直す必要があります。
- ケアマネジャーの給与体系が介護職と別建てになっている
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、これまで処遇改善加算の対象となっていないため給与体系が別システムになっている事業所もあるでしょう。今回の改定により処遇改善加算の対象になると、介護職員との配分バランスを整合させる必要が出てきます。法人全体で改めて見直し、職種間のバランスを意識した配分設計になるよう進めましょう。
- 訪問看護ステーションに就業規則・給与規程が整備されていない
同じくこれまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護ステーションでは、加算の取得を前提とした給与規程の整備が進んでいないケースがあります。キャリアパス要件を満たすためには、看護師・准看護師・リハビリ職といった職種ごとの職位定義と賃金体系を就業規則または給与規程に明記する必要があります。
- 処遇改善加算の担当者がいない
訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所では、これまで処遇改善加算の計画書作成・報告書作成の実務を担う人員が配置されていないケースも考えられます。6月15日の提出に向けて、制度を理解している担当者を選び、スムーズに提出まで進められるように体制を整えましょう。
令和8年度の処遇改善加算の計画書作成はすぐに取り組もう
令和8年度の処遇改善加算は、月額最大1.9万円という大幅な賃上げを実現できる一方で、これまでと同じ感覚で進めると加算取得ができない可能性があります。特に提出期限は4月15日と6月15日の2パターンに分かれており、自分の事業所がどちらに該当するか今からすぐに動き出しましょう。さらに6月の期中改定に合わせて様式も変更されているため、昨年の書類の流用ではなく新規の書類を用意する必要があります。各自治体のHPを必ずチェックしておきましょう。
準備期間は非常に限られています。「まだ時間がある」と思っていると、気づいたときには間に合わない可能性も十分に考えられます。加算を取得できないとせっかくの賃上げチャンスを棒に振ってしまい、事業所の運営が厳しくなるでしょう。そうならないよう、今すぐ動き出すことが何より大切です。
新たな処遇改善加算の変更ポイントについてはこちらのお役立ち資料でも詳しく解説しています。