介護保険サービスと障害福祉サービスを併用は可能?併用する要件やメリットもあわせて解説

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用は可能?併用する要件やメリットもあわせて解説

介護保険サービスと障害福祉サービスの併用について、多くの方が併用できるのか理解している人は少なくありません。ただ、ケースによっては併用できる場合があり、これら2つのサービスを効果的に利用することで利用者の生活の質を大きく向上させる可能性があります。
本記事では、介護保険サービスと障害福祉サービスの併用の可能性、その要件、メリット、そして注意すべきポイントについて詳しく解説します。複雑な制度ですが、理解することで最適なサービスの組み合わせとなるため、ぜひご覧ください。

介護保険サービスと障害福祉サービスとは

介護保険制度は、主に65歳以上の高齢者を対象とし、何らかの支援が必要となればケアマネジャーがケアプランを作成し、日常生活に支援が必要な方へのサービスを提供します。

一方、障害福祉サービスは、障害のある方の自立した生活と社会参加を支援することを目的としています。そのサービス内容には、生活支援や就労支援があります。利用資格には、障害者手帳などが必要となります。

両制度は異なる法律に基づいていますが、利用者のニーズによっては併用することが可能です。これにより、より包括的なケアを受けられる可能性が広がります。ただし、各制度の特性や利用条件を理解することが重要です。

「65歳問題」の課題

障害福祉サービスを受けていた方も65歳になると、原則介護保険に移る必要があります。これを「65歳問題」と呼びます。

この65歳問題では負担するコストと受けられるサービスがそれまでと変化することにより、生活に支障が出てしまうことが問題点として挙げられます。コスト面では65歳まで福祉サービスを受けていた方が介護保険サービスを受けることで、非課税世帯の場合介護保険サービスの1割を負担しなければなりません。

また、介護保険サービスと障害福祉サービスを併用する場合、サービス内容が重複していると判断されたサービスは介護保険サービスが優先となってしまいます。これにより、サービス面ではこれまでよりも受けられる支援の時間が短くなったり、社会参加の機会が失われてしまったりとそれまでの生活と大きく異なることもあるため、非常に注意が必要となります。

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用できる要件

介護保険サービスと障害福祉サービスの併用には、いくつかの要件があります。

まず、介護保険サービスにない障害福祉サービス固有のもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)と認められるサービスが必要な場合は、障害福祉サービスの利用が認められています。

ほかにも以下のような場合も併用可能になります。

  1. 支給量が介護保険サービスのみによって確保することができない場合
  2. 利用可能な介護保険サービス事業所又は施設が身近にない、利用定員に空きがない場合
  3. 介護保険法に基づく要介護認定等を受けた結果、介護保険サービスを利用できない場合(非該当の場合等)

具体的な併用の条件は、個人の状況や地域の制度運用によって異なるため、詳細は各自治体の窓口に確認することをおすすめします。

重複する場合の優先度

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用する場合、先述した通り65歳になると重複した内容のサービスであれば介護保険サービスを優先しなければなりません。どのような場合で重複するのでしょうか。

障害福祉サービス 介護保険サービス
ホームヘルプ 居宅介護、重度訪問介護 訪問介護
デイサービス 生活介護 通所介護
ショートステイ 短期入所 短期入所生活介護

重複したサービス内容であれば、介護保険サービスでも可能なため、切り替わる可能性があります。

もし重複しているかわからない場合は、各自治体の窓口と相談しましょう。

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用するメリット

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用することで、さまざまなメリットがあります。

充実したサービスを受けられる

併用のメリットとして、まず挙げられるのが、より包括的で充実したサービスを受けられる点です。

介護保険サービスでは主に入浴や食事、排せつなどの日常生活をサポートするサービスが多いですが、一方で障害福祉サービスでは生活支援や就労支援など、より広範囲なニーズに対応できます。

例えば、介護保険でヘルパーによる身体介護を受けながら、障害福祉サービスで就労継続支援を利用するなど、個人の状況に合わせた多角的なサポートが可能になります。

利用者負担を軽減できる

もう一つの大きなメリットは、利用者負担の軽減です。介護保険サービスも障害福祉サービスも利用時には費用が発生します。

しかし両制度を併用することで、重複するサービスの費用削減が期待できるため、トータルの自己負担額を抑えられる可能性があります。

共生型サービスの利用

併用することで充実したサポートの一つとして、共生型サービスを利用できるようになります。これは年齢により受けられる事業所が利用できなくなると、利用者にとって日常生活に支障が出てしまう恐れがあるためです。そのため介護保険サービスと障害福祉サービスを同じ事業所で受けられる共生型サービスが利用できます。

ただ共生型サービスはメリットだけでなく、デメリットも存在します。しっかり共生型サービスについて理解したうえで利用の検討を行いましょう。

社会参加の機会が増える

両サービスを併用することで、今まで介護保険サービスのみを利用していた人も障害福祉サービスを受けられるため、就労支援を受けることができます。これにより、外出・就労機会を増やすことができ、社会参加への道を開くことができます

結果、この機会に就労することも可能となるでしょう。就労までは困難でも外出する機会が増えるため、「働きたい」という想いが強くなったり、主体的な行動に繋がったりする可能性もあります。

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用する際の注意ポイント

両制度を併用する際には、さまざまな注意ポイントを理解する必要があります。

補助金を活用する

65歳以上の方であれば原則介護保険サービスに移るため、サービスにかかる金銭的負担が増えてしまいます。その負担を軽減するため、以下のような条件を満たす障害者の方は補助金を利用できます。

  • 65歳になる前の5年間、障害福祉サービスを利用している
  • 生活保護受給者または住民税の非課税世帯
  • 65歳に達する日の前日において障害支援区分が2以上
  • 65歳までに介護保険サービスを利用していない

この補助金は「新高額障害福祉サービス等給付費」と言います。ただしこの補助金については細かい要件があるので注意して理解する必要があります。詳しくは、以下の出典サイトをご覧ください。

申請書類や手続き期限を厳守する

併用を希望する場合、適切な申請書類の提出と手続き期限の遵守が重要です。

介護保険の要介護認定と障害福祉サービスの障害支援区分認定は別々の手続きが必要で、それぞれに申請書類や医師の意見書が求められます。必要なサービスの申請書類を期限内に揃えられるよう、早めの準備と相談を心がけましょう。

ケアプラン作成にはICTを活用する

複数のサービスを併用する場合、ケアプランの作成と管理が複雑になります。

この課題を解決するために、ICT(情報通信技術)の活用がおすすめです。

専用のソフトウェアやアプリを使用することで、介護保険サービスと障害福祉サービスの情報を一元管理し、効率的なケアプラン作成が可能になります。これにより、サービス提供者間の情報共有がスムーズになり、利用者のニーズにより適切に対応できるようになります。

また、ICTの活用は、ケアマネジャーの業務効率化にも貢献し、より質の高いケアマネジメントの実現につながります。

介護保険サービスと障害福祉サービスを併用して利用者の日常生活の質を高めよう

介護保険と障害福祉サービスの併用は、利用者の生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。

両制度の特性を理解し、適切に組み合わせることで、より包括的なサポートを受けられるのです。ただし、併用にあたっては、要件の理解や申請手続きの厳守など、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。

また、両制度を併用するにあたり、ケアプランの作成と管理が複雑になる可能性があります。この問題を解決し、かつ業務効率化を進められる、ICTの活用をおすすめします。

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障害福祉サービスの報酬の仕組みや国保連への請求の流れを解説!

障害福祉サービスの報酬の仕組みや国保連への請求の流れを解説!

障害福祉サービスを提供している事業所にとって、毎月の国保連(国民健康保険団体連合会)への報酬請求は欠かせない業務のひとつです。介護ソフトを導入している事業所は、必要な項目を入力すれば、計算はソフトが行ってくれます。そのため、なぜこの金額が算定されるのかを理解しないまま、日々の業務を行っているところも少なくないでしょう。一見、難しそうに思える介護報酬ですが、実は仕組みさえわかってしまえば、計算は意外と簡単です。しかも報酬の仕組みを理解しておくと、売上の目安が把握できたり、経営戦略が立てやすかったりなどのメリットもあります。現場スタッフの職場環境を考慮する材料にもなるでしょう。運営責任者は、安定した事業所経営のため、障害福祉サービスの報酬の仕組みを理解しておくことをおすすめします。

障害福祉サービスの報酬とは

障害福祉サービスの報酬とは、障害福祉サービス事業所が利用者に対して提供したサービスの対価です。報酬の種類には基本報酬、加算、減算があります。

報酬の種類

障害福祉サービスの報酬は3種類です。それぞれ詳しく見てみましょう。

基本報酬

障害福祉サービス事業所が、利用者に対して提供したサービスごとに発生する報酬です。基本報酬の算出方法は利用者1人に対して、提供したサービスの単位が基本報酬になります。
たとえば就労移行支援事業所は、就労移行支援サービス費という基本報酬を受け取ることができます。就労移行支援サービスの単位数は、5段階の定員区分と、7段階に分かれた就労定着率で決まります。利用定員が20人以下、就職後6か月以上働き続けた割合が50%以上の事業所の場合、1日あたりの単位数は1,128となります。

加算

基本報酬に、特定の要件を満たしたサービスを追加で提供することで上乗せできる報酬です。専門職員を配置している、送迎サービスを実施しているなどがそれにあたります。加算に関しては、特定の利用者に加算されるものと、利用者全体に加算されるものがあるので注意しましょう。
また、令和4年度には、福祉・介護職員の給料の引き上げを目的とした賃上げベースアップの支援加算も導入されました。厚生労働省が提示する条件にあてはまる福祉・介護職員の月額平均が9,000円引上げられる特定処遇改善加算です。

減算

提供しているサービスが指定基準を満たしていない場合に、基本報酬から差し引かれるものです。基本報酬レベルのサービスが提供できない場合、減算の対象になります。減算も加算同様、特定の利用者に減算されるもの、利用者全体に減算されるものがあります。

報酬の計算方法

次に報酬の算出方法を見てみましょう。サービスごとの単位数に加算、減算を加味し、地域ごとの単価を乗じて算出された数字が1日分の報酬となります。地域ごとの単価は厚生労働省から発表されている資料を参考に、該当箇所の単価を計算式にあてはめるだけなので、それほど難しくはありません。

地域ごとの単価は10~11.40円までの幅広い設定になっています。これは、地域によって人件費などが違うためであり、その点を考慮して設定された金額になっています。

報酬の計算式

報酬=サービスごとの単位数(加算、減産調整後の単位数)✕地域ごとの単価(10円~11.40円)
下記の例を使って、実際に計算式に数字を入れてみましょう。

【例】

東京都八王子市在住。
居宅における身体介護を1日45分利用。
月に15日間、サービスを受けた場合。

居宅における身体介護 30分以上60分未満 402単位。
東京都八王子市(3級地)地域ごとの単価 11.05円。
1日の報酬は
402 × 11.05円 = 4,442.1円。
1か月の報酬は
4,442.1 × 15日分 = 66,631.5円。

障害福祉サービスの報酬の流れ

上記で報酬の計算方法を紹介しましたが、この報酬を事業者はどこから受け取るのでしょうか。報酬を申請した事業者は、審査通過後に報酬を受け取ります。報酬の9割以上は国、都道府県、市町村などの公費にて負担され、残りは利用者が負担します。この負担額は利用者の所得によって決まり、最大でも1割を超えないように設定されています。
報酬の流れについては下記の図もご参照ください。

令和6年介護保険法改正についての内容を知りたい方におすすめ

知りたい方は、ぜひダウンロードしてみてください。

サービス提供から報酬を受け取るまでの流れ

上の図をもとに、サービス提供から事業所が報酬を受け取るまでの流れをもう少し詳しく説明しましょう。

① 利用者は市町村へ障害支援区分の申請(介護給付の場合)、支給申請を行うための書類を提出。
② 市町村は利用者から提出された申請書の内容を確認、審査。障害の程度と区分を認定。あわせて支給を決定。
③ サービス事業所と利用者は、認定の区分内で受けられるサービスを話し合い、互いの合意が得られれば契約を締結。契約をもとに、事業所は利用者にサービスの提供を開始。
④ 事業所からサービスを受けた利用者は、事業所から月に一度送られてくる請求書を確認後、利用者の負担額を支払う。
⑤ 事業所は月に1度、毎月1~10日までに国保連を通じて市町村に介護給付、訓練等給付の請求書を提出。
⑥ 書類に不備がなければ、利用者が負担した額を差し引いた報酬が事業所に支払われる。

報酬の改定

基本報酬や加算、減算はほぼ3年ごとに改定が入ります。次回は2024年度に改定が予定されています。下に記した厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームのページでも公開されるので、ぜひ事業所の運営者はときどき確認してみてください。特に介護ソフトを使用していない事業所は、改定に気づかず報酬を請求すると、1か月分の給付金が受け取れないこともあるので注意しましょう。

障害福祉サービスの報酬を理解して事業所運営を円滑に

障害福祉サービスの報酬算定は、一見複雑なようですが、仕組みを理解すればそれほど難しくはありません。介護ソフトを利用している場合は、この仕組みがわからなくても、運営にあまり影響はないかもしれません。しかし、運営責任者としてこの数字を把握することは、売り上げの目安を知ることにつながります。現場のスタッフにとっては提供サービスの対価を知ることで、日々の仕事への意識を高めることができるでしょう。

介舟ファミリーは、障害福祉サービスの3年ごとの報酬改定にも迅速に対応しています。請求業務以外にも、スタッフのシフト管理や利用者の記録など、事業所に必要な事務手続きを効率よくサポートしてくれます。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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