訪問介護の基本報酬がマイナスに?報酬改定が事業所に与える影響などを詳しく解説

訪問介護の基本報酬がマイナスに?報酬改定が事業所に与える影響などを詳しく解説

2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がマイナスとなり、業界全体に衝撃を与えています。マイナス改定に対し、事業所としてどのような対応をしていくべきか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで、今回の改定による訪問介護の基本報酬の内容と、マイナスになった理由や対応策について解説します。

2024年度の介護保険法改正のポイント

2024年度の介護保険法改正は、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、次の4つを基本的な視点とした内容となっています。
  • 地域包括ケアシステムの深化・推進 高齢者の状態やニーズに応じて、質の高いケアマネジメントや必要なサービスを切れ間なく提供できるよう、地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組みを推進します。
  • 自立支援・重度化防止に向けた対応 高齢者の自立支援や重度化防止が行えるよう、多職種連携やデータの活用等を推進します。
  • 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり 介護人材不足のなかにおいても、さらなる介護サービスの質の向上が図れるよう、処遇改善や生産性向上による職場環境の改善に向け、先進的な取り組みを推進します。
  • 制度の安定性・持続可能性の確保 介護保険制度が安定かつ持続できるよう、すべての世代にとって安心できる制度を構築します。
2024年度の改正は医療系サービスを除き、4月から施行されています。医療系サービスについても、6月から施行されます。

訪問介護の基本報酬はなぜマイナスに?

2024年の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げとなり、関係各所に大きな衝撃が走りました。なぜ、訪問介護の基本報酬は引き下げになったのでしょうか。引き下げになった理由や背景、改定後の基本報酬の内容について、詳しく見ていきましょう。

訪問介護の基本報酬はどれくらいマイナスになった?

訪問介護の基本報酬は、以下のように全体的に引き下げとなっています。

サービス内容 現行→改定後
【身体介護】
・20分未満
・20分以上30分未満
・30分以上1時間未満
・1時間以上1時間半未満
・以降30分を増すごとに算定

167単位→163単位
250単位→244単位
396単位→387単位
579単位→567単位
84単位→82単位
【生活援助】
・20分以上45分未満
・45分以上
・身体介護に引き続き生活援助を行った場合

183単位→179単位
225単位→220単位
67単位→65単位
通院等乗降介助 99単位→97単位
ただし、処遇改善加算を見てみると、今回の改定では訪問介護が最も高い加算率となっています。具体的には、新加算の最低ラインであるⅣにおいて14.5%、すべての要件を満たせば、最大24.5%まで取得できる設定となりました。処遇改善での高い加算率とのバランスを取るため、基本報酬については引き下げになったと考えられます。

訪問介護の基本報酬がマイナスとなった背景

訪問介護の基本報酬がマイナスとなった理由には、利益率の差が影響しています。介護事業経営実態調査の結果によると、訪問介護の収支差率は+7.8%となりました。この収支差率は、全サービス平均の収支差率である+2.4%を大きく上回っています。国はこの結果を根拠とし、訪問介護の基本報酬の引き下げに踏み切りました。

ただし、この調査には、以下の2点の懸念があります。

  • サービス付き高齢者向け住宅などに併設されている事業所も含まれている
  • 小規模の事業所の場合、調査の回答にまで手が回らず、意見として含まれていない可能性がある

特に、併設されている事業所の場合は、事業効率性が高いため収支差率が高くなります。また、収支差率の低い事業所ほど回答できなかった可能性があり、結果として、事業効率性の高い事業所に引っ張られる形となって収支差率が高く出たと考えられるでしょう。

実際に、前年度の調査と比較してみても、収入はほぼ変わっていません。むしろ、職員数が減少し人件費などの支出が減少したことで、利益率が高くなったと見てとれます。つまり、経営が安定しているのではなく、人材確保が難しくなっているため、経営的には厳しくなっていると言えます。実情としては、昨年の訪問介護事業者の倒産件数が67件と最多となっていることから、訪問介護事業所を巡る環境は決して楽観できるものではないでしょう。

訪問介護の基本報酬マイナスに対する各所の反応

訪問介護の基本報酬マイナスに対し、関係各所の反応を見てみましょう。

全国ホームヘルパー協議会、日本ホームヘルパー協会

本来の目指す姿と正反対の改定となっている、受け入れがたい内容になっていると主張。さらなる人材不足を招き、訪問介護が受けられない地域が広がりかねないと指摘。基本報酬が下がる分は何らかの形で補てんし、運営を支えてほしいと述べている。

全国介護事業者連盟

処遇改善加算の拡充については評価できる。基本報酬の引き下げは、地方の事業所や地域の高齢者にサービスを提供する事業所にとっては、存続そのものが難しくなる可能性を示唆。ホームヘルパーの確保や定着、必要な研修の受講などをあと押しする措置を強化してほしいと要請している。

日本介護福祉士会

訪問介護の担い手の誇りを傷つける無慈悲な判断と受け止めていると主張。訪問介護にはもっともっと手厚い支援策が必要と述べている。

日本医師会

訪問介護は在宅医療を支えるうえで欠かせないサービスであり、訪問介護がなくなると在宅医療そのものが簡単に破綻すると苦言を呈している。訪問介護の基本報酬引き下げの影響をしっかり注視していくべきと主張している。

上記のように多くの関係者が、訪問介護が正しく評価されていないことや、ヘルパーに動揺が広がって離職や転職につながる可能性を危惧しています。 このままでは ヘルパーの人材不足は加速し、事業所運営が難しくなる可能性があるでしょう。

基本報酬マイナスはどのように対策すべきか

訪問介護の基本報酬マイナスに対し、事業所はどのように対策していけばよいでしょうか。

まずは、未取得の加算の取得を目指しましょう。介護報酬は、基本報酬と人件費率、加算を含めた金額となります。

基本報酬がマイナスとなるなかで利益率を上げていくためには、介護職員等処遇改善加算や特定事業所加算などの未取得の加算の取得を目指す必要があるでしょう。

次に、処遇改善加算をしっかりと算定できる条件を整えられないか、検討してみましょう。職場環境を見直し、現行よりも上位の処遇改善加算が目指せれば、現行よりも増収が見込める可能性もあるでしょう。

また、今回の改定では、処遇改善加算を取得しやすくするための要件や事務手続きの見直しも行われています。加算のための職場環境の改善においては、業務効率化を進め、業務負担を減らすことが大切です。介護ソフトを導入したり、見直したりすることで、業務効率化や業務負担軽減が図れるでしょう。

訪問介護の基本報酬マイナスは加算でカバーしよう

訪問介護の基本報酬はマイナスになったものの、処遇改善加算の加算率は全サービス中で最も高くなっています。

その他の加算についても、要件が緩和したものや、地方の事業所向けに加算が新設されたものなどがあり、加算が取りやすい状況となってきています。基本報酬のマイナスをカバーするために、取れる加算は算定していける体制を整えていきましょう。

また、基本報酬マイナスに伴い、離職率が上がってしまう可能性があるため、職員が働きやすい環境を整えていく必要もあります。

介舟ファミリーであれば、トータルサポートでスムーズな対応ができるので、業務効率化が図りやすく、職員の業務負担も減らせます。この改定を機に、介舟ファミリーの導入を検討してみませんか。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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障害福祉サービスの報酬の仕組みや国保連への請求の流れを解説!

障害福祉サービスの報酬の仕組みや国保連への請求の流れを解説!

障害福祉サービスを提供している事業所にとって、毎月の国保連(国民健康保険団体連合会)への報酬請求は欠かせない業務のひとつです。介護ソフトを導入している事業所は、必要な項目を入力すれば、計算はソフトが行ってくれます。そのため、なぜこの金額が算定されるのかを理解しないまま、日々の業務を行っているところも少なくないでしょう。一見、難しそうに思える介護報酬ですが、実は仕組みさえわかってしまえば、計算は意外と簡単です。しかも報酬の仕組みを理解しておくと、売上の目安が把握できたり、経営戦略が立てやすかったりなどのメリットもあります。現場スタッフの職場環境を考慮する材料にもなるでしょう。運営責任者は、安定した事業所経営のため、障害福祉サービスの報酬の仕組みを理解しておくことをおすすめします。

障害福祉サービスの報酬とは

障害福祉サービスの報酬とは、障害福祉サービス事業所が利用者に対して提供したサービスの対価です。報酬の種類には基本報酬、加算、減算があります。

報酬の種類

障害福祉サービスの報酬は3種類です。それぞれ詳しく見てみましょう。

基本報酬

障害福祉サービス事業所が、利用者に対して提供したサービスごとに発生する報酬です。基本報酬の算出方法は利用者1人に対して、提供したサービスの単位が基本報酬になります。
たとえば就労移行支援事業所は、就労移行支援サービス費という基本報酬を受け取ることができます。就労移行支援サービスの単位数は、5段階の定員区分と、7段階に分かれた就労定着率で決まります。利用定員が20人以下、就職後6か月以上働き続けた割合が50%以上の事業所の場合、1日あたりの単位数は1,128となります。

加算

基本報酬に、特定の要件を満たしたサービスを追加で提供することで上乗せできる報酬です。専門職員を配置している、送迎サービスを実施しているなどがそれにあたります。加算に関しては、特定の利用者に加算されるものと、利用者全体に加算されるものがあるので注意しましょう。
また、令和4年度には、福祉・介護職員の給料の引き上げを目的とした賃上げベースアップの支援加算も導入されました。厚生労働省が提示する条件にあてはまる福祉・介護職員の月額平均が9,000円引上げられる特定処遇改善加算です。

減算

提供しているサービスが指定基準を満たしていない場合に、基本報酬から差し引かれるものです。基本報酬レベルのサービスが提供できない場合、減算の対象になります。減算も加算同様、特定の利用者に減算されるもの、利用者全体に減算されるものがあります。

報酬の計算方法

次に報酬の算出方法を見てみましょう。サービスごとの単位数に加算、減算を加味し、地域ごとの単価を乗じて算出された数字が1日分の報酬となります。地域ごとの単価は厚生労働省から発表されている資料を参考に、該当箇所の単価を計算式にあてはめるだけなので、それほど難しくはありません。

地域ごとの単価は10~11.40円までの幅広い設定になっています。これは、地域によって人件費などが違うためであり、その点を考慮して設定された金額になっています。

報酬の計算式

報酬=サービスごとの単位数(加算、減産調整後の単位数)✕地域ごとの単価(10円~11.40円)
下記の例を使って、実際に計算式に数字を入れてみましょう。

【例】

東京都八王子市在住。
居宅における身体介護を1日45分利用。
月に15日間、サービスを受けた場合。

居宅における身体介護 30分以上60分未満 402単位。
東京都八王子市(3級地)地域ごとの単価 11.05円。
1日の報酬は
402 × 11.05円 = 4,442.1円。
1か月の報酬は
4,442.1 × 15日分 = 66,631.5円。

障害福祉サービスの報酬の流れ

上記で報酬の計算方法を紹介しましたが、この報酬を事業者はどこから受け取るのでしょうか。報酬を申請した事業者は、審査通過後に報酬を受け取ります。報酬の9割以上は国、都道府県、市町村などの公費にて負担され、残りは利用者が負担します。この負担額は利用者の所得によって決まり、最大でも1割を超えないように設定されています。
報酬の流れについては下記の図もご参照ください。

令和6年介護保険法改正についての内容を知りたい方におすすめ

知りたい方は、ぜひダウンロードしてみてください。

サービス提供から報酬を受け取るまでの流れ

上の図をもとに、サービス提供から事業所が報酬を受け取るまでの流れをもう少し詳しく説明しましょう。

① 利用者は市町村へ障害支援区分の申請(介護給付の場合)、支給申請を行うための書類を提出。
② 市町村は利用者から提出された申請書の内容を確認、審査。障害の程度と区分を認定。あわせて支給を決定。
③ サービス事業所と利用者は、認定の区分内で受けられるサービスを話し合い、互いの合意が得られれば契約を締結。契約をもとに、事業所は利用者にサービスの提供を開始。
④ 事業所からサービスを受けた利用者は、事業所から月に一度送られてくる請求書を確認後、利用者の負担額を支払う。
⑤ 事業所は月に1度、毎月1~10日までに国保連を通じて市町村に介護給付、訓練等給付の請求書を提出。
⑥ 書類に不備がなければ、利用者が負担した額を差し引いた報酬が事業所に支払われる。

報酬の改定

基本報酬や加算、減算はほぼ3年ごとに改定が入ります。次回は2024年度に改定が予定されています。下に記した厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームのページでも公開されるので、ぜひ事業所の運営者はときどき確認してみてください。特に介護ソフトを使用していない事業所は、改定に気づかず報酬を請求すると、1か月分の給付金が受け取れないこともあるので注意しましょう。

障害福祉サービスの報酬を理解して事業所運営を円滑に

障害福祉サービスの報酬算定は、一見複雑なようですが、仕組みを理解すればそれほど難しくはありません。介護ソフトを利用している場合は、この仕組みがわからなくても、運営にあまり影響はないかもしれません。しかし、運営責任者としてこの数字を把握することは、売り上げの目安を知ることにつながります。現場のスタッフにとっては提供サービスの対価を知ることで、日々の仕事への意識を高めることができるでしょう。

介舟ファミリーは、障害福祉サービスの3年ごとの報酬改定にも迅速に対応しています。請求業務以外にも、スタッフのシフト管理や利用者の記録など、事業所に必要な事務手続きを効率よくサポートしてくれます。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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