重度訪問介護に2時間ルールは適用外!その理由を徹底解説

重度訪問介護に2時間ルールは適用外!その理由を徹底解説

障害者福祉サービスのひとつである居宅介護には、1回目の訪問を終えてから次の訪問まで2時間以上の間隔をあけなければ、2回訪問したことにはならないという2時間ルールがあります。しかし、重度障害者の訪問介護には2時間ルールは適応されません。その理由はなぜでしょうか?また、居宅訪問介護の場合でも2時間ルールが適用されない事例があります。施設の運営責任者は、適切な介護請求を行うためにも、2時間ルールの概要と適用されないケースを把握しておくことが大切です。

居宅介護の2時間ルールとは

障害者福祉サービスの居宅介護とは、障害児・者に対して、自宅にて行う、入浴や排せつなどの身体介護、調理や洗濯などの家事援助、生活全般にわたる援助のことです。
居宅介護における2時間ルールとは、どういうものなのか、まずはその内容を確認しておきましょう。

2時間ルールとは

2時間ルールとは「居宅介護では訪問後、2時間以上の間隔をあけて再訪問しないと、2回の訪問介護としてカウントされない」という規定です。同じ日に2時間以上あけてもう一度訪問した場合は、一日に2回訪問したとみなされますが、2時間以内に再訪問すると、一日に1回の訪問となってしまいます。事例でみてみましょう。

【ケース1】
13時に訪問。13時30分に終了。16時に再訪問。16時30分に処置終了。

【ケース2】
13時に訪問。13時30分に終了。14時に再訪問。14時30分に処置終了。

上記のケースでは、どちらも1日に2回、利用者宅を訪問したという事実にはかわりません。処置時間も1回目と2回目、ともに30分です。違いは1回目の訪問終了から、2回目の再訪問までの時間の間隔のみ。2時間ルールのポイントは、この再訪問までの時間です。
ケース1の事例は、1回目の訪問介護を終了してから2時間以上が経過しての再訪問なのに対して、ケース2の事例は、1回目の訪問後、30分しかあいていません。
ケース1は一日に2回訪問したという申請になるのに対して、ケース2の事例では一日に1回訪問したという申請になります。
そうなると、ケース1とケース2では申請する介護報酬に差が出てくるのです。
たとえばケース1、ケース2ともに30分ずつ身体介護をした場合のサービス単位は以下のとおりです。

【ケース1】
30分の身体介護を2回したという計算になり、396単位×2訪問₌792。

【ケース2】
60分の身体介護を1回したという計算になり、579単位×1訪問₌596。

同じ時間、同じサービスを提供したにもかかわらず、介護請求の報酬額が異なります。

重度訪問介護に2時間ルールが適用されるのか

居宅介護の2時間ルールは上記で説明しましたが、重度訪問介護サービスにも2時間ルールは適用されるのでしょうか?

どちらのサービスも、利用者の居宅に訪問する点では同じですが、利用者や支援の内容に違いがあります。
居宅介護サービスは、事前に作成する介護計画を基にサービスを提供するため、サービスの範囲が限られます。
それに対して重度訪問介護は、介護計画に基づいてサービスを提供するだけでなく、状況に応じて柔軟な対応が求められます。
重度介護の利用者は食事、排せつ、入浴、外出まですべてサポートしないと生活ができない人が多いためです。
それにともない、1回の介護時間が長時間になりがちなことや、なかには24時間、継続してサービスを受けないと生活を維持するのが難しい人もいるので、2時間ルールは適用されません。

重度訪問介護に2時間ルールが適用されない理由

重度訪問介護に2時間ルールが適用されない理由について、もう少し具体的に見てみましょう。

要介護度が高く、長時間の支援が必要な利用者が多い

厚生省が定める重度訪問介護サービスの対象者は、主に以下の2つに該当する人です。

  • 肢体が不自由である
    四肢の麻痺があったり、寝たきりだったりする人。
    歩行、移乗、排尿、排便のいずれもに支援が必要な人。
  • 重度の知的障害、もしくは精神障害により、行動上に著しい困難がある
    支援が行われないと強い不安やパニックを起こす人。また、サポートを受けないと自傷行為に至ってしまう人。

重度障害者として認定された人は、高度な障害があるため、介護認定の要介護度が上がります。そして、居宅介護利用者よりも介護内容が多岐にわたるため、やるべき介護が増え、訪問時間も居宅介護サービスの利用者と比べて時間がかかります。24時間、介護を必要とする人に対しては、ヘルパーが3人交代で介護をすることもありますが、1回目の訪問後、2時間あけてから次の訪問を行うのでは、利用者の生命の危険にもかかわる事態を招くこともあります。その点を鑑みて、2時間ルールを適用するのは難しいのです。

生活全般にわたる援助を主としている

一般的には居宅介護の利用者は、入浴や食事など一部をサポートすれば生活を維持することが可能な人です。そのため、居宅介護の利用者に短時間で複数回サービスを提供し、介護報酬が高額になるようにするなど、不正に請求することができないように2時間ルールが設けられています。
さらに、2時間ルールの縛りがあることで、利用者に行うサービス内容や訪問した時間が見える化するため、利用者、家族、事業所の間でサービスに対する理解に齟齬(そご)が起きにくくする狙いもあります。
反対に重度障害者は、寝たきりであったり体に麻痺があったり、精神的に不安定であったりするため、誰かの助けや見守りがないと生活を維持するのが難しい人です。生活全般をサポートしなければ暮らせない、あるいは暮らすのが難しい人といえるでしょう。

居宅介護者は生活をサポートするというニュアンスですが、重度障害者は、生活全般の行為や、医療行為をヘルパーや看護師が主体になって行う必要があります。たとえば、痰の吸引や、食事、入浴、排せつなど、必要なときにすぐに行わなければならない行為も出てきます。2時間ルールで訪問回数に制限を設けてしまうと、利用者が必要なときに必要な介護を受けられなくなる可能性があります。そのような理由から、2時間ルールが適応外となっているのです。

ほかにもある、2時間ルールが適用されないケース

重度障害者だけでなく、2時間のルールが例外的に適用されないケースはほかにもあります。

看取り期の訪問介護

厚生労働省の令和3年度介護報酬改定における改定事項によると、看取り期の訪問介護は所定単位数の算定が可能となり、2時間ルールは適用外となります。所要時間に関係なく、それぞれ提供したサービスの単位数で介護報酬を算定できます。

緊急時の訪問

訪問先の利用者や、その家族から緊急コールが入り、介護計画外の訪問になった際は、100単位の緊急時訪問介護加算となります。訪問から2時間経っていなくても、前の訪問と合算して報酬を請求する必要はありません。

指定訪問介護事業所の訪問

指定訪問介護事業所の認可を受けている事業所は、20分未満の身体介護サービスを提供する場合に限り、2時間の間隔をあけなくてもいいという例外もあります。

介護報酬算定に影響する2時間ルールをしっかり把握することは大切

居宅介護の2時間ルールには、さまざまな例外があります。それらをきちんと把握しておくのも事業所の管理者としては大切です。2時間経っていない訪問に対して、介護報酬は所要時間を合算した請求なのか、それとも例外としてサービスの単位数を算定して加算できるのか、ここを認識することで事業所の収入も大きくかわってくるでしょう。例外が多くて少し面倒なところもありますが、運営責任者はしっかり詳細まで理解しておきましょう。

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