ケアマネの離職率はなぜ高い?離職理由と定着率を上げる方法を解説!

ケアマネの離職率はなぜ高い?離職理由と定着率を上げる方法を解説!

居宅介護支援事業所、老人ホーム、地域包括支援センターなどに所属するケアマネジャー(ケアマネ)。ケアマネは、その仕事内容から専門知識や高度なコミュニケーション力を必要とされる大変な仕事です。しかし、ケアマネ人材は慢性的に不足しており、多くのケアマネは業務過多の状態にいることでしょう。施設運営者が業務過多を放置することは、ケアマネの離職率を高め、さらなる人材不足に陥るという悪循環を生みます。さらには質の高い介護サービスを提供し続けることが難しくなります。施設運営者は、自施設がケアマネ不足にならないよう、日ごろからケアマネをしっかりフォローし、働きやすい環境を整える必要があります。この記事では、ケアマネの離職率を下げて定着率をあげるために施設運営者が取り組むべき方法を紹介します。

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ケアマネの離職率と離職理由の実態

近年、ケアマネの人材不足に悩む事業所が増えています。公益財団法人介護労働安定センターが公表した「令和4年度介護労働実態調査」によると、介護職全体の離職率は14.3%です。それに対し、居宅介護支援サービスの職員(ケアマネ)の離職率は9.2%で、前年度は14.1%であったことから、離職率は改善傾向にあるといえるでしょう。
離職者の勤務年数を見てみると、在宅ケアマネが在籍する居宅介護支援事業所では、退職者の59.7%が3年以上勤務して離職していました。この結果から、ケアマネの場合、ある程度の経験を経てから離職する人が多いことがわかります。

では、ケアマネはどのような理由で離職しているのでしょうか。離職理由の上位には次の5つが挙げられています。

  • 職場の人間関係に問題があったから
  • 会社の運営や理念に不満があったから
  • 今の職場のほかにいい職場が見つかったから
  • このままでは自分の将来の見込みが立たないから
  • 仕事内容のわりに賃金が安いから

ケアマネの離職理由は、介護職全体の離職理由とおおむね同じです。ただし、全体では上位に挙がっている結婚・妊娠・出産・育児のために離職した人の割合は、ケアマネでは上位に挙がっていません。これは、ケアマネの平均年齢が53.0歳と高いことから、結婚や育児などを理由に退職する人の割合が少ないからと考えられるでしょう。

ケアマネを辞めたいと感じる理由3選

ケアマネを辞めたいと感じる理由で、特に多くみられる3つの理由について、詳しく見ていきましょう。

とにかく業務量が多い

実際の介護現場で、ケアマネが辞めたいと感じている理由としてよく聞かれるのが、業務量の多さです。ケアマネの仕事は、利用者や家族との直接的なかかわりだけでなく、書類の作成や請求業務など多岐にわたります。ひとりのケアマネが担当する件数も多く、訪問がようやく終わったと思ったら、次は事務作業が待っていることも少なくありません。そのため、時間内に業務が終わらないことも多いのです。特に、事務作業に時間をとられて大変と感じるとの声はよく聞かれており、業務量の多さに心身ともに疲れてしまう人もいます。

介護施設に勤務するケアマネの場合、請求業務はないものの、現場業務と兼務しているケースも見られます。ケアマネの仕事だけでも業務が多いのに、現場の仕事もこなさなければならず、つらくて辞めたいと思っている人もいるようです。また、施設にケアマネがひとりしかいない場合もあり、業務が終わらないのに助けてもらうこともできない状況に疲弊することもあるでしょう。

精神的な負担が大きい

令和4年度介護労働実態調査によると、ケアマネの仕事について「精神的にきつい」と悩んでいる人の割合は38.0%となっており、精神的負担を感じている人が多いことがわかりました。ケアマネの場合、利用者や家族とのやりとりが多く、双方の思いや希望が一致しないことも少なくありません。また、家族が利用者本人の状況や必要なサポートに対し理解を示さないケースもあり、利用者と家族の板挟みに悩むことも多いでしょう。
実際に、利用者や家族に対する悩みでは、「利用者に適切なケアができているか不安」との声が最も多く、思うように支援が進まず精神的に負担を感じている人が少なくないことがわかります。

仕事のわりに給料が低い

厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」によると、ケアマネの基本給は約22万円となっています。この金額は介護職員に比べると高いものの、ケアマネは介護報酬の処遇改善加算の対象外であることから、ケアマネになってから給料が下がったとの声も上がっています。特に、介護職員としての経験が長い人や、夜勤をこなしていた人の場合は、ケアマネになって給料が下がったと感じる人が多いようです。
また、現場からの声として仕事と給料のバランスが悪いとも聞かれます。ケアマネの場合、そもそもの業務量が多いことに加え、利用者の緊急対応をしなければならないケースもあります。時間外に電話がかかってきて対応せざるをえないケースも多く、気が休まらないと感じている人もいるようです。そのため、仕事内容と給料が一致していないと感じる人が多いようです。

ケアマネの仕事は多岐にわたるため大変

ケアマネの仕事には、主に以下の5つがあります。

  • ケアプランの作成
    利用者家族へのヒアリングなど情報収集を行ったうえで、アセスメントを実施し、ケアプランを作成します。
  • 利用者と家族の訪問・ヒアリング
    担当者会議などの日程調整も含まれます。
  • 介護給付費の管理や必要書類の提出
    モニタリング記録、担当者会議録、給付管理など作成する書類は多岐にわたります。
  • サービス事業者等への調整(居宅)
    利用者が受けたいサービスをヒアリングし、サービス事業所と調整を行います。
  • 介護職員・看護職員等への調整(施設サービス)
    施設で働くスタッフへの指示や利用者・家族との調整を行います。

ケアマネの仕事内容は、ルーティンワークというよりも、利用者一人ひとりにあったサービスを提供するためにヒアリングし、関係者と交渉し、適切な提案を行うという、創意工夫が必要なものです。
関係者との難しい調整を求められるため、柔軟性や忍耐力も必要です。

さらに、利用者に頼られる存在であり、利用者の要望に沿うために奔走することは少なくありません。
利用者のためにと頑張らなければならないとという責任感から強いプレッシャーを感じることもあるでしょう。

介護施設に所属するケアマネは、利用者宅を訪問することがない反面、利用者の要望と施設のルールなどを鑑みて調整する必要があります。利用者や利用者の家族から意見をヒアリングし、利用者と施設の仲介をするという重圧のかかる役割です。

また、居宅、介護施設など所属先を問わず、ほとんどのケアマネはチームで活動するのではなく、利用者を自分一人で担当することが多いため、すべての業務を一人でこなしています。そのため、仕事上の悩みは周囲や上司に相談しづらい環境にあります。

昼間は外出していることが多いケアマネは、事務作業はどうしても空き時間か、夕方以降ということになります。残業になることもあり、オーバーワークな状況で働いているケアマネは少なくないでしょう。

このように、ケアマネは精神的にも肉体的にも大変ハードな職種なのです。

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ケアマネの離職防止のためできる日ごろのフォロー

介護現場の中心的役割を担うケアマネが突然辞めてしまうと、次の人材を探すのには大きな手間がかかります。そこで、ケアマネが離職することなく意欲的に長く勤められるように、施設責任者として日ごろからどのようにケアマネの仕事をフォローしていくべきかをまとめました。

ケアマネの仕事内容の把握

上司である施設運営者がケアマネの仕事に関心を寄せ、状況を把握することは、非常に重要です。仕事内容を把握していれば、仕事上の相談に対して適切なアドバイスや対応を行うことができ、ケアマネと強い信頼関係を築くことができます。また、ケアマネは、自分の仕事をしっかり評価してくれている感じるため、モチベーションアップの一因にもなります。

多岐にわたるケアマネの仕事を把握することは、簡単ではありませんが、最近では多くの事業所で介護ソフトが導入されており、業務の進捗状況やトラブル情報などはリアルタイムで共有されます。

抱えている問題の共有

ケアマネは、前述のように一人で行動することが多いため、仕事上の悩みやトラブルなどを気軽に相談しにくい状況です。コミュニケーションには、業務日誌や朝礼、ミーティングなど様々な方法がありますが、上司である施設運営者は、ケアマネと積極的にコミュニケーションをとれる機会を設定することも重要です。その方法の一つが、3か月から半年に1回のスパンで実施する定期的な面談です。ケアマネの状況を1対1で個別にヒアリングすることで、今抱えている問題を早期に見つけ把握するよう努めるとよいでしょう。

問題解決に向けた改善への取り組み

ケアマネの抱えている問題について、誠実に取り組む姿勢を示し、事業所としてどのような改善、解決ができるか方法を探しましょう。こうした姿勢は、「事業所にとってケアマネは大切な存在である」という意思表示になります。解決策の検討には、ケアマネだけではなく、他の職員の意見を聞く機会を設けるのもいいでしょう。事業所として可能な範囲で対応し、ケアマネの問題を解消できるようにサポートしていきます。

ケアマネの離職率を下げて定着してもらう方法5選

ケアマネが離職することなく、働き続けられるようにするには、どのような方法をとったらよいのでしょうか。
離職率を下げてケアマネを定着させるために事業所ができることを5つ紹介します。

ICT活用で現場の業務負担を軽減する

ケアマネの業務負担を軽減する必要があります。まずは、最も負担が大きい事務作業を減らす工夫をしましょう。
具体的には、介護ソフトの新規導入やリプレイスを検討し、書類作成や請求業務などの業務負担の軽減を図ります。タブレット入力が可能な製品であれば、モニタリングやアセスメントの際にその場で入力が可能で、業務効率化が進むでしょう。
すでに導入している介護ソフトから別の介護ソフトへの変更を検討する場合には、実際に介護ソフトを使用するケアマネと話し合いを重ねて最適な製品を選ぶほうが無難です。ソフトの入れ替えをすると新たに使い方を覚える必要があるため、操作に慣れるまでに時間がかかることで負担に感じる人もいます。操作性が簡単で覚えやすく、導入時に使い方についてサポートが得られるサービスを選ぶと、現場の負担を軽減できるでしょう。

相談できる体制をつくる

ケアマネは、基本的にひとりで仕事を進めていきます。そのため、仕事の悩みを相談したくても、先輩ケアマネが忙しそうでできないことも多いです。結果として、精神的に追い詰められてしまうケースもあるため、事業所が率先して仕事の悩みや課題を共有できる場をつくる必要があります。具体的には、定期的に会議を開催して悩みや課題を共有し、職場全体で対策を検討する機会を設けるとよいでしょう。
また、相談しやすい関係を築くことも大切です。上司と相談する1on1ミーティングの機会をつくり、上司と良好な関係を構築する工夫もしましょう。

事業所で積極的に加算を算定する

ケアマネの悩みで多くを占める収入面への対応として、事業所で加算を算定するのも良い方法です。加算は報酬の引き上げにかかわります。加算算定ができるものについては、積極的に加算算定する方向で検討を進めましょう。ただし、なかには要件が厳しい加算もあります。加算算定に重きを置きすぎて職員の負担が増えてしまっては逆効果です。加算の算定をする際には、職員への影響についてもよく検討しましょう。

資格維持のための負担軽減に努める

ケアマネの資格は更新制であり、更新するためには研修を修了する必要があります。研修費用はけっして安くなく、研修に参加するためには仕事を休まなければなりません。そのため、研修を負担に感じている人も多いのが現状です。
事業所としては、ケアマネに資格を維持してもらわなければならないため、研修に関する負担感の軽減は必須でしょう。研修費用の助成や、研修参加は出勤扱いにするなどの対策を講じ、ケアマネの負担を和らげましょう。

一人ひとりの能力に応じた働き方ができる体制を整える

ケアマネが担当するケースは、ひとつとして同じものはありません。本人や家族の受け入れがよく、スムーズに支援が進むケースもあれば、対応が難しい困難事例を担当することもあります。事業所はケアマネが安心して働けるように、ひとりだけに負担がかかりすぎないよう、能力に応じて担当を振り分けるように心がけましょう。特に、困難事例ばかり担当していないか、担当件数がほかの人に対して多すぎないかなど、定期的に確認することが大切です。もし偏りが見られる場合には、ほかのケアマネと話し合い、振り分けたり、サポートしたりして、負担を減らす工夫をしましょう。
また、本人の希望に応じた働き方ができるような環境を整備するのもよいでしょう。複数の施設や事業所を運営する法人であれば、本人の能力や希望に応じて配置転換を可能にすると、精神的負担が減る可能性があります。事業所で介護DXに取り組み、リモートワークを可能にすることで、多様な働き方を実現することもひとつの方法です。実際に、リモートワークを取り入れている事業所も徐々に増えています。

ケアマネが事業所を辞めたいと言ったときの対応の仕方

普段からケアマネの声に耳を傾け、様々なフォローを行っていても、ケアマネの不満や不安がたまって退職希望に結びつくこともあります。
ケアマネから「辞めたい」と相談を受けた場合の対応の仕方をまとめました。ケアマネが辞めなくてもすむように、早期に課題解決の糸口を見つけましょう。

ヒアリング

なぜ「辞めたいのか?」をヒアリングしましょう。ケアマネによって辞めたい理由は様々です。残業時間が多い、育児との両立が難しい、人間関係に悩んでいる、利用者のトラブルがあるなど、ケアマネが何に悩んでいるかを探りましょう。

問題点の共有

辞めたい理由が明らかになったら、次は辞めたい理由の原因となった問題点をケアマネと一緒に見つけましょう。例えば、辞めたい理由が「残業時間が多い」なら、「業務量が多い」「業務が非効率」という問題点があるかもしれません。

改善策の提示

共有した問題点に対して、事業所として対応できることを改善策としてケアマネに提示します。
例えば「業務が多すぎて嫌になった」と言われた場合は、今後ICTを導入して負担軽減を図ると提案するといった対応が考えられます。

課題を解決するための環境づくり

ケアマネから同意を得た改善策については、迅速に対応しましょう。時間がかかるようなら、いつごろまでに改善可能かを示すなど、ケアマネの悩みに事業所側が真摯に取り組んでいるという姿勢を見せることが大切です。

ケアマネとこまめにコミュニケーションをとって離職を防ごう

ケアマネには、「利用者のためになるサービスを提供したい」という強い思いが業務の根底にあります。そのため、業務量が多くても、責任感の強さからつい頑張ってしまう傾向があります。

ケアマネの退職希望は、突然のように見えるかもしれませんが、実際にはケアマネ自身が「仕事を辞めようかな」と思っているサインを出しています。施設運営者はこのようなサインを見落とさないように、日ごろからケアマネの仕事の状況を把握し、抱えている問題はないか、困っていることはないかなど定期的な面談を通じて気を配りましょう。そして必要に応じて具体的な改善策を実施し、ケアマネが働きやすい環境を整えるよう努めることが、ケアマネの離職防止につながります。

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