マネジメントの質を高める新しい取り組み

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介護コラム

井戸 和宏 氏

(株)IDO 代表取締役

リレーエッセイ最終回は「マネジメントの質を高める新しい取り組み」です。

近年の介護業界が抱えている諸問題については前回も述べましたが、介護現場におけるマネジメントの質を述べるにあたり、私が最も懸念することは、「質」そのものに対する価値観の変化です。
今後も高齢化が進む中で、懸命に「自立支援」を志している職員でも、なかなか目に見える結果(ADLの維持・向上など)がともなわず、現場全体での無力感を感じたりすれば求める質が不透明になりますし、更に医療や看護などの職種との連携の必要性が益々高まるので、現場のコミュニケーション能力のレベルアップも必要です。
このような職場での人間関係に加え、親身になって関わったご利用者が「病院への入院」に移行し「看取り」が増えるなど、「質」を高めるために起こる問題の対策が必要です。

このため、弊社では2013年より介護事業のサポートに特化したメンタルヘルスサポートと運営改善コンサルテーションを行っております。

この取り組みを通じて明確になったことが多くありますが、その中でも他の業界との違いは「職場」=「生活の場」という二重の意味合いに対する理解と教育の不足が大量離職や虐待等を招いている傾向だということです。
本来、介護の仕事ではご利用者の心身に寄り添う仕事ですので、「こころ」と「からだ」に対する理解があるわけですが、逆に自分がカウンセリングの機会を提案されても「そこまでではないので大丈夫」と判断する傾向が強いようです。医者の不養生みたいなものでしょう。

そこで、弊社では、従来の「メンタルヘルス支援」だけではなく、これに介護のアドバイザーや心理カウンセラーのサポートをパッケージ化した取り組みを行うことになり、これが定着や職場満足度の向上に大きな成果を上げるきっかけとなりました。

この度、IT業界大手のパイプドビッツ社のご協力を得て、インターネット機器でアクセス管理できるCAP(介護事業支援システム)を開発しました。
このCAPは、組織の強みと課題をアセスメントする「組織の健康診断」、従業員の変化をモニタリングする「私の事業所アンケート(従業員簡易満足度調査)」を定期的かつ手軽に行い、組織・従業員の状態を「見える化」することが可能です。
これらを踏まえ、改善や向上に必要なアドバイスを担当の「コンサルタント」と「カウンセラー」に適時相談できるコールセンターを活用できる仕組みです。

マネジメント層では「人がどのようにしたら動き、良い結果を出すか」という視点が必要で、問題が見えないから良いということではなく、問題を明確にすることで課題として捉え、これを計画的に改善していくことが必要です
また、適切な助言や相談が出来る体制を構築することで、職員が介護のプロフェショナルとして成長し、それにより「事業やサービスの質」を高めることができるのではないかと考えています。

皆様の益々のご健勝を祈念して最終回を終えたいと思います。

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