LIFE拡大は見送りに。ケアマネ業務はLIFE推進でどう変わる?

LIFE拡大は見送りに。ケアマネ業務はLIFE推進でどう変わる?

2024年に介護保険制度の改正が行われます。これによりケアマネジャー(以下ケアマネ)の業務が大きく変わるのではないかと予測されていましたが、2023年11月27日の審議会で、居宅介護支援や訪問介護へのLIFE拡大は見送られました。
今回の改正では見送りとなりましたが、厚生労働省はLIFEに関して引き続き活用を推進していく方針を明示しています。そのため、LIFEの活用において、ケアプランと連動した位置づけとなる想定をしておくことは重要でしょう。
こうした背景を踏まえて、ケアマネの業務が今後どうなるのかについて、厚生労働省の調査研究事業で作成された「『適切なケアマネジメント手法』の手引き」のガイドラインをもとに解説します。今後に向けて、事業所の運営責任者はケアマネと連携して準備しておきましょう。

LIFEとは

2021年度の介護保険制度の改正本格的に運用が始まった、LIFE(科学的介護情報システム)の概要を見てみましょう。

LIFEの制度

LIFEとは、厚生労働省が主導で始めた取り組みです。厚生労働省は、事業所が提出する利用者の健康状態や提供するサービスなどの情報を蓄積してデータベース化します。 情報を提供した事業所は介護報酬の加算を受けられます。これを、科学的介護推進体制加算(通称LIFE加算)といいます。厚生労働省から月に1度フィードバックがあり、双方向でやりとりするのがLIFE制度の特徴です。

LIFEの目的

厚生労働省は、科学的裏付けに基づく介護の実践のため、LIFEをスタートさせました。介護サービスの利用者の実態を把握することで、より質の高いサービスの提供や、介護職員の働き方改革の推進につなげることを目的としています。

LIFEの仕組み

事業所は利用者の情報をLIFEに提出します。「LIFEに関する評価」の実施月から6カ月が加算算定の対象となるため、少なくとも6カ月の間に1回以上「LIFEに関する評価」の実施を行います。 そのデータを厚生労働省が分析し、事業所にフィードバックが届きます。事業所はフィードバックを分析して、ケアプランの見直しや改善を行います。 これら一連の流れを経て、利用者に対するサービス向上を狙います。 LIFEについては、「科学的介護情報システム(LIFE)とLIFE加算をわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。

居宅介護支援や訪問系サービスへの LIFE加算は見送りに

2022年度の調査でLIFEを活用したモデル事業所(訪問系サービス・居宅介護支援事業所)にヒアリングが行われました。LIFEを活用した結果、サービス提供やケアプラン提案に効果があったという事業所もありました。
そこで、2024年度の介護保険制度の改正で訪問系サービスの事業所へのLIFE加算が検討されていましたが、見送りとなりました。情報の入力項目やデータの提出頻度、フィードバックに関する現状の課題への対応策を検討することが先決と議論されたためと考えられます。また、同じ利用者が複数の事業所を利用している際の、制度設計を検討すべきとの課題も挙がりました。

社会保障審議会での検討課題

社会保障審議会による、第232回介護給付費分科会で検討された課題を紹介します。

入力項目の見直し

LIFEの入力項目が煩雑なため、負担に感じている事業所も多いことから、今後はその点を見直し、重複している項目をひとつにする、入力項目を明確にするなどの見直しが図られます。
訪問系サービスの事業所では、ほかの事業所よりも身長や体重などの入力が困難であることも問題点となりました。

データ提出頻度の見直し

1か月に1回のLIFEの提出はスタッフの負担になるという事業所の見解もあり、3か月に1回に変更する案が出ています。また、同じ利用者が複数の事業所を利用している際、算定する加算データの提出を同じタイミングに合わせることも検討課題です。

フィードバックの見直し

フィードバックの目的は、利用者のP(Plan:計画)、D(Do:実施)、C(Check:チェック)、A(Action:改善)のサイクルを推進することです。たとえば、同じ要介護度の利用者の比較や地域別の層別化などを踏まえたクロス集計を行い、フィードバックを充実させる対応案が提案されました。

今後の方針

提出する事業所間での不公平感がなく、活用しやすい仕組みづくりが重要視されています。また検討項目としては、訪問系のサービスに適した評価項目や、複数の訪問系事業所のサービスを使っている利用者をどのように評価すべきかについて、引き続き検討を予定しています。今後はこれらの整備に向けて準備を進めることになるでしょう。

2024年度の介護保険制度改正での論点

LIFEは2024年8月30日に行われた「LIFE(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)」会議で、介護保険制度の改正が入る予測がたっていました。
社会保障審議会による、第222回介護給付費分科会で議論された主な項目を紹介します。

LIFEへの入力負担の軽減対策

LIFEのデータ入力を負担に感じている職員は少なくありません。厚生労働省の調査によると、LIFE導入事業所で、データ登録に負担を感じている割合は2021年度は78.1%、2022年度は76.4%となっています。 2022年度の調査では、介護ソフトのインポート機能のみを活用している割合が増化していますが、現場職員の負担軽減については課題が残るようです。

アウトカム視点も含めた評価のあり方

情報提供した事業所はLIFE加算を受けられますが、さらにその先の成果や効果についても評価をして欲しいという声が上がりました。
しかし、判断や評価が難しい点は否めません。今後、LIFEの入力項目の見直しや課題がどうなるのか、事業運営者としては気になるところです。

自立支援・重度化防止を重視した適切な評価の見直し

少子高齢化が進み、介護人材不足は待ったなしです。介護難民が増えることが予想されるため、対策として打ち出されたのが、高齢者への自立支援、重度化防止を目的とした生活援助です。
高齢者がひとりでも暮らしていけるよう、ゴミ捨てや、掃除、洗濯、一般的な調理、買い物などを支援する方針です。

ケアマネがLIFEを活用する際の課題

2024年度の介護保険制度の改正では、居宅介護支援や訪問介護へのLIFE拡大は見送りとなりました。しかし、今後対象サービスが拡大した場合、ケアマネの業務負担や介護事業所の実務にはどんな影響が考えられるのでしょうか。

ケアマネの負担増加

2021年に厚生労働省から「『適切なケアマネジメント手法』の手引き」というガイドラインが公表され、ケアマネは「基本ケア」と「疾患別ケア」という2方向からの支援が必須となりました。スキルや事業所の方針によって仕事を進めていたケアマネも、これからはガイドラインに沿ったやり方が求められます。LIFEを活用したケアマネジメントを同時に行うことで、ケアマネの負担が大きくなることが懸念されます。 もし、LIFEへのデータ提出サイクルが1ヶ月に1度となった場合、ケアマネはただでさえ提出する書類の作成に追われているため、さらに負担が強いられることは十分に考えられます。

フィードバック票の生かし方

LIFEを入力すると、月に1度、厚生労働省からフィードバック票が送られてきます。このフィードバック票をどのように活用するかも課題となるでしょう。ケアプランの作成や、ケアマネ利用者負担、家族支援の観点からは利用者家族とのさらなる連携も行っていかなければなりません。

LIFE活用のために押さえておきたいポイント

厚生労働省は今後も、LIFE活用を推進する方針を示しています。そのため、介護事業所とケアマネは「適切なケアマネジメント手法」にのっとって連携しなければいけません。スムーズな連携のためには、以下の点を押さえておきましょう。

  • 事業所内でフィードバック情報を活用する意識を浸透させる
    LIFEのフィードバック票を職員と共有することで意識を高めます。
  • 業務フローをチェックリスト化する

    LIFE活用はケアマネの裁量に任せるのではなく、介護事業所で業務フローを作成します。LIFEのフィードバック票をもとに、改善すべき点をチェックリストにしておきましょう。

LIFE推進によりケアマネも実務改革が必要に!

ケアマネの業務負担は現在すでに大きいですが、適切なケアマネジメント手法に関するガイドラインを皮切りに、改正のたびに業務が増えることが見込まれます。そこで、ケアマネや職員が変化の波をスムーズに乗り越えていけるための準備が必要です。たとえば、IT導入、DX化の対策は有効です。特に、介護ソフトは大きな助けとなります。介護ソフトの「介舟ファミリー」は、改正が入った際も即座に対応します。LIFEに提供するデータの自動生成できるため、ケアマネの業務を大幅に軽減することが可能です。すでに介護ソフトを導入済みの事業所も、より効率的な介護ソフトへのリプレイスを検討してみてはいかがでしょうか。

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ケアマネの法定研修が見直しへ!見直しの背景とカリキュラムについて解説

ケアマネの法定研修が見直しへ!見直しの背景とカリキュラムについて解説

目まぐるしく変化する社会環境のなか、ケアマネジャー(介護支援専門員)に求められる役割も変化しています。厚生労働省では、2024年度からのケアマネジャーの法定研修の見直しを行いました。しかし、法定研修の内容が変わることに戸惑う人もいるのではないでしょうか。この記事では、今回見直されたケアマネジャー法定研修のカリキュラムについて、見直しの背景とともに解説します。

厚生労働省がケアマネジャー法定研修のカリキュラム見直しを通知

厚生労働省は2022年、ケアマネジャーの法定研修のカリキュラムとガイドラインについて、見直し案を通知しました。2023年2月に告示され、カリキュラムの見直しが実施されることとなりました。見直し内容は、2024年4月以降の研修に反映されます。

今回の見直しにおける大きなポイントは、「適切なケアマネジメントの手法」をすべての研修に位置付けた点です。厚生労働省は、2020年から「適切なケアマネジメントの手法」の周知を始めており、2022年度には実践研修を開催するなど、その普及に力を入れてきました。今回のカリキュラム見直しに伴い、2024年4月以降は全研修に「適切なケアマネジメントの手法」が位置付けられることになったのです。

ケアマネ法定研修に見直しが必要になった背景とは?

ケアマネジャーの法定研修に見直しが必要になった背景には、社会環境の変化があると考えられます。介護や医療、福祉の実践方法や技術は日々進歩しており、介護保険制度をはじめとする社会保障制度を取り巻く環境は常に変化しています。社会環境が変化するにつれ、ケアマネジャーが習得すべき技術や知識、ケアマネジャーに期待される役割も刻々と変化しているのです。

また、利用者像にも変化が表れています。ケアマネジャーが実際に対応する相手には、独居で介護を必要とする人や認知症や精神疾患を有する人、医療措置を必要とする人だけでなく、支援を必要とする家族も含まれるようになりました。実際の利用者像が多様化、複雑化してきたことも、ケアマネジャーの法定研修に見直しが必要となった背景のひとつといえるでしょう。

このような状況に加え、介護保険制度や介護報酬の改定があることから、ケアマネジャーの法定研修の内容やあり方についても定期的に見直す必要があると認められ、法定研修の見直しの運びとなりました。

ケアマネ法定研修のカリキュラム見直し3つのポイント

今回実施されるケアマネジャー法定研修のカリキュラム見直しには、3つのポイントがあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 「適切なケアマネジメントの手法」に関する内容が追加

「適切なケアマネジメントの手法」を学ぶ内容が、各科目類型に追加されました。すべての法定研修に「適切なケアマネジメントの手法」を取り入れることによって、実務研修から更新研修まで継続して学べる仕組みが構築されています。研修を受けることにより、生活の将来予測や各職種の視点・知見に基づいた根拠のある支援を組み立てることが期待されています。

実務研修では、新たに心疾患と誤えん性肺炎の予防、他法他制度の活用が必要な事例に関するケアマネジメントの項目が追加されました。専門研修では、これまで行っていたケアマネジメントの演習項目の時間数はそのままに、内容を適切なケアマネジメントの手法に添うものに変更しています。具体的な変更内容は以下のとおりです。

変更前の演習項目
  • リハビリテーション及び福祉用具の活用に関する事例
  • 看取り等における看護サービスの活用に関する事例
  • 認知症に関する事例
  • 入退院時等における医療との連携に関する事例
  • 家族への支援の視点が必要な事例
  • 社会資源の活用に向けた関係機関との連携に関する事例
  • 状態に応じた多様なサービスの活用に関する事例

  • 変更前の演習項目
  • 生活の継続及び家族等を支える基本的なケアマネジメント
  • 脳血管疾患のある方のケアマネジメント
  • 認知症のある方及び家族等を支えるケアマネジメント
  • 大腿骨頸部骨折のある方のケアマネジメント
  • 心疾患のある方のケアマネジメント
  • 誤えん性肺炎の予防のケアマネジメント(新設)
  • 地域共生社会の実現に向け他法他制度の活用が必要な事例のケアマネジメント(新設)
  • また、主任ケアマネジャー研修においては、「終末期ケア(EOL(エンドオブライフ)ケア)を含めた生活の継続を支える基本的なケアマネジメント及び疾患別ケアマネジメントの理解」が新設されました。これまでのターミナルケアはこの項目に統合されており、終末期ケアにおけるケアマネジメントをより深く学べるでしょう。

     近年の動向に関する内容を定期的に反映

    高齢者を取り囲む環境は目まぐるしく変化していることから、近年の動向に関する内容を定期的に反映することとなりました。具体的には、地域共生社会やヤングケアラー、仕事と介護の両立、科学的介護(LIFE)、身寄りのない人への対応などの内容を研修に取り入れています。この見直しによって、より時代に即したケアマネジメントを行えるようになるでしょう。

    また、今後は認知症や終末期などで意思決定支援を必要とする利用者や世帯が増えると予想されています。意思決定支援の場面では、職業倫理の重要性がよりいっそう高まることから、職業倫理の視点についても強化することとなりました。すべての研修において、倫理にかかわる項目は時間数増加もしくは新設となり、職業倫理について必ず学べる仕組みがとられています。

     法定研修修了後の継続研修を見据えたカリキュラムの見直し

    ケアマネジャーが利用者に適切な支援を実施していくためには、継続的に学ぶ必要があります。しかし、研修の時間は限られているのが現状です。実際に、今回のカリキュラム見直しでは、実務研修と専門研修Iにおいて、以下の項目が時間数減少となりました。

    • 実務研修における「居宅サービス等計画の作成」「サービス担当者会議の意義及び進め方」「モニタリング及び評価」
    • 専門研修Ⅰにおける「ケアマネジメントにおける実践の振り返り及び課題の設定」

    このように限られた時間数のなかで、ケアマネジャーは必要な知識を習得しなければいけません。そのため今回の見直しでは、法定研修の修了後も必要な知識の習得のために継続的に学べるよう、法定外研修やOJTなどへつながることを意識した知識の獲得に重きを置いた内容となりました。

    特に実務研修の課程では、実践で活躍するための継続研修を見据えたカリキュラムが必要となります。そのため、継続研修で実践力要請の基盤となる幅広い知識を獲得できるよう、実務研修における習得目標を「必要な知識を有しており、具体的な用語や実例等を述べることができるレベル」「必要な理念や考え方について理解しており、その理念や考え方について自分の言葉で具体的に説明できるレベル」と設定することになりました。

    また、専門研修IIと主任ケアマネジャー更新研修では、ケアマネジメントの実践の振り返りと行うと同時に、最新の知見を確認し実践のあり方を見直すための項目が新設されています。

    ケアマネジャー研修の変更点から介護ニーズの変化を理解しよう

    ケアマネジャー研修の新たなカリキュラムは、2024年4月以降に実施される研修から反映されます。研修の変更点から、ケアマネジャーには個々のニーズに対応し、根拠に基づいた適切な支援が求められていることが理解できるでしょう。介護の現場では、このような時代の要請を十分認識し、ケアマネジメントの質を高める努力を怠らないことが重要です。

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    ケアマネの離職率はなぜ高い?離職理由と定着率を上げる方法を解説!

    ケアマネの離職率はなぜ高い?離職理由と定着率を上げる方法を解説!

    居宅介護支援事業所、老人ホーム、地域包括支援センターなどに所属するケアマネジャー(ケアマネ)。ケアマネは、その仕事内容から専門知識や高度なコミュニケーション力を必要とされる大変な仕事です。しかし、ケアマネ人材は慢性的に不足しており、多くのケアマネは業務過多の状態にいることでしょう。施設運営者が業務過多を放置することは、ケアマネの離職率を高め、さらなる人材不足に陥るという悪循環を生みます。さらには質の高い介護サービスを提供し続けることが難しくなります。施設運営者は、自施設がケアマネ不足にならないよう、日ごろからケアマネをしっかりフォローし、働きやすい環境を整える必要があります。この記事では、ケアマネの離職率を下げて定着率をあげるために施設運営者が取り組むべき方法を紹介します。

    ケアマネの離職率と離職理由の実態

    近年、ケアマネの人材不足に悩む事業所が増えています。公益財団法人介護労働安定センターが公表した「令和4年度介護労働実態調査」によると、介護職全体の離職率は14.3%です。それに対し、居宅介護支援サービスの職員(ケアマネ)の離職率は9.2%で、前年度は14.1%であったことから、離職率は改善傾向にあるといえるでしょう。
    離職者の勤務年数を見てみると、在宅ケアマネが在籍する居宅介護支援事業所では、退職者の59.7%が3年以上勤務して離職していました。この結果から、ケアマネの場合、ある程度の経験を経てから離職する人が多いことがわかります。

    では、ケアマネはどのような理由で離職しているのでしょうか。離職理由の上位には次の5つが挙げられています。

    • 職場の人間関係に問題があったから
    • 会社の運営や理念に不満があったから
    • 今の職場のほかにいい職場が見つかったから
    • このままでは自分の将来の見込みが立たないから
    • 仕事内容のわりに賃金が安いから

    ケアマネの離職理由は、介護職全体の離職理由とおおむね同じです。ただし、全体では上位に挙がっている結婚・妊娠・出産・育児のために離職した人の割合は、ケアマネでは上位に挙がっていません。これは、ケアマネの平均年齢が53.0歳と高いことから、結婚や育児などを理由に退職する人の割合が少ないからと考えられるでしょう。

    ケアマネを辞めたいと感じる理由3選

    ケアマネを辞めたいと感じる理由で、特に多くみられる3つの理由について、詳しく見ていきましょう。

    とにかく業務量が多い

    実際の介護現場で、ケアマネが辞めたいと感じている理由としてよく聞かれるのが、業務量の多さです。ケアマネの仕事は、利用者や家族との直接的なかかわりだけでなく、書類の作成や請求業務など多岐にわたります。ひとりのケアマネが担当する件数も多く、訪問がようやく終わったと思ったら、次は事務作業が待っていることも少なくありません。そのため、時間内に業務が終わらないことも多いのです。特に、事務作業に時間をとられて大変と感じるとの声はよく聞かれており、業務量の多さに心身ともに疲れてしまう人もいます。

    介護施設に勤務するケアマネの場合、請求業務はないものの、現場業務と兼務しているケースも見られます。ケアマネの仕事だけでも業務が多いのに、現場の仕事もこなさなければならず、つらくて辞めたいと思っている人もいるようです。また、施設にケアマネがひとりしかいない場合もあり、業務が終わらないのに助けてもらうこともできない状況に疲弊することもあるでしょう。

    精神的な負担が大きい

    令和4年度介護労働実態調査によると、ケアマネの仕事について「精神的にきつい」と悩んでいる人の割合は38.0%となっており、精神的負担を感じている人が多いことがわかりました。ケアマネの場合、利用者や家族とのやりとりが多く、双方の思いや希望が一致しないことも少なくありません。また、家族が利用者本人の状況や必要なサポートに対し理解を示さないケースもあり、利用者と家族の板挟みに悩むことも多いでしょう。
    実際に、利用者や家族に対する悩みでは、「利用者に適切なケアができているか不安」との声が最も多く、思うように支援が進まず精神的に負担を感じている人が少なくないことがわかります。

    仕事のわりに給料が低い

    厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」によると、ケアマネの基本給は約22万円となっています。この金額は介護職員に比べると高いものの、ケアマネは介護報酬の処遇改善加算の対象外であることから、ケアマネになってから給料が下がったとの声も上がっています。特に、介護職員としての経験が長い人や、夜勤をこなしていた人の場合は、ケアマネになって給料が下がったと感じる人が多いようです。
    また、現場からの声として仕事と給料のバランスが悪いとも聞かれます。ケアマネの場合、そもそもの業務量が多いことに加え、利用者の緊急対応をしなければならないケースもあります。時間外に電話がかかってきて対応せざるをえないケースも多く、気が休まらないと感じている人もいるようです。そのため、仕事内容と給料が一致していないと感じる人が多いようです。

    ケアマネの仕事は多岐にわたるため大変

    ケアマネの仕事には、主に以下の5つがあります。

    • ケアプランの作成
      利用者家族へのヒアリングなど情報収集を行ったうえで、アセスメントを実施し、ケアプランを作成します。
    • 利用者と家族の訪問・ヒアリング
      担当者会議などの日程調整も含まれます。
    • 介護給付費の管理や必要書類の提出
      モニタリング記録、担当者会議録、給付管理など作成する書類は多岐にわたります。
    • サービス事業者等への調整(居宅)
      利用者が受けたいサービスをヒアリングし、サービス事業所と調整を行います。
    • 介護職員・看護職員等への調整(施設サービス)
      施設で働くスタッフへの指示や利用者・家族との調整を行います。

    ケアマネの仕事内容は、ルーティンワークというよりも、利用者一人ひとりにあったサービスを提供するためにヒアリングし、関係者と交渉し、適切な提案を行うという、創意工夫が必要なものです。
    関係者との難しい調整を求められるため、柔軟性や忍耐力も必要です。

    さらに、利用者に頼られる存在であり、利用者の要望に沿うために奔走することは少なくありません。
    利用者のためにと頑張らなければならないとという責任感から強いプレッシャーを感じることもあるでしょう。

    介護施設に所属するケアマネは、利用者宅を訪問することがない反面、利用者の要望と施設のルールなどを鑑みて調整する必要があります。利用者や利用者の家族から意見をヒアリングし、利用者と施設の仲介をするという重圧のかかる役割です。

    また、居宅、介護施設など所属先を問わず、ほとんどのケアマネはチームで活動するのではなく、利用者を自分一人で担当することが多いため、すべての業務を一人でこなしています。そのため、仕事上の悩みは周囲や上司に相談しづらい環境にあります。

    昼間は外出していることが多いケアマネは、事務作業はどうしても空き時間か、夕方以降ということになります。残業になることもあり、オーバーワークな状況で働いているケアマネは少なくないでしょう。

    このように、ケアマネは精神的にも肉体的にも大変ハードな職種なのです。

    ケアマネの離職防止のためできる日ごろのフォロー

    介護現場の中心的役割を担うケアマネが突然辞めてしまうと、次の人材を探すのには大きな手間がかかります。そこで、ケアマネが離職することなく意欲的に長く勤められるように、施設責任者として日ごろからどのようにケアマネの仕事をフォローしていくべきかをまとめました。

    ケアマネの仕事内容の把握

    上司である施設運営者がケアマネの仕事に関心を寄せ、状況を把握することは、非常に重要です。仕事内容を把握していれば、仕事上の相談に対して適切なアドバイスや対応を行うことができ、ケアマネと強い信頼関係を築くことができます。また、ケアマネは、自分の仕事をしっかり評価してくれている感じるため、モチベーションアップの一因にもなります。

    多岐にわたるケアマネの仕事を把握することは、簡単ではありませんが、最近では多くの事業所で介護ソフトが導入されており、業務の進捗状況やトラブル情報などはリアルタイムで共有されます。

    抱えている問題の共有

    ケアマネは、前述のように一人で行動することが多いため、仕事上の悩みやトラブルなどを気軽に相談しにくい状況です。コミュニケーションには、業務日誌や朝礼、ミーティングなど様々な方法がありますが、上司である施設運営者は、ケアマネと積極的にコミュニケーションをとれる機会を設定することも重要です。その方法の一つが、3か月から半年に1回のスパンで実施する定期的な面談です。ケアマネの状況を1対1で個別にヒアリングすることで、今抱えている問題を早期に見つけ把握するよう努めるとよいでしょう。

    問題解決に向けた改善への取り組み

    ケアマネの抱えている問題について、誠実に取り組む姿勢を示し、事業所としてどのような改善、解決ができるか方法を探しましょう。こうした姿勢は、「事業所にとってケアマネは大切な存在である」という意思表示になります。解決策の検討には、ケアマネだけではなく、他の職員の意見を聞く機会を設けるのもいいでしょう。事業所として可能な範囲で対応し、ケアマネの問題を解消できるようにサポートしていきます。

    ケアマネの離職率を下げて定着してもらう方法5選

    ケアマネが離職することなく、働き続けられるようにするには、どのような方法をとったらよいのでしょうか。
    離職率を下げてケアマネを定着させるために事業所ができることを5つ紹介します。

    ICT活用で現場の業務負担を軽減する

    ケアマネの業務負担を軽減する必要があります。まずは、最も負担が大きい事務作業を減らす工夫をしましょう。
    具体的には、介護ソフトの新規導入やリプレイスを検討し、書類作成や請求業務などの業務負担の軽減を図ります。タブレット入力が可能な製品であれば、モニタリングやアセスメントの際にその場で入力が可能で、業務効率化が進むでしょう。
    すでに導入している介護ソフトから別の介護ソフトへの変更を検討する場合には、実際に介護ソフトを使用するケアマネと話し合いを重ねて最適な製品を選ぶほうが無難です。ソフトの入れ替えをすると新たに使い方を覚える必要があるため、操作に慣れるまでに時間がかかることで負担に感じる人もいます。操作性が簡単で覚えやすく、導入時に使い方についてサポートが得られるサービスを選ぶと、現場の負担を軽減できるでしょう。

    相談できる体制をつくる

    ケアマネは、基本的にひとりで仕事を進めていきます。そのため、仕事の悩みを相談したくても、先輩ケアマネが忙しそうでできないことも多いです。結果として、精神的に追い詰められてしまうケースもあるため、事業所が率先して仕事の悩みや課題を共有できる場をつくる必要があります。具体的には、定期的に会議を開催して悩みや課題を共有し、職場全体で対策を検討する機会を設けるとよいでしょう。
    また、相談しやすい関係を築くことも大切です。上司と相談する1on1ミーティングの機会をつくり、上司と良好な関係を構築する工夫もしましょう。

    事業所で積極的に加算を算定する

    ケアマネの悩みで多くを占める収入面への対応として、事業所で加算を算定するのも良い方法です。加算は報酬の引き上げにかかわります。加算算定ができるものについては、積極的に加算算定する方向で検討を進めましょう。ただし、なかには要件が厳しい加算もあります。加算算定に重きを置きすぎて職員の負担が増えてしまっては逆効果です。加算の算定をする際には、職員への影響についてもよく検討しましょう。

    資格維持のための負担軽減に努める

    ケアマネの資格は更新制であり、更新するためには研修を修了する必要があります。研修費用はけっして安くなく、研修に参加するためには仕事を休まなければなりません。そのため、研修を負担に感じている人も多いのが現状です。
    事業所としては、ケアマネに資格を維持してもらわなければならないため、研修に関する負担感の軽減は必須でしょう。研修費用の助成や、研修参加は出勤扱いにするなどの対策を講じ、ケアマネの負担を和らげましょう。

    一人ひとりの能力に応じた働き方ができる体制を整える

    ケアマネが担当するケースは、ひとつとして同じものはありません。本人や家族の受け入れがよく、スムーズに支援が進むケースもあれば、対応が難しい困難事例を担当することもあります。事業所はケアマネが安心して働けるように、ひとりだけに負担がかかりすぎないよう、能力に応じて担当を振り分けるように心がけましょう。特に、困難事例ばかり担当していないか、担当件数がほかの人に対して多すぎないかなど、定期的に確認することが大切です。もし偏りが見られる場合には、ほかのケアマネと話し合い、振り分けたり、サポートしたりして、負担を減らす工夫をしましょう。
    また、本人の希望に応じた働き方ができるような環境を整備するのもよいでしょう。複数の施設や事業所を運営する法人であれば、本人の能力や希望に応じて配置転換を可能にすると、精神的負担が減る可能性があります。事業所で介護DXに取り組み、リモートワークを可能にすることで、多様な働き方を実現することもひとつの方法です。実際に、リモートワークを取り入れている事業所も徐々に増えています。

    ケアマネが事業所を辞めたいと言ったときの対応の仕方

    普段からケアマネの声に耳を傾け、様々なフォローを行っていても、ケアマネの不満や不安がたまって退職希望に結びつくこともあります。
    ケアマネから「辞めたい」と相談を受けた場合の対応の仕方をまとめました。ケアマネが辞めなくてもすむように、早期に課題解決の糸口を見つけましょう。

    ヒアリング

    なぜ「辞めたいのか?」をヒアリングしましょう。ケアマネによって辞めたい理由は様々です。残業時間が多い、育児との両立が難しい、人間関係に悩んでいる、利用者のトラブルがあるなど、ケアマネが何に悩んでいるかを探りましょう。

    問題点の共有

    辞めたい理由が明らかになったら、次は辞めたい理由の原因となった問題点をケアマネと一緒に見つけましょう。例えば、辞めたい理由が「残業時間が多い」なら、「業務量が多い」「業務が非効率」という問題点があるかもしれません。

    改善策の提示

    共有した問題点に対して、事業所として対応できることを改善策としてケアマネに提示します。
    例えば「業務が多すぎて嫌になった」と言われた場合は、今後ICTを導入して負担軽減を図ると提案するといった対応が考えられます。

    課題を解決するための環境づくり

    ケアマネから同意を得た改善策については、迅速に対応しましょう。時間がかかるようなら、いつごろまでに改善可能かを示すなど、ケアマネの悩みに事業所側が真摯に取り組んでいるという姿勢を見せることが大切です。

    ケアマネとこまめにコミュニケーションをとって離職を防ごう

    ケアマネには、「利用者のためになるサービスを提供したい」という強い思いが業務の根底にあります。そのため、業務量が多くても、責任感の強さからつい頑張ってしまう傾向があります。

    ケアマネの退職希望は、突然のように見えるかもしれませんが、実際にはケアマネ自身が「仕事を辞めようかな」と思っているサインを出しています。施設運営者はこのようなサインを見落とさないように、日ごろからケアマネの仕事の状況を把握し、抱えている問題はないか、困っていることはないかなど定期的な面談を通じて気を配りましょう。そして必要に応じて具体的な改善策を実施し、ケアマネが働きやすい環境を整えるよう努めることが、ケアマネの離職防止につながります。

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