自立した姿とは。これからも人にかかわろうとしている皆さんに考えてほしいこと

子供時代の記憶の中に、脊髄カリエスからの後遺症で、父はいつも2本の杖を使いゆっくり歩いていた姿がある。
私が50歳の頃、父は広い自宅内を腕の力を使いいざって移動していた。
ベッドは不要と言い、敷布団の上で横になり、動きたいときは布団の上を転がり、トイレも風呂も工夫をして可能にしていた。
心臓弁膜症を抱えた母の負担を軽くしようと思ってのことかもしれないが、当時の私には父の自立した姿に映っていた。

自立も様々。
その人の持つ能力、障害の程度、生活背景等によっても違いがある。

今春、身体障害1級、障害区分4、車いす利用のA氏から、アパート探しを頼まれた。
1人で住むに至った理由はここでは語らないが、希望に添えるように相談しながら探した。
約3か月半かかった。アパートの居室は一階。
部屋に入るまでにバリアが数か所ある。
A氏は妥協した。A氏には、生活保護法上、転居時、生活に必要な家財を購入する費用が若干出る。
アドバイスのつもりで、家財はまとめて購入すると低額で抑えられることを伝えた。
「暫くは不便でも、自分で1つずつ揃えたい」と回答。
ひと月に一度訪問させてもらっているが「今度は、洗濯機を買いますよ」と、選ぶことを楽しんでいるように見えた。
自分の生活は自分で計画して徐々に作っていく。
一時、3畳間に住んでいたA氏とは違う力強さが感じられた。

できる力を奪わない。
私自身も含め、介護職員等ができることを手伝っている場面は多いと聞く。
利用者の方と話し合い、できること、できるかもしれないことを1つでも多く見つけ、共に行う介護、する介護に近づくことが利用者本人の喜び、自立に繋がる筈だと振り返っている。

柴田 範子

NPO法人「楽」理事長。

■経歴■

東洋大学ライフデザイン学科 元准教授。
NPO法人「楽」理事長。
神奈川県社会福祉審議会委員や介護福祉士国家試験委員。

1987年川崎市においてホームヘルパーさんとして勤務。1999年4月上智社会福祉専門学校の講師として教壇に立つ。
その傍ら、NPO法人「楽」を設立し、2005年4月より現職。
2004年NPO法人「楽」は川崎市内を中心に福祉・介護にかかわる事業、研修、研究、相談事業等を行っており、認知症デイサービスセンター「ひつじ雲」を川崎市幸区に開設。2006年5月には新制度の「小規模多機能型居宅介護」へ形を変え、それと同時に新たに「認知症対応型通所介護」(デイサービスセンターくじら雲)を同じ幸区内に開所
現在は、介護の質を高めたいと言う願いを持ってサービス提供責任者の実務研修に力を入れている

NPO法人楽 HP  

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