【最新版】訪問介護の特定事業所加算の取得要件とは?取得のためのコツも詳しく解説!

2024年度の介護報酬改定により、訪問介護の基本報酬が減算される中、「特定事業所加算」の重要性が高まっています。この加算は最大20%の報酬上乗せが可能な一方で、複雑な算定要件と継続的な管理が求められる制度です。手間とコストがかかってしまうことも考えられますが、それでも収益改善を図りたい事業所にとっては重要な収益源となります。
本記事では、特定事業所加算に必要な各要件を詳しく解説し、取得のためのコツなどもあわせて解説します。

特定事業所加算とは

特定事業所加算とは、質の高い介護サービスを提供する訪問介護事業所を評価し、その取り組みに対して介護報酬を上乗せする制度です。この加算制度は、単に介護サービスを提供するだけでなく、職員の資質向上や適切な運営体制の構築、重度要介護者への対応など、総合的なサービス品質の向上を目的としています。
先述したように2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が減算される中、特定事業所加算の重要性がより一層高まっています。国の方針として訪問介護事業所の大規模化を推進する背景もあり、小規模事業所にとっては経営安定化のための必須の取り組みとなっています。

特定事業所加算の種類と単位数

加算名 加算割合
特定事業所加算Ⅰ 所定単位数の20%
特定事業所加算Ⅱ 所定単位数の10%
特定事業所加算Ⅲ 所定単位数の10%
特定事業所加算Ⅳ 所定単位数の3%
特定事業所加算Ⅴ 所定単位数の3%

特定事業所加算は、加算Ⅰから加算Ⅴまでの5つの区分に分かれており、それぞれ異なる加算率が設定されています。2024年度の介護報酬改定後、特定事業所加算Ⅰは所定単位数の20%、加算Ⅱ・Ⅲは10%、加算Ⅳ・Ⅴは3%の加算となっています。

特に2024年度改定で加算Ⅳの加算割合が従来の5%から3%に引き下げられた点は注目です。これは、より高い要件を満たす加算Ⅰ~Ⅲへの誘導を図る国の意図が反映されています。加算率の違いは、要件の厳格さと比例しており、より多くの要件を満たすほど高い加算を得られる仕組みとなっています。そのため事業所は自身の体制や人材配置を総合的に評価し、取得可能な加算レベルを戦略的に選択することが重要です。

特定事業所加算の算定要件

特定事業所加算の算定要件は、体制要件、人材要件、重度者等対応要件の3つのカテゴリーに分類されており、各加算レベルによって満たすべき要件の組み合わせが異なります。

2024年度の介護報酬改定により、一部の要件が追加・変更されているため、従来の要件を満たしていた事業所も改めて確認が必要です。

下記要件は満たせばよいものではなく、継続的な維持が求められるため、日常的な管理体制の構築が不可欠です。また、要件を満たす根拠となる書類の整備・保管も重要な要素となります。以下の表をご覧ください。

算定要件 (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) (Ⅳ) (Ⅴ)
体制要件
人材要件
又は

又は

又は
重度者等対応
要件

又は

又は

体制要件(8項目)

  • ①訪問介護員等・サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施
  • ②利用者に関する情報またはサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催
  • ③利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告
  • ④健康診断等の定期的な実施
  • ⑤緊急時等における対応方法の明示
  • ⑥病院、診療所または訪問看護ステーションの看護師との連携により、24時間連絡できる体制を確保しており、かつ、必要に応じて訪問介護を行うことができる体制の整備、看取り期における対応方針の策定、看取りに関する職員研修の実施等
  • ⑦通常の事業の実施地域内であって中山間地域等に居住する者に対して、継続的にサービスを提供していること
  • ⑧利用者の心身の状況またはその家族等を取り巻く環境の変化に応じて、訪問介護事業所のサービス提供責任者等が起点となり、随時、介護支援専門員、医療関係職種等と共同し、訪問介護計画の見直しを行っていること

体制要件は、訪問介護事業所の運営体制の質を評価する8つの項目から構成されています。主要な要件として、訪問介護員等やサービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施、利用者情報やサービス提供時の留意事項を共有するための定期的な会議開催、情報伝達体制の確立などがあります。
2024年度改定で新たに追加された要件として、中山間地域等への継続的なサービス提供や、利用者の状況変化に応じた訪問介護計画の見直し体制などがあります。これらの要件は、実質的にサービス品質の向上につながる取り組みとして実施することが重要です。ほかにも健康診断の実施や緊急時対応方法の明示なども含まれており、職員の働きやすさと利用者の安全確保の両面を考慮した包括的な体制構築が求められています。

人材要件(4項目)

  • ⑨訪問介護員等のうち介護福祉士の占める割合が30/100以上、または介護福祉士、実務者研修修了者、並びに介護職員基礎研修課程修了者及び1級課程修了者の占める割合が50/100以上
  • ⑩すべてのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士、または5年以上の実務経験を有する実務者・研修修了者もしくは介護職員基礎研修課程修了者もしくは1級課程修了者
  • ⑪サービス提供責任者を常勤により配置し、かつ、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置していること
  • ⑫訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30/100以上であること人材要件は、訪問介護事業所で働く職員の資格や経験に関する4つの要件で構成されています。

具体的には、介護福祉士の配置割合(30%以上)、または介護福祉士と実務者研修修了者等の合計配置割合(50%以上)を満たす必要があります。
サービス提供責任者については、3年以上の実務経験を有する介護福祉士、または5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者等の配置が求められます。
さらに、常勤のサービス提供責任者の配置や、勤続年数7年以上の職員の配置割合(30%以上)なども要件として設定されています。
これらの要件は、職員の専門性と経験の蓄積を重視しており、質の高いサービス提供の基盤となる人材確保の重要性を示しています。人材要件の維持には継続的な人材育成と定着促進の取り組みが不可欠であり、事業所の長期的な人材戦略との整合性が求められます。

重度者等対応要件(2項目)

  • ⑬利用者のうち、要介護4、5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が20/100以上
  • ⑭看取り期の利用者への対応実績が1人以上であること(併せて⑥を満たすこと)

重度者等対応要件は、要介護度や認知症の程度が高い利用者、および看取り期にある利用者への対応に関する要件です。

要件⑬では、利用者のうち要介護4・5の者、日常生活自立度がⅢ・Ⅳ・Mの者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が20%以上であることが求められます。

要件⑭は2024年度改定で新設された要件で、看取り期の利用者への対応実績が1人以上あることが条件となっており、併せて体制要件⑥(24時間連絡体制等)を満たす必要があります。これらの要件は、医療的ケアが必要な重度者や人生の最終段階にある利用者への対応能力を評価するものです。

重要度対応要件では該当する利用者を受け入れるだけでなく、適切なケア体制の構築、医療機関との連携、職員の専門性向上など、総合的な取り組みが求められます。重度者対応は事業所にとって負担が大きい一方で、地域の介護ニーズに応える重要な役割であり、社会的意義の高い取り組みとして評価されています。

特定事業所加算を取得する3つのメリット

特定事業所加算の取得は、訪問介護事業所にとって以下のようなメリットをもたらします。

事業所の収益向上

特定事業所加算を取得するメリットとして、安定的な収益向上効果があることが挙げられます。最高レベルの加算Ⅰでは基本報酬の20%が上乗せされるため、例えば月間100万円の基本報酬がある事業所では、月額20万円、年間240万円の収益増加が見込めます。
この収益向上は、通常の加算と異なり、サービス提供の都度発生するものではなく、要件を満たしている限り継続的に算定できるため、計画的な収益確保が可能です。

特に基本報酬が減算された2024年度改定の影響を相殺し、事業の持続可能性を高める効果も期待できます。増加した収益は、職員の処遇改善、設備投資、新サービスの開発など、さらなる事業所の発展に向けた原資として活用できるため、好循環を生み出す基盤となります。

事業所に対する評価の向上

特定事業所加算の取得は、事業所の社会的評価と信頼性の向上に大きく寄与します。この加算は、厚生労働省が定める厳格な要件をクリアした質の高いサービス提供事業所として公的に認定されることを意味するため、利用者や家族からの信頼獲得につながります。また、地域包括支援センターやケアマネジャーからの信頼性も向上するため紹介の増加や新規利用者の獲得効果も期待できます。
求職者にとっても、しっかりとした運営体制と研修制度が整備された魅力的な職場として映るため、優秀な人材の確保にも有利に働きます。同業他社との差別化要因としても機能し、競争優位性の確立に貢献します。事業所のブランド価値向上は、長期的な事業継続と発展の基盤となる重要な無形資産の構築につながります。

人材確保・定着への効果

特定事業所加算の取得要件には、職員の研修計画策定、定期的な会議開催、健康診断の実施など、働きやすい職場環境の整備に関わる項目が多く含まれています。これらの要件をクリアする過程で、自然と職員にとって魅力的な職場環境が構築されるため、人材の定着率向上が期待できます。
また、計画的な研修実施により職員のスキルアップが図られ、仕事へのやりがいや達成感の向上にもつながります。加算取得により増加した収益を職員の処遇改善に還元することで、さらなる定着促進効果も見込めるでしょう。
人材不足が深刻な介護業界において、安定した人材確保と定着は事業所の最重要課題の一つであり、特定事業所加算の取得はこの課題解決に向けた有効な手段として機能します。結果として、サービス品質の安定化と向上の好循環が生まれ、持続可能な事業運営の基盤が確立されます。

特定事業所加算取得時の注意点

特定事業所加算の取得には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点とデメリットも存在します。これらを事前に理解し、適切な対策を講じることが、加算取得の成功と継続的な算定の鍵となります。

加算取得が複雑で難しい

特定事業所加算の取得には、 複雑で多岐にわたる要件への対応という大きな課題があります。14の詳細な要件それぞれに対して、適切な体制整備と根拠書類の作成が必要となり、特に小規模な事業所では既存職員への負担が集中しがちです。研修計画の策定、定期会議の開催、各種マニュアルの整備など、通常業務に加えて多くの準備作業が発生するため、計画的な業務配分と時間管理が不可欠です。
また、取得後も要件を満たした状態の継続的な維持が求められるため、一時的な取り組みではなく、継続的な運営体制の変革が必要となります。人材要件においては、有資格者や経験豊富な職員の確保・維持が継続的な課題となり、人材流出が発生した場合のリスクも考慮する必要があります。

要件不足の場合、加算分を返還しなければならない

特定事業所加算には、返還のリスクがあります。算定後に要件不足が発覚した場合、過去に遡って加算分の返還が求められる可能性があり、事業所の大きな損失につながるケースも考えられます。行政による運営指導では、加算要件の充足状況が重点的にチェックされるため、 常に適切な根拠書類の整備と要件維持の確認が必要です。

利用者の負担増につながる

特定事業所加算Ⅰ・Ⅱを取得すると、利用者の自己負担額が10~20%増加してしまいます。これにより利用者からの理解を得られずにサービス利用を中止される可能性も考えられます。そのため、加算取得の際は利用者への丁寧な説明と、負担増に見合う高品質なサービス提供の確保が重要となります。要件の複雑さから、解釈の誤りや見落としによる不適切な算定のリスクも存在するため、専門知識の習得と継続的な情報収集が不可欠です。

特定事業所加算を取得するためのコツ

特定事業所加算の確実な取得と継続的な算定のためには、以下のようなコツを意識しておくと良いでしょう。

事前準備を徹底的に行う

特定事業所加算の取得のためには、徹底した事前準備が不可欠です。まず、最新の算定要件を正確に理解し、自事業所の現状との差異を詳細に分析することから始めましょう。要件ごとに必要な取り組みと根拠書類を整理し、取得までのスケジュールを具体的に策定することが重要です。
さらに管理者だけでなく、職員全体での情報共有と役割分担を明確にし、組織一丸となった取り組み体制を構築します。特に、研修計画の策定や会議体制の整備などは、形式的な対応ではなく、実際のサービス品質向上につながる実質的な内容とすることが求められます。
書類作成においては、要件を満たしていることを明確に示せる具体的な記述と、客観的な根拠データの準備が不可欠です。また、管轄自治体の担当窓口との事前相談を積極的に活用し、申請書類の記載方法や解釈の確認を行うことで、申請時のトラブルを防ぐことができます。

継続取得のための管理方法を見直す

特定事業所加算の継続的な算定のためには、日常的な管理体制の確立が最も重要です。月次または四半期ごとの自主点検システムを構築し、各要件の充足状況を定期的に確認する仕組みを整備しましょう。
人材要件については、職員の配置状況や資格取得状況を常時把握し、要件を下回るリスクが発生した場合の対応策を事前に準備しておくことが重要です。重度者等対応要件では、利用者の要介護度や認知症の程度の変化を継続的にモニタリングし、要件維持に必要な利用者割合を把握します。
介護報酬改定への対応も重要な管理要素であり、制度変更の情報収集と影響分析を継続的に行い、必要に応じて運営体制の見直しを行います。運営指導対策として、根拠書類の適切な保管と更新、職員への制度理解の徹底を図り、いつでも適切な対応ができる体制を維持することが、長期的な加算維持の成功につながります。

事業所のICT化を進める

特定事業所加算の取得だけでなく事業所の効率的な管理のためにも、ICT化推進は欠かせません。
例えば介護ソフトや管理システムなどの導入により、複雑な算定要件の管理業務を大幅に効率化できます。例えば、職員の勤務管理システムでは、人材要件で求められる介護福祉士の配置割合や勤続年数7年以上の職員割合を自動計算し、要件を下回るリスクを事前に把握できます。
また、利用者管理システムを導入することで、要介護度や日常生活自立度の変化を継続的にモニタリングし、重度者等対応要件の充足状況をリアルタイムで確認可能です。
これらのICTツールの活用により、特定事業所加算の継続的な維持に必要な管理業務の負担を軽減し、より質の高いサービス提供に集中できる環境を構築することが可能になります。

訪問介護事業所の今後の戦略と展望

2024年度改定を踏まえた今後の訪問介護事業所の戦略として、特定事業所加算の取得は必須の経営課題となっています。基本報酬の減算分を補うためには、 可能な限り高いレベルの特定事業所加算を取得し、安定的な収益確保を図ることが重要です。
同時に、事業所の規模拡大や効率化による運営コストの削減も重要な戦略要素となります。ICT活用による業務効率化、他事業所との連携や統合の検討など、多角的なアプローチを視野にすぐに行動に移しましょう。
また、地域のニーズに応じた専門性の高いサービス提供など、競合他社との差別化を図ることも重要な戦略となります。長期的には、医療と介護の連携強化、地域包括ケアシステムの中での役割の明確化など、地域全体の介護提供体制の中での自事業所の位置づけを戦略的に検討することが、持続可能な事業運営の鍵となります。

事業所の収益改善を図るためにも加算取得に取り組もう

特定事業所加算取得は、訪問介護事業所の経営安定化と質的向上を実現するために重要な取り組みです。基本報酬の減算という厳しい環境の中で、事業所が持続可能な運営を継続するためには、特定事業所加算の確実な取得と継続的な維持が不可欠です。加算取得のプロセスは決して容易ではありませんが、体制要件、人材要件、重度者等対応要件の各要件を段階的にクリアしていくことで、結果として事業所全体のサービス品質向上と職員の働きがい向上を実現できます。
加算取得のためには、ICT化の推進が重要な鍵となります。複雑な要件管理や根拠書類の作成、継続的なモニタリングなどの業務を効率化することで、職員の負担を軽減しながら確実な加算維持が可能になります。こうした事業所の効率的な運営を支援するツールとして、介護ソフトの中でもイマ話題の「介舟ファミリー」の活用も有効な選択肢の一つです。シェア増加率188%・継続率95%・導入事業所数17,000以上と豊富な実績があり、丁寧なサポート体制と数多くの役立つ機能によりさまざまな事業所様に選ばれています。加算取得・業務効率化のためにも、ぜひ一度介舟ファミリーをご確認ください。

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