人権と尊厳を支える介護

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藤野 雅一 氏

とは言え高い専門性を発揮するためにはその前段階できちんと踏まえておかなければならい要件があるとも考えています。
しかしそれは決して特別なことではなく当たり前の事を当たり前に表現できる人間性だと考えています。
相手の状況に思いをはせる事が出来る想像力や優しさと言った豊かな人間性を持ちそれを適切に対象者に伝える事が出来る表現力がとても大切だと思うのです。
同じ介護や、相談支援をしても対象者や家族からの評価が二分することがあります。
一方では冷たい、親身になってくれていない、物のように扱われた、もう一方では親身になって相談にのってくれた、とても気分良く介護が受けられた…と言った風に。

評価が低いケースでは専門性の発揮が上手くされていない事も考えられますがその全段階で前述の豊かな人間性が表現できていなかったとも考えられると思うのです。
専門性を合理的かつ効果的に発揮する為には根本に豊かな人間性とそれをきちんと相手に伝える表現力を認識していく必要があると考えます。
それを踏まえた上で次に重要なのが一般常識だと考えます。

専門性とはそれぞれの分野の対象者が安楽になり心地良くなるために発揮されるものだと思います。
ですから私たちは対象者との関わりの中で少なくとも不愉快な思いをさせてはならないのです。
そこで重要になってくるのが一般常識=礼儀だと考えます。
礼儀とは相手を不愉快にさせないための作法です。
気持ちのこもった挨拶が出来る、お礼が出来る、謝罪が出来るなどごく当たり前のことを当たり前に表現できる事も、サービス対象者の人権と尊厳を支えるためにとても大切だと思うのです。
豊かな人間性、一般常識を踏まえた上で専門的な関りを持つ事が出来れば、次は支援者の個性を大いに活かして豊かな支援(芸の域)、つまり質の高い介護・福祉が提供できると思うのです。質を意識して共に介護道・福祉道に研鑽しましょう。

個別援助技術はアート(芸術)である

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藤野 雅一 氏

もちろん介護・福祉の質を上げるためには介護の技術や専門知識は必須です。
理論無き実践は蛮行を招き、実践無き理論は空虚であるからです。

「個別援助技術はアート(芸術)である。」
これは、社会福祉学者S.バワーズの言葉です。
バワーズは「個別援助技術は、利用者とその環境の全体またはその一部との間によりよい適応をもたらすのに役立つような個人の内的な力及び社会資源を動員するために、人間関係についての科学的知識と対人関係における技能を活用するアート(芸術)」としました。 
バワーズは「個別援助技術はアートか、方法か、プロセスか」と問題提起し、
結論として「個別援助技術には過程と方法を含むが、それ以上の何ものかがある。」と示唆しました。
バワーズはそれを「創造的なもの」と捉え、それにふさわしい言葉としてアートを使ったのです。

私たちの携わっている仕事は、世間一般的には排せつや入浴、食事のお世話をしたり困りごとの相談にのったりと多岐にわたります。
勤務先を聞かれて「介護業界で働いている」と返答した時に「えらいわねぇ…」と、いろいろな含みを持たせているんだろうなと言ったリアクションが返ってきた、というような体験をしている人が、少なからずいるのではないでしょうか。
それはきっと、私たちの仕事が高い専門性を持って対応する専門職として世間に認知されていないことからであると考えています。
直接介護にせよ相談業務にせよ、私たちの仕事は対象者の快適で豊かな生活のために様々な技術や技法を活用して対応する極めて専門性の高い職種なのです。

より良い信頼関係を築き、良い援助関係を構築する為に私たちは日ごろ様々な創意工夫をしているはずです。
それはまさに創造でありアートなのです。
私たちが私たちの仕事の本質がアートであるという自負を持ちそれを広く一般に知らしめる様活動することが介護・福祉の質の向上につながると思うのです。

介護福祉の質のカテゴライズ

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藤野 雅一 氏

千葉県の地域包括支援センターに勤務する藤野です。
私たちは行政より委託を受けて、ご高齢者が住み慣れた街で安心して生活し続けることが出来る地域創り、つまり地域包括ケアシステムの推進を担っていますが、我々にとって地域の介護・福祉の質を高めていくことは極めて重要な課題であります。
地域包括ケアシステムを有効に稼働されるためにはこのシステムにかかわる全ての人材の質が高く保たれている必要があるからです。
例えば地域において福祉サービスを提供する福祉事業所の介護の質、地域包括支援センターのスタッフを含めケアマネジメントを行うケアマネジャーの対人援助技術やコーディネートの質、そして広義には地域住民の福祉への認識への質、これらの質が高く維持されることが地域ケアシステム自体の継続と質の向上にとってとても大切であると捉えているからです。

これらのカテゴライズは一見すると全く別視点の価値観に感じられますがその根幹に流れるエッセンスは共通しているのではないかと思います。

地域や事業所で発生する虐待や介護事故は無関心が増長させる事態であると認識しています。
生じている事態に関して「所詮他人事」との潜在意識がこういった状況を生み出しているに他ならないと思うからです。
私たち地域包括支援センターにとって一番重要な仕事のひとつとして介護や福祉にまつわる課題が決して他人事ではなく、
自分自身にも降りかかる可能性がある重要な課題
であると広く世間一般に知っていただくことだと考えています。

福祉の専門的な知識や技術もその業界だけで認識されるのではなく、やはり広く世間一般に認知されることで最終的には地域福祉全体の質の向上につながると考えているからです。
介護や福祉がそれを必要とする特定の人だけの特別の物ではなく一般化していくことがとても大切だと思うのです。