農園型障害者雇用支援サービスとは?注目されている理由やメリットをくわしく解説

農園型障害者雇用支援サービスとは?注目されている理由やメリットをくわしく解説

近年、企業の社会的責任(CSR)や多様性への関心が高まる中、障害者雇用の新たな形態として「農園型障害者雇用支援サービス」が注目を集めています。
この支援サービスは、障害者の就労機会を拡大するだけでなく、企業にとっても多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。本記事では、農園型障害者雇用支援サービスの概要や仕組み、注目される理由、そしてそのメリットについて詳しく解説していきます。
障害者雇用に悩む企業の方々や、新しい就労支援の形を探している福祉関係者の皆様にとって、有益な情報となるでしょう。

農園型障害者雇用支援サービスとは

農園型障害者雇用支援サービスは、「農業」という自然豊かな環境を活用して障害者の雇用と就労を支援します。

従来の一般的な障害者雇用とは異なり、農園という特殊な環境を活かすことで、障害者一人ひとりの特性や能力に合わせた多様な就労機会を創出します。

具体的には、野菜や果物など農作物の栽培から加工や販売など、農業に関連する幅広い業務を通じて、障害者の就労を支援します。

農園型障害者雇用支援サービスの仕組み

農園型障害者雇用支援サービスの基本的な仕組みは、企業が直接農園を運営しそこで障害者を雇用する、もしくは農園を運営している企業から一部区画や設備をレンタルやリースしてもらい、そこで障害者を雇用するというものです。

この仕組みにより、障害者は開放的でストレスの少ないといわれる農園にて伸び伸び働くことが可能です。一方、企業は法定雇用率の達成だけでなく、新たな事業展開や社会貢献活動としても活用できるのです。

農園型障害者雇用支援サービスが注目されている理由

農園型障害者雇用支援サービスが近年注目を集めている理由としては、以下のような点が挙げられます。

法定雇用率の達成

農園型障害者雇用支援サービスが注目される大きな理由の一つに、法定雇用率の達成があります。 企業は障害者雇用促進法に基づき、障害者を雇用しなければなりません(法定雇用義務)。その障害者法定雇用率は2.3%に引き上げられ、2026年には2.7%となっています。 この法定雇用率を達成すべく多くの企業が障害者雇用に取り組んでいますが、現時点では達成できている企業は50.1%のみです。(2023年)右肩上がりで数字は上がっているものの、まだまだ半数近くは達成できていません。

この法定雇用率が達成しない要因としては、人材の定着率が低いという点が挙げられます。一般企業への障害者の職場定着率を調査したところ、就職後1年時点の定着率は以下の図のようになっております。

特性によってばらつきはありますが、49.3%~71.5%と決して高い水準ではありません。そのため、法定雇用率を満たせる企業も多くはないのです。

そこで、農園型の雇用支援サービスが注目されています。後述しますが農作業には、ルーチンワークのような負担の少ない軽作業や定型的な作業から専門的な技術を要する作業まで幅広い仕事があり、さまざまな障害特性に対応できるため、多くの障害者を継続的に雇用することが可能です。これにより法定雇用率もクリアできることが期待されています。

農園型障害者雇用支援サービスのメリット

農園型障害者雇用支援サービスは、障害者本人、企業、そして社会全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、主要なメリットについて詳しく解説していきます。

安定した人材定着率が期待できる

農園型障害者雇用支援サービスの大きな特徴の一つが、安定した人材定着率です。

この高い定着率の背景には、以下のような要因があります。

  • 決められたシングルタスクのみを行う作業
  • 農作物の栽培から収穫まで成果が実りやすい

これらの要因により、障害者にとっては一般的な就労よりも心身ともにかかるストレスを減少させることができるため、長期的な就労につながるのです。

社会的責任を果たせる

農園型障害者雇用支援サービスを導入することで、企業は社会的責任(CSR)を効果的に果たすことができます。

具体的には以下のような側面があります。

  • 障害者の自立支援
    就労機会の提供を通じて、障害者の経済的・社会的自立を支援します。
  • 地域社会との共生
    地域の農地活用や地産地消の推進により、地域社会との良好な関係構築につながります。

これらの活動は、企業のブランドイメージ向上や、ESG投資の観点からも高く評価される要素となるでしょう。

 

農園型障害者雇用支援サービスの事例

農園型障害者雇用支援サービスは、すでに多くの企業で実践されています。

ある企業において、急速な社員数の増加に伴い障害者雇用が課題となっていました。障害雇用自体は行っていたものの法定雇用率を下回り、社内での適切なサポート体制構築も難しい状況にありました。そこで導入したのが農園型障害雇用支援サービスです。

導入の決め手は、障害者にとって働きやすい環境の提供と地方創生への貢献でした。結果、法定雇用率を大幅に引き上げ、専門スタッフによる手厚いサポートも実現。遠隔地での勤務もテレワーク文化のおかげでスムーズに対応できました。社内からも好評で、今後は農園での経験を活かし、社内での障害雇用の受け入れ体制強化を目指しています。

農園型障害者雇用支援サービスでの注意点

農園型障害者雇用支援サービスを成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。

法定雇用率だけを目的としない

農園型障害者雇用支援サービスを導入する際は、法定雇用率の達成だけを目的とすべきではありません。

過去には、この目的のみでサービスを導入し、障害者雇用を外部業者に丸投げする「雇用代行ビジネス」として批判を受けた企業もありました。

確かに、農園型障害雇用支援サービスを通して法定雇用率を満たすことは重要ですが、それ以上に大切なのは、障害者一人ひとりの能力を最大限に活かし、やりがいを持って働ける環境を作ることです。

そのため自社の社員として、障害者従業員にも一般従業員と同様に、十分なキャリアプランの設計や成長の機会を提供することが求められます。また、個々の障害特性に合わせた業務設計や充実したサポート体制の構築も重要です。

これらの取り組みを通じて、障害者従業員のモチベーション向上と長期的な雇用の安定につなげることができるでしょう。

成果物の活用方法を見直す

農園型障害雇用支援サービスで栽培された野菜や果物は、多くの場合、社内で無料配布されています。しかし、これでは市場に出回ることがほとんどなく、本来の「働く」という概念から離れているのではないかという指摘もあります。

この課題に対応するため、栽培した成果物を実際に市場で販売し、その収益を障害者従業員の給与に反映させる方法を検討してみましょう。これにより、従業員は自分の労働が社会に貢献し、対価を得ているという実感をさらに持つことができます。

専門家に相談する

農園型障害者雇用支援サービスの導入には、農業と障害者雇用の両方に関する専門知識が必要です。そのため、専門家に相談することが重要です。

一般的な障害者雇用と違い、農園に詳しい農家の方や農業運営企業も交えた相談が必要になる場合もあるため、注意しましょう。また屋外での作業も伴うため、万が一の場合に備えた医療機関や医療従事者との連携も重要です。

農園型障害者雇用支援サービスについて理解を深めよう

農園型障害者雇用支援サービスは、障害者の新たな就労機会創出と企業の社会的責任の両立を可能にするサービスです。

開放的で自然豊かな農園を活用したサービスのため、一般的な障害者雇用と比べてストレスを軽減しつつ働くことが可能です。また、企業にとっても安定した人材定着率が期待でき、法定雇用率を満たすこともできるでしょう。こうした農園型障害者雇用支援サービスは両者にとってメリットが多いです。この機会にぜひ一度理解を深めてみましょう。

 

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就労継続支援B型とは?B型の仕事内容やA型との違いなどを詳しく解説

就労継続支援B型とは?B型の仕事内容やA型との違いなどを詳しく解説

就労継続支援B型は、障害のある方々の就労と自立を支援する重要なサービスです。一般就労が難しい方々に、雇用契約を結ばずに働く場所と機会を提供し、個々の能力や特性に応じた支援を行います。
本記事では、就労継続支援B型の特徴や仕事内容、A型との違いなどを詳しく解説します。

就労継続支援B型とは

就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。

一般企業などでの就労が困難な障害者に対して、雇用契約を結ぶことなく、働く場を提供するとともに、知識や能力の向上のために必要な訓練や支援を行います。

これにより利用者は、自分のペースで働きながら、将来の就労に向けた準備や社会参加の機会を得ることができます。

また、雇用契約を結ばないため、利用者は賃金ではなく「工賃」という形で対価を得ることができます。

就労継続支援B型が注目される理由

現在、福祉業界では就労継続支援B型事業所が注目を集めています。その要因としては、2024年度の障害福祉サービス等報酬改定の実施が挙げられます。

これにより、利用者と雇用契約を結ぶ就労継続支援A型事業所は経営困難となり倒産や閉鎖が相次いでいるため、就労継続支援B型事業所のニーズが高まっているのです。

なお、報酬改定以前から就労継続支援B型事業所は増加傾向にあり、利用者数は26.9万人(令和2年3月)、事業所数は1.3万ヵ所に上ります。

就労支援A型、地域活動支援センターとの違い

それでは、就労継続支援A型や混同しがちな地域活動支援センターとはいったいどのような違いがあるのでしょうか。

就労継続支援A型 ・雇用契約を結び、最低賃金が保障される
・面接や書類選考がある
・対象者は原則18歳以上65歳未満
地域活動支援センター ・主に創作活動や生産活動の機会を提供
・工賃の支払いは必須ではない(生産活動をした場合のみ)
・対象年齢はなし
就労継続支援B型 ・雇用契約はなく、利用契約を結ぶ
・工賃は作業量や能力に応じて支払われる
・幅広い障害特性や能力レベルに対応

就労継続支援A型とは、一般企業などで働くことが難しいものの雇用契約に基づいて働けるサービスです。雇用契約を結べるため、最低賃金が保証されています。

地域活動支援センターは就労継続支援サービスと目的が異なり、あくまでも障害を持つ方の自立した日常生活や社会生活をサポートすることです。そのため、さまざまな活動を通して利用者の生きがいや居場所づくりを行います。

このように就労継続支援A型・B型・地域活動支援センターはそれぞれ役割や活動内容、対象年齢などが異なります。

就労継続支援B型の仕事内容

就労継続支援B型事業所では、利用者の障害特性や能力に応じて、多様な作業や活動が提供されています。これらの作業を通じて、働く喜びや達成感を感じながら、スキルアップや社会性の向上を図ることができます。また、将来的な一般就労を目指す方にとっては、実践的な訓練の場としても機能しています。

作業内容

B型事業所で行われる主な作業内容は以下の通りです。

  • 各種加工
  • 組立、袋詰め
  • パンやお菓子などの製造
  • 製品の梱包
  • 清掃作業
  • ミシン作業や手工芸

など

これらの作業は、事業所によって異なりますが、利用者の興味や適性に合わせて選択できます。

勤務時間や日数

就労継続支援B型の勤務時間や日数は、法的には定められていないため利用者の状況や事業所の運営方針によって柔軟な対応が可能です。週1日だけの利用や毎日の利用も問題ありません。

日本財団の調査によると、B型事業所の平均的な就労時間は22時間でした。ただし、上述した通り、5時間未満の事業所もあれば50時間以上就労している事業所もあります。

工賃

就労継続支援B型では、利用者と雇用契約を結ばないため、利用者に対して「工賃」という形で報酬が支払われます。

平均的な工賃は月額15,776円で時給換算すると222円でした。(令和2年度)

図の通り、工賃は一般就労の給与と比べると最低賃金が保証されていないため、ほとんどの事業所では最低賃金に届かないことが多いです。しかし、働く喜びや社会参加の機会を得られることに大きな意義があります。

就労支援B型の対象者

就労継続支援B型の対象者としては、以下のように定められています。

  1.  就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
  2. 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
  3. 「1」及び「2」に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者

また、特別支援学校を卒業した場合は、一般就労するか、在学中に就労継続支援事業者などによるアセスメントを受けなければなりません。ただし、自治体によっては対応が異なるため、お住いの市区町村の障害福祉課などで相談してみましょう。

ほかにも、2025年度から「就労選択支援」という制度の運用が開始されます。

就労選択支援とは、障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、本人の希望や就労能力などに適した選択を支援できる制度です。これにより、アセスメント後には就労継続支援B型の利用が可能となります。

なお、就労継続支援B型の利用にあたって、障害者手帳の所持は必須ではありません。障害者手帳がなくても、自治体が発行する「受給者証」があれば利用可能です。受給者証発行には医師の診断書や自立支援医療受給者証が必要になります。

就労支援B型で働くスタッフの環境

就労継続支援B型事業所で働くスタッフは、利用者の支援だけでなく、事業所の運営や地域との連携など、多岐にわたる業務を担っています。

スタッフの職種としては、以下が挙げられます。

  • サービス管理責任者
    主に利用者のアセスメントの実施や個別支援計画の策定・評価などを行い、サービス全体の管理を行います。
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  • 生活支援員

    利用者の日常生活をサポートします。

  • 職業支援員

    利用者の就職に必要な知識や技術の習得をサポートします。

  • 就労支援員

    利用者の就職活動や就職後の定着支援などを行います。

また、事業所によっては看護師などの医療従事者も事業所の運営に携わる場合もあります。

 

スタッフの一日の流れ

就労継続支援B型事業所における、生活支援員の一般的な一日の流れを紹介します。

09:00 出勤・申し送り 出勤し、前日の申し送りを確認
10:00 利用者の受け入れ・午前の業務開始 利用者の出欠確認を行い、午前の業務開始。利用者に作業を教えたり、料理のレクチャーを行ったりするなど生活支援も行います。
12:00 昼休憩 利用者と一緒にご飯を食べます。
13:00 午後の業務開始 引き続き作業の指導や補助を行います。終業時間になると、利用者の送迎や見送りをします。
16:00 片づけ 残りの作業の片づけを行います。
17:00 ミーティング 利用者の様子や今後の計画などを話し合います。
18:00 退勤 退勤します。

この1日の流れは事業所によって異なります。基本的には利用者が無理なく作業に取り組めるよう配慮されています。また、定期的に季節のイベントなども取り入れ、メリハリのある活動を心がけている事業所もあります。

就労継続支援B型の課題と展望

就労継続支援B型は、多くの障害者の就労と社会参加を支える重要な役割を果たしていますが、同時にいくつかの課題も抱えています。

低水準の工賃

就労継続支援B型では、雇用契約がないため、最低賃金が保証されていません。そのためどうしても低水準の工賃で働かざるを得ません。

多くの事業所でも工賃アップのための取り組みを行っておりますが、事業所全体の賃金アップは困難な状況です。

この課題を打開するには、単価の高い作業を行うことが挙げられますが、単価の高い作業を行える利用者の数やサポート体制が十分ではない事業所が多いでしょう。

事業所単体では難しいため、今後の国や自治体の動きに注目しておきましょう。

利用者ニーズの多様化

就労継続支援B型の利用者数は今も増加していることに伴い、利用者のニーズも多様化しています。

例えば、作業を黙々と行いたい方や、居場所を求めてくる方などその利用ニーズはさまざまです。

これらに対応するには、職員のリソースが十分でなければなりません。ただ就労支援を行いつつ、生活支援も行う必要があるため、この多様化するニーズに今後どのように対応するか、事業所ごとに指針を定めておく必要があるでしょう。

人材不足

人材不足の一因として、従業員にとって障害福祉サービスは肉体的・精神的に大変な場面が少なくないことが挙げられます。

特に精神障害の場合、体力はあるが、コミュニケーションが困難な場合も多く、うまく意思疎通ができない場合暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりするときもあるそうです。

これらのような障害福祉サービス特有の課題に加え、業務の効率化ができていないなどの作業環境であればさらに人材不足を招く恐れがあります。これらの課題は早急な対応が必要です。

ICTの活用

事業所によっては、紙や表計算ソフトなどアナログな方法で作業をおこなっているところも少なくありません。アナログな方法で作業をおこなっていると、ミスや手間がかかるなどデメリットが多いです。

この課題を解決するにはICTを活用した福祉ソフトの導入がおすすめです。福祉ソフトを導入することで、転記・計算などの人為的なミスを軽減できたり、情報共有・検索が迅速に行えたりと業務効率化につながるメリットも豊富です。

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これらの課題に取り組むことで、就労継続支援B型事業所は今後さらに発展し、障害者の自立と社会参加をより強力にサポートする存在となることが期待されます。同時に、共生社会の実現に向けた重要な役割を果たしていくでしょう。

就労継続支援B型について深く理解することが大切

就労継続支援B型は障害のある方々の就労と社会参加を支える重要なサービスとして、社会に欠かせない存在です。

また、2024年度の報酬改定以前より利用者数・事業所数は増加しており、A型事業所の運営が厳しい中でさらにそのニーズが高まっています。

ただし、就労継続支援B型にも取り組むべき課題があり、今後の発展のために課題解決へと進まなければなりません。特に福祉業界全般で人手不足が慢性化しています。そこで、課題解決の一つとして、ICTの活用が叫ばれています。

ICTを活用した業務効率化を図ることで、事業所の働きやすい環境づくりに貢献でき、人材不足の解消に効果的です。

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障害者グループホーム経営の落とし穴とは?回避するポイントも解説

障害者グループホーム経営の落とし穴とは?回避するポイントも解説

福祉事業を展開している経営者のなかには、障害者グループホームへの参入を検討している人もいるでしょう。障害者のグループホーム経営は、事業計画書やマーケティング戦略などをしっかり立てておかないと思わぬところでつまずき、すぐに廃業に追い込まれる可能性もあります。
この記事ではそのような失敗を回避するためのポイントについて解説しています。障害者グループホームの開業を考えている経営者は、この記事を読んで開業の準備を進めていきましょう。

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障害者グループホームとは

障害者グループホームとは、障害者総合支援法が定める障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者など)が、日常生活のサポートを受けながら共同生活を営む住まいです。

身体障害者の場合利用できるのは65歳未満との条件がありますが、もともと障害者グループホームを利用していた人は、65歳を迎えた時点で障害者グループホームか高齢者施設のどちらを利用するか選択することが可能です。

障害者グループホームの形態は主に3種類

障害者グループホームは大きく3種類に分けられます。

  • 介護サービス包括型
    事業所のスタッフが、夜間や休日に食事、入浴、排せつなど日常生活のサポートを行う。
  • 日中活動サービス支援型
    事業所のスタッフが、夜間や休日だけでなく、日中も日常生活のサポートを行う。
  • 外部サービス利用型
    事業所に委託された外部の居宅介護事業所が、主に夜間のサービス提供を行う。

上記のほかに、障害者グループホームの近隣に住む利用者に対して日常生活のサポートを行うサテライト型などもあります。また、どの形態も、障害支援区分などの利用条件はありません。

障害者グループホームの現状

障害者グループホームの現状はどうなっているのでしょうか。

障害特性によっては対応できるグループホームの整備が不十分

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の「障害者の居住支援について(共同生活援助について)」によると、障害者グループホームの利用者は増えていますが、障害特性によっては、それに対応できる施設が十分に整備されていません。そのため、自身のニーズにマッチした施設が見つけられず、適切な支援を受けられない利用希望者も多いようです。

経験不足の新規参入業者が多い

需要と供給のバランスがとれていない障害者グループホームにビジネスチャンスを求めて、毎年、多くの事業所が参入しています。しかし、経験不足や準備不足の事業所も多く、倒産や廃業に追い込まれるケースが少なくありません。

このような状況下で、これから障害者グループホームの経営に乗り出そうと考えている事業者が成功するためにはどうしたらよいのでしょうか。次項から考えていきましょう。

障害者グループホーム経営で陥りやすい「落とし穴」

障害者グループホームの経営は、どのようなところで失敗するのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。

法令を理解し遵守する難しさ

障害者グループホームを運営するためには、障害者総合支援法、消防法、建築基準法、労働基準法などの法令を遵守することが大前提です。この法律の内容をすべて理解せず、守るための準備を怠ると、そもそも開業ができないこともあります。

経営ノウハウ不足

現在、障害者グループホームの数は不足している現状ですが、経営を成功させるためには、適切な戦略とノウハウの獲得が必要です。
例えばリサーチやマーケティング調査をきちんと行わずに事業をスタートさせると、近隣に利用する人がいない、交通の便が悪くて家族が通いにくいなどの理由から利用者が集まらないという事態に陥る場合もあります。

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人材確保の難しさ

障害者グループホームには管理者、責任者、世話人、生活支援員スタッフなどが必要です。そして、サービス管理責任者の人数は利用者30人で1人、世話人は利用者6人に対して1人と細かく決められています。介護業界は人手不足であることもあり、スタッフが集まらず、障害者グループホームの開設を断念する事業者もあるのが現状です。人材が集まらないと指定申請が通らず開業できません。

障害者支援のノウハウ不足

障害者グループホームは、利用者一人ひとりの障害の特性や程度に応じた支援を提供する必要があります。ノウハウ不足から一人ひとりにあったきめ細やかなサービスの提供ができない場合、利用者の満足度が下がり、グループホームの退去につながる可能性があります。これは直接的な経営の悪化に結びつきます。

障害者グループホームの経営で失敗しないポイント

事前準備を怠ると開業しても失敗するリスクが高い障害者グループホームですが、それでも始めたいと思っている事業者は、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

周辺地域の調査(競合施設、交通や生活の利便性)

立地は重要です。周辺に競合施設があるのか、駅やバス停から近いのか。また、生活する利便性などについてもリサーチしておくことが大切です。「利用者にとって暮らしやすい場所」を優先的に考えて選ぶことで、失敗を回避できる可能性は高くなるでしょう。

地域のニーズの把握

「もし、ここで開業したらどのような人が利用してくれるだろう?」という事前の調査は必ず行いましょう。利用者のニーズを知ることで、どのような施設を作ればいいのかが把握できます。
また、障害者グループホームは、利用者が行方不明になった際や災害時に、近隣の人に協力してもらうことが多いものです。そのため、近隣の住民が障害者施設に理解があるかどうかについても、開業場所を選ぶ際には大切なポイントです。

しっかりとした収支計画

障害者グループホーム開設にこぎつけても、収支決算が赤字で廃業せざるをえなくなるところもあります。そのような事態にならないよう、開業前に詳細な事業計画書を作成することは欠かせません。
特に固定費のなかでも人件費は、正社員、パートなどの雇用形態に応じて社会保険加入が必要だったり、特別なスキルを持つ社員を雇うと特別手当が発生したりするため、しっかりと見積もっておく必要があります。

利用者確保の営業活動

社会福祉施設で営業活動というとイメージしにくいかもしれませんが、利用者が集まらないと経営は成り立ちません。また、サポートを必要としている利用者に、施設の存在を知ってもらう目的もあります。
利用者になってくれそうな人に、事業所の存在と魅力を伝えるためには、地域住民と積極的に交流して口コミで広めてもらうことも考えましょう。パンフレットや広告だけでなく、SNSも有効な宣伝ツールなので、営業活動のひとつとして活用するのもおすすめです。

積極的な人材確保と支援の質の向上

的確なマーケティング戦略を用い、効果的な営業で利用者を集めたとしても、実際のサービスが利用者に満足してもらえなければ、利用者はすぐに離れていってしまいます。そのため、障害者支援のノウハウを持った優秀な人材を確保し、継続的に教育を行うことが重要です。また、加算に影響する有資格者の採用は積極的に行いましょう。

障害者グループホーム経営に失敗しないためには事前準備が大切

障害者グループホームは障害者のニーズの多様化を背景に需要が増えており、新たに経営に乗り出す人も多いですが、その経営は決して簡単なものではありません。事前の準備不足から利用者やスタッフが集まらずに廃業という落とし穴もあるからです。失敗を回避するためには地域のニーズや周辺環境の調査、支援の担い手となる人材の確保など十分な事前準備が必要です。

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障害者支援におけるモニタリングの重要性と正しい書き方を徹底解説!

障害者支援におけるモニタリングの重要性と正しい書き方を徹底解説!

障害福祉サービス事業者が障害福祉サービスの提供を継続していくためには、定期的なモニタリングを行い、障害福祉サービスの利用者本人の望む生活が実現できるよう、適切に支援していくことが大切です。しかし、モニタリングをどのように行えばよいのか、モニタリングシートにはどのようなことを記入すればよいのか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで、障害者支援におけるモニタリングの重要性を知ったうえで、正しい書き方ができるためのポイントを紹介します。

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障害者支援におけるモニタリングとは

モニタリングとは、サービス等利用計画や個別支援計画の内容に沿って支援が行われた結果、どのような効果をもたらしたかを確認するものです。モニタリングを行うことで、課題が見つかることは少なくありません。課題が抽出された場合には、支援内容や方法を見直すことで、サービス内容が改善されたり、利用者の利益につながったりします。

モニタリングは、サービス等利用計画や個別支援計画の目標が達成できているかを確認する作業です。そのため、相談支援事業所ではサービス等利用計画、障害福祉サービス事業者では個別支援計画がきちんと作成されているかどうかが重要となります。モニタリングで正しく評価できるよう、計画書は丁寧にわかりやすく作成しましょう。

個別支援計画書については「個別支援計画の重要性や作成ポイントを知って正しい書き方を学ぼう」をご参照ください。

モニタリングを実施するのは、相談支援事業所と障害福祉サービスを提供する事業所です。相談支援事業所では計画担当者が、障害福祉サービス事業所ではサービス管理責任者が担当します。相談支援事業所の場合、モニタリング報告書を自治体に提出しなければなりません。

モニタリングの実施期間の目安は、障害者総合支援法で以下のように決められています。

1か月ごと(3か月間に限る)

新規利用者、サービスの種類や内容、量に著しい変更があった者。

1か月ごと

在宅の福祉サービスおよび障害児通所支援等利用者のうち、以下に該当する者

  • 障害者入所施設からの退所等に伴い、一定期間集中的支援が必要な者
  • 単身世帯もしくは家族等の障害や疾病のため、事業者等との連絡調整を自らで行うことが難しい者

3か月ごと

  • 在宅の福祉サービスおよび障害児通所支援等利用者のうち、以下のサービスを利用する者
    (居宅介護、行動援護、同行援護、短期入所、重度訪問介護、自立訓練、就労移行支援、就労定着支援、自立生活援助、日中サービス支援型共同生活援助)
  • 65歳以上で介護保険におけるケアマネジメントを受けていない者

6か月ごと

  • 在宅の福祉サービスおよび障害児通所支援等利用者のうち、以下のサービスを利用する者
    (居宅介護、行動援護、同行援護、短期入所、重度訪問介護、自立訓練、就労移行支援、就労定着支援、自立生活援助、日中サービス支援型共同生活援助)
  • 障害者支援施設、のぞみの園、療養介護の利用者および重度障害者等包括支援の利用者

なお、モニタリングが正しく作成されていなければ、モニタリングされていないとみなされ、減算の対象になることがあります。特に注意したいのが、サービス管理責任者欠如減算です。モニタリングはサービス管理責任者が行わなければなりません。モニタリング実施者の名前がサービス管理責任者になっているか、必ず確認しましょう。

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正しいモニタリングを行うためには準備が重要

正しくモニタリングを行うためには、利用者本人が今どのような状況にあるのかを正しく評価する必要があります。
利用者本人の現状を把握するために、まずモニタリングすべき内容を大まかに分類しましょう。そして、それぞれに合った評価法を用いて評価を行うと、目標の達成具合が具体的にわかります。モニタリングすべき内容の分類と、それぞれに合う評価表は以下の通りです。

  • ある程度固定した状態が見られるものに対する支援(日常的スキルに対する支援、コミュニケーションの手段に対する支援など)
    →生活習慣管理表、個別支援計画など
  • 地域生活における具体的な行動が伴う内容のもの(金銭管理、社会的スキル、社会参加など)
    →個別支援計画の実施表、評価表など
  • 一定の達成度が必要とされる内容(就労、作業など)
    →評価表を別に設ける
  • 病気、行動障害等で特別な支援を必要とし、さらに具体的な改善が望まれる行動
    →より詳細な記録を用いてチェック

モニタリングの際は、本人や家族の意向や満足度を知ることも大切です。目標はある程度達成していても、本人や家族の意向とずれている場合や、満足度が低い場合には、支援計画の見直しが必要となります。モニタリングを行うときには、本人と家族からも意見をしっかりと聞くようにしましょう。

円滑な障害者支援が行えるモニタリングシートの書き方

円滑に障害者支援を行うためには、モニタリングシートを正しく記入しなければなりません。モニタリングシートに決まった様式はないものの、相談支援事業者が提出するモニタリング評価表は、各自治体で様式を準備していることが多いでしょう。ここでは、モニタリングシートの書き方を項目別に解説します。

個別支援計画と連動する項目

個別支援計画と連動する項目は5つあります。担当者氏名以外は、個別支援計画から転記します。

  • 担当者氏名
    計画作成担当者の名前を記載します。担当者が変更となったとき、担当者名の変更に注意しましょう。
  • 利用計画作成日
    計画作成日と同意サインをもらった日は同日になっているか確認しましょう。担当者会議で原案の内容を検証して問題がないことが確認され、合意をされた日が計画作成日となり、同時に「同意された日」となるので、必然的に「同じ日付」になります。これは、老企29号にあるルールです。
  • 総合的な援助方針
    第1表に記載するもので、ケアチームの方針が明確になるようにしましょう。利用者とサービス担当者が二人三脚で取り組んでいけるような内容にするのが大切です。
  • 支援目標、達成期間
    長期目標、短期目標と、また目標達成までの期間を書きます。提供している機能訓練が適しているのかを振り返り、難易度が高いと判断した場合は少し難易度を下げるなどする必要があります。
  • サービス内容
    利用者にどのようなサービスを提供するのかを記載します。利用者やそのご家族が望んでいるサービス内容であるかどうか、しっかり検討しましょう。

モニタリングシートに記入すべき項目

個別支援計画と連動する項目以外のモニタリングシートに記入すべき項目には、次の7つがあります。

  • モニタリングの実施年月日
    モニタリングを実施した年月日を記載します。
  • 全体の状況
    サービス利用状況における本人の全体的な様子を記載します。本人ができるようになったことや気持ちの変化だけでなく、サービス利用に関する家族の状況についても書くとよいでしょう。
  • 本人の感想・満足度
    サービス利用に関する本人の感想や満足度を記載します。本人や家族を主語として書きましょう。
  • 支援目標の達成度(ニーズの充足度)
    目標に対し、どの程度達成ができているのか、具体的に書きましょう。本人のニーズがどれくらい充足できているか、しっかり聞き取って書くことが大切です。
  • 今後の課題・解決方法
    今回のモニタリングの結果、残された課題や新たな課題を記載します。今後の課題に向けて、どのような解決方法があるのか、利用者と一緒に考えて書きましょう。
  • 計画変更の必要性の有無
    モニタリングの結果を踏まえて、サービスの種類や量、週間計画等に変更が必要かどうかを記載します。有・無のどちらかに〇をつける形式であれば、状況が一目でわかるので今後の計画作成に生かしやすいでしょう。
  • その他留意事項
    それぞれの項目以外で留意すべき点があるときには、その他の欄に記載しておきましょう。次回のモニタリングや計画作成時に役立つことがあります。

正しくモニタリングを行って円滑にサービスを提供しよう

障害者支援の本質は、利用者本人の望む生活を実現することにあります。
モニタリングは、障害福祉サービスの提供が利用者本人の利益につながっているかを評価するためのものです。
モニタリングは定期的に行い、利用者本人の望む生活に近づけるように支援していきましょう。法律に規定されているモニタリング期間を忘れないためには、介護ソフトを活用すると便利です。

介舟ファミリーならモニタリング時期を一覧で把握できるため、忘れることがありません。また、相談支援事業所だけでなく、通所系サービスや日中活動系サービスにも対応しています。円滑にサービスを提供するためにも、介護ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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