「自立生活型」支援は支援専門職だからできること

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梅本 聡 氏

「いつか車椅子に乗る状態になることを目標にしている方はいますか?」
講演会でこんな問いかけをさせてもらうことがあります。
今のところ、手を挙げた人はいません。

しかし、この問いかけにはほとんどの方が手を挙げます。
「いつまでも 自分のことが自分でできる で、いたいと思いますか?」

自分のことが自分でできる
これは、第1回でご紹介した介護保険法の目的にある【有する能力に応じ自立した日常生活を営むこと】という一文に合致します。

そしてこの一文は【営むことができるよう】と続きます。そのことを踏まえこの法文を要約すると、
【自分のことが自分でできる=自立した日常生活を営む】ことが、様々な原因で【自力でできない状態=要介護状態】にある方が

  • できることを続けていけるように
  • できないと思われたことを取り戻せるように
  • その上でできないことは代わりに行う

という、【自立生活型】支援が介護保険法(制度)の目的であることがわかります。
であれば、第2回でお伝えした【お世話型】介護ではなく、【自立生活型】支援が支援専門職の仕事であり、質を追求していく”型”だといえます。

ちなみにお手伝いさん(化した介護職)は身の回りのお世話はできたとしても、自立生活型支援はできません。
自立生活型支援では、要介護状態にあるその方の【状態と状況】を知る”専門性”が必要だからです。

  • 状態・・・健康状態、身体能力、知的能力、心の動きや意欲、ライフスタイルや価値観等
  • 状況・・・本人を取り囲む環境(人・建物・福祉用具・公的制度等)

そして自分が知った【状態と状況】からすると、その方は日常生活に必要なあのこと・このことで、何が【できる・取り戻せる・できない】のかを見極め、どの見極め結果にも応じること(実行)できる”専門性”も必要になるからです。

多くの人が望んでいる【いつまでも自分のことが自分できる】ことを支援する専門性を有した者、支援専門職。人が活きて生きることを支えることができるスペシャリストなのです。

必要なのはお世話型介護からの切り替え

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梅本 聡 氏

僕が10年半、ホーム長を務めていた認知症対応型共同生活介護(以下「グループホーム」)では、認知症の状態にある入居者の方たちが介護職員のサポートを受けながら、食事、排せつ、入浴、整容、着替えなどの日常生活行為や、生活を営むために必要な掃除、炊事、洗濯などの家事において、
「自分でできることは自分で行う」「他人と助け合いながら行う」
ことを基本としていました。
また、入居者の方たちはほぼ毎日買い物に出かけ、食材や生活用品を購入するなど、「地域社会とつながって生活する」ことを心がけていました。

そんな実践に対し入居者のご家族からは、
「生き生きしている」、「症状がよくなったみたいだ」などと言っていただけました。

しかし、法人の経営層(梅本の上司)からは、
「お年寄りにご飯を作らせるなんてかわいそうだ」、「認知症なのに掃除をさせるなんてひどい」といった非難の声ばかり。
経営層は、高齢者・要介護者・お客様なのだから、「何でもやってあげる・やってさしあげるのが介護」という考えを持っていたため、受け入れられない実践だったのです。

僕が介護業界に入った27年前の現場も同じでした。
意識しなくても日々行っている日常生活行為=私たちが普通にやっている当たり前のことを、本人の意思や状態は関係なく、介護職員が画一的に何でもやってあげる(やってしまう)「お世話型」介護。
今の介護現場の根っこも、これかなと思います。

しかしお世話型介護は、前回のコラムで確認した「ものさし(介護とは何か?)」からかけ離れています。
また、お世話型介護を主流とするのであれば、介護現場に必要な人材はお手伝いさん(化した介護職)で、支援専門職はいらない、ということになります。支援専門職は不要(だからロボット?)となったら、処遇改善どころの話しではありません。

そうならないためには、支援専門職自らが自分で自分の価値や必要性を下げる仕事をしない・・・、お世話型介護からの切り替えが必要です。
そしてそれが、質を追求していく介護の❝型❞だと僕は考えます。

「介護って何ですか?」と問われたら、あなたはどう答えますか?

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梅本 聡 氏

はじめまして。株式会社Qship(キューシップ)代表・介護福祉士の梅本聡です。
本コラムのテーマは「介護の質」ですが、質を考えるその前に、そもそも「介護」って何なんでしょうか。
質を問うにしろ、追求するにしろ、そこには「ものさし」が必要で、そのものさしは軸が定まっている必要があると僕は思っています。

ということで第1回の今回は、「介護とは何か?」を確認してみたいと思います。
ちなみに、僕が27年の実務のほとんどを経験させてもらっている高齢者介護には介護保険法や関連法が定められ、法に基づいた運営や実践が求められていますので、法を基に確認してみます。

国が定めた介護保険法は第一条に、「尊厳の保持」と「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように」を目的として掲げています。
また、社会福祉法の基本的理念にも同じ法文が含まれています。

そこには、介護業界でよく耳にする「寄り添う(ケア)」や「その人らしく」といった響きが良く、介護施設・事業所の理念等にもよく使われる言葉たちは見当たりません。
いわば、「介護とは何か?」の問いの答えは、「寄り添う(ケア)」でも「その人らしく」でもなく、法に掲げられていることを踏まえれば、

  • 「尊厳を保持する」こと
  • 「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう支援する」こと

であると考えるのが自然です。

さらに、社会福祉士及び介護福祉士法(第四十四条の二)と精神保健福祉士法(第三十八条の二)に規定される誠実義務にも「個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない」とあります。

私たち支援専門職の仕事の軸も、介護とは何か?の答えと同じであることがわかります。そして、支援のプロの仕事は、「お世話」ではないということも。

第2回に続きます。