介護事業の承継方法とは?3つの方法とM&A行使の流れについて解説

介護事業の承継方法とは?3つの方法とM&A行使の流れについて解説

介護事業所を運営する管理者にとって、事業承継は常に意識していることのひとつではないでしょうか。M&Aを行使するのがいいのか、子どもや社員に事業を譲るのが得策なのか、大きな悩みとなります。 この記事では事業承継の方法と、それに関係するメリットとデメリット、M&Aを行う際の手順について解説します。

介護事業所の倒産や廃業の背景

近年、介護事業所の倒産や廃業が相次いでいます。

株式会社東京商工リサーチによると、2023年の「老人福祉・介護事業の倒産」件数は122件。2022年は143件という結果が出ています。

数字上では倒産件数は減っているように見えますが、2022年の倒産にはデイサービスを運営していた「ステップぱーとなー」グループ31社の連鎖倒産が含まれています。その点を考慮すると、「介護施設の倒産は増えている」と言えるかもしれません。

また、「老人福祉・介護事業の休廃業・解散」は2023年で510件にのぼり、2010年以降、最多の件数となっています。
それでは、増加しつつある介護事業所の倒産や、休廃業、解散の背景には、どのような理由があるのでしょうか。

コロナ

新型コロナウイルス感染症は、介護施設の経営を悪化させた要因のひとつです。基礎疾患のある高齢者は、感染すると重症化するリスクがあるという理由から、デイサービスへの通所を控えた人も少なくありませんでした。

その一方で、施設側では感染対策として、マスクや消毒液などの備品の購入、食堂やプレイルームへのついたての設置などの経費がかさみました。その結果、経営が圧迫された施設が増えたのです。

コスト高

世界的なインフレや国際情勢の悪化によって、物価が上昇しています。食料品、日用品だけでなく、光熱費、ガソリン代などのエネルギーの高騰により、さまざまなコストが徐々に増えている施設も少なくありません。

そのうえ、コロナ対策の一環として換気を重視することが指導されているため、夏場、冬場はエアコンを使用したまま窓を開ける必要が出てきました。不経済ではあるものの、施設での感染防止対策としては仕方ないことです。そのため、施設の経費はさらに膨れ上がり、倒産や廃業に追い込まれるケースもありました。

人材不足

介護業界の人手不足は今に始まったことではありません。慢性的な人手不足に危機感を感じ、対策を打ち出した事業所は離職率が低いものの、何も手を打たなかった施設はここにきて人手不足が切実な問題となっています。

また、離職率が低い事業所でも、長年勤務しているスタッフの高齢化問題が浮上してくるところはあります。利用者がいても、そこで働いてくれるスタッフがいなければ、事業所を続けていくのは難しいのが現実です。スタッフの人材不足から廃業を決める施設もあります。

2024年の法改正

コロナ、インフレ、人材不足などのあおりを受けながらもギリギリで営業を続けてきた介護施設ですが、さらに追い打ちをかけたのが2024年の法改正です。訪問介護の基本報酬がマイナスとなったことで、さらに事業所の利益が減ってしまい、経営状態が悪化、閉鎖に追い込まれる事業所もあるでしょう。

介護事業の承継方法とメリットデメリット

経営が立ち行かなくなった事業所には、主に2つの選択肢が考えられます。事業を承継するという方法と、廃業です。介護事業所を承継する主な相手として、大きくは以下の3つが挙げられます。承継先と、その際に考えられるメリットとデメリットを解説します。

親族に承継する

子どもや親戚など、身内に事業所を承継する場合です。

メリット

承継する相手が親族のため、関係性が近く信頼性できる相手と言えます。そのため、スムーズに承継が行われることが多いです。

デメリット

親族承継のデメリットは、経営者としての実力がないうちに承継させてしまいがちな点です。

その結果、経営が立ち行かなくなり、倒産という事例が多いのです。子どもや親族へ承継する際は「経営者として独り立ちできるのか?」という視点で、冷静に見極める目が必要です。

社員に承継する

社員として働いていた有能な人材を登用し、事業を承継させることもよくあります。

メリット

事業を任せられる有能な社員ならば、信頼性も高く承継相手としてふさわしいと経営者は納得できます。

承継を任せられた社員にとっても、モチベーションが上がり、仕事のやりがいも出てくるでしょう。

デメリット

今までは社員として働いていた社員が、承継後には経営者となります。施設という職場は変わりませんが、経営者と社員ではスタンスが異なります。経営者は将来の方向性を定め、的確な戦略を立案し、資金調達するなどがメインの仕事となります。

スタッフとして優秀でも、経営者としての資質があるのかどうかは別の話かもしれません。経営者としてやっていく覚悟があるのかどうか、事前にしっかり話し合っておく必要があります。

他社へ承継する

他社へ事業を譲渡することを、M&Aと言います。事業所を売却するためには、事業所の規模、売り上げ、施設の状況だけでなく、建物や車などの資産をすべて査定し、承継する事業所にいくらの価値があるのかを計算することから始めます。

メリット

経営者は譲渡した金額が受け取れます。それを元手に投資したり、新たな商売を始めたりすることも可能です。

デメリット

トップが変わるため、事業所の運営方針もガラリと変わることがあります。スタッフや利用者への説明など、引き継ぎをしっかり行う必要があります。この部分を丁寧に進めないと、反発が出て継承が頓挫してしまうこともあり得ます。

承継する相手がいない、またはM&Aで条件が合わないなどの場合は廃業となります。廃業する際は、スタッフの解雇、利用者への説明だけでなく、資産の売却や処分を行わなければいけないため、承継よりも時間と費用がかかることが多いです。

介護事業の承継の流れ(M&A)

実際に事業を承継する際には、どのような流れになるのでしょうか。前章で3つの承継先を紹介しましたが、ここではM&Aについて詳しく説明します。

  1. 仲介業者を探し、面談をする
    M&Aには法的なことも含まれるため、仲介業者を探すのが一般的です。仲介業者に、売り手としての条件面を提示し、買い手企業を探してもらいます。
  2. 買い手企業の選定
    仲介業者は、買い手企業を探すためのマッチングを行います。
  3. 企業双方の話し合い
    仲介業者が売り手と買い手の条件をすり合わせ、条件に合致した企業が現れた際は、仲介業者がセッティングして双方のトップの話し合いが行われます。この席では、売り手企業側に、業績やスタッフの条件、施設の資産などをヒアリングすることが多いでしょう。さらに双方が納得すると、基本合意の締結を行います。
  4. 最終的な金額の提示
    買い手企業は、公認会計士、監査法人、弁護士などの代理人を選出して監査を実施します。そして、買収希望金額を提示することで再び交渉に入るのです。
  5. 最終的な合意
    仲介業者が買い手、売り手の折り合う金額を提示し、最終的な合意を図ります。
  6. 譲渡契約の締結
    譲渡契約を締結してM&Aが成立します。

業務効率化を推進している事業所は“価値”が高い

事業承継を考えている施設の運営責任者は、働いているスタッフや利用者にできるだけ負担がかからないように配慮しつつ、承継を進めることが大切です。また、事業所の業務効率化が進んでいる事業所は、評価が高いでしょう。政府がデジタル化を推進している状況下において、特にDX化へのインフラが整備されている事業所は、買い手にとって魅力的に映るためです。

そのため、いずれは事業承継をしようかと考えている事業所の運営責任者の方は、今から業務効率化を推進するとよいでしょう。その中でDX化の足がかりとして欠かせない介護ソフトが未導入の事業所は、導入の検討を始めてみることをおすすめします。

介舟ファミリーの介護ソフトは導入後の評判も良く、利用している事業所も多いのが特徴です。ぜひ、介舟ファミリーも検討範囲に加えてみてください。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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当たり前の「権利」について

当たり前の「権利」について

もともと社会福祉の用語で、 障がい者や高齢者といった生活上困難さを持つ方などに対して特別視せずに、誰もが社会の一員であるといった捉え方をする「ノーマライゼーション」。

「標準化」「正常化」という意味があり、それまで特別に行われていたものを一般化していくという考え方を示すそうだ。

私の尊敬する大先輩は、「ノーマルでないことを、ノーマルにすること」と説明されていて、とてもしっくりきた思い出がある。

基本的人権は人が生まれながらに持ち、誰からも侵されない権利とされ、自由権、平等権、社会権、参政権に分けられているが、加えて、個人が人間としての幸福を追求する権利である「幸福追求権」というものもある。

本来どのような障がいがあろうと、高齢であろうと、そうではない市民と同等の生活と権利が保障されなければならない。

 

私が携わる精神医療保健福祉の領域では、残念ながらまだまだ特別なことが多い。「精神障がい」だから仕方ないのだろうか。

あるいは、「高齢で認知機能が落ちているから」、「ここのルールはこうだから」、などなど仕方のない理由など上げればキリもなくなる。

ある程度、取り巻く環境等に応じて合わせないといけないことは特別なことでなくどんな人も等しく一般的とも思うのだが、とはいえ、圧倒的にあるべき「権利」が奪われてしまうことはノーマルとは思えない。

 

善し悪しを語りたいのではなく、我々が日々行っていることは「誰にでも同じように説明がつくことかどうか」は常に意識したいものだと考えている。

先日、職場で権利擁護について話し合った際、皆が、明確な虐待や権利侵害ではなく、そこにつながる可能性を否定し切れないグレーな対応や関わりがあるのではないかに言及し意見を交わす姿が見られ、いい職員が集ってくれていることをあらためて嬉しく感じた。

多様な方が、その特性や状態、環境などに応じてではあるが、その方なりの幸福を追求する権利を少なくとも一方的に損なうことの無いような支援者でありたいと思う。

平良 幸司

  • 横浜市保土ケ谷区精神障害者生活支援センター 所長

精神保健福祉士として、精神科病院→生活支援センター→生活訓練事業所での現場経験を経て、現職へ。

主に精神障がいのある方々やそのご家族への相談・生活支援と、誰もが住みよい地域づくりについて、関係機関等と協働して取り組んでいる。

関連して、一般社団法人日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構理事補佐としても活動中。

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展示会(CareTEX福岡’24 出展案内)

2024年06月19日

CareTEX福岡’24 ご来場お待ちしております。

公式ホームページは画像をクリック

マリンメッセ福岡 A館
(福岡県福岡市博多区沖浜町2-1)
7月3日(水)~4日(木)
9:30~17:00(受付開始 9:00)

ブース番号:4-51

介護業界”九州エリア最大級”の商談型展示会『CareTEX福岡’24』に出展いたします。
梅雨の蒸し暑い時期での開催ではありますが、

皆様のご来場を心からお待ち申し上げております。
「介舟ファミリー」のイメージキャラクター「助かっ太」が目印です。

 お問合せ

展示会・出展商品の詳細を掲載しているリーフレットをご用命の方は弊社までお問合せください。
TEL:092-411-8071 または フリーダイヤル

 新型コロナウイルス感染拡大予防対策について

当ブースでは政府・自治体・展示会業界・会場のガイドラインに沿って新型コロナウイルス感染症対策を徹底して対応させていただきます。

展示会についてのご質問は、こちらよりお問合せ下さい。
※お問合せ内容欄に「CareTEX福岡’24について」とご記載お願いいたします。

リリース(2024年5月バージョンアップ)

2024年05月31日

5月のバージョンアップ内容について。

令和6年介護保険/障害福祉の制度改正に対応した定期アップデートを実施致しました。

 居宅支援/介護保険

  • 6月施行(医療系)サービスコードの適用(追加/変更/削除)
  • 処遇改善加算変更に伴う事業所情報の設定

 障害福祉

  • 処遇改善加算変更に伴う事業所情報の設定

 給与計算

  • 定額減税額の帳票出力対応

支援の質について ―対「人」援助とは―

支援の質について ―対「人」援助とは―

「人の尊厳を尊重する」と調べてみると、『その人が人として生き、存在していることそのものをかけがえのない価値として大切にすること』だと、あるところでは説明されていた。「人」はそれぞれ個別的で多様な側面を持つ。

 

疾患や障がい、生活の困りごとなどはその「人」のごく一部でしかなく、お一人お一人にその人ならではの多様な魅力が多くある。

そうした方々と向き合う援助職お一人お一人にもまた確かな魅力があり、その間にしか生まれない唯一無二の何かが確かに存在すると、これまでの20年余りの福祉従事経験を通じて私は思う。

 

私はこれまでずっと精神障がいのある方の支援に携わってきたが、まだこの仕事をやり始めて間もない頃に、状態がいいとは言えず意に反して入院することになったある方に病室で言われた一言は忘れられない。

「ゴチャゴチャと(説明など)言っているが、まずお前は何者なのだ?」と。

しばらく後になってご本人に確かめられたのだが、その方が言っていた真意は、私の仕事としての役割や手続き的なことではなく、『あなたはどういう人間で、どういう考えや想いのある中で、なぜ自分に向けて発してこようとする存在なのか?』であった。

 

いわゆる提供するサービスや支援の質が「人」が変わっても担保されることは大切な一方で、あなたとその方でしか起き得ない「関係性の産物」が、その方にとっての生活の質や生きる価値につながることもまた大切なのではないだろうか。

本来はそうではないと思うが、敢えて分けて考えてみると、「人間関係の質」が土台にある上で、「対人援助の質」が語られるべきなのだろうと感じ入る。そこはやはり、「人」と「人」との関係性なのだから。

平良 幸司

  • 横浜市保土ケ谷区精神障害者生活支援センター 所長

精神保健福祉士として、精神科病院→生活支援センター→生活訓練事業所での現場経験を経て、現職へ。

主に精神障がいのある方々やそのご家族への相談・生活支援と、誰もが住みよい地域づくりについて、関係機関等と協働して取り組んでいる。

関連して、一般社団法人日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構理事補佐としても活動中。

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リリース(2024年4月バージョンアップ)

2024年04月30日

4 月のバージョンアップ内容について。

令和6年介護保険/障害福祉の制度改正に対応した定期アップデートを実施致しました。

 介護保険

  • 4月施行サービスコードの請求データ作成
  • 計画費の算定
  • 様式の変更(介護給付費明細書、サービス提供証明書)

 障害福祉

  • 4月施行サービスコードの請求データ作成
  • 加算新設/変更に伴う事業所情報の設定
  • 様式の変更(実績記録票)

介護施設の夜勤体制とは?現状と業務軽減のための対策について解説

介護施設の夜勤体制とは?現状と業務軽減のための対策について解説

特別養護老人ホームやグループホームなど入居者が暮らす介護施設では、24時間体制の見守りが必要です。そのため夜勤スタッフが常駐します。
しかし、多くの施設での夜勤は2交代制で、1人で対応する施設も多いのが現状です。スタッフに大きな負担がかかる夜勤体制を改善するためには、どうしたらいいのでしょうか。施設の運営責任者として、見逃せない問題です。

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介護施設における夜勤体制とは

介護施設の夜勤体制はどのようになっているのでしょうか。それぞれの施設ごとに見てみましょう。

介護施設における夜勤体制と人数

介護施設の入居者のほとんどは高齢者です。高齢者は転倒、誤嚥(ごえん)をはじめ、心臓発作や脳出血などを起こすリスクも高いため、介護職員は24時間体制で入居者を見守っています。昼間はスタッフもそろっているので目が届きやすいですが、夜間は少人数体制での見守りとなる施設がほとんどです。そして、その人数は施設によっても異なります。

特別養護老人ホーム

入居者の多くは、生活するために介助を必要とされる方か、認知症の方です。そのため、入居者25人につき1人以上のスタッフが対応しなければいけないと法律で決まっています。

介護老人保健施設

ケガや病気の人が、回復期において自宅に戻るためのリハビリをするのが介護老人保健施設です。夜勤は入居者40人に1人でも法的には可能ですが、多くの施設では複数人体制を整えています。特別養護老人ホームとは異なり、原則として必ず看護師も夜勤で常駐していなければいけません。

有料老人ホーム

介護が必要な人、そうでない人が混在している有料老人ホームでは、自立した人もいるため、夜勤のスタッフの配置人数が少ないところもあります。

グループホーム

認知症の高齢者が入居しているため、夜勤は1ユニット(5~9人)を1人のスタッフで担当することが多いです。

夜勤の勤務時間

2交代制、3交代制、4交代制など、夜勤の体制は職場によって異なります。介護施設で比較的多いのは、2交代制です。

【2交代制の勤務時間の例】

  • 日勤:9:00~18:00
  • 夜勤:16:00~翌10:00(休憩2時間)

夜勤は休憩が1~2時間入り、実働16時間となっている施設が多いです。その間に交代で仮眠ができる施設もあります。

ただし、22:00~翌5:00までは「深夜の時間帯」として、割増賃金が発生します。

夜勤の回数

労働時間だけでなく、スタッフが1カ月間に何日夜勤ができるのかについても特には決まっていません。施設によって回数はさまざまです。

公益財団法人介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」によると、深夜勤務が月に「5回以上7回未満」という回答が40.1%と最も多く、次いで「3回以上 5回未満」という回答が27.6%でした。

日本医療労働組合連合会の「2021年介護施設夜勤実態調査」では、小規模多機能型、看護小規模多機能型以外の2交代夜勤制を取っている施設では、夜勤回数が平均4回を超え、グループホームとショートでは最多5.1回という回答でした。

介護施設における夜勤の仕事内容

入居者の多くが就寝するため、夜勤の仕事は昼間とは異なります。主な仕事は、巡回と排せつ介助です。

ただし、突然入居者の具合が悪くなった際は緊急対応を行うため、昼間より忙しいこともあります。ある施設のスケジュールで業務の流れを確認しておきましょう。

【スケジュール例】

16:00  出勤と引き継ぎ
17:00  夕食準備、食事介助
19:00  口腔ケア、就寝介助
21:00  消灯、1~2時間おきに安否確認、コールの対応、体位変換、排せつ介助など
6:00    起床
7:00    朝食準備、食事介助
10:00  引き継ぎと退勤
途中に休憩が1~2時間入ります。

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介護施設における夜勤体制の現状

上述のタイムスケジュールを見ると、介護施設の夜勤の仕事は、昼間に比べて忙しさはそれほどでもないように見えるかもしれません。

しかし、昼夜が逆転した高齢者の対応や、体位変換、排せつ介助などを少人数で行うため、スタッフの負担は想像以上に大きいのが現状です。

また、夜間の勤務を終えてから次の勤務まで、12時間以上空いていないこともあります。夜勤業務のなかでも、グループホームの見守りはほかの施設と比べても負担が大きいことから、厚生労働省は見守りについてはロボットやAIの導入を推奨しています。

夜勤を行うにあたっての注意ポイント

夜勤を行うにあたっての注意ポイントを紹介します。

労働基準法で定められた労働時間は厳守

労働基準法では、介護職の夜勤については上限回数が決まっていません。ただし、労働基準法で定められた労働時間は厳守しなければいけません。

1週間当たりの労働時間は40時間(特例事業所は週44時間)までです。これを超えると法に抵触するため、シフトを調整する際は気を付けましょう。

緊急時、上長に対応できる連絡手段の構築

歩行に問題のない高齢者でも、夜は転倒リスクがあります。また、緊急事態が起こった際に1人で夜勤を担当していると適切な対応ができない可能性があります。

したがって、施設の運営責任者には緊急時に備えた対策を立てておくことが求められます。緊急時に指示を仰げるような連絡ツール(電話、メール、LINE)を使った連絡手段を構築しておくことも大切です。

AIセンサーの導入

夜間勤務のなかでも対応が難しく、しかも気の抜けない業務のひとつが利用者の深夜徘徊(はいかい)です。

利用者が知らない間に施設を出ていってしまったり、転倒したことに介護者が気付かなかったりすると、利用者家族から安全面で不安視されることになりかねません。介護施設としてはこの点には細心の注意を払いたいところでしょう。

対策としては、AIセンサーの活用があります。行動パターンを収集し、AIで分析することで効率的な見守りが期待できます。利用者の行動に異常があればアラートが鳴るため、スタッフの負担も軽減されるでしょう。また、利用者のプライバシー保護の観点でも配慮につながるでしょう。

ツールで業務を軽減

繰り返しになりますが、日勤と違い、夜勤は少ないスタッフで対応しています。利用者のほとんどが就寝しているので、業務が日中よりも少ないという理由からです。しかし、排せつ介助が必要な人や、昼夜が逆転して徘徊する利用者もいます。

そのような状態に緊急コールが重なると、スタッフは昼間より忙しくなることもあります。特に、夜勤の緊急事態は一分一秒を争うことも多いため、スタッフは臨機応変に行動することが求められます。さらにそのあとには、それを記録に残し、昼間のスタッフに引き継ぐという業務が残っていますが、場合によってはその時間を捻出するのも困難です。

介護施設の運営責任者として対策を講じる際に、タブレット端末の導入を検討してみてはいかがでしょうか。スタッフの業務効率化を図るためにも、ICTツールの活用は有効です。

ICT化で夜勤の負担軽減が期待できる

夜勤を担当するスタッフは、見守り、排せつ介助などがメインの業務ですが、ひとたび緊急事態が発生すると、現場は大混乱になることもあります。しかし、緊急事態を想定して夜勤スタッフを増やすことは現実的ではないでしょう。

そこで、AIの導入やICT化がおすすめです。人工知能にできることを把握したうえで、それ以外の業務をマンパワーで補うように業務内容を考えることこそが、施設運営責任者には求められているのです。

そのためには、まずインターネット環境の構築、タブレットやスマホなどの端末の購入のほかに、介護ソフトの導入も行わなければならないでしょう。

介護ソフトにはクラウド型とオンプレミス型があり、ソフトの内容もひとつの業務に特化したもの、総合的業務をカバーしているものなど、さまざまなタイプがあります。事業所にとって必要な機能をよく検討して選ぶことが重要です。

「介舟ファミリー」の介護ソフトはクラウド型なので、介護報酬の改定が入った際はすぐに対応できます。また、人手の作業では手間のかかる業務をカバーする、いくつもの機能が備わっている総合的なソフトです。そして、画面がシンプルで操作が直感的なので、ICT機器に慣れていない人でも操作しやすいと評判です。ぜひ検討してみてください。

介舟ファミリーは、介護と障害者福祉の両制度に対応し、事業所が必要な機能を標準で提供しています。包括的なサポート体制があり、初めての利用でも安心して導入できます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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介護経営の大規模化と協働化は必要?メリットとデメリットも解説

介護経営の大規模化と協働化は必要?メリットとデメリットも解説

介護経営の大規模化、協働化を検討している事業運営者もいるでしょう。
厚生労働省も推奨している事業所の合併や譲渡は事業所にとって得なのか、損なのか? この記事では、大規模化や協働化をするメリットやデメリットだけでなく、実際に合併や譲渡をする際の注意点なども紹介しています。ぜひ大規模化や協働化を決断する前にご一読ください。

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介護経営の大規模化・協働化とは

介護経営の大規模化・協働化とは、どういうことでしょうか。概要と目的を紹介します。

介護経営の大規模化・協働化の概要と目的

介護保険サービスがスタートした当初は、中・小規模の事業所が大半でした。政府は事業所に競争を促し、相乗効果として利用者へのサービス向上や、事業所運営の効率化を図ろうとしました。

しかし、現実的には、人手不足や資金不足から業務効率化が進まないという状況です。そこで、政府は大きく方針を転換しました。

小さな事業所の合併、譲渡による大規模化または協働化を推し進め、それらによる恩恵で効率化を図ろうというものです。

介護経営の大規模化・協働化のメリットとデメリット

政府の大規模化、協働化により見えてくるメリット、またはデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

大規模化や協働化のメリット

人材の確保がしやすい

規模が小さい事業所では、スタッフが担当部署以外の業務にも携わらなければならないことがあり、それらの負担がスタッフの離職理由になっていることもあります。

規模が大きくなると、スタッフ間で仕事の分業化ができるため、スタッフの負担も軽減できます。

人材の採用活動においても、多様な募集チャネルが活用しやすくなり、人材も集まりやすいでしょう。

研修やキャリアパスの形成が行いやすい

外部から講師を招いて研修や職員教育などを行う際も、何回かに分けての開催が可能となるためスケジュール調整がしやすくなります。

スタッフは自分のスケジュールを優先しながら講習を受けられる可能性が高くなります。さらに、講習や研修を受けることでキャリアパスの形成もしやすく、スキルアップにつながるため、スタッフのモチベーションも高くなるでしょう。

事業者間での連携が行いやすく、情報共有ができる

協働化することで感染症や災害時など、情報が収集しやすい環境が整備できます。

多くの情報から正しい判断がしやすくなり、利用者や家族からも「この施設は信用ができる」と評判も上がるでしょう。

補助金や助成金の申請が通りやすくなる

大規模化することで社会的な信用も上がります。そのため、補助金や助成金の申請が審査に通りやすくなることもあるようです。

業務効率化がしやすい

大規模化・協働化することで業務に使用できる資金も大きくなるため、事業所のICT化も進めやすくなるでしょう。

パソコンやタブレットの大量購入は割引率の最大化をもたらし、導入費用が抑えられます。さらに、ICT化して組織マネジメント改革が進むと、事業所全体の業務効率化が促進されるという効果も期待できるでしょう。

大規模化や協働化のデメリット

それでは、大規模化や協働化のデメリットには、どのようなことが考えられるでしょうか。

施設独自の情報を公開しなければならない

施設それぞれのサービスや、業務運営のノウハウなどをグループ事業所に公開する必要があります。

今までは差別化を図っていた独自のサービスがグループ全体のスタンダードとなるため、自事業所の特色をアピールしづらくなる可能性も出てきます。

経営方針の違いから生まれるトラブル

最初にしっかりと経営方針や、ビジョンなどを話し合っておかないと、それぞれの事業所の思惑の違いから齟齬(そご)が生じ、トラブルに発展することも少なくありません。

合併譲渡の会計手続きが煩雑

所轄庁によっては、以前は合併手続きが一般的ではなかったところもあります。

その結果、合併したことで会計処理がさらに煩雑になり、手間と時間がかかったこともありました。しかし、最近では法人向けのガイドラインも整備されているので、比較的円滑になっているようです。

介護事業所の経営について、こんなことにお困りの方はいませんか?

この資料は介護ソフト導入により、介護事業所の収支差率にどのような変化が起こるのか、向上させるための戦略や方法を知ることができます。

介護経営を大規模化、協働化した事例

介護経営を大規模化、協働化した事例を紹介しましょう。

みちのく社会福祉協同組合の例

介護施設の運営責任者として、頭を悩ませるのが人材の確保ではないでしょうか。「みちのく社会福祉協同組合」では、インドネシア、フィリピン、ベトナムの留学生を受け入れ、介護福祉士の資格取得サポートを行っています。

その結果、組合に加入している事業所に優秀な人材を紹介することができ、人手不足が解消できる仕組みとなっています。

さらに、おむつやリネン品などを組合で一括購入することにより、事業所へ安く販売する取り組みも行っています。

社会福祉法人 小田原福祉会の例

小多機(小規模多機能型居宅介護)に、地域密着型特養や地域包括支援センターなど、複合的に事業を展開している「社会法人 小田原福祉会」は、下記のような事業展開に取り組みました。

小多機に郵便局やサ付き、在宅支援クリニックを併設。特養に併設されていた通所介護事業所を外に移転、あわせて地域包括支援センターも分割。そちらにも在宅支援クリニックやサ付きを併設して、複合型施設としました。多角的に経営することでリスクを分散し、安定した経営を目指せるのがメリットとしています。

事業展開により、5年間で人件費率は6.98ポイント、離職率も4.6ポイントの低下を図ることができました。

社会福祉法人 北筑前福祉会の例

地元を大切にしている「北筑前福祉会」は、補助金を受けながら事業を拡大している施設です。

地域の整備計画に参加するだけでなく、新規事業に積極的に取り組むほか、SDGsの活動などにも力を入れているのが特長です。住民の困りごとや、要望に応えているうちに規模が大きくなったとも言えますが、事業拡大により、よりきめ細かに利用者のニーズに応えられるようにもなっています。

大規模化するにつれ認知度が上がり、信頼度も増したため、地域住民への説明が容易になりました。また、スタッフに対しては、大規模化することでさまざまな形態のサービスを経験してもらうことが可能になると同時に、管理職のポストも増加したため、キャリアについての希望にも幅広く応えられるようになりました。

効率化の成果としては、食材を一括仕入れすることで、費用を大幅に抑えることが可能となっています。

介護経営を大規模化する方法

介護経営を大規模化する方法には、合併または事業譲渡があります。

どちらも法人所轄庁への事前の相談は欠かせません。また、それと並行して各事業に関わる行政庁への事前相談も早急に行う必要があります。

さらに、利用者、スタッフへの説明も丁寧に行いましょう。税金や補助金に関しては税務署や補助金関係行政庁に問い合わせてください。合併と事業譲渡の必要な手続きを以下に簡単に見てみましょう。

社会法人の合併の主な手続き

  1. 理事会、評議員会に決議をかける
  2. 合併契約の書類をそろえる
  3. 法人所轄庁に行き認可を得る
  4. 官報に債権者保護手続きの公告をする
  5. 登記の手続きをする
  6. 書類をそろえて開示、閲覧の対応に備える

事業譲渡の主な手続き

  1. 事業を譲り受ける法人は、譲り受ける事業について新規の許認可等の手続き
  2. 事業を譲渡する法人は事業の廃止手続きをする
  3. 基本財産の定款変更申請が必要となる場合は、法人所轄庁に提出する

介護経営を大規模化するうえでの注意ポイント

介護経営を大規模化する際には、いくつかの注意ポイントがあります。合併、譲渡を行う前に双方で確認・同意をしておかなければ、のちのちトラブルにつながることもあるので注意しましょう。

  • 消滅する法人の退職役員の報酬について確認しておく
  • 寄附財産を移転、または存続する際には国税庁に相談する
  • 譲渡する際は、利用者に譲渡後のサービス提供について説明しておく
  • 資産を譲り受ける際の価格は、専門家に相談して適正価格を確認する

大規模化や協働化を考えるなら業務効率化は欠かせない

介護事業所の経営者としては、大規模化や協働化を考えることもあるでしょう。

メリットがある一方で、働くスタッフも増えるため、業務に関しては効率化を図る必要があります

また、事業所の規模が大きくなるということは、本部と各事業所の管理を統合せねばならず、ICT化にも待ったなしで取り組まなければいけないでしょう。

介護ソフトの導入を検討している事業所は、今後の大規模化や協働化をも視野に入れて選ぶのがおすすめです。介舟ファミリーの介護ソフトは、トータルでサポートされており、使いやすいと評判です。大規模化や協働化を計画している事業者はもちろん、少しでも事業所の業務効率化を進めたい方は、介舟ファミリーの介護ソフトも検討してみてください。

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介護現場で増える外国人雇用の現状とは?雇用するメリットと留意点を解説

介護現場で増える外国人雇用の現状とは?雇用するメリットと留意点を解説

慢性的な介護人材不足の対応策として、注目されているのが 外国人雇用の活用です。
介護現場における外国人雇用は年々増加しており、これから外国人雇用を検討している事業所も多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、介護現場における外国人雇用の現状と雇用のメリットやデメリット、留意点について、詳しく解説します。

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介護業界における外国人雇用の現状

介護業界は、慢性的な介護人材不足が長らく問題となっています。この問題に対し、国はこれまでさまざまな対策を実施してきました。その対策のひとつが、外国人の受け入れ環境の整備です。

介護現場での外国人雇用の受け入れ方法には、「EPA」、在留資格「介護」、「技能実習」、「特定技能1号」の4つがあります。それぞれの特徴や在留期間等の違いは、以下の表のとおりです。

EPA 在留資格「介護」 技能実習 特定技能1号
目的 介護福祉士の国家資格の取得を目的とした受け入れで、国際連携の強化のために実施 専門的・技術的分野への外国人労働者の受け入れ 日本から相手国への技能移転(国際貢献) 人手不足対応のため、一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れ
在留期間 介護福祉士の国家資格取得前:原則4年(一定条件を満たせば5年)
介護福祉士の国家資格取得後:制限なしで更新可能
制限なしで更新可能 最長5年 最長5年
勤務できるサービスの種類 介護保険3施設のほか、通所介護、通所リハ、認知症グループホーム、認知症デイ、特定施設、ショートステイ
※介護福祉士の資格取得後には、一定条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能
制限なし 訪問系サービス以外 訪問系サービス以外
在留者 2,395人
2023年9月現在
6284人
2022年12月現在
15,011人
2022年6月現在
21,915人
2023年6月現在

介護業界における外国人雇用の現状はどのようになっているのでしょうか。

令和4年度の介護労働実態調査における事業所調査「事業所における介護労働実態調査」(以下、事業所調査)によると、外国籍の労働者を受け入れている事業所は、約1割でした。

受け入れ方法別に見ると、技能実習生が4.4%、特定技能1号が3.5%、在留資格「介護」が2.6%、EPAは0.7%となっています。EPAは日本語能力や介護知識の要件が厳しいことから、ほかの雇用方法に比べて少ないことがわかりました。

介護保険サービス系型別の受け入れ状況では、施設系(入所)は技能実習生と特定技能1号がそれぞれ13.8%、11.9%、次いで居住系が10.3%、8.0%となっており、施設で生活している高齢者の介護を担う場面での雇用が際立っています。今後の採用予定については、外国人労働者を「新たに活用する予定がある」と回答したのは施設系(入所型)が30.1%であり、施設の方が外国人雇用の受け入れがしやすい状況と言えるでしょう。

介護現場で外国人雇用を実施するメリット

介護現場で外国人雇用を実施するメリットには、次の3つが挙げられます。

労働力の確保につながる

外国人雇用の大きなメリットとして挙げられるのが、労働力の確保です。

「令和4年度介護労働実態調査」の労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書(以下、労働者調査)」において外国籍の労働者と一緒に働くことについて質問したところ、外国人介護職員と一緒に働いている人のなかでは、「労働力の確保ができる」と回答した人の比率が56.8%と高くなっていました。「事業所調査」での外国人労働者の働き方に対する評価でも、同様の回答の比率が82.3%と高いことから、現場の職員にとっても、外国人の介護職員は労働力として捉えられていることがわかります。こうした結果から、外国人雇用は労働力の確保につながると言えるでしょう。

職場に活気が出る

外国人雇用には、職場に活気が出るというメリットもあります。令和4年度の「事業所調査」によると、外国人労働者の働き方に対する評価として、「職場に活気が出る」と回答しているのが何らかの形で外国人労働者を受け入れている事業所の45.6%、「労働者調査」でも外国人と一緒に働いている人の34.8%が同様に回答していました。日本介護福祉士会の見解でも、外国人雇用は「施設の雰囲気が明るくなる」「コミュニケーションが活発になる」といった効果があると言及されています。実際に外国人雇用を実施している介護現場でも、外国人雇用により職場に活気が出ると感じています。これらのことから、外国人雇用には職場に活気が出るといったメリットがあると考えられるでしょう。

日本人職員のスキル向上につながる

外国人雇用では、日本人職員のスキル向上もメリットとして挙げられるでしょう。

外国人雇用を実施した場合、指導者となる日本人職員は、相手が理解できるようにわかりやすく説明する必要があります。

細かいニュアンスが伝わらないこともあり、どのように教えれば正しく伝わるのかを検討することが多くなります。その結果、介護技術や実践内容の振り返りをする機会が増え、日本人職員のスキルや指導力が上がりやすくなるでしょう。

介護現場における外国人雇用のデメリット

介護現場における外国人雇用には、以下のようなデメリットもあります。

業務内容に限りがある

外国人雇用を行ううえでのデメリットとして挙げられるのが、できる仕事に限りがある点です。前述の「労働者調査」によると、外国人介護職員と一緒に働いている職員のうち、外国人と一緒に働くことについて「できる仕事に限りがある」と回答した人は、50.3%と半数に上っています。

「事業所調査」でも同様の回答は50.4%となっており、事業所と職員の見解に差がないことがわかりました。この結果から、介護記録や電話等、より高度な日本語でのコミュニケーション力を必要とする場面では、外国人介護職員の力を借りることに不安があると考えられます。

ただし、実際に一緒に働いている人にとっては、業務内容に限りがあることが負担になっているとは考えにくいかもしれません。「労働者調査」を見てみると、「業務が軽減される」と回答している人が30.7%いることから、できない業務はありながらも、その他の場面での業務が軽減できていると感じている人が多いことがわかります。

コミュニケーションがとりにくい

コミュニケーションの部分を見てみると、日本人と同レベルのやりとりをするのは難しいという点がデメリットとして挙げられるでしょう。

外国人雇用では、介護現場で働くうえで必要な日本語能力を有しており、生活にも支障がないことが最低限の条件となっています。しかし、生活習慣等の違いもあり、コミュニケーションがとりにくいと感じる場面も多いでしょう。外国人と働くことについての回答では、「事業所調査」「労働者調査」の双方ともに、「コミュニケーションがとりにくい」と感じている割合は3割程度で、「利用者との意思疎通において不安がある」と回答した割合も4割前後となっています。

職員と事業所の双方が、外国人介護職員に対してコミュニケーションの場面で不安を感じていることは間違いないでしょう。

ただし、外国人雇用をしていない事業所の労働者と実際に外国人と一緒に働いている労働者の回答の差が大きいことから、実際に一緒に働いてみると、想定よりはコミュニケーションがとれると感じられる場面もあるのではないでしょうか。

帰国する可能性がある

外国人雇用の場合、在留期限の関係で、いずれ帰国する可能性がある点もデメリットと言えます。

外国人雇用は、雇用の種類によって在留期間に違いがあります。技能実習と特定技能1級の場合、在留期間は最長で5年であり、5年後には帰国しなければなりません。一方、EPAで入国し国家資格を取得した場合や、在留資格「介護」の場合は、制限なしで在留期間が更新できます。

ただし、特定技能1号と技能実習は在留資格「介護」に移行することもあるため、必ずしも全員が帰国するとは限りません。実際には、特定技能1号と技能実習で入国していても、在留資格を変更して日本に残る人もいると考えられるでしょう。

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外国人雇用で介護職員を補うときに注意すべきポイント

外国人雇用を利用して介護職員を補う場合、どのようなことに気を付けるとよいでしょうか。注意すべきポイントについて詳しく見ていきましょう。

事前に日本人職員へ理解を求めよう

外国人雇用を利用する場合、同じ職場で働く日本人職員の協力が不可欠です。雇用する目的や、生活習慣、宗教、文化の違いについても共有し、理解を求めましょう。場合によっては、日本人職員向けのオリエンテーションや研修などを検討しましょう。

外国人介護職員に生活上のマナーや職場でのルールをきちんと伝えよう

国が違えば、生活上のマナーやルールは大きく異なります。お互いが気持ち良く過ごすために、生活上のマナーはしっかりとわかるように伝えましょう。

具体的には、トイレやお風呂、買い物、交通、医療などのルールについて、日本人としては当たり前のことであっても、丁寧に伝えましょう。特に、ゴミ出しのルールは地域によって異なるうえ、トラブルになりやすいので注意が必要です。

また、仕事上のルールについても、日本と外国では違うケースが多いでしょう。介護現場はチームで対応することが多いため、職員同士の連携が取れるよう、報告・連絡・相談のルールは明確に伝えるようにしてください。

誰でも使いやすいツールを活用しお互いが働きやすい工夫をしよう

外国人を雇用する場合は、日本人と外国人介護職員の双方が働きやすい環境をつくる必要があります。

日本人と外国人の双方が、効率的に仕事が行えるように介護業務を見直したり、マニュアルを作り直したりして、どんな人でも理解しやすい工夫をすることが大切です。

介護ソフトといった誰もが使いやすいツールを活用するのもよいでしょう。介護ソフトは、シンプルで画面や操作性がわかりやすく、簡単に使いこなすことができるツールであれば、外国人だけでなく、IT機器が苦手な日本人職員も使いやすいでしょう。

外国人雇用をきっかけに職場環境の改善に取り組もう

介護人材の必要数は年々増加しており、今後ますます外国人雇用は進んでいくと予想されます。多くの事業所において、外国人雇用の検討も増えていくのではないでしょうか。

ただし、介護現場で外国人雇用を実施する際には、職場環境の改善が必須となります。外国人雇用の導入をきっかけに、介護業務の見直しや使いやすいツールの活用など、誰もが働きやすい環境づくりに取り組んでいきましょう。

介舟ファミリーは、シンプルな操作性で誰でも簡単に使いやすい点が特長の介護ツールです。また、トータルサポートのため、ツールの使い方に不安な場合はすぐに相談できて安心です。介護ツールの導入を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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訪問介護の基本報酬がマイナスに?報酬改定が事業所に与える影響などを詳しく解説

訪問介護の基本報酬がマイナスに?報酬改定が事業所に与える影響などを詳しく解説

2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がマイナスとなり、業界全体に衝撃を与えています。マイナス改定に対し、事業所としてどのような対応をしていくべきか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで、今回の改定による訪問介護の基本報酬の内容と、マイナスになった理由や対応策について解説します。

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2024年度の介護保険法改正のポイント

2024年度の介護保険法改正は、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、次の4つを基本的な視点とした内容となっています。
  • 地域包括ケアシステムの深化・推進 高齢者の状態やニーズに応じて、質の高いケアマネジメントや必要なサービスを切れ間なく提供できるよう、地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組みを推進します。
  • 自立支援・重度化防止に向けた対応 高齢者の自立支援や重度化防止が行えるよう、多職種連携やデータの活用等を推進します。
  • 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり 介護人材不足のなかにおいても、さらなる介護サービスの質の向上が図れるよう、処遇改善や生産性向上による職場環境の改善に向け、先進的な取り組みを推進します。
  • 制度の安定性・持続可能性の確保 介護保険制度が安定かつ持続できるよう、すべての世代にとって安心できる制度を構築します。
2024年度の改正は医療系サービスを除き、4月から施行されています。医療系サービスについても、6月から施行されます。

訪問介護の基本報酬はなぜマイナスに?

2024年の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げとなり、関係各所に大きな衝撃が走りました。なぜ、訪問介護の基本報酬は引き下げになったのでしょうか。引き下げになった理由や背景、改定後の基本報酬の内容について、詳しく見ていきましょう。

訪問介護の基本報酬はどれくらいマイナスになった?

訪問介護の基本報酬は、以下のように全体的に引き下げとなっています。

サービス内容 現行→改定後
【身体介護】
・20分未満
・20分以上30分未満
・30分以上1時間未満
・1時間以上1時間半未満
・以降30分を増すごとに算定

167単位→163単位
250単位→244単位
396単位→387単位
579単位→567単位
84単位→82単位
【生活援助】
・20分以上45分未満
・45分以上
・身体介護に引き続き生活援助を行った場合

183単位→179単位
225単位→220単位
67単位→65単位
通院等乗降介助 99単位→97単位
ただし、処遇改善加算を見てみると、今回の改定では訪問介護が最も高い加算率となっています。具体的には、新加算の最低ラインであるⅣにおいて14.5%、すべての要件を満たせば、最大24.5%まで取得できる設定となりました。処遇改善での高い加算率とのバランスを取るため、基本報酬については引き下げになったと考えられます。

訪問介護の基本報酬がマイナスとなった背景

訪問介護の基本報酬がマイナスとなった理由には、利益率の差が影響しています。介護事業経営実態調査の結果によると、訪問介護の収支差率は+7.8%となりました。この収支差率は、全サービス平均の収支差率である+2.4%を大きく上回っています。国はこの結果を根拠とし、訪問介護の基本報酬の引き下げに踏み切りました。

ただし、この調査には、以下の2点の懸念があります。

  • サービス付き高齢者向け住宅などに併設されている事業所も含まれている
  • 小規模の事業所の場合、調査の回答にまで手が回らず、意見として含まれていない可能性がある

特に、併設されている事業所の場合は、事業効率性が高いため収支差率が高くなります。また、収支差率の低い事業所ほど回答できなかった可能性があり、結果として、事業効率性の高い事業所に引っ張られる形となって収支差率が高く出たと考えられるでしょう。

実際に、前年度の調査と比較してみても、収入はほぼ変わっていません。むしろ、職員数が減少し人件費などの支出が減少したことで、利益率が高くなったと見てとれます。つまり、経営が安定しているのではなく、人材確保が難しくなっているため、経営的には厳しくなっていると言えます。実情としては、昨年の訪問介護事業者の倒産件数が67件と最多となっていることから、訪問介護事業所を巡る環境は決して楽観できるものではないでしょう。

訪問介護の基本報酬マイナスに対する各所の反応

訪問介護の基本報酬マイナスに対し、関係各所の反応を見てみましょう。

全国ホームヘルパー協議会、日本ホームヘルパー協会

本来の目指す姿と正反対の改定となっている、受け入れがたい内容になっていると主張。さらなる人材不足を招き、訪問介護が受けられない地域が広がりかねないと指摘。基本報酬が下がる分は何らかの形で補てんし、運営を支えてほしいと述べている。

全国介護事業者連盟

処遇改善加算の拡充については評価できる。基本報酬の引き下げは、地方の事業所や地域の高齢者にサービスを提供する事業所にとっては、存続そのものが難しくなる可能性を示唆。ホームヘルパーの確保や定着、必要な研修の受講などをあと押しする措置を強化してほしいと要請している。

日本介護福祉士会

訪問介護の担い手の誇りを傷つける無慈悲な判断と受け止めていると主張。訪問介護にはもっともっと手厚い支援策が必要と述べている。

日本医師会

訪問介護は在宅医療を支えるうえで欠かせないサービスであり、訪問介護がなくなると在宅医療そのものが簡単に破綻すると苦言を呈している。訪問介護の基本報酬引き下げの影響をしっかり注視していくべきと主張している。

上記のように多くの関係者が、訪問介護が正しく評価されていないことや、ヘルパーに動揺が広がって離職や転職につながる可能性を危惧しています。 このままでは ヘルパーの人材不足は加速し、事業所運営が難しくなる可能性があるでしょう。
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基本報酬マイナスはどのように対策すべきか

訪問介護の基本報酬マイナスに対し、事業所はどのように対策していけばよいでしょうか。

まずは、未取得の加算の取得を目指しましょう。介護報酬は、基本報酬と人件費率、加算を含めた金額となります。

基本報酬がマイナスとなるなかで利益率を上げていくためには、介護職員等処遇改善加算や特定事業所加算などの未取得の加算の取得を目指す必要があるでしょう。

次に、処遇改善加算をしっかりと算定できる条件を整えられないか、検討してみましょう。職場環境を見直し、現行よりも上位の処遇改善加算が目指せれば、現行よりも増収が見込める可能性もあるでしょう。

また、今回の改定では、処遇改善加算を取得しやすくするための要件や事務手続きの見直しも行われています。加算のための職場環境の改善においては、業務効率化を進め、業務負担を減らすことが大切です。介護ソフトを導入したり、見直したりすることで、業務効率化や業務負担軽減が図れるでしょう。

訪問介護の基本報酬マイナスは加算でカバーしよう

訪問介護の基本報酬はマイナスになったものの、処遇改善加算の加算率は全サービス中で最も高くなっています。

その他の加算についても、要件が緩和したものや、地方の事業所向けに加算が新設されたものなどがあり、加算が取りやすい状況となってきています。基本報酬のマイナスをカバーするために、取れる加算は算定していける体制を整えていきましょう。

また、基本報酬マイナスに伴い、離職率が上がってしまう可能性があるため、職員が働きやすい環境を整えていく必要もあります。

介舟ファミリーであれば、トータルサポートでスムーズな対応ができるので、業務効率化が図りやすく、職員の業務負担も減らせます。この改定を機に、介舟ファミリーの導入を検討してみませんか。

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